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悪の秘密結社乗っ取りマニュアル7

いそげみんな 敵の本部で囚われた仲間を救え!









ストックホルム症候群って知ってるかい?

強盗犯が人質とって長時間立てこもっているとかみたいな非日常的な異常な状況だと、精神的混乱や自己欺瞞的な防衛本能によって、人質が犯人を庇うことがある、って現象だ。
勿論、これは一種の気の迷いってもんで、冷静になってみたらそんな好意が続くわけがねえ。

だが、精神の均衡が欠けた状態では、こんなおかしなことも起こりえるんだ。
人間の考えることをある程度操れる俺でも理解できないようなことがな。

あ、ちなみに言っておくと、逆に強盗犯が人質の心に同調しちまうのは、リマ症候群っていうんだぜ?












レンジャーは―――特に公務員型の戦隊モノは、ライダーとか魔法少女みたいに変身しなきゃあただの人、ってワケではない。
国家公務員という形で国が直接お金を払って雇っている奴らは、その給料分だけあって戦闘や諜報についての最小限度の訓練は受けているのが普通だ……勿論、変身ツールを使える条件をたまたま持ってたからレンジャーなワケで、大概の奴は身体能力が高いからレンジャーになったわけじゃねえだろうけど。
まあ、当然白兵戦での戦闘術もそれなりから達人級までランクはあるものの、ある程度はおぼえている、と思ったほうがいい。
これがよくある魔法少女とかだったら大概素人だから楽なんだろうが、ピンクとはいえ一応戦隊の一員だからな。
変身できなきゃ全く戦えない、ってわけじゃねえ。


対するは、俺。
改造人間だから、とりあえず骨格とかもいろいろ改造されてる。よって、丈夫。
内臓とかもいくつかは人造の臓器にとっかえられているし、筋肉だって一部はバイオマッスルに置き換えられているから、常人の数倍以上の力を持っている。
だから、完全な一般人相手ならその力と速度の差で瞬殺出来るんだが……別に格闘技修めてるわけじゃねえからそれと強さは完全にはイコールではつながんねえ。
特に俺の場合は、別に自分の強さなんてもんは興味がねえから、まあせいぜい戦闘員並みか、へたすりゃそれ以下ってとこだな。


で、戦闘員といえばあまたの番組でも武道の達人に勝ったり負けたりする強さの不安定な存在である。


と、言うわけで変身を解かせたとしても、俺がこのピンクに勝てるか、と聞かれればこれが微妙なライン、としかいえなかったりする。
ピンクが実は熊を素手で殺せる空手の達人、ってのは戦隊モノだったらそこまで珍しいわけじゃねえからな。
やってみて返り討ちにあいましたー、じゃせっかく捕らえたのにもったいないことありゃしない。
まあ、その前に多分ぼろぼろにされるからもったいないとか言ってられないと思うが。




と、いうわけで人質とって拘束できたからといって、油断は禁物なのだ。

シールドルームにはいくつかの監視カメラが備え付けてあったのだが、初日にその大部分が潰された。
つけておいた手錠も、通販で買ったおもちゃみたいなものとはいえ速攻で壊された。

まあ、それほど厳重な拘束をしていたわけではないんだが、それでもこれほどまでアッサリと拘束を解かれていろいろやられると、改めて直接対峙しなかった先見の明を感じるね。
だから中の様子はイマイチはっきりとはよくわからないんだが、ひょっとすると入ろうとした瞬間一撃を食らわせられる可能性もゼロじゃない、だからその隙を突いて脱出を……とピンクは考えてるんだろうねえ。





そんなこんなでとりあえず……飯も三日ほど抜いて放置した後の話だ。
緊張感なんてそんな長い間持続するもんじゃないからな。


最初は不眠不休でこちらの動きを警戒していたピンクであるが、流石にもう疲れが見えてる。
まあ、風呂には入れないし、飯は食えないし、水も飲めないし、トイレにもいけない。
眠ったら何されるか分からない、と来たもんだ。
そりゃ堪えるよな。

見た感じ、だいぶんピンクは追い詰められていた感じだった。
え? 監視カメラは潰されたのに、どっから見てんのかって?

仕込みに仕込んだ隠しカメラの方からに決まってんじゃないか。

もともと大仰に備え付けてあった監視カメラはおとりだ。
ああやってわざわざ見せ付けるように設置しておけば、それを壊したことで安堵して隠しカメラに対する警戒心が若干弱くなるだろ?
事実、ピンクの奴はそれほどまで念を入れて探すことはなかったね。
一旦開けた宝箱の底が二重底になってるとは、なかなか考えないものさ。


最近の電子機器の進歩はすごいもんで、螺子一本に見せかけたカメラから、埃にしか見えない盗聴器まで、あらかじめ知ってなきゃもうほとんど見分けは付かんね……まあ、電磁波を多少操れる俺の力で出力が弱くてもかろうじてキャッチできてるからその性能、ってこともあるんだが。
俺が見るだけなら受信機無しで直接脳みそに映像とか送ればいいだけだからな。

ま、知っててこっちを油断させる為に放置している可能性はまだ十分あるが、あそこまで単純化された機械だと途中で改竄、ってのは流石にプリズムレンジャーの技術でも無理だろう。
故に、疲れた態度―――素なのかそれとも擬態なのかはさておき―――それを晒しているピンクの目論見はさておき、映像自体には嘘は無い。


だから、相手がわずかばかりにおいてあった家具を解体して武器を作り、こっちは不意を付こうとしているのとは裏腹に、普通に目で見るような感じで監視していた俺からすれば、ピンクの苛立ちが頂点に達しているのがよく見えた。
さっきはレンジャー系は格闘やらなんやらについて最低限の訓練は受けてるはずだ、って言ったけど、逆に言うならレンジャーは最低限の訓練しか受けてないことがほとんどだ。

だって、あいつら若いんだぜ? 
ピンクとか、確か十八ぐらい……しかもスカウトされてレンジャーになった組だから、一年前までただの学生だったんだぜ?


ヒーロー側の最大の弱点がこれだ。
どういうわけか、連中の変身ツールは十代、二十代の連中を使用者として選ぶことが多い。
しかも、ついこないだまで素人でした、ってやつが何故か突然力に目覚めたり、偶然選ばれたりだ。
幼い頃から訓練を積んできました、って奴はそれこそ上位のごくごく一部に過ぎない。
俺の組織の相手に成るような中堅とか下位クラスの大抵の奴は、正義の味方になるために訓練を積んできたから変身できます、じゃなくて変身できるから正義の味方をやってます、って感じだ。

そして、これまた例外を除いてほとんどの連中は、三十代になるとその力を使わなくなる……なんでかは俺もしらねえがな。
これは、魔法少女だろうがレンジャーだろうがライダーだろうが多少の差異はあっても、ほぼ同じだ。
悪の組織の怪人や幹部連中の年齢層がかなりバラけており、あらかじめそれなりの訓練を長年積んだ者が多いことをおもえば、これは不自然きわまりねえ。

結果として、ついこの間まで一般人やってましたが、今日からヒーローです、って奴が変身出来る奴には多すぎる。
逆に、変身も出来ない連中は元傭兵から一流商社サラリーマン、プロスポーツ選手崩れと多種多彩なんだが、まあそんな連中は雑魚怪人にも勝てねえし。

だから、中堅以下のヒーロー達は、怪人による力押し以外では随分無防備だ。
一応それを補う為に司令官的なのがいる場合もあるが、基本的にあんまり役にたたねえ。
いや、そんなんだから上位には上がれない、といった方が正しいかもな。

上位の連中になるとそれを乗り越えてきたり、あるいはそういった搦め手すらも力技で粉砕できたりするから往々にして事前に入念に準備と訓練をして挑んだはずの悪の組織も壊滅したりする……まあ、壊滅理由の第一位は幹部の戦略ミスらしいが。



ま、そんなこんなでプリズムレンジャーも、たしかたまたまなんちゃら粒子との適合性が高い者がスーツの着用者として急遽選ばれた、ってやつだ。
そんな奴が、飢えや監禁に耐える訓練をそれほど高いレベルで身につけてるわけがないだろ?
後二、三日放置すれば当たりかまわずわめき散らすか、こっちに向かって懇願するかのどちらかだろうということは目に見えていた。

流石に、盗泉の水を飲むぐらいならば餓死するって言う覚悟を一年前まで一般人だったレンジャーに求めるのは酷ってもんだろうが、だからといってせっかく手に入れた生きのいい獲物が、命惜しさにこっちに向かって媚び売るようになっちゃあ意味がない。
それじゃあ飢えが終わったらはいさようなら、ってなるだけだ。

犯すにしろ、嬲るにしろそんなんじゃあ面白くねえ。

こっちに媚びないように、しかし面白く踊ってくれた挙句に最終的に洗脳だけに頼らずに、力ずくではなしに、俺の配下になるのが望ましい。





と、言うわけで流石に意識も朦朧としてきたのか、寝落ちに近い形でピンクが崩れ落ちたので、そろそろそのための仕掛けを開始する。
やれやれ、ぐだぐだと理屈を抜かしたけど、それにしては意外と持ったもんだ。
俺だったらすぐに降参してとりあえず様子を見てみるがねえ……


眠ったふり、ということもあるだろうが、周辺に仕込んだ隠しカメラについてはおそらく気付いていないピンクがそのようなことをする可能性は低い。
多分、マジで眠ってんだろ。
ま、罠だったとしてもブロックごと封鎖してあるからどうせ逃げらんないしな。






今回使う道具は、こいつ、俺の手駒としてウォッカとかにもばれずに使える戦闘員、第二号君だ!
スペックは一号の0.9倍、所有スキルは特になし! というなんとも素晴らしい性能だ。

……一号のことは聞いてはいけない。
彼はピンクを捕まえる為の尊い犠牲となったのだから。

と、いうわけで戦闘員二号君―――名前は……サトシでいいや、なんかそれっぽい顔してるし―――こそが、今回のピンク攻略作戦で最も重要な駒となる。
別に三号でもよかったんだが、まあ順番に死んでいく方が番号つけた意味があるだろ。
こないだキラメタルの戦闘員一人パクってきたから六号まで順番つけちゃったしな。

と、いうわけで自室でエロ本読んでマス掻いてたサトシに、ある感情を植え付ける。


(俺は、ピンクが好きだ……)
(たまらないほど好きだ……)
(何とかしてここから助け出さねばならない……)


その突如生まれた気持ちは、当人にはおそらく不自然さも感じさせないで、サトシに突如料理をしなければ、という気持ちを生み出したはずだ。
流石に戦闘員の操作ぐらいはもう半分寝ててもできるぜ。





今回サトシには別に戦闘をさせるつもりはないので、ある程度の自意識を残してある。
戦闘時には筋力のリミッター外しの一環として、痛覚どころか意識までも完全にカットしてるけど、あれじゃあこれからやる搦め手には都合が悪い。
故に、俺が指示した内容を自分の意思で考えたものだ、と思い込ませる程度でしか操ってないから、基本的な思考回路は元となったサトシに順ずる。

分かりやすく言うと俺が命じている、ということをサトシ本人は全く気付けない程度の洗脳、ってことだ。

とりあえず、今は上役である俺を油断させる為、機会を窺うべし、って考えを植えつけといた。


だから、何をする気かな、と操ってる当人である俺も楽しみにしていたんだが……炊事場に行ったかと思ったら炒飯かよ。
別に飯を差し入れること自体は禁止はしてない(というか、食わせろと命じていないだけな)ので、これ自体はピンクと一緒に脱出を図るサトシの方針としては間違っていないと思うんだが、ここは何か明らかに食えそうにない面白料理を作るか、プロ顔負けの腕を見せ付けるところだ。
それだというのに、わかっていない奴だなぁ、おい。


仕方なく、作らせた炒飯をさらに盛り付けさせ、トレーにのせる。
まあ、面白みはねえがこれで捕虜用の食事が一丁上がりだ。
と、いうわけでサトシが周囲に気を配りながら持っていく。

ピンクが寝ているからしばらく休憩だ、ということはすでに戦闘員全員にネットワークで伝えてある。


サトシは周囲を窺い、内部へと聞き耳を立てて、用心に用心を重ねてこそっと、扉を開ける。
この瞬間、ダッシュで逃げられる危険性が一番高いから、サトシの態度はさして不自然ではない。
改造人間である俺がせっかく捕らえた獲物を、万が一でも戦闘員ごときのミスで逃がしたりなんてしたらどうなるのか、ぐらいはこいつにも分かってるんだろ。
実は廊下からトイレにいたるまでこの廃病院の中ならありとあらゆるところに俺の目となるカメラが仕込まれている、ということを知らないはずのサトシも、俺が見ていないと思っている場所でもきちんと用心はしていた。

ああ、俺の配下としては実にいい心がけだ。
俺は怪人どもみたいな力押しは好まねえ。
すべて、仕込みに仕込んだ計略その他で押してく方が好きなんだから、逃げたピンクと鬼ごっこなんてやる気はさらさらないね。

だからこそ、逃がさないようにする心遣いは必要なものだ。


だが、サトシが用心しているのは果たして誰に対してだろうねえ?
果たして、ピンクを逃がさない為か、それともピンクを逃がそうとしていることを気づかれない為か。
ま、俺が操っている以上どっちかなんて分かりきってるけどな。


俺がサトシに対して出した命令は「恋にも似た感情でピンクを助けろ」ってやつだ。
今のサトシの脳内は、きっと恋に焦がれる女子中学生みたいにピンクのことで頭一杯になってるはずだ。
だが、同時に俺に対する警戒もある程度残しておき、ピンクを助ける手段についてもある程度思考を誘導しておいた。
それに従い、サトシは食料を差し入れる際にほんの少しだけ、俺にばれない程度にメモを挟むだけで今回の行動を終えた。

書いた内容までは流石に監視カメラの解像度では把握できなかったが、内容なんぞ見ないでも分かる。
多分、『機会を図って脱出させるから、今はしばらく待ってくれ』みたいな奴だ。
実に個性のない思考をしてるな、サトシ…………ロリコンである戦闘員四号のコウイチにしておいた方が面白さ的にはよかったかもな。
ま、やってること自体は至極オーソドックスで正統派で、この状況下では最善の行為だがな。


そう、今はそれでいい。
俺のリークしたキラーアースの支部の情報にレンジャーどもが掛かりきりになっている以上、まだ時間はいくらでもあるからなぁ。
今頃見当違いの狙いと怒りをもって襲撃してる連中に、ラムもさぞかし泡食ってるだろうよ。

その間にサトシは、その動きがすべて俺に筒抜けであり、それどころかその思いすら俺によって植え付けられたものだと言うことすら知らずに、今はただ必死になってピンクの信頼を稼いでくれりゃあいい。
理性だとか、信念だとか、そんなあやふやで綺麗な言葉ではどうしようも出来ないほど戦闘員達は肉体レベルで俺の調整を受けやすく改造されてるんだからよ。
その慕情が何故生まれたのか、ということすら考えもせずに、ただただ衝動に従って行動すれば、それが俺の植え付けたプログラムである以上俺に有利に働くんだ。

戦闘に自爆、そして搦め手と、実によく働くいい駒だぜ……力押ししか出来ねえ怪人どもよりよっぽど役に立つ。





さて、極限状態で差し伸べられた救いの手、はたして正義の味方様は疑うことが出来るかな?




次の話

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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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