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ドラゴンに首ったけ35

その35









「私はメイドー、あなたのメイドー」


名曲を歌いながら一人のメイドが牢屋のほうへとやって来た。彼女は鍋ごと持ってきたシチューをそれぞれの部屋に入れながら、きちんと戸締りを確認して次の部屋へと移っていく。まだ捕虜の人数が少ないからすべての動作を一人でやっているのだが、見た目は十代の平凡なメイドのようなものでありながら、そこにはずいぶんな「慣れ」が見られた。


「……何だって 何だって 何だって出来るわ~」


そんな仕事を行いながらも丸々一曲歌い終え、次の曲に移ろうとしている今日の捕虜への給仕担当の彼女の名は、毒のぴりぴりした感じが割りと好きなメイド71号。ユメに自分が作った料理を『拷問用?』とかいわれたあのメイドである。
メイド全員に共通することであるが、普段どおりニコニコと楽しそうに今日の仕事をやっていた彼女であったが、とある区画に入っていきなり目に入ったものを見て、思わず凍りつき、その直後に悲鳴とともに上司達を大声で呼んだ。
基本的にのんきな彼女が叫び声をあげるほど、その目の前にある出来事は非常識なものだったからだ。


「ご、ご主人様―!! 連隊長―!!」


流石にブラッドやクーが捕虜部屋前の廊下であるこの辺りにいるわけもなく二人がすぐに現れることはなかったが、悲鳴を聞きつけて現れた同僚のメイドが何人か来て、71号がびっくりしていることは何なのだ、と見物しようとして現れ……そろって絶句した。
結構な年数をここで勤めている彼女達にしても、一度たりとも見たことない光景がそこに広がっていたからだ。


「と、とりあえず、連隊長呼んでくるねー!!」


一番早く我を取り戻したその中の一人が、あわてて上司二人に注進に行くためきびすを返したことで71号以下その場にいたメイド達も我を取り戻し、急いで牢の鍵を開けて中のものを取り出そうとして四苦八苦していた。
彼女達の視線の先にあった光景。それは、真っ青な体色をした竜が牢屋いっぱいのサイズで部屋の中に詰まって目を回していることが廊下からすら見て取れたことだった。





「は?」
「ですから捕虜が青い竜に!」


思わずクーが聞き返したのも無理はない。ようやくそれなりに運営が出来てきた竜の巣で、昨日捕らえたばかりの侵入者の二人組みの内、一人が竜になった挙句に牢屋いっぱいに詰まって気絶していると聞いたためだ。
そりゃそうだろう。いかにわりと余裕を持って設計したとはいえ、侵入者用の、しかも定員一人の牢を竜を入れるサイズに作っていない、などと思わず反射的に考えてしまうクーであったが、すぐにそんなたやすい話ではないと気を取り直した。瞬時に判断を下し、目の前にいた報告をしてきたメイドに指示を与えたあと自らも走り出した。


「とりあえずあなたはご主人様に報告を!」
「はい!」


こちらの世界で言うところの固定化っぽい魔法がかなり強力にこの巣全体にかかっているとはいえ、いくらなんでも人間サイズであるクーの何百倍もの大きさを持つ竜を狭い一部屋に押し込められるほどではない。いや、今は魔法がかろうじて持っているのかもしれないが、その巨大化を押しとどめている魔法が切れたとたんこの巣が崩壊する、と思ったクーはあわてて牢屋に向かって走った。
彼女の脳裏には、牢に入れられたということで怒り狂ってこの巣を破壊しようとするリュミスのような女性の竜の姿が浮かんでいた。




普段は巣内では使わない飛翔魔法を使ってまであわてて牢屋に到着したクーの目の前にあったものは……クーより大きいとはいえ、ブラッドとは比べ物にならない程度のサイズでしかない全長六メイルほどの竜を何とか牢屋の中から取り出そうと奮戦する多数のメイドたちの姿であった。とりあえず、あの竜っぽい生き物は呼吸はしているようなので、死んではいないようであるが……


「何だ、これ?」
「何でしょうね……」


遅れて到着したブラッドもその光景を見て絶句する。二人の頭にあるのは、「何これ?」という現状をとりあえず否定したいものだったので、ブラッドの第一声もそれほど思考を経たものではない、脳裏に浮かんだそのままのものだった。
そして、それに答えるクーの声にもいまだ頭が現状を完全に受け入れていないのか力がなかった。


「ちっさいなあ……」
「ええ、小さいですねえ……」


何で竜の巣に、同胞であるはずの竜が出られなくなるほど牢屋に詰まっているのだろうか、ということも突っ込みどころであるが、それ以上に外見のインパクトのほうが彼らには強かった。
明らかにこの竜はブラッドたち竜族と比べて、小さいのだ。


「やっぱり、ご主人様の同属……じゃ、ないですよね」
「火炎竜だろうが暗黒竜だろうが、こんなサイズの竜なんぞ聞いたことがないぞ。子供でももうちょっとあるはずだ」
「ですよね……ご主人様同様混血なのでしょうか?」
「混血極まりない俺がこんな感じなんだから、普通どういう血統同士で混血してもこんなサイズになるはずはないと思うんだが……」


竜族は大雑把に言って十数種いる。が、混血であるブラッド自身も、ブラッドが直接見たことがある八種の竜も種族差や個体差はあるもののそれでもせいぜいブラッドの3割前後の差でしかない。当然誰一人こんな小さくはなかった。

そして、文献のみで知っている他種の竜にしても、こんなに他種に比べて小さいという特徴的な情報があるのであれば、基本的に暇なので割と読書家なブラッドが知らないはずもなかった。熟練した竜であればある程度のサイズは魔法で可変することも出来るだろうが、気絶した状態でそれを維持できる存在なら、そもそもこんなところで気絶して詰まっていないだろう。
魔界に残っていたかつての大戦時の竜の資料でもそのようなものはない、ということを竜の巣に勤める、ということでそれなりに竜族に対する情報を集めていたクーもそれは知っているので確認程度に呟いただけであるが、結局この竜の正体がわからないことには変わりがない。


「じゃあ、飛竜でしょうか?」
「こんな飛竜は見たことないし、そもそもここにぶち込んだときは人の姿をしていたんだろ? あいつらそんなことできんぞ」
「この辺に住んでいる風竜とか、炎竜とかいうのも出来ないらしいですしね」


次に二人が思いついたのが、飛竜、すなわち竜族の騎乗用種族として開発された生き物ではないか、ということであったが、これはほとんどこのあたりでの一般的な竜、風竜などをイメージすれば足りる。
すなわち、外見というか、そのフォルムは竜に似ているが、ブラッドたちからすればあくまで竜っぽい生き物であって断じて竜ではない。

単なる動物である爬虫類並みの知能しか持たない、とても知的生命体とまではいえないものであり、神族、魔族と並んで称される竜族とは、比べるのもおこがましいほど存在としての格が違う。
ただ、確かに飛竜も風竜も両者ともサイズはこのあたりだろう。だが、どちらも今まで知っている知識の範囲内で言えば、人に化けて牢に入れられる、などということは不可能なはずだ。


では、竜と人との間に設けられた人(竜族と人間の性交などで他種族との間に生まれた子やその子孫は、一応「人に化けている竜」ではなく「竜に一時的に変身できる人」として竜族の間で公式には扱われる)かとも思ったが、それにしては前述のようにサイズが小さすぎる。彼らが変身した姿はその変身能力の由来もあって飛竜より竜族に似る。
すなわち、デカい。

突然変異とかによる新種だろうか、とまで考え始めた二人だったが、そのうちの片方、万能型執事であるクーがふと何かに気づいたかのようにぽんっ、と手を打った。
何か妙案があるのか、という視線で見るブラッドに一度微笑んだクーは、アポート魔法でとあるファイルを取り出した。そう、わからないなら推測を重ねるのではなく、調べればよいのである。
その侵入者達が捕まった状況を書いてあるファイルをぱらぱらとめくっていたクーは、とあるページを開いて内容を読み上げた。


「え~っと、あった、ありました。なんかもう一人、ほぼ同時に捕らえた結構強力な魔法使いとパーティを組んでいたようですから、まずはそっちにいってみましょうか。少しぐらい事情を知っているでしょう」
「そうだな、なんだかんだという前にまずは聞いてみるか」


斯くして、牢屋に詰まっている竜―――シルフィードをなんとかするため、その主人であるタバサの捕らえられている牢屋に、いまだ韻竜という存在を知らなかったブラッドたちは向かった。あそこまでみっちりと詰まっているようでは、きっと気づいたとしても自力でも他力でも脱出は不可能だろう、と思ったからだ。








自らの従姉妹であり、にっくき仇の娘であるイザベラからこの巣の調査を命じられた北花壇警護騎士七号のタバサことシャルロットは、牢屋に閉じ込められ、杖も奪われてほとんど単なる無力な少女に成り下がっていながらも、脱出の機会を必死で探していた。


『お前にあの竜の巣の調査を命じるわ』


初めてイザベラにこのことを命じられたときは、感情を消そうと自己暗示を必死でかけながらも、愕然とすることは避けられなかった。
基本的に普段はトリステイン魔法学園で生活しているタバサは、いくら人付き合いが悪いとは言えあの竜の噂を聞かない日はなかった。話半分に考えたとしても、どう考えても人間一人で何とかなる存在ではないあの竜を、よりにもよって自分ひとりで何とかしろ、というのか、と思わずイザベラをにらみつける。が、その外見と地位にまったくもって合わない中身を持つ少女は、その視線がいかにも心地よい、といった表情でうれしそうに笑うばかりで、撤回の意思など欠片ほども見せなかった。

ぎしり、と思わず聞こえない程度の歯軋りを口内の奥でかみ殺すタバサの表情を、うれしそうに見るイザベラ。それを見ていっそう王家に対する憎しみが増すのを感じるタバサ。


が、イザベラの意地の悪さは底を知らなかった。
タバサが絶対に断れないとわかっていた上で、さらなる情報を彼女に与えたのだ。
善意からではなく、百パーセントの悪意に満ちたその救いの言葉を。


『そうそう、最近の噂によると、あの竜が奪った金を食べて生きている、って言う話は間違いだったらしいね』
『……?』


あの巨体には到底見合わない程度の量の食料品など僅かな例外を除いて、対価を使って物を手に入れている様子のない竜―――何せ、神族魔族がいないこの世界で欲しいものがあるなら略奪すればいいだけなのだから―――にまつわる噂を突如脈略もなく否定するイザベラ。
いきなり何を言い出すのか、といぶかしげな表情を見せるタバサに、イザベラはうれしそうに言葉を続ける。


『つまり、あの巣にはいろんな財宝が眠っているってことだねえ。金銀財宝に武器防具』
『…………』


歌うように言葉を並べていくイザベラ。それはまるで習い覚えたばかりの手品の種を得意げに両親に話す子供のようなうれしそうな様子であった。
そこまでは普通に無視していたタバサであったが、次のイザベラの言葉は聞き流すことなど出来なかった。そこまで計算してイザベラはそれを口に出したのだから。


『そして……聞いた事がないほどの高レベルの魔法薬などもね』
『!!』
『母親を助けたいなら、せいぜい頑張ることね』


そういってあーはっはっは、と高笑いをして退室を命じるイザベラに対して、タバサは罵声を投げかけることが出来なかった。出来ないほど驚愕していた。
母を助けられる可能性がある。独自で竜の巣周辺の情報を収集してイザベラの言動の裏づけを取ったタバサは最終的にそう結論付けた。
確かに最近竜の巣にはとんでもない財宝が眠っているらしい、ということが一時期客がワルドしかいなくなってショボーンとなっていたが最近再び活気付いてきて大喜びなタルブ村では結構な勢いで語られていた、との報告はタバサも知っている。


その結果として、今までみたいな不確定な方法さえわからないままひたすら悩み続けるよりも、少なくともありえるかもしれない、という可能性をタバサは見つけてしまった。そこにいって探すのであれば現ガリア王家は邪魔しない、という言質とともに。
どれほどの危険の先にそれがあるのかわからないが、少なくとも可能性がある、ということを知ってしまった以上、先の命令を断ることはお姫様である「シャルロット」ならばさておき、少なくとも「タバサ」には出来なかった。


それからのタバサの行動は迅速だった。
なんだかんだと食い下がってくるここガリアまで着いてきた「親友」が何をいわれたのか説明を求めてくるのに対して適当なことを言って誤魔化して―――いくらなんでもこんなことに巻き込むわけにはいかない―――学園に戻り、ある程度の準備を整えて、己の使い魔に安全なここで留守番するように説得しようとして……壁にぶつかった。


『いや~~ついていくのね~~~』
じたばたじたばた


結論から言おう。
説得に失敗した。それはもう盛大に。

自分のせいでさんざんな目にあわせてしまったのに、これ以上自分の事情に巻き込むことなど出来はしない、と突っぱねるタバサに対してシルフィードがとった手段は駄々を捏ねることだった。なだめすかし、おだて、叱り、脅したにもかかわらず、ひたすらについていくと主張するシルフィードの三日三晩にも及ぶ駄々捏ねについにタバサは屈したのだ。
絶対についていく、なにが何でも、置いていかれたら一人で追いかける、と主張する己の使い魔に対して、せめて一人で行かれるよりも危険性は低いかと最終的には同行を許すことしかタバサには出来なかった。
その頃にはシルフィードが人語をしゃべっても大丈夫な場所として、二人の話し合いの場となっていたシルフィが自分で作った自分用の小屋は駄々捏ねの余波を受けて半壊していた。
結局、やさしいタバサは自分の身を案じている己の使い魔の気遣いを断りきれなかったのだ。
だが。





「やはり、あの子は連れてくるべきではなかった……」


ここに一週間近く囚われているのに、いまだ脱出の機会が巡ってこないことに歯噛みして現状を再び確認したタバサは、そう自嘲気味に呟いた。
結局シルフィのサイズでは変身魔法を使って人型にならないと入り口から入ってこれないため、他の魔法が使えなくなってほとんど戦力として役に立たなかったとか、最終的につかまったのも捕獲用のトラップの発動にシルフィが引っかかったのに巻き込まれたとかいう理由以上に、タバサはシルフィ共々捕まった自分の責任を痛感していた。

以前にも考えたように、シルフィには自分の事情は本当であればまったく持って関係がないのだ。彼女は善意でタバサに協力してくれているだけであって、自分はまったく持ってその対価を支払っていないにもかかわらず、無償の愛を注いでくれる彼女を、よりにもよって囚われの身にするようなことをするなんて、と深く後悔するほどに。
とにかく、ここを何とか脱出して、シルフィを助け出さなくては、と決意する彼女の耳に、ここ周辺の牢屋につながっている廊下の扉が開く音が飛び込んできた。時間からして食事の配給であろう。

チャンスだ、とタバサは思った。
ここに給仕に来るのはいつも同じ気の抜けた顔をしたメイド服のエルフだ(実際には微妙に入れ替わっているのだが、髪がたまたま同じ色のメイドが続いていたためタバサには見分けが付いていなかった)。
杖をとられた以上魔法は使えないが、諜報部員と暗殺者と賞金稼ぎを混ぜたような職についているタバサは魔法が使えなくなったときの最後の手段として多少の体術も使える。無論、身長が140前後の上にやせっぽっちの彼女が使える格闘術など、成人男子からすれば高が知れているが、たとえエルフだといっても同じぐらいの体格の少女相手であれば不意を付けば何とかなる、とタバサは今脱出することにしよう、と決意を固めた。

即断即決ゆえに稚拙さは否めないが、だからといってこのままじっくり考えることが出来る時間が与えられると思えるほど楽観的にはなれなかった。



だが、その決意を無駄にするように、こつこつこつと響く足音は二種類あった。

そのことに気づき、肩を落とすタバサ。
基本的に体格と威力が正比例する格闘戦において、同年代の少女に比べても比較的発育の悪い彼女の体格ではよほどの幸運が味方をしでもしないと、二人の人間を一瞬で倒すのは不可能だ。普通に一人目に襲い掛かったところでもう一人のエルフに魔法で倒されるだろう。
やむをえない、今回はあきらめて次なるチャンスを待とう、と思ったところでその二人の姿が自分の牢の前を通り過ぎていったのを見て、タバサはまだ処刑されることもあるまい、と安堵の息を吐きながらそれでも隙さえあればなんとかならないか、と二人を観察する。

青年と女性。
女性のほうは足取りからしても多少の戦闘経験がありそうだ。
青年のほうは足運びなどはまるで素人といった感じではあるが、やはり成人男性。それなりの体格を持っているし、やはり無理か、などと考えたところで違和感にぶち当たった。



男? 


この巣に入ってから従業員でまともな男を見たことがなかった。というか、魔物とエルフばっかりしか見ていない気がする。にもかかわらず、服装からしても従業員にすら見えず、耳も尖っていないこの男は一体……
彼女はルイズの召喚のときすでにその場にいなかったので、竜の顔を知らないのだ。


「って、あ、すいません。こっちの牢でした」
「……この娘が凄腕の魔法使いか? こんな少女がたった二人で竜の巣に……」


いったん通り過ぎたが、どうやら自分が目的だったらしい。
再び通路を歩いて戻ってきた二人を見てまさかいよいよ処刑のときか、と身をこわばらせながらも必死で思考を回転させるタバサだったが、その彼女を放っておいてブラッドとクーは普通に会話を始めた。クーが案内を間違って一回通り過ぎてしまったため少しだけ気まずそうに。

クーたちは普段どおりの対応をしているつもりだったが、そこから始まった会話は処刑云々などとはまったく持って関係ない雰囲気をかもし出しており、始めてつかまったタバサにしてみれば不可解極まりないものであった。


「資料ではそうなってますね」
「どう見ても子供じゃないか? ……舐められたものだな」
「まあ、魔法は比較的キャリアより才能が物をいいますからね」
「それにしても限度があるだろ……実はこんななりで大人だったりするのか?」
「制服からして学校に通っているようですから、それはないと思いますが……どうします? 準備させるんなら部下たちを呼びますけど」


暗にというか、あけすけにというか微妙な台詞で夜の生活練習をしますか? と聞いてくるクーに顔をしかめるブラッド。
今囲っている生贄というか、愛人ポジションであるユメ、フェイ、ルクル、テファとメンバーを見ればわかるように、彼は結構おっぱい星人だった。

もっとも、小さいのもそれはそれでいけるという節操なし極まりないブラッドだが、流石に小学生ぐらいに見えるタバサをそういう対象と見はしなかった。無論、あっちから上手に誘われればほいほい付いていくのであろうが。
まったくわからない会話が続いて顔をはてなの色一色で染め上げたタバサだったが、それを必死で押し殺そうとしながら、何とか情報収集に努める。


「いや、流石にこれはちょっと趣味じゃないぞ」
「あれ? なんでもありの節操無しじゃなかったんですか、ご主人様」
「そんなわけあるか。大体、そんなことをしに来たんじゃないだろうが」
「そうですね、本題に入りますか」


クーも流石に冗談だったようで、あっさりと本題に入ることに同意した。とりあえず、そんなことや身代金などは置いておいても、とにかくあの竜(?)を何とかしないことには安心できない。
そのため、クーはブラッドとの会話をいったん打ち切って、タバサに向かって語りかけてきた。


「始めまして。当竜の巣にてブラッド様の下で執事を勤めさせていただいております、クーと申します。そしてこちらが……」
「一応俺も名乗っておくか。竜のブラッドだ」
「!!」


まさかいきなり竜に会えるとは思いもよらなかったタバサから、息を呑む音が聞こえた。
が、その圧倒的に有利な状態である彼女達がうそをつく必要もなかろうと、驚きから精神を瞬時に立て直したタバサを見て、クーもこれは一筋縄では行かない相手かも、と表情を新たにする。

だが、そんな彼女にはまったく持って注意を払わず、タバサはじっとブラッドを見つめていた。さっぱり現状がわからない様子でボーっと立っている男が竜だということはにわかには信じがたいことだったが、他にいない男性職員、学園で集めた竜の外見の情報、この執事と名乗った少女の外見、メイドたちのおしゃべりから漏れ聞こえてきた「ご主人様」の存在。
すべてがそのことを肯定していると思い当たったタバサは、母の治療のための思わぬ手がかりが自分から近づいてきた、とその薄く形のいい唇をゆっくりと舐めて湿らせた。



ピキーン
ブラッド のステータスが更新されました。

雪風のタバサ を 捕獲 しています。
風韻竜 シルフィード を 捕獲 しています。


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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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