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鬼畜ま!2

二話
「「学園長!!」」


 血相を変えて飛び込んできたのは麻帆良学園本校女子中等部英語科教員であり、2-A担任を経て3-A担任へとなった魔法教師であるネギ・スプリングフィールドと、その友人にして兄代わりでもある魔法教師、高畑・T・タカミチだった。
 普段はそれなりに礼儀正しい二人の非礼に、おもわず近右衛門は目を剥く。


「ど、どうしたんじゃ、二人とも?」


 この部屋にいた三人(+一本)は、普段の二人を知らないため、近右衛門ほどは驚いてはいないが、それでもいきなりの音にランスは不愉快そうに眉をひそめ、シィルも軽く目を丸くしている。
 ただし、あてなは別に何も感じていないようだし、カオスの表情はよくわからない。


「ど、どうしたじゃないですよ、無事だったんですね。いきなり轟音がするし、屋根の部分は半分壊れかけてるし、部屋にはすごい強度の障壁が張られているし……てっきり誰かに襲われたのかと思いました~~」
「僕だけじゃこの障壁は力づくでしか解除できませんしね。他の先生方は念のため各所に散ってもらっていますので、こちらに向かっていたネギ君に手伝ってもらって時間もかけてようやく突入したら……別になんともなっていませんね」


 どうやら近右衛門の仕掛けた障壁が、いつもの強度より高かったことから、刺客に襲われていると早とちりしたようだ。


「ふむ、それは悪か「おい、爺さん。そいつらは誰だ?」」


 自分が無視されているような状態が気に入らないのであろう、ランスは不機嫌さ5割り増しといった様子で、近右衛門に声を叩きつける。

 タカミチは、その異様な服装とかもし出される凄みから、思わずこいつは誰だといった視線でランスを見るが、もう一人の魔法先生、ネギ=スプリングフィールド教師にとっては、恩師でもある近右衛門がぞんざいに扱われていると感じたことで、そういった違和感よりもまず不快感を感じた。
 そして、日本人とは異なり相手を傷つけないようあいまいに言うのではなく、相手の間違っている点ははっきりといったほうが相手のためになると思うイギリス流(というか欧米一般)の考えにのっとり、多少ランスの目つきにひるみながらも明日菜のときのように礼儀正しくはっきりという。



「あの、すみませんが、年上の方を爺さん呼ばわりするのはあまりよくないですよ」
「爺はなんと言っても爺だろうが」


 即答で返される。
 自分と美女以外に一片の価値も認めていないランスにとって、初対面の老人など爺で十分であると本気で思っている。

 が、それは礼儀正しいネギには理解できない価値観であり、温厚なネギもほんの少しではあるもののムッと来る。しかし、それを表に出すような愚かな真似は英国紳士として出来ない。
 が、さらにランスはネギの胸のうちの小さな火の粉に油を注ぐ。
 

「もっと価値のある美女なら話は別だが、なぜ俺様がこんなただの爺に気を使わねばならん?」
「……学園長先生は関東魔法協会で会長を勤めている立派な方ですよ」


 尊敬に値する魔法使いであり、教育者でもある学園長が無価値、といわれて黙り込まない程度には、図書館島での経験によってネギにもしっかりと教師としての自覚が芽生えてきていた。そのため、魔法関係者であろうおかしな格好をした男に対してきちんと反論する。
 それは悪意の無い一言だったが、ランスを論破することに思考の重点が行ってしまっていたネギは、言った内容がまずかったことに気がついていなかった。


「ネギ君!!」


 一般人には秘匿されるべき存在である魔法のことをあっさりと洩らしてしまうネギをあわててタカミチがランスには聞こえないよう小さな声で注意する。相手が以下におかしな格好をしていようと、それだけで魔法関係者であると判断するのは軽率すぎる。
 しかし、続いて放ったランスの声が無駄に大きかったためネギの耳には届かず、タカミチに注意されたこと自体に気がつかなかったようだ。
 仕方なくタカミチが近右衛門に視線をやると、ため息を吐きながら彼らはとりあえず知っていると言うことを視線に乗せてうなずく。

 このあたりはやはりまだ子供なのだなと、改めてネギの魔法教師としての不安定さを近右衛門は目の当たりにする。

 魔法の使い手としての実力は申し分ない。この若さであれほど魔法を使いこなしているのだから、末恐ろしいほどだ。将来はきっと自分をも超える魔法使いに成長する事だろう。
 しかし、教師としては大卒レベルの学力があるとはいえ、生徒に慕われることはあっても尊敬されてはいないことからもわかるとおり、絶対的な人生経験が足りない。
 今回のようにあっさりと正体不明の相手に学園長の魔法のことを教えてしまうような、軽率な行動が神楽坂明日菜の時などからも解るとおり多々見られる。
 


 もっとも、メルディアナ魔法学校もそのことは解っており、将来の優秀な魔法使いのために優秀な従者を探させるという目的で、この麻帆良学園に教師、という名目で送り込んできたのだろう。
 ここの生徒には特殊なものが多い。学生としては規格外の厄介者という存在であっても、魔法使いの従者としては喉から手が出るほどほしいということも理解できないわけではない。
 そのため、こちらとしても学園長としてではなく、関東魔法協会の長として許可をしたわけだから、ある程度の教師としての不手際は大目に見るつもりだが、今回のようにまったく見ず知らずの信用できるかどうかもわからない人間に対してまで話してしまうようでは、少々記憶消去の魔法に頼りすぎているように思われる。
 教師としてではなく、魔法教師としてのルールに不手際があるのは少々まずい。
 そういった面でまた頭の痛い問題が表面化したと近右衛門が悩んでいるうちに、ランスとネギの会話はバンバン進んでいく。




「あん? 関東なんちゃらというのは先ほども爺から聞いたが、それがどうかしたのか? 爺を爺というには何の関係もないだろうが、がはははは」
「そんなことありません。もっと目上の方には敬意を払って接するべきです」
「だったらなおさら爺で十分じゃないか。この超スーバーデラックスウルトラ英雄である俺様のほうが百万倍偉いんだからな」
「えっと、学園長はかつての大戦を戦い抜いたほどの立派な魔法使いですよ」
「うるさいわ、ガキが!! 俺様だってヘルマン軍やゼスの四天王、大勢の妖怪たちをけちょんけちょんにやっつけた! よって俺様のほうが偉い!!!」
「………何を言っているんですか? 四天王とかゲームじゃ無いんですから、非常識ですよ!」
「常識なんて多数決で決まるもんだろうが! 多数派が常識人、つまり常識が正しいとは限らん! であれば絶対的正義である俺様が正しいのだ!!」



 会話がずれている。

 ランスは基本的に地位で人を判断しない。誰に対しても公平に無礼である(ただし、美女、美少女は除く)。
 しかし、ネギにとって学園長はこの学園を運営する傍ら関東魔法協会の長を務めている社会的地位のある人間であり、年長に加えて歴戦の戦士でもあるという認識だ。
 そして、自らが目指すマギステル・マギへの道しるべのような存在であり、間接的に自分の夢を馬鹿にされたように感じている。
 本来であれば、ランスのようなタイプはディベートというものに対してとことんむいていないため、ネギの論理立った指摘を受ければ反論できないはずだが、ランスは感情論一点で押し込んでくる。
 そして、議論というものは才能や努力よりも経験がものをいう物であるが、いまだ年若いネギはそういった経験が絶望的に足りなかったため、ランスが議論をずらしているということに気が付いていても、それに対する有効な手段が無かった。

 そのずれが、お互いの会話をより一層噛み合わなくさせている。
 噛み合わなくなった会話の主は往々にしてヒートアップしていくものだが、それはこの二人とて例外ではなかった。
 ましてや、優秀なネギの頭脳では、本来であればすでに詰んでいるということを理解しているため、議論を続けることを選んでしまった。
 ランスも興奮すると下手するとネギ以下に精神年齢に下がってしまうのか、ぎゃーぎゃー感情的に自分に絶対的な自信を持って喧嘩を売り、ネギはそれに対してしっかりと根拠を示しながら理路整然とした論理で応対する。

 それを見て途方にくれているシィルと、先ほどからずっとじゅうたんの目を数え続けているあてなを横目に、タカミチが近右衛門にこっそりと近づいてくる。



「……何者ですか? 彼ら」
「ランス君とシィル君、あてな君というらしい。信じがたいが、どうやら異世界から飛ばされてきたらしい。言動が危険人物っぽいから早く帰ってほしいんじゃが、帰り方もよく解らんらしく……」
「べ、別世界からですか…………………ま、まあ真偽はさておき、まあ確かに問題は起こしそうな感じではありますね。見たところ、そこそこ使えるようですが、どのくらいの腕なんでしょう?」
「よくわからんのじゃが……気や魔力の気配はないし、それほどでもないとは思う」
「仕掛けて探ってみましょうか? 僕なら何とかなるでしょうし」
「そうじゃのう……頼む」



 とりあえず、相手の力量がわからなければ、こちらの対応も決めかねる。
 ここのことを完全に記憶から消して学園から放り出すのか、力量差を自覚させて一生飼い殺しにするのか、協力と引き換えにこちらから帰る方法を探すよう申し出るのか、研究対象として捕獲するのか、とにかくランスたちがどれほどの戦闘能力を持っているのかによる。

 シィルと名乗った少女のほうは、先ほど魔法使いであるということを聞いている。
 しかし、その身からあまり魔力を感じない以上、おそらくランスのいた世界はあまり魔法が重視されていなかったようだ。

 あてなにいたっては、戦闘を期待するだけ間違っている。
 あの年頃の少女でも十分な力量を持っているものもいるが、十代にもならずに戦場に叩き込まれた子供は、悲しいことに誰もが隠し切れない瞳の奥に冷たい光とどこか曇った警戒心を持っていると、近右衛門はかつての経験から知っていた。

 そして、あまりレベルの高くないシィルと戦闘行為など考えられないであろうあてなと行動をともにしていることから、おそらくランスもそれほど常識はずれには強くはないのだろう。
 この二人をかばいながらも戦えるほどの強者と言う可能性も無いことは無いが、三人は冒険者と言っていた。
 実際に「冒険者」と言う単語が何を指すのかははっきりとは知らないが、語感からしておそらくイメージと大して変わりはすまい。というか、はっきりいって「夢追い人」とか「ニート」とかとの違いすらわからない。まあ、たぶん戦いはするのだろうが……
 であれば、足手まといになるほど能力差が生じるもの同士は組まないのであろう。

 無論、「最強」を名乗るからにはそこいらのチンピラに比べればはるかに強いのであろうが、せいぜいそれも中世辺りによくいた国一番のつわものぐらいの意味であろうため、一流の魔法使いを倒せるほどの力量があるはずが無いと思う。


 何より、気も魔力も使えない以上、絶対的な力、速度、肉体が持つ強度というものは何の強化もしていないタカミチとさほど変わるはずがない。
 そうであれば魔法教師であり、サウザンドマスターの戦友のうちの一人、ガトウ・カグラ・ヴァンデンバーグから気と魔力を使った戦闘法を正式に学び、受け継いでいるタカミチが負けるということは絶対にありえない。
 魔力と気という力は、それを知らないものに対しては絶対ともいえる効果を与えるのだから。

 であれば、一度戦わせて見るのが力量を見るのに一番手っ取り早い方法であるといえるだろう。最初に上下関係というものをガツンと喰らわせることこそ交渉の基本である。



「俺様とやろうってのか!!」
「え、えっと、そ、その喧嘩はよくありませんよ」
「あんだけ大口叩いておいて、結局口だけか。俺様のほうが正しい。そして俺様は強い。よって正義は勝つのだ、がはははは」



 ランスとは異なり、十分に冷静だったネギにとって、喧嘩をするなぞ到底考えられない選択肢だ。
 しかし、普段は基本的にこのような喧嘩のようなことは避ける性格であると思うのだが、散々挑発されているのだから、若さとあいまってこのまま挑発され続ければ万が一ではあるものの相手の力量などを考えずに突っ走っていってしまうことも考えられる、危険な流れだった。
割とネギ君頭に血が上ると好戦的であるし。

 まあ、学園長側の思惑からすると、悪くない流れなのでタカミチはその流れに乗って発言した。


「どうした、腰抜けが。所詮ガキはガキということだな」
「で、でも、議論ではなく、力で決着をつけるの「まあ二人とも、おちついて。えっと、ランスさん、でよろしかったですよね」………タカミチ」


 どちらか(というか主にランス)が暴発する前に、流れをこちら側に持ってくるためタカミチがネギの台詞に割り込んだ。
 ランスの性格をある程度見抜いたタカミチは建前上ランスをなだめるよう語りかける。


「ランスさん、ネギ君はまだ見ての通りの子供です。勘弁してやってくれませんかね?」
「いやだ。散々俺様の言うことを否定してきたんだ。男だったら自分の言ったことには、責任を持て」
「そ~だそ~だれす」
「………ランス様~それだったらもう喧嘩はしないってこの間言ってたじゃ無いですか~」
『そうじゃのう。お前さんほどそういった責任とか言う言葉の説得力の無いヤツもおらんぞい』


ぽかん、ぼかん
即座に鉄拳制裁が飛ぶ。


「ひんひん」
『あいたたた、おい、この坊主の言うように年寄りを尊敬せんか』
「フロストバイン様はお年寄りだったけど、いい人れすよ」
「うるさい、超スーパーデラックスハイパー英雄の俺様と、こんな貧相なガキを一緒にするな。それでどうするんだ、やるのか、やらないのか! 」


 今までの自分の行いの方はすべて棚に上げて、ランスはなおもネギを挑発する。
 それにネギが反論しきる前に、タカミチは手遅れにならないよう、再びネギの台詞に自分の声をかぶせる。


「何度も言いますが「なら、代わりに僕がやるということでどうですか?」……タカミチ!」


 自分のせいで友人がランスと戦うこととなるなど、ネギからしてみれば冗談ではない。
 あわてて止めようとしたところ、タカミチから意味ありげな目配せを受けて、会話に割り込まれてより冷静さが増した頭がこの場ではとりあえず黙ることを要求した。


「お前が? ……まあ、いいだろう。そこのガキよりも歯ごたえがありそうだ。どこでやる?」
「……そうですね。校庭を使わせてもらいましょう、いいですか? 学園長」
「うむ、仕方あるまい。人払いの結界はわしが張っておこう」
「ありがとうございます」
「おい、何で人払いなんてするんだ? 観客は多い方がいいだろうが」
「すみません、この世界ではあまり魔法のことは一般の人には知らせていないので。でも、そうですね……魔法のことを知っている先生方は観たいかもしれませんねえ」
「ふむ、ならば魔法先生たちは観客として呼んでおいた方がいいかのう。十数人はいるから、それで勘弁してくれんかのう」
「ちっ、仕方ない。それで我慢しといてやるか」
「ご主人様、がんばれ~~」


 が、こうもとんとん拍子に進んでいくのを見ると、基本的に暴力を好まない優しい性格であるネギは不安な様子を隠せない。
 一方近右衛門とタカミチはもともとの予定通り、ランスの力がどのようなものか見るために、意図的に自分たちの望む方に会話を誘導していく。
 シィルはタカミチと戦うと聞いて、多少不安そうな顔を見せたものの、止めても無駄だと思っているのか、何も言わなかった。

 こうして両サイドの思惑が、ある程度のばらつきはあるものの一致したため、ランスとタカミチの戦闘が始まることになったのだが………………





   結局、近右衛門達は甘く見たのだ。





 ランスという人間がどのような人物であるのか、異世界から来たという事がどのようなことを意味するのか、ということを。

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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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