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ドラゴンに首ったけ13

その13








「そういえば、テファはどこに住んでいるんだ?」
「えっと、この森の中の家に、子供と一緒にすんでいるのよ」
「………子持ちだったのか?」
「ち、ちがうよ」


食事をしたら遊びに行くという、あいも変わらずニート竜まっしぐらなブラッド。クーたちに対する指示さえ終えてしまえば暇なブラッドは、今日も今日とて再びティファニアに会いにアルビオンに行っていた。

その頃にはある程度の気持ちの整理もついたのか、ブラッドに笑顔で会いに来たテファだったが、流石に子供たちと親といわれるのには抵抗がある年齢だった。
さらに、世間の情報に疎いのか、未だにブラッドがラ・ロシェールで大虐殺を行ったこともどうやら知らないらしい。そのため、その笑顔にはブラッドに対する怯えは無く、むしろ自分の方が拒絶されないか、という色の方が強かった。


「あのね、わたしは………エルフじゃなくて、ハーフエルフなの」


そう告げてブラッドの顔色を伺っても変化がないことに内心安堵の息を吐きながら、テファはブラッドに子供たちと共に暮らすようになった己の身の上を語り始めた。

滅ぼされたテューダー王家の血を引く王弟であり、大公でもあり、そして財務監督官だった父と、その妾のエルフの母との間に生まれたハーフエルフであること。
エルフの血が入っている為に村の外に出ることができず、地方のウエストウッド村にひっそりと住んでいるため、あまり他の人間と話したことはないこと。
何人もの子供達を引き取って共同生活をしているものの、田舎特有の人口分布により、自分と同年代のものはいないこと。
このあたりではハーフとはいえエルフは悪魔と呼ばれ、子供達以外には石を持って追い立てられるためあまり外に出れないこと。

そんな、こういったことを教えてくれた人以外には、今まで誰かに語りたくても語れなかったことをテファは吐き出すようにブラッドに話した。いったん口に出すと止まらないようで、後から後から滝のように言葉が流れ出て、感情が暴れだす。普段年上であるブラッドに若干甘えるような口調だったのが、さらに幼くなっていく。やがて、感極まったのかポロリと涙をこぼし、慌てて拭ったテファを見て、ブラッドは気付かれないように顔をしかめた。

別にエルフがこのあたりの地方では迫害されているとか、正直どうでも良い。異種族が同等と見られることなどめったにないことは、かつての世界で獣人が王侯貴族や大商人など金を持っている人間から嫌われていたことからも明らかだ。何せ、生まれ持った能力が明らかに違うのだ、弱い方が何とか自分達の矜持を保とうと排斥に走る事など珍しくもない。

ただ、エルフ自身もテファを混血ということで同等と見ていないことが気に食わない。彼の中では少なくとも人間かエルフのどちらかが彼女を同胞として受け入れなければならないのだ。ああ、確かに先の理屈ではハーフエルフとエルフは別種というような違いが生まれることは理解している。それでも、気に入らないものは気に入らない。理屈ではないのだ。
純粋なる血統を持たぬ己が竜の村で軽く見られていたり、未だに体内で渦巻く魔力を完全に制御できない苛立ちもあったのだろう。とにかく、同じ混血であるティファニアが辛気臭い顔をしていることが何より気に食わないのだ。


「……つまり、総合するとその耳のせいってことなのか?」
「うん。これのせいでエルフってすぐわかるし」


母からもらった体という以上に、森の中で隠れ住む生活によってテファは己の耳を厭っていた。それを聞いて、思わずはき捨てるブラッド。


「下らん。何をしょうもないことで悩んでいるんだ」
「…………え?」


そう一言言って、元の姿に戻ったブラッドの行為が、テファには理解できなかった。さらにブラッドがその大きな前足で、テファの体をつかんで飛び出したのにはさらに混乱を大きくさせられた。
ろくな魔法も覚えていないテファが、いきなり大空へとつかみ出されたのだ。驚かない方がおかしい。


「え? え? ええええええぇぇぇぇぇ! ちょ、ちょっとブラッドさん。お願い、下ろして」
「黙っていろ、舌を噛むぞ」


衝動的に―――テファを潰してしまうかもしれないなどとは考えもせずに―――ブラッドはテファを前足でホールドしたまま飛び進む。魔力を使ってテファの回りに風は来ないようにしているが、それでも振動は殺しきれない。
せめて出来るだけ負担は軽くと高速で進む。あっという間に後方に流れていく風景にテファが目を回す前に、ブラッドは目的地に向かった。



その一部始終を見つめていた者がいたことに気付きもせず。










「お帰りなさいませ、御主人様……って、あれ? ご自分で生贄をつれてきたんですか?」
「!!」


ここがどこかと見渡す前に、背後より見知らぬ誰かから声をかけられて反射的に耳を隠すティファニア。おそるおそる後ろを振り返ってみると、そこには、ピンク色の髪をして、分厚い生地で出来たエプロンドレスを身に纏った、自分と同じような耳をした少女がブラッドと自分の方へと目線をやっていた。


「違う。拾ったんだ……いや、やっぱり生贄であっているのかもしれん」
「いけにえっ!」
「……最近御主人様、誘拐が癖になってません?」
「人聞きの悪いことを言うな。いろいろ事情があるんだよ」
「はあ、まあいいですけどね。連隊長に報告しておきますね」
「ああ。だがその前にこの子を客間に案内しておいてくれ」
「え? ああ、そういうことですね。了解しました」
「テファも、このメイドについていってくれ」
「え……うん」


竜の姿から人の姿に戻ったブラッドがそんな感じの会話をメイドと続ける中、テファは始めは生贄という言葉に驚いたもののブラッドもメイドも取り合ってくれないとおろおろと視線をさまよわせる中発見したメイドの耳に釘付けだった。自分同様尖っているのだ!
その視線に気付いてか気づかないでか、ブラッドはメイドとテファに一言ずつ言い残して、さっさと奥へと消えた。案内役の少女が頭を下げ、テファがいきなりの急展開に戸惑う中、ブラッドはさっさと廊下を進んで消えた。
あとに残ったメイドがテファのほうへと声をかける。


「それではこちらに」


そういって歩き始めるメイドに、テファは訳が分からないままついていくしかなかった。途中で出会ったメイド(この娘も耳が尖っていた!)からうけとったお茶を入れてテファと自分の前において、ようやくメイドは自己紹介を始めた。


「それにしてもようこそいらっしゃいました。当竜の巣へようこそ」
「は、はじめまして。あ、あの……その……耳が」
「ああ、そういえばおそろいですね。私は魔族ですけど……すみません、お名前を伺っても宜しいですか?」
「あ………ティ、ティファニアです」


おどおどしながらも育ちのよさからか、きちんと自らの名前を返す。苗字がないことには少々驚いたが、そういえば連隊長の苗字も知らないなあ、などと思いながらも会話を続ける。


「ティファニア様はハーフエルフですよね。魔族が珍しいですか?」
「あ、ご、ごめんなさい。今まで私以外にこんな耳の人見たことなかったから」
「そうなんですか。でも、ここで働いているメイドのほとんどがこんな耳ですよ?」
「ええっ!!」


メイド服の少女と話すうちに、テファの常識がガラガラと音を立てて崩れていく。それはブラッドと出会ったとき以上の衝撃だった。テファの知り合いの中では母以外には存在しないにもかかわらず、ここでは従業員がほとんどこんな耳であるという。


「あ、あの。ここはどこなんですか?」
「え? 御主人様から聞いていないのですか?」
「御主っ! ブラッドさんのこと? いきなりここにつれてこられたから」
「(誘拐?)………え、え~と、ここは竜の巣。ブラッド様のご自宅です……まあ、別宅の方なんですが」
「ええっ!!」


ここに来てから驚きっぱなしのテファニア。所詮妾の子であるとはいえ、一応王家の血が流れているテファニアが見たことも聞いたこともない高級感にあふれたここが、言ってはなんだがぜんぜん王侯貴族っぽくないブラッドの家だとは思っても見なかったらしい。
ここ数年そういった世界から完全に遠ざかって引きこもっていたこともその驚きをいっそう強くさせる。


そうこう話しているうちに、ブラッドがクーを引き連れて現れた。ブラッドは服を変え、わずかに石鹸の匂いをさせていた。しかし、基本的に天然で世間知らずなテファはその意味に気付かない。自らが大混乱していることもあってようやく来たブラッドに嬉しそうな顔を向けると同時に、隣の少女は誰、と言う表情を向けた。


「遅くなってすまなかったな」
「それは良いの……でも」
「申し遅れました。私は当竜の巣で執事を勤めさせていただいております、魔族のクーと申します。ティファニア様、ようこそいらっしゃいました」


基本的に人見知りの強いティファニアは、予想以上の事実が次々と出てきたことも加えて、ここに来て新しい人物の登場に戸惑いを隠せなかった。
メイドの少女が言ったように彼女の耳も己と同じように尖っているのだ。もうテファは訳が分からなかった。主とクーが来たことを受けて、先ほどまでテファを案内していたメイドは給仕を行い終えると、クーの目配せを受けて頭を深く下げて挨拶を一つだけして退室する。
彼女が退室していく姿を見てテファは、自らのある部分の身体的特徴があまりに二人と違っている事にも疑問を抱いた。
しかし、それを言う前にブラッドからあることを間接的に「頼まれた」クーによって声をかけられる。



ブラッドが竜の姿になった影響の高ぶりを大急ぎで発散して、大急ぎでシャワーを浴びていたときに入ってきたクー。どうやらブラッドとその友人という少女がどのような関係なのか、執事としてさりげな~く探りに来たようだ。何でも、おもてなしの程度に変化があるらしい。ちなみにブラッドはまだ下着姿だったが、お互い上半身裸ぐらいで照れる間柄でもないので、そのままテファが混血ということにコンプレックスを抱いているらしいハーフエルフだ、と説明した。

その後、なんとなくハーフエルフのペットを飼ってみたかった、と言い放った彼に変な趣味に目覚めたか、と一瞬変態を見るかのような視線を投げかけたクーだったが、その後ブラッドがテファの部屋や衣服、さらに後々来るであろう彼女の知り合いの宿泊場所まで確保するように指示が下ったことで、なんとなく事情を察した。
うじうじしているのがムカついたので、つれてきて散々虐めて世間の厳しさを教えてやる、などというブラッドのポツリともらした台詞の影響もあったが。

要するに、ブラッドなりの虐待なのだろう。
己と同じく混血でありながら、人目を避けるようにおどおどして暮らしていた彼女に対して、無理やりここにつれてきて、生活させる、ということ。

それが、ブラッドの言う虐待なのだろう。
ユメに与えた自分の命を狙った罰と同じく。


相変わらず変わった竜だ、とクーはそれを聞いてため息をひとつ漏らしたが、一応主である彼が言うのであれば仕方がない。


「ティファニア様。よろしければ、こちらで働かれるつもりはありませんか?」
「ええっ?」
「聞けば、このあたりの地方では人間以外の種族に対する偏見が残っているだとか」
「え、ええ……確かにそれはそうですけど」


そのことといきなり提示された選択肢との関連性が全くわからず、戸惑いながらも答えるテファだったが、次の言葉には力強く否定する。


「ティファニア様もさぞやご苦労をなさったことかと思います」
「い、いえ! 家には子供たちもいるし、そんなには……大丈夫です!」


それを聞き、人のことを悪く言うような人間ではないのか、と方針を若干修正するクー。

どうやら、見た目どおりの無害な少女のようだ、ということを確信したクーは、単刀直入に伝えてみることにした。


「そうですか? いえ、この巣も人数が足りずに困っていましたので、何かお困りでしたら手伝いがてらにこちらに越して来て頂けたら、と思いましたので」
「えっ!」


確かに、危険が全くなかったとはいえない。
アルビオン大陸自体は中空に位置するということもあって王党派と改革派が争うことなどはあっても、他国からの大規模な侵略の危機、というものは今まで受けたことがない。
そのため、いろいろと不穏な雰囲気がトリステインだとかロマリアあたりから発生して大陸中を包んでいるとしても、テファが直接の戦火に巻き込まれる、ということは今までなかった。
だが、他国から距離を置いている、ということはそれはすなわち、閉鎖的であるということも意味する。

よく言えば古き良きモノを守る、悪く言えば柔軟性を欠く、そんな環境は決してハーフエルフのテファにとって居心地がいいばかりのものではなかった。

それでも、アルビオン大陸にテファが隠れ住んでいたのは、母が愛し父が生まれたかの地に愛着があったことも確かにあるが、それ以上にどこにもいけなかったからだ。


中世ヨーロッパを例に挙げるもなく、鉄道等の安全確実な公共交通機関の発達していない世界においては旅は命がけだ。
宿の確保や移動中多少足元を見られても確実に食べていけるだけの資金の確保、新たな住居の確保にそこまでたどり着くまでの安全、天候不順を受けても大丈夫なような備えも必要だし、万が一医者がどこにいるかもわからない状況で病気になった場合に何とかできるよう、常備薬なども供えておかねばならない。

貴族のように使い魔といった安全な交通手段や、金銭、道中の安全を確保できるだけの戦闘力を持っていなければ、ほんの隣町へ行くだけでも多大な危険を伴う世界において、たとえ居心地が悪いからといってハーフエルフのティファニアがそう簡単に引越しなど出来るはずがなかったのだ。

しかし、その選択肢が突然眼前に出されたのだ。
個々にもう到着している以上、後は自分が頷くだけでそのアルビオン大陸からの脱出が適うのだ。

戸惑わないはずがない。


「御主人様もいらっしゃいますから、この中なら絶対安全ですしね。ハーフエルフどうこうなんて……私たちの耳を見てもわかるように、そもそもそんなことを言い出す人間自体がいませんし」
「で、でも、子供たちが……」


ましてや、初めて友人といえる存在になったブラッド。
さらに同じような容姿をした人―――魔族が大勢いるというのであれば、さらに友達は増えるかもしれない。

それはティファニアの心を激しく揺さぶった。


だが、それでも頷けなかったのは、自分が引き取った子供たちがいたからだ。
彼らも自分と同じく孤児……しっかりした子が多いので寧ろ自分が助けてもらうことも少なくないが、それでも姉がいない以上自分が一番年上。
若輩ながら自分がしっかりしなければ、と思って精一杯親代わりとして頑張ろうとしている。
そんな自分がいなくなってしまえば、彼らは再び『親』をなくしてしまう。
そんなことは出来るはずがなかった。

かといって、森の中で自給自足生活を送っていた時はそれほどまで金銭が掛からなかったとはいえ、こちらに全員連れてきたならば今度はテファがほんの少しブラッドの下で働く程度で得られる金銭では彼ら全員を養っていけないことぐらい世間知らずのハーフエルフにも十分わかっていた。

だからこそ、これだけの好条件でも頷けない。


「そいつらも連れてこればいいんじゃないのか? 別に無能ばっかりというわけでもないだろ」
「え!?」
「そうですね……人手はどれだけあっても困りませんから、ケットシーの手であろうとあれば助かります」


頼る、という心を出すことを姉に対してすら遠慮していたテファとしては、これ以上の迷惑を掛けられない、という気持ちすらもあちらから飛び越えさせてしまったことは申し訳なく、またありがたいことだった。


「じゃあ……お世話になります、ブラッドさん」
「あ、ああ……じゃあクー、手配を頼む」
「……解りました、御主人様」


その際、思いっきり勢いよく頭を下げたことで主の目線が一箇所で釘付けになっていることだけを不満に思いながらも、有能な執事はこの巣にて初めて迎えることとなるお客様の手配の為に、姿を消した。



ピキーン
ブラッド のステータスが更新されました。
さびしいハーフエルフ テファニア を手に入れた。
アルビオン王国 の フラグ2 がたった。




その14へ

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楽しまさせて貰っています
キャラ作品は外道w
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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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