スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ドラゴンに首ったけ17

その17









覚悟を決めて部屋に向かったクーが言われたのは、ずいぶん拍子抜けな意外な言葉だった。


「マッサージ、ですか?」
「ああ、割と最近まじめに戦っていることもあって妙なところが凝ってる気がする。と、言うわけでなんとなく思いついたのがそれだったんだ」
「別にそんな程度であれば普段でも私になりメイド達になりにおっしゃってもらえばやりますけど?」


言外に、もっときっちりとしたお仕置きじゃないと示しがつかないという意味を含ませるクーだったが、ブラッドが困ったように答えたことを受けては、その矛を緩めざるを得なかった。


「そうはいっても、思いついたのがこれしかなかったんだよ。大体この巣が何とかやっていけているのはクーのおかげだからな」
「……御主人様の頑張りもあってのことですよ?」


思った以上に謙虚な最強生物に一瞬反応が遅れるが、何とか執事としての範囲内の答えを返すことにクーは成功した。
だが、そんな照れ隠しを多分にこめた反応も気恥ずかしそうにしながらブラッドはあっさり否定する。そしてその否定の言葉は、クーがどんなに告げたくても、伝えたくても言えないことをブラッドの側から肯定してくれた。


「そういってくれるのは嬉しいが、とにかく俺はクーのことを単なる部下じゃなくてパートナーだと思ってる。それなのに、二人のミスを押し付けるようなことはちょっとな」
「…………はあ、妙なところで甘いんですね」


嬉しさを押し殺すため、わざと憎まれ口をたたく。
クーの身分では、本来であればブラッドに対してこんなことなど言えはしない。それを許してもらっているだけでも十分なのだ、出すぎたまねは控えて満足しなければならない、と自分に言い聞かせる。
それでも、内心からひっきりなしに沸きあがる喜びはなくならなかった。


「なんだったらあの宴会のときの衣装を二、三日着て過ごすとかでも良いかと思ったんだが……」
「それだけは御免です!! ……はあ、わかりました。とりあえず、それが罰だとおっしゃるならば従います」
「よし、というわけで、さあやれ!」
「まあ、マッサージの資格も持ってますから良いですけどね。じゃあ、準備してきますのでちょっと待っててください」
「ああ。罰ということだから出来るだけ速くな」
「はいはい、わかってますよ」


無意識の内に期待していたものとは違うにしても、まあこっちを思ってのことであれば許してやるか、と思うくらいに。






「じゃ、うつ伏せになってください」


ぺた、とベッドにねっころがって背中を見せているブラッドに対して、スクワランをベースにしたアロマオイルを落としていく。質の高いそれがある程度落ちたら蓋を閉めて、ゆっくりと撫で擦るような感じでオイルを塗り広げていく。
魔族は寿命が長い。クーはまだまだ若いといっていい年齢ではあるが、それでも人間の一生に匹敵するぐらいの時間はすでに十分過ごしている。ましてや超一流商社であるギュンギュスカー紹介でもエリート中のエリートなのだ。それゆえ、個々の技術にしても人間とは桁違いの幅で習得しているため、戦闘から編み物、諜報、コーディネート、バーテン、建築、教育とありとあらゆる技能を持っている。出来ないのは料理だけといっても過言ではないくらいだ。
とにかく罰として命じられた以上は気を抜かず、クーはその技量のすべてを使ってマッサージを施し始めた。



…………………



「はい、じゃあ耳のケアと内耳の掃除の方に移りますね?」
「ん?」


一通り背中から手足にいたるまでのマッサージを終えた後、いきなりクーがそんなことを言う。思いもよらぬ巧みさにふにゃふにゃになっていたブラッドだったが、耳掃除、との言葉には耳をしかめた。
そんな反応もはいはいわかってますよ、といわんばかりでとりあわず、クーは容赦なく言葉を続けた。
どういうわけか、彼ら竜族はかりそめの姿であっても汗をかくし、体も汚れる。どうも竜の姿のときの汚れと人の姿のときの汚れはある程度比例するようである。
彼ら竜族が使う化身についてはいまだに魔界でもよくわからないことが多いのだ。明らかに大きさが違うものになる変身魔法など、魔王クラスでもないと使用できない筈にもかかわらず、彼らは子供であろうとごくごく当たり前に使用できる。
まあ、学園の精霊などは分身できたりもするので、種族特有の特殊能力なのだろう。そして、彼ら竜の能力は生息数が少ない上に、気軽に研究させてください、などということが出来る存在でもないためほとんど解明は進んでいない。
だが、竜の姿をとり続けているならばさておき、人の姿も取るのであれば耳掃除は必須であるとクーは力説する。


「御主人様、もてる為にはそういった細かい身だしなみのケアが大切なんですよ?」
「そうは言っても、前になんかいきなり耳掻きさせなさい、とか言ってきたリュミスにブスッっとやられてから苦手なんだよ。流石に気になったら自分で適当にやっているが」


容易に想像できるその図にクーは内心苦笑いを浮かべる。
彼女からしてみれば精一杯甘えていただけなのだろう、リュミスの気持ちを知っているクーはそう思ったが、まあそれを知らないブラッドからすれば確かに訳のわからない状況だろうとも思う。リュミス様は不器用だし、とも思ったが、それを口に出しては命があぶない。
今回のことがリュミスの気に障る可能性も無きにしも非ずだが、まあリュミスが失敗したことを他の者がうまくやってしまってブラッドに気に入られるというのはある意味日常茶飯事なのでそこまで問題にはならないと思う。自分は膝枕とかああいった恋人同士のいちゃいちゃをするつもりはないし。


「まあまあ、私は痛くしませんから」
「……竜の姿のときにやればいいんじゃないのか?」
「そりゃ確かに痛くはないでしょうけど、ちょっとした土木工事になっちゃいますよ?」
「………わかった。頼む」


竜の皮膚は硬いとはいえ、それだと耳の中にまるまる一人頭を突っ込めるサイズになってしまう。ほんの簡単な耳かきが一気に重労働だ。さすがにそこまで面倒を掛けるのはいやなのか、しぶしぶながら同意するブラッドに笑いかけながら、クーは彼女なりにブラッドに甘え始めた。


とりあえず、ブラッドをベッドに寝かしたまま蒸したタオルでブラッドの耳とその周辺を拭っていく。ユメのような獣人の耳ではないからやりやすいなーなどと考えながらも手は止めない。
リラックスさせる手段という面が強いものの、一応マッサージという名目なので、ジェルを使って耳元から首筋に掛けてのリンパの流れも整える……なんかよくわからないが、整えるといいものが生き物の中には流れているらしいとの知識を得ていたからだ。微妙に魔界の知識は人間界より進んでいたりいなかったりする。
とりあえず撫でられるとリラックスをするのは竜も魔族も同じか、などと三十年以上一緒にいても新しい発見があるものだと感慨深く感じる。思えばこんなことをブラッドにやるのは初めてだ。



こんな二人してのんきなことができるようになるまででずいぶんな時間がたったものだといまさらながらにクーは思う。
いろいろなことがあった。さっぱりブラッドがやる気を出さないので、周辺の村にその存在を忘れられて貢物が届かなくなって破産しかけたり、あるいは魔物をさっぱり雇わなかったのでたった一人の老人に宝物庫まで入られたり。採算が取れないと見て撤収を決めた商会の上司をメイド以下の士官たちと共に必死で説得したこともあった。
竜の巣に勤めるということは超エリートということを意味するのと同様であり、圧倒的な武力を背景としたヤクザ稼業は、ドゥエルナや銀といった化け物連中に狙われない限りは何の苦労もないはずのいい職場であるはずである。にもかかわらず、このブラッドの巣に勤めているクーやメイドたちのここ数十年の苦労は並大抵のものではなかった。



ある程度周辺を揉み解したら、よく切れる重た目のかみそりを取り出す。ゆっくりと撫でるように、ブラッドの耳の産毛をそっていく。身だしなみという以上にブラッドをリラックスさせるための手段という意味合いが強いそれは、外耳を軽く一周して終わる。たぶんブラッドにはずっとしょりしょりという軽い音が聞こえていたであろうそれが終わったころには、他人に耳を触られることで、以前に与えられた痛みとそれによって連鎖的に思い出されたであろうリュミスの影に怯えて身を硬くしていたブラッドも、大分落ち着いてきた。
こう見えて自分よりもわりと年上のはずのブラッドが、そんな子供らしい様子をしていたことにふふっ、と微笑を浮かべていたクーだったが、続いて棒状のかみそりを取り出して多少今までの目線を鋭くし、内耳のほうへとそれを進め、今度は内側の産毛を取り除いていく。
冷たい金属の感触が耳の中に入っていく感触にドキッとしたのか、今までリラックスしていたように思えたブラッドが身をすくめるが、それも一瞬のこと。鼓膜のすぐそばで聞こえるその音と、冷たいかみそりの温度にすぐにぞくぞくとした快感によって背筋を震わせるようになった。
普段忙しいクーはそれほどこんなことをやる回数が多いわけではないのでなれているとまでは言いがたいが、それでも専用の研修を受けたプロだ。その手つきに揺らぎは無い。



リュミスの発破掛けによって、ようやくブラッドがやる気を見せるようになってからもある意味大変だった。
何せ今までお坊ちゃん暮らし。巣の施設にばっかりお金をつぎ込んでモンスターを買うことを忘れたり、買ったはいいが適当な配置をしたためあっという間に突破されたり。
街を襲うのも手加減をするつもりだったのにてんで見当違いの方向にブレスを吐いたり、あるいは全然威力が足りなくて人間たちに舐められたり。こっちの方を狙って放った方がいいよ、といっているのになぜか反発して、結果大惨事を引き起こして人間たちに大攻勢を掛けられたり。
混血ゆえに力が不安定な上に、あまり要領がよくないブラッドの協力者として巣を運営するのは、他の巣に派遣されたものと比べてずいぶんな苦労をしているのだろうとクー自身も思う。



ここまでやって、ようやく耳掃除に入る。取り出したのは何十本もの耳掻き。鼈甲や金、象牙で出来ている物から、ありふれた竹製のものまで、さらに素材だけではなく大小さまざまな種類がある耳掻きを出したクーは、う~んと小首をかしげながら、ブラッドの耳にあった大きさや素材の耳かきを六本ほど選び出す。
手に持った耳かきをいったんくるっと一周回した後、まさかそんなに耳かきに種類があると思わなかったのか興味深げにこっちを見ていたブラッドの体勢を元に戻させて、クーは耳掃除を始めた。


「ずいぶんありますね~、サボってたんじゃないですか?」
「まあ、あんまり進んでしたいことでもないしな」
「そんなもんですかね~」


口調は普段のからかうようなものでありながら、声量を絞って囁くような声でブラッドに話しかけながらも、クーは先端が大きく太いものから小さく細いものへと順に変え、外側の外耳の汚れからゆっくりやさしく進めていく。軟骨の裏のしつこい汚れにも、決して強くはせずに速度と角度を変えることによって剥がしていく。万が一にも痛みを与えぬよう、ゆっくりと、効率よりもリラックスさせることを重視して、耳の奥からも耳垢を引っ張り出してくる。
ここまでくるとさすがにリュミスのものとは違うとわかったのか、ずいぶん安心した表情を見せてくるブラッドを見て、こんな表情リュミス様はしらないんだろうな、とクーはわずかな優越感を覚えた。



それでも、そんな苦労以上に楽しいことがいっぱいあった。苦労が多かったからこそ、クーとブラッドは深い信頼で結ばれるようになったともいえる。
自分に絶対の信頼を置いてくれているのか、ブラッドはいつも自分に向かって笑いかけてくれている。自分のいうことに軽い反発をすることもあったが、合理的な主張を行えば大概のことは聞いてくれた。それどころか時には自分のわがままと思えるものすらわたって受け入れてくれた。表面上だけではなく、本当に対等のパートナーと見てくれていると態度で示してくれたのだ。
厳格な階級性を引く魔界で生まれ、生き馬の目を抜くかのごとき熾烈な合戦を繰り広げている商会で戦い続けてきていたクーたちにとって、己のことを竜族というだけで特別扱いしない、驕ったりしないブラッドの隣は、何より安らげる場所だった。
竜族との力の差を考えれば、本来であれば商会の社員など奴隷扱いされても仕方がないのに。



あらかた耳の中をきれいにし終えたら、使ったものは消毒用に取り分けて耳かきを片付け、今度は綿棒を取り出す。ゆっくりと、一周あたり一分ぐらい時間を掛けて右回り、左回りと耳の穴を拭うようにマッサージしていく。こんなこと何十年ぶりにやる割にはきちんと手順を覚えている、と自分で感心してしまうほどスムーズな手つきだった。
何か反応がうすくなってきたなーと思ってブラッドの顔を見てみると、リラックスしすぎたのか目をしょぼしょぼさせて今にも眠り込みそうだった。最初は嫌がっていたのにずいぶん気に入ってくれたものだ、とほほえましく思いながらも今度は梵天を取り出す。ここまでくると耳掃除というか、マッサージ、もっと言ってしまうと鋭い刺激を極力廃しただけの愛撫に近いようなものなので、眠くなるのも仕方がない。
くるくるくると梵天をまわしながら進めていき、耳の奥までマッサージしていく中ほどで一度とめ、今度は逆に回す。鼓膜の手前が一番くすぐったくて、気持ちいい。
それを受けてブラッドの体から完全に緊張が取れたのを確認して梵天を抜き、今度は細い棒の先にやわらかい布を巻いた道具を取り出す。殺菌効果のある化粧水に浸したそれを、ゆっくりと奥へと進めていき、鼓膜とその周辺をまるですす払いするかのように拭っていく。たぶん今度はしゅわしゅわ、ぱちぱちといったはじけるような音が聞こえている筈である。分量を計算して浸してあるのですぐに吸収され、耳の中に水がいつまでも残っているような不快感は与えないはずだ。
そうクーが思っていると、とうとうブラッドのまぶたが完全に閉じられた。



そんな隣の居心地のよさを皆が感じているから命を狙っていたはずのユメが骨抜きにされ、名誉挽回のための踏み台だとしか思っていなかったフェイが忠誠を誓い、一国の王女であったはずのルクルが自身の尊厳と秤にかけ、そしてあの竜族最強、否、地上最強の存在、暴虐と破壊の象徴リュミスベルンの心を射止められたのだろう。
そんな主のことを誇らしく思うと同時に、クーは少々さびしくも感じていた。今まで、はばかりながら手にかかる弟のような存在であったブラッドが、やる気を出してからあっという間に成長して巣を大きくしていき、さらに史上かつて類を見ない二個の巣の同時経営なども始めたのだ。このままではだんだん自分の手をわずらわせることもなくなるのも遠くないのではないのか、とも思うのだ。
もともとリュミスが来るまでの一時的な生活だったはずのそれは、もはやクーにとってかけがえのないものとなっていた。



眠りかけているブラッドに対して突如鋭い刺激が加わる。先端を丸くした細い竹の棒で、クーがブラッドの耳にあるツボを押し始めたのだ。食べ過ぎや腰痛、肝臓とブラッドにかかわりの深いものから、ストレスや頭痛などこんな生活しててブラッドが受けるはずはないだろうというものまで一生懸命突いていく。一瞬ピリッとしたことで目を開いたブラッドだったが、痛気持ちいいだけでさしたる苦痛を与えないその感覚に再びまぶたを閉じていく。それでもクーは手を休めない。耳から目、ほお、おでこ、肩までと、ツボを丹念にマッサージしていく。
ふわりと、何かの甘い香りがブラッドの鼻腔についた。クーが体を動かすたびに、ふわりふわりと強くなるそれは、やがて広い部屋の空気と拡販されて、ゆっくりと薄れていく。それが余計に眠気を誘う。あくまで香る程度で不快な匂いではなかったそれは、むしろ安らぎと満足を感じさせるような、センスのいいクーのイメージに合った香りだった。
特に主張はしない、ゆっくりとまとわり付いてくるだけでこれ以上なく体の緊張が耳や花といった全身の穴から流れ出ていってリラックスして絶対の安心感が全身を包み込む。耳に聞こえるのがかすかな布ずれの音と、トン、トン、という音だけという事実もそれを加速させる。

結局、最後にその細い指を耳の穴に突っ込んで、トントン、とゆっくりと振動を与えて内部全体をマッサージするころになると、ブラッドはいびきこそかいていないものの完全に眠り込んでいた。
纂竹、魚腰、糸竹空、太陽、瞳子寥、承泣、と瞳の付近も円を書くように一つ一つツボを付いていく。竜なんだから、あんまり意味ないんじゃ、と思っても手は止めない。
大体今の体勢で出来ることをやり終え、とりあえず一通り終わりましたよ、と声をかけようとしてもう声をかけても反応できないほど眠り込んでいることに気づいたクーは、最後にふふっ、と再び微笑んでマッサージや耳掻きに使用した道具を片付けていく。本当はもっとやることがないでもないのだが、ここまで深く眠り込んでいる状態でやるほどのものではない、と思って終わりにする。
目の辺りにじゃまっけにかかっている髪を除けてやり、風邪を引かないように薄い羽布団をかけた後、クーは名残惜しげにブラッドの唇を見つめる。



だが、この生活もブラッドの覚悟が出来て、それによりリュミスが来たら終わる。ブラッドにべた惚れのリュミスベルンは非常に気が短くてしかも嫉妬深い。今までのように自分がブラッドの隣にいることなど決して許さないだろう。そもそも、竜は結婚と同時に巣を閉じる。侵入者の退治や略奪をしなくなる以上、自分がブラッドのそばにいる必要もない。もっと事務的な物事を片付けるのであれば外見が非人間的な魔物でも十分なのだから。
ブラッドとふざけあいながら、クーは常にこの生活が終わる恐怖に怯えている。いつブラッドがリュミスを呼ぼうと思うかわからないのだ。明日かもしれない。明後日かもしれない。ひょっとしたら何年も後のことかもしれない。

それでもそれは、いつか必ず来る未来なのだ。



そうなる前にいっそブラッドのものにしてくれとこちらから告白しようかとも思ったこともある。
だが、商会もリュミスもその裏切りとも言える行為を決して許さないだろう。おそらく、最良でもこの巣の担当をおろされ、最悪ならば殺される。言えば一瞬で終わり、言わなければ不安定ながらもまだ続けられる。クーはユメのようにその賭けに乗る勇気が出なかった。
ある意味鈍いブラッドは自分の気持ちに気づくことなどないだろう。また、気づかれたのならば先ほどの未来とさして変わらない。結局押し殺すしかないのだ。
いつもどおりブラッドの寝顔を見つめながらそう結論付けたクーは、勇気を振り絞って顔をブラッドの寝顔に近づける。この気持ちを伝えることは出来なくても、せめて思いだけは残したくて。
たとえ伝わらなくても、自分の中に深く深く刻みたくて。




そして………まっすぐな瞳でブラッドを見つめたクーはゆっくり顔を離す。誰にも触れさせた事のない唇をその細い指で触れる。その指でゆっくりとブラッドの唇をなぞった。それを見て誰にも見せない悲しげな表情でクーはブラッドのそばを離れた。
そしてすぐにいつも通りの表情に戻っててきぱきと後片付けをし、最後に一礼をして扉を開けて出て行く。


結局、口付けは出来なかった。


そしてそのことに、深く眠るブラッドは気付けなかった。




その18へ

Comment

No title

えええー!? あああああああっ

クー! クー! に救済を!

一番しゅきなキャラは?
    「はい、クーです!」

No title

クーいいなぁ
ジーンときた

No title

主人公に早く死んでほしい。
なにこの、惚れる価値のない屑は
非公開コメント

プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
カウンター
検索フォーム
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。