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悪の秘密結社乗っ取りマニュアル13

魔法少女のお給料は、みんなの笑顔です。













そんなこんなで一週間がたちましたよ、っと。
監視させている話ではガキと沙織ちゃんは一気に仲良くなってるみたいだが、そんなの長々と見ててもおもろくねえんで、省略。

あえて言うことがあるとするなら…………う~ん、なんかあったかな?
ああ、そうだぜ、思い出した!
蘭華とハエのことがあったんだ。

ハエの奴の下宿先がプリズムブルーの家から、蘭華がペンダント状にして身につけている変身ステッキの内部へと変わったことだ。
妖精なら、変身グッズの近くにいるのがお約束だろ?


「僕の仲間が見つかったんだ! みんな、今までありがとう」とかいってな。
まあ実際はもうあそこにスパイを置いとく価値はねえから引き上げさせたんだ。
なんといっても、レンジャーの一人というこれ異常ない偵察要員がすでにいるんだからな。

連中もルンに対して何らかの拘束をしようとは思ってなかったみたいだからな。
ブルーの奴、最後はほとんど半泣きだったらしいぜ、ひひっ。



まあそんなことはどうでもいいや。

それより問題だったのは、蘭華のほうだ。
行きがかり上とはいえ、蘭華を正義の味方なんぞにしちまったことは御光院の家にすぐに知れてちょっと偉いことになった。

俺もやっちまってからしまった、と思ったんだ。
御光院の家も正義の味方を最低一組飼ってるみたいだからな、蘭華がオーキッドに変身して戦ったことはネットワークを使って速攻ばれた。

自分の娘がいきなり変な怪物と戦う羽目になっている、何てのを歓迎する親はあんまりいねえだろ?
当然、誰かの干渉で無理やりならされているんじゃないのか、っていう真実どんぴしゃのことを徹底的に調べられた。

コイツは俺にとっても誤算だった。
別に蘭華じゃなきゃならん理由はあの時点ではなかったからな。
適当にその辺の一般家庭のガキでよかったんだ。
失敗したぜ。


ってなわけで、結果として散々蘭華の身辺と、ルンの身元について調査を食らったのは大きな誤算だった。
ずいぶん計画が遅れたことは愚か、危うく俺が操ってることがばれるとこだったんだぜ?


が、二人とも俺が最初にして洗脳してすでに二ヶ月はたってんだ。

そして俺は、魔法的なもので操ってるんじゃなくて、脳を物理的に書き換えることで他人を操ってる。
つまり、物理的な細胞の移動だとか神経の繋げ方を弄ったりだとかの干渉によるものだから、人間の脳は自然に治癒していくことを考えてある程度の時間は何度も掛けなおさなきゃならないって言うディメリットも多いんだが、逆にこの即効性のない方法のほうが有利なこともある。

それは、発見が極めて困難だ、ってことだ。
人間の体にある自然治癒力によって段々と俺が弄っていた方向へ脳の方向に癖が付いてくる。
それに伴い、徐々に外部から境目を見ても弄っている、という違和感が薄くなっていき、やがては洗脳されている方が自然な状況になっていく。

つまり、俺を好きになれ、って命令は最初は俺が強制的に弄ったからだが、そのうち本当に最初っから好きだったことと生物学上は全く見分けが付かなくなる。

こうなっちまうと、もうかけた当人である俺でも戻せねえ。
もう一回同じ手順を踏んで以前と同じように書き換えなきゃなならんが、前の脳細胞の配置なんていちいち覚えてねえし。

そのため、操ってすぐなら脳細胞の配置の不自然さからばれるかも知れねえが、時間がたつほどなじみすでに完全に定着してるから、もうほとんど自然にしか見えなくて結局ばれなかったらしい。
まあ、魔法的な手段で過去を見る、とかされたら不味かったんだが、幸いなことに御光院が飼っているのは超科学系のヒーローだった。
散々説明したように、科学ではこれは十中八九ばれない自信が俺にはあったし、事実それはばれなかったが、危なかったのは事実だ。

やれやれ、……御光院子飼いのヒーローが戦闘重視で助かったぜ。


ま、俺が洗脳しているしていないはさておき、御光院の親としての感情として、蘭華を正義の味方として危険な場で戦わせるのはどうなんだ、って問題はあったが、最終的にはそれも解決した。

正義の味方として戦うことで多少の危険はあったとしても、この物騒なご時世だ。
それと引き換えにある程度の力をえることが出来るならば、この間のバスジャックみたいな目にあっても安全だろ、ってことで許可が出た。

実際すでに何度か行われている異形との戦闘は沙織ちゃんがかなり強いこともあって二人ならそれほど危険はねえ。
フォーメーション的にオーキッドは基本的に遠距離系で、遠くから炎を打つだけだしな。

まあ、それでも心配性な親御さんのおかげで、黒の魔女と戦うときに蘭華が参加してる場合は、御光院子飼いの正義の味方のサポートがこっそり付く、っておまけまで付いてくることになったが。



ま、最大の不信感の払拭は、ルンがついこの間まで公務員系の正義の組織であるプリズムレンジャーの本部にいた、ってことだ。

ルン自身の身元の確認がほとんどそこで止まっちまったので、結果として蘭華が魔法少女として選ばれたことに対しても魔法少女を選ぶ妖精にはよくある、「偶然素質があった」だけでほとんど不信感をもたれなかった。
蘭華が妙に変身を気に入ってる、って設定にしておいたから、末っ子に甘いご両親はそれほどおおっぴらに調査できなかったし、ヤメロともいえなかった見たいだしな。



はは、笑えるぜ! 
すでに俺の魔手にかかってんのにな。


それにしても、さすが俺。
ちょっとやばいとは思ったが、結果としてやること成すことが上手いこと巡ってくぜ。

だが、しばらく二人とは接触を持たない方がよさそうだな。
今は、あいつらの周囲に近づくのは不味い。


もっとも、仕込みは済んでっからな。
俺はしばらくほっとくだけだから、親御さんの頑張りとは裏腹に計画にはまったく影響はねえんだな、これが。



そんじゃま、いちいち細かい指示は出せないから半ばすでに仕掛けた命令によるオートになっちまうけど、そろそろ魔法少女捕獲作戦を始めますか!











突然現れた仲間、メルティオーキッドに沙織が助け出されてから、随分な時間がたった。

二人は随分と距離が縮まり、今日も沙織の家に二人(+二匹)で集まってたわいのない話をしていた。
始めは変身を解くと相手が小学生中学年ぐらいから一気に幼稚園児へとさらに小さくなったことに戸惑っていた沙織だったが、もうそんな戸惑いは消え去ったようだ。

さすがに十歳も年が離れていると話の内容はどうしても沙織が蘭華のたわいのない話に合わせる形になるものの、それでも沙織は今までの疲れが癒されることを感じていた。
今まで、たった一人で孤独に戦ってきた上に、誰にも話せない秘密を抱えていただけだったのに、今では蘭華に対してだけは秘密を持たなくていい。



親との関係があまりよくなく、またここ数年の正義の味方業が忙しい為に友達とも縁遠くなっていた沙織にとって、それは久々の気の置けない会話だった。

勿論、蘭華は年の割には聡明であるとはいえ、あくまで幼稚園児だ。
ちょっと難しい言葉を使うとすぐにわからないし、子供らしくわがままでかんしゃくを起こすことも多い。
ほとんどボランティアで幼児の世話を見ているようなものなのだが、それでも魔法少女という秘密を共有できるのであれば、沙織はそれでよかった。

蘭華も沙織の何かが気に入ったのか、ついこの間であったばかりだというのに、異常になついている為幼稚園が終わればこちらにすぐ遊びに来る。
そのため、蘭華は沙織の部屋に入り浸っていた。


とはいえ、いくらなんでも同居しているわけではないので、分かれる時間、というのは存在する。
お菓子を食べながら二人にルンやリーンも加えて他愛のない話をしていた蘭華だったが、不意にあわてたように壁の時計を見て目を見開かせ、こういった。


「あ、もうおうちに帰らなきゃ」
「そう……一人で帰れる?」


外を見ると、三月という時勢のこともあってすでに日は完全に落ちている。

蘭華の門限は六時。
幼稚園児にしてみれば正直遅すぎるほどの時間だったが、それは自分がご両親に信頼されているからだ、と一度だけあまりに豪奢な蘭華の家に行ったときに何故か不自然なまでに「蘭華を頼む」といわれた沙織は理解していた。

そのため、引き止めることはせずに蘭華のみを気遣うだけにとどめる。


だが、二人がいい友人でいられたのは、この瞬間までであった。
そう、悪の改造人間であるリキュールが蘭華に仕込んだ策のひとつが、つい発動したのだ。


「うんっ、じゃあね、お姉ちゃん」
『モーント・トランシア』
「えっ!」


突然、蘭華が呪文を唱える。

自分の部屋という日常において、突然述べられたその言葉に沙織が反応しきる前に、蘭華とルンの体が光ったかと思うと、すでに消え去っていた。


何の言葉を掛けることも出来ずに、ただ呆然とそれを見送るしかなかった沙織。
呪文の内容も、その効果も沙織は勿論知っている……三年間も魔法を使って戦い続けていたのだから。
だから、それが転移魔法であり、おそらく蘭華は自宅に帰ったのだろう、ということは十分理解していた。

だが、今この場、リーンたちに堅く言い含められているはずの、容易く使うべきではない日常生活において、それが成された意味が沙織には全くわからなかった。

隣を見ると、同じく呆然としているリーンの姿が見えた。
その顔を見ているうちに、ようやく沙織は先ほどの衝撃を受けて完全に固まっていた状態から直ることが出来た。

思わず、自分に『みだりに魔法を使うな』と散々言い含めていたリーンに対して口調をきつめに問い詰めてしまう。


「リーン、どういうこと!! どうしてあの子が魔法を」
「知らないよ! ルンの奴、どういうつもりなんだ……蘭華に日常生活で魔法を使わせるなんて」


お付の妖精であり、そのルールを今まで口すっぱく行っていたはずのリーンもこれには驚いているのか、その声に憤りを感じる。


だが、その声は沙織にとって何処か遠くに感じた。

魔法を…………もっと自由に使えたら。







翌日、またもや遊びに来た蘭華に、沙織はころあいを見て日常ではみだりに魔法を使ってはいけないのではないのか、ということを注意することにした。
蘭華のお付の妖精であるルンについても、リーンが事情を聞いてくれる、ということで別の場所で同じようにしているはずである。

ただ、何らかの事情があるかもしれないので、慎重に話を聞きだす。



「ねえ、蘭華ちゃん」
「? 何、お姉ちゃん」



その顔色はいつも通り明るく、魔法を不正使用していることに罪悪感を持っているようには見えなかった。
寧ろ、新しいおもちゃである魔法という力を手に入れたことを、最大限楽しもう、という喜びしか。

沙織の胸の奥の何処かが、ちりっ、と音を立てて擦れる。
ついこの間に正義に絶望していた沙織は、それが一体何故なのか、なんとなく理解した。

だが、それに気付かないふりをして、沙織は説得を始めた。


「その、普段から魔法、使ってるの?」
「うん、ルンがいろいろと教えてくれるんだぁ」


帰ってくるのは、やっぱり肯定。
まさか、とは思っていたが、やはりオーキッドのお付の妖精であるはずのルンは蘭華に対して魔法の仕様を黒の魔女との戦闘時のみに限定していないようだ。


自分の妖精との差に不信感を感じる沙織。
だが、それはルンだけに向いたものではなかった。

現在、こっちに来ている魔法界の知り合いはたった二人。
リーンとルンだけだ。
そして、片方が「魔法を使うな」といい、もう片方が「魔法を使ってもいい」といっている。
どちらも、魔法界出身のはずの二人の意見がまるで食い違っているのだ。

そして、その言葉のどちらが正しいのかを判別する手段は完全無欠な地球人である沙織にはなく、今リーンを信じて蘭華を説得しているのはあくまで両者に対する出会ってから培ってきた信用度と期間の結果に過ぎない。


……そう、三年以上付き合ってきたリーンの方が間違っている可能性は十分あるのだ。
そのことに気付いた沙織は、ぞくっとする何かを感じ、蘭華を説得しなければならない、という気持ちが一気に萎えていくのを感じる。

だがそれでも、未だリーンを信じる気持ちがなくなったわけでもなく、またわけのわからない感情が胸の奥に急速にわだかまっていたこともあって、沙織は説得を続けようとした。



「その……あんまり使わない方がいいとおもうの、魔法……戦わなきゃいけないとかの時はしょうがないと思うけど」
「どうして?」
「魔法って、この世界にはない力だから、世界の法則を壊すの」
「ふ~ん」


だが、その結果は気のない返事。
暖簾に腕押しとはこのことだ。

幼児だから仕方がないとはいえ、それでも蘭華に対していらっとしてくるのは避けられない。
それでも根気強く、沙織はゆっくりと言い聞かせるような口調で蘭華に対して一生懸命魔法を使わないように説得していく。

その声には、いつしかルールを破っているはずの蘭華を心配しているだけではない色が篭ってきていた。



「だから、あんまり使っちゃ駄目、ってルンにいわれてない?」
「別にルンは何にも言わないから、きっと大丈夫だよ!」
「そうじゃなくって、そのルンがひょっとしたら間違ってるかもしれないでしょ?」
「む~~そんなことないもん!!」



だが、それは悪手だった。
理詰めといえるほどではなく、ある意味沙織の感情に寄った説得は、余計に蘭華をいこじにさせただけだった。

あわてて謝りながらも、それでも説得を諦めなかった沙織は、なんとか蘭華をなだめながらも会話を進めていくうちに、あることに気付いた。


蘭華は、わざわざ正義の味方、なんてことをすることを本心では望んでいない。
子供らしい純粋ゆえの残酷さで、正義のために戦うことよりも、自分の都合の方が優先されると思っているのだ。

そんな蘭華が自分が遊ぶ時間を削ってまで正義の魔法少女として戦う理由、それに沙織は気がついた。
彼女には、魔法少女をやることへの対価が見えているのだ…………正義や平和といった曖昧なものではなく、はっきりとしたものとして。


そう、蘭華はメルティオーキッドとして戦うことを、そういった日常生活で魔法を使う為の対価だとして捉えているのだ、と。
だから、その『当然の対価』であるはずの魔法の行使を邪魔する沙織の『普段は魔法を使うな』という言葉なんて、いくら仲良くなった相手によるものであっても聞くはずもなかった。



「だって蘭華、ちゃんと頑張ってるもん!」
「私たちが魔法を使えるのは、正義の為で…」
「もう、どうしてそんな意地悪言うの? せっかくルンに一杯教えてもらってるのに!」



そして再び唱えられる、転移の呪文。

せっかく仲間を手に入れたばかりの沙織にとって、それを力づくで止めるなんてことは考えることも出来なかった。
それゆえお姉ちゃんなんて、嫌い、という一言を残して蘭華は再びこの部屋から転移して帰っていったことを再び見送るしか出来なかったのであったが、それと同時に先の推測―――蘭華は対価として魔法を普段から使っていることは沙織の中で確信に変わった。



「あー!! ルンのやつ、逃げたな!」



そしてそのことを、沙織は間違っている、ということは出来なかった。
わめきながら帰ってきたリーンを見て、改めて思う。

本当は、蘭華の方が正しいのではないか、と。
自身も正義だけを理由に戦い続けることの難しさをついこの間思い知ったばっかりに、それを否定する明確な証拠がない。

そして何より、それ―――正義の対価として魔法を自由に使える、という考えは正義のつらさに耐えかねて死すらも選ぼうとしていた沙織にとってもあまりに魅力的な選択肢だった。
だからこそ、リーンのように相手を悪く思う感情がほとんど湧いてこない。
魔法を使わないことの方が望ましい、なんて心底思うことなんて出来ない。


だがしかし、三年にも及ぶ付き合いのリーンの考えを頭から間違っている、と否定して、そのまま蘭華の主張に乗っ取るようなことはいくらなんでも出来なかった。

そのため、せめてもの慰めとしてルンとリーンではリーンの方が正しいのだ、という情報を集める為にリーン本人へと話を振る。



「リーン、あなたも駄目だったの?」
「ああ……ルンの奴、何を考えているんだ? あんなことしてちゃあ、次どういう顔をして女王様に会うつもりなんだか」
「そうよね……魔法は、みだりにつかっちゃいけないんだよね」



ぶつぶつと呟きながら、それでも沙織にとってはある程度説得力のあることを喋るリーンの言葉だけを聞いて、沙織は胸の奥に未だにわだかまり続ける「自分も魔法を自由に使いたい」という気持ちを沈めた。

完全に消し去ったわけではなく、ただ重石をつけて沈めることしか出来なかったのだ。
その悪の改造人間に操られている蘭華とルンの言葉と行為を疑いきれずに。




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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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