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ドラゴンに首ったけ30

その30









「では、そういうことでお願いしますね」
「……承知した」


きらびやかな服装をした男性らの中でも一際目立つ容姿をした、まさに貴公子といった青年がクーの言葉に返事をする。立ち位置からして、彼がこの場の中心であろうと推察できる。
いろいろと含むものがあることが容易に読み取れるような、その胸のうちから搾り出したようなかすれた声を受けたクーだったが、別にそれに対してはなんらコメントすることなく、くるっと振り返って自らの後ろに控えていた部下たちに指示を下していた。


「はい、じゃああなたたち。はじめなさい」
「「「「は~い」」」」


クーの指示に従って、メイドたちが作業を開始する。あるものはその場に積んであった金貨をあらかじめ持参していた袋に詰め込み、あるものはリアカーに宝剣を積み込み、またあるものはとある大公の家より父王が召し上げたためその場にあった歴史ものっぽいオルゴールを壊れないよう緩衝材の中に入れる。
王国に代々伝わってきた宝から、国民の不断の努力の結晶まで、この国のために積み上げられ、この国のために使われるはずだったものが、あっという間に持ち去られる準備が済んでいくそれらの無惨さに、何人もの貴族が唇をかむ。


「ねえねえ、これはここでいいかなあ?」
「もうちょっと右に寄せといて~。多分これも積み込めると思う」
「あなた。そっちじゃなくてこっちに入れなさい!」
「はい、すみません、連隊長」


だが、そんな男たちの態度など端から無視して彼女たちは着々と積み上げられていた財宝を自陣に積み込み、帰る準備を始めていた。

その無思慮で、無配慮で、無防備な背中を見て、何人かの貴族が思わず気色ばむが、それを察した青年―――アルビオン王国皇太子 プリンス・オブ・ウェールズこと、ウェールズ=テューダーによって押さえられる。
何とか交渉を成立させることができたのだ。一時の感情に任せてそれをぶち壊してしまうことは避けねばならない。そう無言のうちに語りかけるウェールズの姿を見て、アルビオン王国王党派の貴族たちはクーに対する攻撃をあきらめた。
何より、その悔しさに拳を震えさせる皇太子の姿を見て、こんな現状を作ったのは、王子にこのような屈辱を味合わせたのは他ならぬ力のない自分たちだ、ということを思い出したのだ。


アルビオン王国ハヴィランド宮殿の一室にて。
たった今、アルビオン国王は、皇太子は、王党派は、アルビオンの富と民を竜に売り渡す契約を結んだのだから。

アルビオン王国は、強国とまではいえないまでも、大国二つに囲まれてそれらの顔色を常に伺っていないと生きていけないトリステイン王国のような弱国ではなかった。
なんといっても、アルビオン王国は地上三千メイルほどの高さに浮かぶ浮遊大陸アルビオンに位置しているため、非常に守りやすい地形をしているのだから。
防衛のための国力のほとんどを、下から上がってくる戦力を叩くためだけに注げるアルビオン王国軍は、ガリアやゲルマニアとは比べ物にならないほどお粗末な国力しか持たないにもかかわらず、空軍力ではむしろそれら二国のものを凌駕していたのだ。
そのため、始祖ブリミルの時代より、一兵たりとも他国の侵略を許していない専守防衛の国である。他国を侵略することは出来ないが、自国の領土を守ることにかけてはその他の国の追随を許さない国。
だが、絶対の防御と六千年の歴史を誇るそのアルビオン王国が今、滅びの危機にさらされていたことで、この一兵たりとも侵入者を許していないハヴィランド宮殿に周辺国で最も早く最悪の略奪者達を呼び込むことになったのは、皮肉なものである。


「それでは、ウェールズ様。確かに受領いたしました。領収書は必要ですか?」
「っ!! ……いや。それよりも、竜は確実に『契約』を果たしてくれるのだろうな?」




アルビオン王党派は今、レコン・キスタと呼ばれることとなるアルビオン貴族派に追い詰められていた。貴族派と同じ侵略者であり、略奪者でもある竜と手を結ばざるを得ないほどに。
ウェールズたちは知らないが、人の心を歪めて操る水の精霊の欠片であるアンドバリの指輪は絶大なる力を持っていた。その結果がこれだ。
いまや国の主要貴族のほとんどがそちらについてしまい、正当なるテューダー王家を担ぐものはほとんどいない。メイジ以上に航空艦隊の力が戦争のほとんどを決定してしまうアルビオンの戦において、その力のほぼすべてを奪われたウェールズたちに勝ち目はなかった。
そのため、いずれは敗北するだろう、ということがわかったまま玉砕覚悟で王城に立て篭もっていた彼らの前に………赤色の髪の少女が降り立ったのだ。


『命と名誉が惜しくば、竜に対する敬意をこの場に示しなさい』


エルフではなく魔族と名乗った少女。そして竜という台詞。
ウェールズは、それらの存在に心当たりがあった。

唯一ハルケギニア大陸とつながる港町ラ・ロシェール壊滅の報は当然ウェールズたちの耳に入っている。そして、完全に貴族派に制空権を取られたがために噂話程度の正確さでしか入ってこない情報でよければ、その存在を倒すために出されたトリステイン討伐軍が返り討ちにあったということも。
たった一体で町ひとつを半壊させ、一国の軍をたやすく吹き飛ばし、浮遊大陸ゆえに不安定であるとはいえこのアルビオン大陸そのものを僅かに揺らした強力無比な生命体。
報告によればわが国の森に隠れ住んでいたエルフを攫い集めすらして、僕にしている存在。
ドラゴンの―――正確にはその下僕のお出ましだ。

以前にはここアルビオンを破壊以外の目的で何度もこの国を訪れていたと聞き、何とかその存在を意のままにすることはできないかと監視を命じていた対象が、今度はこちらにコンタクトを仕掛けてきたことを、ウェールズは正確に把握したのだった。

竜の執着していた対象を確保することに失敗したのみならず、そのために配置していた人員を正体不明の敵対者に残らず返り討ちにされたことでなすすべもなく王宮にこもっていた自分達に、この国を守るために細い細い蜘蛛の糸が天上から降りてきたことも。






このような連中の助けを当てにしなければ、誇り高きアルビオン王国の歴史が維持できないことに対するやりきれない思いをにじませたその声に、しかしクーはそれをわかっていながら一顧だにしない声音で答えを返した。


「ええ。今回のように定期的に貢物が届けられる以上はブラッド様が王城やあなた方の領土を狙うことはありません。」
「我々を狙いはしない……貴族派に対する攻撃に関しては、確約しないというわけか」
「ええ。私たちはあなた方の味方というわけではありませんから」


ただし、とクーは言葉を続ける。
今後次第ではどうなるかわかりませんが、と。


「今後いっそうの便宜を図っていただけるならば、あなた方の敵となっている貴族の領土や軍勢が『偶然』ターゲットとなることが多くなるかもしれませんね。逆に、もしあなた方のブラッド様に対する『敬意』が薄くなれば、ひょっとするとその分をこの広いアルビオン大陸のどこかから補充するかもしれません。」


そこまではまあ契約を結ぶ段階でわかりきっていたことであったが、次に続いた言葉と動作で、ウェールズは愕然とさせられた。
もしくは、と意味ありげに貴族派が集結していると見られている本拠の方角のほうへとちらりと視線を流し、そこで言葉を切ったクーの思わしげな言葉をうけて、ウェールズは唇のふちを強く噛む。貴公子然としたウェールズにはまるで似合わないそんな様子を見ても、クーは眉ひとつ動かすことはなかったが。
その姿は、まさしく魔族と呼ばれるのにふさわしいものだった。

貴族派から貢物をに届ける、といわれれば断る謂れはない。そうなればこの契約とて……
そんなクーの思惑を、ウェールズはクーの台詞から正確に読み取った。
金の切れ目が縁の切れ目であるし、金額次第ではどちらの加勢でも行う。それがいやならば……更なる貢物を。
あまりにも日和見なその態度に思わず罵声が口に出そうになるが、もともと圧倒的に不利な立場に立たされているこちらが、圧倒的な武力を持つ相手に対して協力を乞うているのだ。
自らはいわば朝貢の代償として助けてくれ、と相手の前にひれ伏している国の王子だ、ということをアンリエッタのように蝶よ花よと育てられたのではなく、この国の後継者としての教育を受けていたウェールズは痛いほど思い知っている。そのため、何も言うことはできなかった。


「では、失礼しますね……次は一月後に」
「「「「失礼しま~す」」」」
「…………」


そのため、転移魔法で完全にクーたちの姿が消えた後に、机に向かって八つ当たり気味に拳を振り下ろすことしか、できなかった。
そんなウェールズに向かって、幼きころより彼の守役であった一人の老貴族が気遣わしげに声をかける。
だがウェールズは、圧倒的に軍勢が違うという不利な状況にもかかわらず己に最後までついてきてくれている彼の気遣いに対して礼を返すことも出来なかった。


「殿下……」
「わかっている! この国を守るためには、これしかないことなどわかっている!!」
(それでも……アンリエッタ!!)


自らの国土を荒らし、国民を虐げた挙句に、愛する者の国を蹂躙し続ける傲慢不遜の塊のような生き物。そして、そんなものの助けを借りなければならない、竜以下の存在である皇太子。
竜の前に屈した己を、ウェールズはその机にたたきつけていた拳が壊れるまで民に、先祖に、そして己の最愛の人に向かって詫び続けていた。




このように竜の行為やそれにおもねる自分に対しては嫌悪感を覚えていたウェールズだったが、根っからの王族の身でありながら空賊行為をやることに対してはなんら罪悪感をうけていないところが、いかにもアンリエッタの恋人っぽかった。








「ふう、緊張した」


竜の巣の奥深く、宝物庫近くの転移魔法用の魔法陣の上でウェールズたちから巻き上げた財宝とともに帰ってきたクーは、そういって安堵のため息をひとつ吐いた。

ちなみに、クーたちの使う転移魔法は基本的に士官以上のギュンギュスカー商会社員であれば誰でも使えるものである。というか、これを使えないと士官になれない。
その具体的な効果は、『印のついている場所に一瞬で移動する』というもの。巨大な魔法陣を事前に描いておけば、どこからでもそこに一瞬で飛んでこれるという便利極まりないものである。
人間では使用できないほど膨大な魔力を食うし、移動先が自軍の支配地じゃないと使えないため、転移魔法で強襲、みたいな使い方は出来ないが、それでもこうやって貢物を回収してくる際には実に便利なものである。

その巨大な魔法陣のうえで、さも疲れた~といった表情で自分の肩をとんとんとたたくクーをみて、彼女とともに回収の任についていたメイドの一人が疑問の声を上げる。


「え~、連隊長でも緊張するってことあるんですか~?」
「そりゃあるわよ。人間なんてどうってことないとはいえ、こんなふうに貢物を出せ~って言いに行くときは、基本的に契約取りに外回りに行っているのと同じだもの」
「なるほど~」


自らも魔界で営業に回されていたメイドの何人かから、納得の声が上がる。


「さあ、とりあえずこれらを中に入れてしまいましょうか」
「今回は分別が楽でいいですね~」
「落ち目とはいえ、一応王族からだもんね~。どれも一級品、と」


わいわいがやがやいいながら、宝物庫に次々と物を運んでいくメイドたち。その彼女達の動きに、二人の少女が参加した。


「クーさん」「こんにちは」
「あれ? ユメ様とティファニア様。もしかして手伝いに来てくださったんですか?」
「ええ。何か私もお仕事をしないとブラッドさんに悪いし……」
「まあ、ご主人様は気にしないと思いますけど、助かります」


ユメとテファだった。基本的に二人してマルトーの補助として働いている彼女達だったが、時折こうやってメイドたちの仕事を手伝ったりもするので、二人もクーたちもなれたものだった。


「では、これもあっちにもっていきますね」
「じゃあ私はこれを……って、あ!」


見覚えの在るオルゴールを見てテファが声を上げたり、それを動かしても指輪のないテファには調べが聴けないで残念がったり、といったこともあったのだが、こうして竜の巣は日々平和に運営されていた。









「そうか。あいわかった。しばし、下がれ」
「はっ、失礼いたします」


ガリア王国国王ジョゼフ一世。無能王とも陰謀王と呼ばれるほど魔法ではなく謀略に長けた、ブラッド一味を含めたとしてもこのハルケギニア世界において最高の知能を持つ彼は、情報というものの価値を誰よりもよく知っていた。そのため、各地に放っていた間者のうちの一人からたった今受け取った情報が、どれほど重大なものなのか、ということに即座に気づき、褒美を取らせてそのものを下がらせ一人になった後に、すぐに考え込み始めた。
この自分にもたらされた情報が、自らの張り巡らせた策略にどのような影響を与えるのか、ということを瞬時に幾通りにもシミュレートを終えた彼は、やがてひとつの言葉を呟いた。


「……レコン・キスタからは手を引くべきか」


先ほどジョゼフにもたらされた情報。
それは、自らが使い魔を通じて間接的に支援、支配しているアルビオン王国貴族派と敵対する、アルビオン王国王党派の本拠よりエルフらしき存在が確認された、というものだった。

王党派の一部とレコン・キスタ所属の遍在使いとの争い、マチルダ・オブ・サウスゴーダの行方、竜による襲撃とその前に訪れるエルフによる警告。求められる財宝と女。
たった今ルーンの力を使って己の使い魔とも相談しそれ以前にもたらされたいくつもの情報と、脳裏でつなぎ合わせたジョゼフが描いた図面、アルビオン王党派があの竜と手を結んだ、というものは限りなく正確に現状を示したものである。

その知性によって現状を正しく把握したガリア王は、この推測から派生される「自分の傀儡クロムウェルは望んでいる品を手に入れることはできないだろう」という予測がほぼ外れないことを確信して、ごくごくあっさりと自らの手のひらの上で踊る人形のひとつを切り捨てることを決定した。ジョゼフにしてみれば、アンドバリの指輪によって数万の人間を支配する大司教クロムウェルすらそう重要度のない駒のひとつなのだ。
水の精霊の一部にして、数万の兵士の心を歪め、死者に偽りの命を与え自在に操ることのできるマジックアイテム、アンドバリの指輪。己の使い魔に回収させるつもりとはいえ、最悪の場合強力無比な力を持つそれすらあっさりと切り捨てることができるという事実こそが、ジョゼフの強さと力を現している。


「さて、面白くなってきたものだ」


己の計画が失敗したというにもかかわらず、ジョゼフは不敵に笑う。
もともとジョゼフがアルビオンを狙ったのは、アルビオン王家に伝わっている始祖の秘宝、始祖のオルゴールと風のルビーが目当てのことだった。そしてそれは、レコン・キスタが何事もなく王城を占拠すれば何の問題もなく手に入ったはずのものである。レコン・キスタと王党派の戦力差を考えれば、ほとんど手に入ったも同然だったそれが、手に入る直前でするりと抜け出した。
狙っていたものが手に入らないとなると、フーケなどはきっと悔しがるであろう。それが普通の心臓の持ち主だ。
それでも彼は、笑い続けた。


何せもともと彼が始祖の秘宝を、ついては四つの四を集めて始祖の虚無の復活を求めているのは、単なる暇つぶしなのだ。

世間の平民におけるガリア王ジョゼフの評価といえば、まず無能、というのが出てくるであろう。絶世の美男子といっていいにもかかわらず、メイジとしての才がほとんどなく、政治すら臣下に任せてろくにとることが出来ない。日がな一日中人形と戯れ、くだらない実験に精を出し、戦争ごっこに興じる愚王。
実質的なトリステイン王国の運営者であるマザリーニや、ゲルマニア皇帝アルブレヒト三世にしてもその評価は同じであろう。
そして、ガリア王国、という国の評価も、最大国でありながら無能な王が宮廷の紛争を抑えることができずに混乱しているため、最盛期に比べればはるかに弱くなっている、と。
それが世間一般でのガリアとジョゼフの評価だ。

だが、その真実は大きく異なる。
世界最大最強国ガリアの主として、内部抗争と一枚岩にならぬ貴族にいいようにあつかわれている無能な王という仮面をかぶりながら、その実ガリアの現状すら己の謀略によって手玉に取っていたジョゼフ。
本人は虚無の魔法を自在に操り、ありとあらゆるマジックアイテムを使いこなす使い魔、ミョズニトニルンを使役し、エルフに命令を下す。系統魔法と先住魔法を組み合わせた機械人形ヨルムンガルドの開発を始め、税を減らし、国内の魔物に対して騎士を派遣し、社会制度を整えつつあるガリア王国。

このままいけば後数年後には世界すべてを巻き込む戦争が起こるであろう。
ジョゼフによって率いられた、ガリア優位で。


そのため、計画の若干の遅延を生んだとはいえブラッドとの登場は、世界すべてを巻き込んで己の破滅を望んでいるにもかかわらず自分以外がおろか過ぎるために順調すぎていささか嫌気が差していたジョゼフにとっては、単なる次の遊び相手であった。
そう、いささか簡単すぎるか、と思われてきていたゲームの盤上に思いも寄らぬ対戦相手、竜が上がってきたことはジョゼフにとってはむしろ歓迎すべきことだった。

そのため、ジョセフは次なる一手を考えながら笑う。
その目線の先には、最近本来の用途では手にとられることもなくなった、しかし他のものとは比べ物にならぬほどジョゼフ自身の手で手入れされているチェスのボードがあった。


「……シャルル。次なる相手は、お前の半分でも俺を楽しませてくれればいいな……」


そこにはもういない、脳裏に浮かぶ美しい青年の姿をジョゼフは夢想した。
オルレアン公シャルル。ジョゼフと同じ先王の息子でありながら、ジョゼフとは異なり、天才的な魔法の才を持ち、人格も優れていた弟。
ガリア王になることを誰からも熱望されており、実際にそれだけの能力を持っていながら心底兄を愛し、父王崩御のときにすべてが劣っていた兄に王位が譲られると聞いても、心底からその即位を喜んでいた、善良にして無垢な男。

だからこそ愛しく、だからこそ許せなかったはずの弟が、ジョゼフのそばにいなくなってからもう長い。



彼を失ったときより、ジョゼフの世界のすべては色を失った。
正確には、もはや自分にとっては世界のありとあらゆることが色を失っていたことを確信した。

虚無であるため通常の魔法の才能は皆無であるとはいえ、世界最高の頭脳を持つジョゼフはきっと弟が生きていればそのものがきちんと補佐をすれば、父王の見込みどおりガリアをいっそう発展させただろう。たとえそれは、ブラッドという大きな障害物が立ちはだかったとしても同じだったであろう。
あるいは、ジョゼフが嫉妬からなる憎悪によって彼を殺し、その結果に満足できたとしたならば、それはそれでごくごくありふれた玉座を巡る王族の争い、ですんだであろう。

だが、その歯車は狂ったまま元には戻らない。
今のジョゼフは、気に入らぬ貴族を気分で陥れ、魔物に困る村に気分で騎士団を派遣して救う。トリステインなどの周囲の小国に圧力をかけて膨大な金銭を搾り取り、その金を使って城で働く下男下女の教育を整備し、それにより教養を身につけたメイドの少女を娘の玩具として容易く下げ渡す。
賢王とも、愚王ともいいきれぬ、あいまいで、気まぐれな統治者。

自らの最大の理解者にして、世界でもっとも己の憎悪をかきたてるはずの弟。
世界で最も愛して、最も憎んでいなければならない相手を衝動的に自らの手で葬ってしまったことで―――そして、そのことにすら達成感を抱けないことに自身の性質を悟った、世界すべてを巻き込んだ怠惰と敗退と陰謀に身を浸す世界最強国の主は、こうして次なる対戦相手にブラッドを選んだ。


憎悪から弟を殺すことさえ出来ない無感情なジョゼフにとっては、もはやこの世のすべてが遊びでしかなかったのだ。


そのためまずは第一手として、北花壇騎士団団長である自らの娘イザベラを呼び出すことにした。

虚無のメイジにして、世界最強国ガリアの完全無欠な支配者、ジョゼフ一世。
世界すべてを納める器を持った王が今、竜によって始まった一連の争いに身を投じた。



ピキーン

ブラッド のステータスが更新されました。
重要アイテム 始祖のオルゴール を手に入れました。
アルビオン王国 王党派 に対する 攻撃 が禁止されました。

ガリア王国 が 不穏な動き を見せています。



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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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