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ドラゴンに首ったけ20

その20











「やったわ、成功し………」


確かにサモン・サーヴァントは成功した。きちんと対象が、それもブラッドのような野獣ではなく今度はきちんと契約できそうな存在を召喚できた。

そのシルエットからそう思って一瞬喜んだルイズだったが、それは自らに都合のいいものを見たいがために見た幻か、現れたのは………ルイズとよく似た年恰好の単なる血塗れの少年だった。

黒髪に黒目、片手にぼろぼろの、これまた血塗れの剣を握った状態でゲートをくぐってきてすぐに倒れている。
このあたりでは珍しい髪と肌の色をしているものの、中肉中背と外見的にはさほど特徴は無い人のよさそうな顔をしているだけの単なる少年である。ルイズは知らないものの、パーカーと呼ばれる服を着て、このあたりでは類を見ないほど進歩した技術で作られたズボンをはいている。いくつかのほころびはあったのであろうが、見事な腕でつくろわれているためそれほど目立った様子は無かった。ただ、どこまでいってもその貴族や竜らしき様子を見せないその外見は、ルイズには単なる平民にしか見えないが。


彼の名は、平賀才人という。
本来であれば一番初めの学園での進級試験でルイズに召喚される筈だった異世界日本の少年だ。出会い系サイトへの登録がサモン・サーヴァントへの同意になったというある意味不幸な、だが結果として何人もの類稀な美少女とお近づきになれる幸運なような微妙な運勢を持つ少年である。 

その左手には、鈍く光るルーンがあったが、ルイズはそのことには気づかなかった。
いきなり死に掛けの存在が現れたことであっけにとられ、その血塗れの顔を血の気の引いたままの表情で眺めていたルイズだったが、突如笑い始める。


「ふふ……ふふふふふ。そうよね……ゼロのルイズの使い魔は……韻竜とかじゃなくて、こんな死に掛けの平民がお似合いよね……ふふふ」


何も知らないものには、ブラッドのように見るからに貴族という格好をしていないサイトは確かに平民にしか見えまい。現代から来たというその知識も、あまりに進んだ合理的な思考法も、彼にルーンによって与えられている尋常ではない力も、今の瀕死の状況でルイズにわかる筈もない。わかることは、役に立ちそうも無い単なる平民を自分が召喚してしまったという事実だけ。
その剣と体を彩る血液のほとんどが、敵のメイジのものだとわかっていればまた話は別だったのだろうが、暗褐色の液体が半ば乾いて固まったそれは見た目だけはメイジであろうと平民であろうと変わりはない。


「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン……この者に…祝福を与え、我の使い魔となせ……」


そう、自虐的に笑い続けるルイズは、その壊れたような表情のまま、呪文を唱えて倒れている男に口付けをする。

少年の左手に刻まれていたルーンが一瞬歪んだかと思うと、すぐに元の形に戻って光を一瞬放つ。それによって、コントラクト・サーヴァントが成功したことにルイズは気が付いた。
以前からあったルーンが今の魔法で新たに刻まれたものであると勘違いし、それを見て小さく呟く。


「平民相手なら……そりゃ、メイジなら誰だって成功するわよね」


初めて手に入れた使い魔相手に喜びのかけらも見せず、ルイズはそう自嘲する。
確かに使い魔を召喚できた。だが、これは多少奇抜な格好をしているもののどう見ても単なる死にかけている平民だ。立派なサラマンダーでも神速を誇るジャイアントモールでもない。韻竜ではないにせよ普通の竜でも、あるいはエルフでもない。
加えて死に掛け。こんな状態では本当に契約に同意してゲートをくぐったのかも定かではない。

命をかける覚悟で行った召喚で出てきた使い魔は、期待していたような竜を打破するための切り札などではなかった。単なる平民、これでようやくトリステイン魔法学園の二年次に進級する資格を得ただけの、単なるスタートラインに立っただけだった。
いや、召喚したのは何の能力も持たない平民である。通常の使い魔を召喚した皆より何歩も遅れているといってもいいだろう。大体、自分の属性を決めるための使い魔の儀式の筈なのに、平民なんて何の属性に当たるというのか。
こんなことであの悪の竜を倒せるのか、という思いがどうしても自嘲の笑いとして出てしまうのをルイズはとめられなかった。だが、すぐに思い直して表情を引き締めて、決意の言葉を胸に抱く。


「それでも……やらなきゃならないのよね」


自分の使い魔となった少年を見て、そのことであの腑抜けた面をした竜とその横に付き従うエルフを思い出し、ルイズは改めて決意を固める。

最初はサモン・サーヴァントに成功した。
次は、前回失敗したコントラクト・サーヴァントにも成功した。
歩みは遅いものの、一歩一歩、確実に進歩しているとも言えるだろう。
ならば、自分のため、両親のため、姉たちのため、尊き親友のため、王国のためにこのルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは最後まであきらめてはならない義務がある。
魔法の才能が無いのであれば、サモンだって、コントラクトだって失敗した筈だ。この一点を見るだけでも自分は平民とは違い、紛れも無いメイジだといえるだろう。
魔法を使えぬわけではない、ただその種が発芽するのが人よりほんのちょっとだけ遅いだけだ、とルイズは己に言い聞かせる。


「まずは、この使い魔を癒さなければならないのよね」


こうして、虚勢も、余計な誇りも、無駄な幻想も打ち捨てて、何とかしてあの竜を自らの手で倒してやろうと改めて誓ったルイズは、この使い魔を癒すため、体の弱いカトレアのために常にヴァリエール家に在中している水のメイジを呼びに部屋を出た。
もはや、泣き喚くだけの子供の時代は終わったのだから。




『おっでれえた……いったいこりゃあどういうことでえ?』
「う……ルイズ……守れなくなって……ごめんな」


少年の握った剣がいきなり現状に対する疑問を投げかけ、それを聞いてか聞かないでか、意識を失っている少年がうわごとのように呟いた自分の名を聞くことなく、ルイズはそのハズレのはずの少年を癒すための行動を始めた。











「ねえ、マイト」
「何、姉さん?」
「最近、ブラッドが街を襲っているって言う話を聞かないんだけど?」


ブラッドの許婚である雌竜リュミスベルンはそう唐突に、弟である雄竜リュベルマイトに向かってブラッドのことを訪ねた。
久しぶりに自分の巣に最愛の姉が来てくれたことに浮かれていたマイトは、そういえば最近親友の竜の姿を見たとの報告を受けていないな、と考え込む。ちなみに、リュベルマイトを略してマイトであり、断じて何かを計る単位ではないことをここで断っておく。


「そういえばそうだね……侵入者退治だけで十分稼げるぐらいになったのかな?」
「…………」


ある程度まで巣の中の防衛設備が整えば、街を襲って貢物を強制するよりも侵入者の身包みをはいだ方が儲けになるということは、自身も巣作り中であるマイトには十分理解できることだったのでそう答えるが、リュミスの表情は明るくない。
だが、それに気づかなかったマイトは、そのまま言葉を続ける。


「街のことはさておき、俺の巣の周りでも最近あいつの噂をよく聞くよ。数年でここまで人間に恐れられることになる竜なんて、初めてなんじゃないかな」
「…………」
「姉さんに発破をかけられて、張り切ってやった結果なんじゃないかなって…………姉さん?」
「ねえ、マイト」


ますます姉の表情が暗くなっていることに気づかず、手ずから紅茶を淹れていたマイトであるが、なんだかいつもの五割増しぐらいの不機嫌さで呼びかけた姉の声に慌てて返事をする。
長い付き合いなので、この状態のリュミスが危険だ、ということは重々承知している。
ちょっとでも触れれば弾けてえらいことになる。


「な、なんだい、姉さん」
「最近あなた、ブラッドの様子を見に行ったりはしているのかしら」
「いや? 最近はうまく言っているみたいだし、邪魔しちゃ悪いかと思っ……い、いってきま~す」


そもそも、友人とはいえ巣作りを始めた竜の巣に他の竜が訪れること事態が奇妙なことであるため、そういえば最近行っていないな、と思いながらもマイトはあっさりと返す。
が、なにやら危険な色を帯び始めたリュミスの瞳を受けたマイトは、慌てて部屋を飛び出した。弟だから、という理由で対応が甘くなるような姉ではない。むしろ厳しくなるのだ。
それを横目で見ながら、紅茶を一口飲んでリュミスは小さく呟いた。


「……ブラッドが十分稼いでいることぐらい私にだってわかってるわよ。だったらどうして……」


自分を迎えに来てくれないのか。
ブラッドはもはや普通の竜としての財産は十分すぎるほど稼いでいる筈だ。それにもかかわらず、マイトのように許婚を迎えにいかないで延々と巣作りを続ける理由など一つしかないのではないか。ある意味自分でも答えがわかっているだけに、ため息が止まらない。
最強竜リュミスベルンは、最悪の未来を想像して、まるで単なる小娘のように怯えていた。
彼女は、どのようなものよりただブラッドの愛を求めているだけなのに。





「まったく……姉さんがもうちょっと素直になればブラッドだってあれほど怯えないだろうに」


竜体型で大空を飛びつつもぶつぶつ言いながら、それでも愛する姉と親愛なる友人のために懸命に駆け回るマイトは、よくお友達止まりで終わってしまう、いわゆる「いい人」の典型例だった。
大気を裂いてあっさりとブラッドの巣の場所まで飛んできたマイトは、人間の侵入者たちが立ち入れないようにしてある魔法結界の中にある通用口に向かい、商会のものにブラッドへの取次ぎを頼む。
なぜか少しだけ困った表情を見せて確認を取ってくるといっていたメイドであったが、すぐに笑顔で戻ってきて、マイトを案内する。


ずいぶんな金額で飾り立てられている通路を見て、ずいぶん儲けているようだな、と思ってメイドについていったマイトは、やがて一つの部屋の前に案内された。
メイドたちによってゆっくりと開かれた扉の奥に座っていたのは、久しぶりに顔を見る親友に対して歓迎の意をあらわにするこの巣の主だった。


「マイト、久しぶりだな」
「ああ、久しぶり。どうだい、調子は?」
「悪くは無いぞ」
「そうか、最近街を襲っていないと聞いて病気にでもなったのかと心配したんだぞ」


リュミスに言われたため訪れたマイトであるが、それとは別に親友の動向を心配してもいた。そのための言葉だったが、それを聞いたブラッドは気まずそうにマイトを見て、重大な秘密を打ち明けるような口調で歯切れ悪く答え始めた。


「ああ、すまなかった。ちょっとな……」
「うん? 何かの理由でもあるのか?」
「ああ。そのな……別荘を作ったんだ」
「……は?」


基本的に引きこもりの多い種族であるため、別荘というものなど竜族にはあまりなじみが無い。よって、そんなことをいきなり言われてもマイトは間抜けな声を漏らすしかなかった。

だが、こことは全然違う場所に新たに巣を作った。最近はそちらをメインに活動しているため、今日たまたまここを訪れていたときにあえたのは運がよかった、などと聞かされるうちに、その表情がだんだんと消えていく。
ブラッドが大雑把な説明を終え、ああ、疲れた、といわんばかりにカップに入った紅茶を飲み干したところで、ようやくマイトは口を開いた。


「……ブラッド」
「何だ?」
「殴るぞ」
「ぶぅお!! おい、手を出すのと同時に言われても覚悟なんて出来ないぞ! というか、いきなりなんだ!」


どこかで見たような展開で、殴るぞ、の「な」の音と同時に放たれたこぶしを、マイトに比べてみれば身体能力が劣るブラッドが避けられる筈も無く、派手な音を立ててブラッドの右頬に吸い込まれていった。当然、かなりの勢いで突き刺さった拳の反作用により物理法則に従ってブラッドは吹き飛ばされた。それをマイトは荒い息と据わってしまった目で見つめる
何でいきなりこんなことになっているのかまったくわからないが、とりあえず意味無いだろその宣言は、と抗議の声を上げたブラッドに対して、マイトはブラッド以上の剣幕で怒鳴りたてる。


「やかましい! いったいどういうつもりだ、姉さんを侮辱する気か!!」
「ち、違う、落ち着け」
「だっだら早く説明しろっ!」
「わかった、ちょ、ちょっと待て……お前は俺とリュミスがつりあっていると思うか?」
「………思わないな」


そういえば、こんな奴なんだよな、としばらくぶりにマイトの性格を再確認したブラッドは、ため息を一つだけ吐いて、マイトに対して質問し返す。何でいきなりこんなことに話が飛ぶのかと思ったマイトだったが、まあブラッドがいきなり意味の無い話をして誤魔化すような奴じゃないと思い直し、少しの間考えただけで質問に答えた。
即答されたことで苦笑するが、まあ誰にでもわかりきっていることなのでさして困らずブラッドは言葉を戻す。


「そこまではっきり言われると少々傷つくが、まあそうだろう」
「だが、それはお前に限ったことじゃないだろう。あの姉さんとつりあう男なんているわけ無いんだ。だったら誰でも一緒だとも言えるだろ」


凶暴、凶悪、性格最悪、生来の不器用、高慢で嫉妬深く、執念深い。
それらすべての欠点を問題にしないほどリュミスベルンは竜として完璧なのだ。たった一人で大陸を消し飛ばす力を持ち、一つの竜族を丸々敵に回すような状態でも恐れず、天界や魔界にすら真正面からけんかを売る力を持つ。
他の竜など歯牙にもかけないその姿は美しく、その力は圧倒的だ。

生物的に雌の竜に圧倒的に劣る力しか持たない雄の竜では、たとえそれが竜族史上最高の男といわれるほど知力体力その他もろもろに優れているリュベルマイトであってもつりあう筈が無い。
そのため、マイトはブラッドに対する慰めなどではなく、純然たる事実としてそう言い放つ。
だが、ブラッドは軽く自嘲の笑いをこめて自らのコンプレックスを述べることで答えた。


「まあそうだ。だが、知っての通り俺ははっきり言ってその中でも格別に落ちこぼれだ」
「ブラッド……」
「その俺が……たとえリュミスが俺を形だけの夫にするつもりであっても、あの尊敬する竜と結婚できるんだ。リュミスに刻み付けられた恐怖と同じぐらい、光栄にも思っている」
「…………」


ブラッドは、リュミスを相当恐れている。何度も些細なことで言いがかりをつけられ、殺されかけたからそれも当然だろう。
だが、それと同時にブラッドはリュミスベルンという竜を心底尊敬している。雑種ゆえに平均を大きく下回る力しか持たず、その力すらまともに制御できない落ちこぼれの竜として、純血の竜であり、竜族最強とまで言われるリュミスベルンを、自らの持たざる力の象徴としてあこがれてさえいるのだ。

ブラッドが自分の竜族らしからぬ力のことに引け目を持っていることを知っているマイトは、その独白に何もいえなくなる。


「いまさら俺の血は変えられない。ならばせめて、俺は少しでもリュミスの夫として恥ずかしくない竜になろうと思う。そのためには、並みの巣作りをやっているだけでは駄目なんだ。もっと、もっと財宝を。もっと生贄を、もっと恐怖を。史上最高の女に結婚を申し込めるような、史上最高の竜の巣を築かなければ」
「ブラッド……お前…」


親友がここまで姉のことを思っていたのか、ということは、ブラッドがリュミスを恐れていることは知っていたため真の意味で姉が幸せになることは無いだろうと思っていたマイトにとってうれしい誤算だった。
どう転んでもうまくいくまい、と思っていたが、あの姉さんに対して少しでも自信を持って振舞えるようになれば、どちらも恋愛感情かどうかは怪しいものの想いあっている以上、ひょっとするといい方向に転がるかもしれないという希望が見えてきた。


「だから、悪いがリュミスにはできるだけ秘密にしておいてくれ」
「おいおい、俺に姉さんに逆らえっていっているのか?」


だからこそ、続いたブラッドの言葉にも軽口で返すことが出来た。それによって、マイトもこっちがわざわざ別荘を作った理由に納得がいったことにブラッドも気づいたのだろう。こちらも笑って前言を撤回した。


「はは、確かにそれは無理だな。じゃあせめて、最近外出がちなのは張り切っているからってことで、万が一ばれたときに言い訳する間もなく速攻殺すのだけは止めるようにさりげなくなだめておいてくれ。後、もうちょっと待ってくれないか、と」
「姉さんが俺のいうことなんて聞くはずないと思うけど、まあ請け負っておく」
「ま、あとはそうだな、週末は大概こっちに来ているから、リュミスが来るんだったらそのあたりにするようにも頼むぞ」
「ああ、わかった。可能ならば調整しておこう」


こうして密談を交わしたあとは普通に世間話をして二人は別れた。
だが、ブラッドのみならず、マイトにとっても、リュミスにとっても実に意義の大きい会談だったとマイトは上機嫌に帰っていった。







「姉さ~ん、ブラッドが姉さんのこと尊敬してるってさ」
「っ!! な、何ですって。詳しく、詳しく説明しなさい!!」
「く、苦しいよ姉さん。息がつづかな……ぐえ」


基本的にブラッド同様お坊ちゃん育ちなので、それほどうまく誤魔化すことが出来ずに、不用意な発言をしてリュミスに締め上げられる羽目となったが。



ピキーン
トリステイン王国 のステータスが更新されました。
神の左手 ガンダールヴ サイト が加入した。



その21へ

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ルイズさんはちっとも成長してないな
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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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