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悪の秘密結社乗っ取りマニュアル12

新番組『魔法少女メルティアイリス』、始まります!

















プリズムレンジャーの一員である桃香を配下にしてよかったことの一つに、街中の監視網を使えるようになったことがある。


広域特殊指定暴力団対処法案、通称正義の味方法案が可決されてから、公共の場においてのプライバシーって概念は随分変わったもんさ。

今ではある程度の規模の街であればほぼ全域に監視カメラが張り付いてる。
その監視網を統合して一度何処かに集めた挙句にある程度の検閲をして、その後に各公務員型の正義の味方の本部や警察などにまとめて送られる。

で、なんかあったら即座に警察やら正義の味方やらが飛んでくるって寸法だ。
悪人の位置は常にサーチしていますから、国民の皆さんは安心してください、って奴だな、たしか。


最初は人権がどーの肖像権がどーのとかいうたわけた意見もあったらしいんだが、とある都市で試験的には位置してみたところ有るのと無いのでは弱小の組織の活動率が全然違うことになったから、結果としては普及した。
個人個人の行為などは流石にすべては監視できない、あくまで突然起こったテロや爆発といった超科学や魔法的な現象を統合コンピューターが辛うじて自動判別できるってレベルらしいので、人権屋とかにしてみればしぶしぶ、って態度だったらしいが。

まあ、上位の組織になるとそんなもの意にも介さず活動してたりするし、市街戦が始まりやすくなっちまうからどこまで効果があるのか、ってのは疑問の声もあるんだが、普通に暮らしている分には少しでも安全性が向上するんならばやらねえ理由はないってことなんだろ。
俺なんかはけなげにも大体の監視カメラの位置を覚えることで出来るだけ記録に残らないよう対処してるし、俺よりもっと強力な光や電磁波を操る怪人なんかはそれ自体を改竄することで裏をかいている奴もいるみたいだが、結果としてそういったごくごく少数による不都合よりもそんなことが出来ない奴の対処の方が優先度が高かったんだ。

おまけとして、悪の組織がやらねえようなショボイ軽犯罪、怪人とか戦闘員とかじゃねえ普通の悪人による引ったくりとかも噂を聞いてびびったのか、だいぶんなくなったとかで結局人権だなんだの声も消えてって、今ではねえ方がおかしいぐらいだ。



が、そんな便利な正義の道具は、当然ながら俺達にとっても便利なもんだ。

何せ、コイツの役目の一つには野良正義の味方の管理、ってこともあるんだ。
そう、俺も始めて知ったんだが、一般に知られていない機能の一つとして、こいつは国が管理していない野良正義の味方を監視するためにも使われていたらしい。

町中を監視しているということはすなわち、正義の味方の活動を見張ることの役にもたつ。
強い正義の味方の近くによわっちい奴を配置する必要はないし、逆にそれほど強力でねえんだったら、やられたときにすぐさま次の奴を呼び出せるよう準備しておく必要がある。
正体を隠しているつもりのライダーの職場をそれとなく配置換えさせたり、特定の悪の秘密結社と相性のよい能力を持つ魔法少女をその組織の活動地域の近くに転校させたり、といったことの為にもまずは誰がどういう能力を持って何をしているのか、ということの把握は治安維持のために国の上層部としては知っておきたかったんだろう。

まあ、実際にそういうことをしてるかどうかは知らんが、このデータ群を見るからには多分してると見て間違いない。


正義の味方が一枚岩じゃねえとはいえ、減税なんて餌で肉の壁をつくらにゃならんくなったぐらい切羽詰ってるこの国で、たとえ管理は及んでいなくても強力なヒーロー・ヒロインを遊ばせておくことなどできやしない、って涙ぐましい努力の一つだな。
背負うものが多い人ってのは大変だねえ……




で、俺がその上前をはねる、と。
とりあえずターゲットの黒の魔女とか言うのと戦っているヒーローを探さしてみる。


一戦闘要員が長時間使っていれば流石に怪しまれるだろうからそんな一遍に解決したわけではなかったが、それでも膨大なデータを誇る、悪の組織垂涎のシステムだ。
少しずつ、少しずつ調べさせていればやがて俺の望む情報まで桃香はたどり着いた。


で、そんなわけで今俺は桃香から上がってきたデータ、野良魔法少女の資料を読みふけってんだ。
どうも見つけた中の奴に、狙っている『黒の魔女』とかいう連中と敵対しているのを見つけたからな。


見つけた情報は結構な重要度としてランクされていた。
なんでも、魔法少女メルティーアイリスこと杜若沙織ちゃんは、そろそろ限界らしいから要注意株だ、と。


元々複数人でチームを組まない、単独の魔法少女の場合短期間で敵対組織を壊滅させるか、あるいは速攻で敵に捕らわれるかのどちらからしい。
敵が非常に強大な組織であり、しかし魔法少女側もかなりの戦闘能力があるために沙織ちゃんみたく三年以上にも渡って決着が付かないのは稀なケースだ、ってことか。

いや、知らんかった。
基本的に科学よりの改造人間なので、魔法関係とはハエ以外では縁が浅かったからここまで詳細な統計は見たことなかったわ。
ウォッカから流されてくる資料には一応全部目を通しているんだが、何といってもあれは所詮キラーアースの怪人レベルで奪える範囲の情報だからな……そんな範囲が広いわけでも、底が深いわけでもないからこうして統計としては始めてみたぜ。


他にも、系統的には戦闘系で、主要武器は魔法を宿すことの出来る槍。
それを使った我流と思われる体術と魔法を適切に組み合わせた、近・中距離戦を得意としている。
魔法の威力自体は全体からするとそれほどではないが、とにかく『歴戦』といってもいいほどの戦歴を持ち、それどころか一瞬の油断も出来ない単独での戦闘経験を数多く積んでいる魔法少女なので、ただひたすらに魔法を使うタイミングがうまい。
上司は妖精の国の『女王』と呼ばれる存在で、お付の妖精は小人型妖精の『リーン』、変身するにはコンパクトを使用する。
それほどまで魔法の威力がないので、保安局に在籍している魔法少女による解除魔法で認識訴外魔法は解除された為、一応自宅や本名もわかっているが、下手に接近して不信感をもたれてはいけないのでそちらの監視は解除しておく。


とまあ、ちょっと調べただけでいろんな情報が出てきた。


だがまあ、そんな事実自体はどうでもいい。
大切なのは、彼女が疲れている、ってことだ。

報告書でもそここそが強調されていた。


たった一人で三年間戦い続けてきたが、孤立無援の状況で延々と終わりの無い戦いを続けることに、心身ともに限界らしい。
これは、国のやっている正義の味方組織、通称『保安局』に勧誘するチャンスだ! と。
だけど、公園での監視映像からすればお付の妖精が反対しているっぽいから力を失うかもしれないし、こっちから言い出すと条件悪くなるから、もうちょっとだけ放置プレイな、あっちが心身ともに破ける寸前に助けに行ったほうが印象よくなるはず、か。

これが大体の報告書の内容だった。



…………この報告書書いた奴、スカウトしてやろうか?
ぜってーこっち側のほうが向いてるぜ。

正義の味方の実働部隊の連中がいくら脳筋ばかりでそんなにこれを活用しきってはいないとはいえ、連中も見える情報ランクの場所に、そりゃ文章こそもうちょっとオブラートにくるんであったがそれでもこうもぶっちゃけた内容の報告を上げるとは。
どう見ても途中から仮にも正義を名乗る側の思考じゃねえし、公僕として周囲の同僚に対する気遣いがあまりに出来てねえぞ、これ。

やるねぇ、公務員。
さすが、税金泥棒と身内にまで敵視されるだけはある。
まあ、そいつは後の話だな。



で、だ。
その、心身ともに弱っている沙織ちゃんなんだが。
『黒の魔女』と敵対していて、御付が小人型で、上司が女王。
で、名前が魔法少女メルティアイリス。



…………変身アイテムがコンパクト、というのだけがあれだが、なんか心当たりが出てきたな。
とりあえず、その心当たりを当たってみることにしよう。


「おい、蘭華」
「……?」
「ちょっと、変身してみろ」
「……はい」


先日ゴミ捨て場に転がっていた前にハエから受け取った変身ステッキを掘り出してきて、蘭華に渡したところ、見事に適合した。
まあ、妖精が認めたものであれば誰でも変身出来るんだろう……ハエなんか見る目の無いことに俺を変身させようとしていたしな。
と、いうわけで手元にあったステッキを渡すと、蘭華はとことこと俺から少しだけ距離をとって再びこちらに体を向け、その自身の体そのものを変革する杖を振ってお決まりの変身呪文だとか言う言葉を唱えた。


『メルティ・ミルティ・キャンディ・ピース!』


蘭華の舌っ足らずな声にしたがって、どこからともなく明るいメロディが流れるが、まあこの部屋は防音なので気にしないことにする。

それに伴い、ガキの体が光って一瞬全裸になったかと思うと、リボンっぽいもので包まれ、段々とその姿が変わっていく。
少しだけ手足が伸びて小学生中学年ぐらいになり、それに伴い顔も少しだけ大人びていく。
いつも垂らしている長い髪はいつの間にか頭上でアップにされていき、徐々に徐々に身を包んでいたリボンがフリルの多い服装へと変化していき、室内なのに靴も形成される。

そして高々と名乗られる、自身の名乗り。


『魔法少女、メルティオーキッド!』


そこには、資料に添付されていた写真とよく似た、しかし色違いの服装に身を包んだ蘭華がいた。

…………決まりだな。
リーンとか言うあいつ、ハエの同僚だ。


おそらく、彼女の増援として魔法の国から新たに送られたのがハエだったんだろ。
ちょうど新シリーズで加入する新たな魔法少女、見たいな感じで。


つまり、ハエはおそらくリーンと面識がある、もしくはある程度の距離を持って最初っから近づくことが出来る、ってことだ。
おそらく、同じ魔法少女同士である蘭華もな。



よっしゃ、じゃあそれを念頭に置いて計画を練るか。

まずはハエの奴を呼び出して情報収集と、俺にあんな呪文を唱えさせた挙句にむちゃくちゃなフリルの付いた服を着せようとしてきたことに対する懲罰をせにゃならんな。









沙織は驚いていた。


先ほどまで、いつもと変わらぬ終わりの見えない戦いを続けていて、その今回の敵である巨大な樹木状の異形と戦いっていたのだが、今回は一つだけ違う点があった。
一瞬の油断を突かれて敵に拘束されてしまったのだ。

今回の敵は強く、自身の属性である氷結という力もさほど効力を発揮しなかった。
一撃が肌を灼き、一発が骨を打つ。

目に見えぬ疲労が溜まっていた沙織にとっては、相手のあまりの強大さを目の当たりにしてもなお、その猛攻を何とかして貫いてやる、とまで情熱を持つことは出来なかった。

そのため、沙織は魔法少女になって始めて逃亡を考えた。
どうせ、自分が何とかしなくても、きっと自分よりも他人に認められている正義の味方が何とかしてくれる、と言う考えが頭の中をよぎってしまったのだ。


そして、それがいけなかったのか。
戦闘中に余計なことを考えて気を散らしたことを瞬時に理解したのか、異形はその腕を一瞬で伸ばして沙織に向かって攻撃してきた。

マズイ、と思った瞬間にはすべてが遅かった。
槍という武器の間合いよりも近い範囲に入り込まれてしまっており、この距離では瞬時に魔法を使うことも出来ずに、モロに沙織はその一撃を受けてしまった。
魔法で強化していたはずの足と地面の接地力が一気に解除されてしまい、沙織はそのあまりに重い一撃を受けた勢いで後ろにあった大木まで吹き飛ばされてしまった。


息が詰まる。
打たれた部分が熱を持つ。
預けた背の防護服を貫いて、木の枝か岩か何かの尖ったモノが突き刺さっている感触がある。
完全に沙織はその蓄積した痛みによって痛みで他のことを行うことが出来なくなってしまった。


それを見て、余裕を持って近づき、沙織を拘束しようとしてくる異形。
しゅるしゅると、先ほどまで自分を打ち据えていた相手の蔓のような体の一部が伸びてきて、自分を縛り上げていくのを、何処か力の無い目で沙織は見ていた。


「アイリス! あきらめちゃだめだ、頑張れ!!」
「っ……っ………」


今まさに相手に捕らえ上げられた、といった瞬間であるにもかかわらず、沙織はかろうじて手足を動かして入るものの、その動きには何が何でも脱出しよう、という危害が欠けていた。
そのため、外野であるリーンがどれほど必死になって声を張り上げようとも、その高速は微塵も揺るがなかった。



(敵を前にして逃亡を考える魔法少女なんて……もう、正義の味方なんていえない。きっと、これは罰が当たったのね)



あえてその心中を言葉で表すなら、それは「もういいか」というあきらめたものであった。


リーンと決別して保安局に駆け込んでしまえば、もう二度と魔法は使えない。
しかし、このまま魔法少女として戦っていくことは出来ない。

それは、心身ともに自分が限界だ、と言うこともある。
が、それ以上に自分は正義の味方としてやってはいけないことをやろうとしてしまった。
逃げる、ということを考えたことで改めて自分の正義の心がほとんどなくなっていることに気付かされてしまった沙織は、現状の自分の姿のあまりの醜さに涙し、いっそ自棄になっていた。



もう、限界だった。
このまま犯されるにしても、殺されるにしても、それは戦いの終わりを意味する。
つまり、もう戦わなくていいのだ。


命を失うことは、酷く怖い。
この後の生を諦めなければならないことは、すごく嫌だ。

それでも、こんな戦いを続けることに比べれば……もう戦わなくてもいい、という事実は惨く魅力的に見えた。


体の傷や疲労は魔法で癒せても、心の傷は回復しなかった。
戦う為の力をくれた妖精も、失われた勇気までは与えてくれなかった。

それは、きっと時さえ置けば解決するようなものだった。
ほんの僅かな会話で済む話だった。
信用の出来る者が傍にいて話を聞いてやる、たったそれだけで自分は今何を考えていたんだろう、とあまりに自棄になっていた自分を笑い飛ばして、沙織は再び正義の味方としてたつことが出来ただろう。

だが、それは御付であったリーンには彼が余りに幼すぎる故に取ることが出来ない手段であり、彼女の心のケアよりも国家の安全を優先する保安局にとっても取ることが出来ない手段であった。

そのため、救いの手は間に合わなかった。
たった一人で戦うよりも、いっそ死んだ方が楽だ、というまで追い詰められてしまった沙織に対してあわてて保安局が他の正義の味方を派遣する前に……リキュールの魔の手が到着してしまった。



「メルティーナフレイムッ!」


爆音が鳴り響き、今まさに沙織を嬲ろうとしていた樹木の異形が燃え上がる。
それと同時に、沙織を拘束していた蔦がすべて切り払われ、沙織は地面の上に軟着陸してその囚われの身から逃れることが出来た。

「正義の味方」であるはずの自分の身には決して訪れることのないはずの救いの手に、思わず無気力になって死んでもいい、と思っていたことも忘れて迫り来る炎の松明と化した異形から距離をとって辺りを呆然と見渡す沙織。


そんな彼女の目が、それを捕らえるよりも早く方向を掴んだ声の方向に吸い寄せられる。



「人を傷つけるばかりか、アイリスまで傷つけようとするなんて、許さない!!」



底には、自分とよく似た服装に身を包んだ、しかし自分よりも若い少女が―――正義のために戦う魔法少女がいた。


「大丈夫? おねえちゃん!」
「あなたは……」
「魔法少女、メルティオーキッド! さあ、覚悟して、『黒の魔女』の悪魔!」
「そんな……私と同じ、魔法少女?」


さんざん望んだ、沙織にとっての「正義の味方」は、自分よりも幼い少女の姿をしていた。
















さあさ、お立会い。

とんでもない危機を助けられる、というつり橋効果から始まった同じ魔法少女同士の友情劇。
一人は十五歳、もう一人は五歳と三倍以上はなれた年の差ながら、二人を襲う共通の危機はそんな距離などひとっとびで二人の関係を深めてくれます。
しかしそれは、自らには無いものを持つ相手を羨み続ける負の感情の始まりでした。
ましてや幼いほうの彼女の後ろには、邪悪な影が揺らめいているのです。

ヒビの入った正義の心はそう簡単には治らない。
果たして彼女は『黒の魔女』の猛攻と…………この俺、リキュールの攻撃をしのぎ続けることは出来るのでしょうか?

新番組『魔法少女メルティアイリス!』、次週も乞うご期待! ……だぜ。



次の話へ

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No title

報告書書いたのは「ヒーローって・・・」のブラックさんでしょうかwww
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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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