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悪の秘密結社乗っ取りマニュアル3

魔法少年はお年頃?









「地球が大変なんだ!」
「…………」
「大変なんだよ!」


うん、大変だな。
主にお前の頭が。



悪の秘密結社の改造人間である俺も、私服ぐらい持ってる。
というか、普段は戦闘員と見分けがつかんとかいわれる俺だって、年がら年中黒タイツ着てるわけじゃねえ。
むしろ、仕事んとき以外は脱いでるから、割合からいったらあんな対刃・対刺・対衝撃・対炎・対弾・その他もろもろな生地のせいで着心地最悪な重てぇ真っ黒くろすけなんざぁ着てないほうが多い。

悪の組織とはいえ流石に休日無しじゃあ最近の世知辛い若者は集まらんのよ。
つうワケで社保険完備、寮有りで育児所だってあるんだぜ……どうせ組織への忠誠心は入ったらすぐ植え付ける(文字通り機械で強制的に)から、戦闘員らにこんな恩恵が適用されることはすくねえけどよ。
まあ、あんまり搾り取ると雑魚どもの生活が立ち行かなくなって一般社会にまぎれてるときに不都合が出来るから健康ーで文化的な最低限度の生活費ぐらいは出てるらしいがな。

ま、それは下っ端戦闘員の話。
それよりちょっとだけ上な俺には関係ねえ。
改造人間ってだけでとりあえず戦闘員以上怪人未満な地位につける。

それに加えて俺は結構使える能力持ちだから、そん中でもそこそこ上だ。
腹立たしーが、まあ組織の為にいろいろちまちまと金稼ぎで貢いでんのよ、律儀な俺は。
まあ、こないだ支配下に置いた幼女さえいれば、もうそんな苦労はしなくてよくなったんだけどよ。


それでも地位的には俺より上の奴は少なくねえが、まあ幹部連中はさておき大抵の怪人なんざあどうせ生まれてから半年もしないで正義の味方にやられるし。

そして、基本的に悪の組織に来るような奴は社交性のない落ちこぼればっかだから、幹部になればなるほど権力握って自分で定める勤務シフトがフリーダムになる。

俺だって、キラーアースを乗っ取ったら俺だけ週休六日にしてやんよ。
で、残った一日で仕事と称して搾取したり破壊したりすんの。
逆創造神様だな。



そんなわけで改造人間っちゅうことで週三日以上で休みを取ってる俺は、今日も丸々一日オフの日だ。
洗脳した連中から金を搾り取ってるから、俺は怪人以下戦闘員以上の給料の割には金持ってっから、普通の服着てなんか今日はパーっと散在でもするか、と町をぶらついてたら、わけの分からん生き物に出会った。



それがこれ。
俺の前で「地球があ・ぶ・な・い」とかいってるハエだ。

別に外見がハエというわけではなく、夢見がちなメルヘン女が見たら妖精とかいうかもしれんが、どう見ても羽根がハエっぽいので多分変種のハエだろう。
やれやれ、地球環境を大事にしないからこんな遺伝子異常な生き物が生まれてくんだよ、ごみの分別はしっかりせにゃならんねえ。
俺もスチール缶とアルミ缶はきっちり分けてスチールは他人の敷地内に、アルミは川とか海とか自然環境の中にポイ捨てしてるぜ……ああ、なんてエコロジー。


しかし、悪の秘密結社の人間がハエに地球のピンチを教えられるってのはどうなんだ?
順調に侵略が進んでますよ~っていうお助けキャラか?



「あ~、地球のピンチぐらいは知ってんだよ、それがどうしたっつーんだ」
「ええ、本当かい! さすが女王さま、僕をちゃんと事情を知っている人のところに送ってくれるなんて! そうなんだ、今この世界は『黒の魔女』の侵略の危機に陥ってる」



……だから何? 
いや、黒の魔女とか言うあんまり酒と関係なさそうな奴は確かにうちの組織の奴じゃねえ商売敵だろーけど、別に悪の秘密結社が一つ増えるだけだろ。

今この日本だけに限定しても大小いくつの悪の組織があると思ってんだよ。
侵略範囲がお互いかち合わないようにある程度の調整を行ったり、うざったかったりショバが被ったら潰しあいしたりといろいろやってるけど、それでもうちと同等以上のやつだけで二十は越してんだぞ。
それ以下になるとその倍は軽くいく。

最近は地域の為の小悪を働く悪の組織とか地元密着型の正義の味方なんてのも多いから、一個も悪の組織の活動がない都道府県なんて、福井とか島根とか和歌山みたいなマイナーなとこだけだぜ、多分。
ましてやうちのいる東京なんてのは正義と悪共に激戦区、お互いでもしのぎを削りあってんだ。
いちいちぽっと出の他の組織の侵略具合を気にしてらんねえよ。

弱けりゃ正義の味方にやられて勝手に淘汰されるし、強くてもとりあえず自分の周辺支配した後に改めてそいつらも潰しゃーいいだけじゃん。
何でわざわざ俺にそんなことを教えに来てんだよ、ハエ。



「僕は光の国の女王様から使命を受けて、こっちの世界に来たんだ。だけど……ひとりじゃどうしようもなくて。お願いだ、僕と一緒に戦って!」



……ああ、分かった、こいつ多分魔法戦士とか少女とかいうののマスコットキャラとかいう奴だ。
変身グッズ渡した後はなんかほとんど役に立たないにぎやかしと化し、それどころか軽率に動いてピンチを招いたり人質になったりするタイプの。
たまにパワーアップアイテムを持ってきたりもするはずだ。


まあ、俺外見的には中高生に見えるだろうし、私服きてりゃあ悪の秘密結社の改造人間とは分からんわな。
つうか、明らかに日本慣れしてないこんなハエにまで悪役だって分かられたら、暮らしていけねえだろうが。

だからっつって、いきなりこんなこと言われてきょーびの糞ガキがはい分かりましたよ、っつって従うと思ってんのかねえ?
労働基準法適用外、死亡保障や傷害保険もなし。無駄に肉体労働で拘束時間長くて昼夜の区別無しに痛い思い一杯してそれで報酬はみんなの笑顔です! とかいうのだろ?
明らかに3Kじゃねえか。

こないだヤフオクみたらその辺の糞ガキに騙されて捕獲された妖精っぽい生き物が「掘り出し物! 自立稼動オリジナルフィギュア」とか言って出されてたぞ。
そりゃ、まともな奴ならこんな胡散臭い条件には乗らんわな。

だが、そんな俺の考えなどまるっきり無視してこのハエは延々と一方的に喋りかけてくる。



「大丈夫、僕が君に戦う力をあげる。このステッキを握って、心の中に浮かんできた呪文を唱えるんだ!」



……うぜえ。
きわめてうぜえ。

すでに俺が戦うってことで自己完結していることも、自分は安全な場所にいて全く汚れる気なさそうなところも、自分らが正義だって信じきってることも、そもそも男の俺にふりっふりの変身ステッキを渡してくるところも。


『これを一振りすれば君は魔法少年マジカルリキュールに変身し、全身の筋力や反射神経が桁違いに上昇するばかりか、魔法の武器を召喚し、戦うことが出来るのだ!
戦闘員と大差のない体しか持っていないときとは世をしのぶ仮の姿、魔法を駆使して仲間を集め、悪い大魔法使い、黒の魔女を打ち倒せ!』


……アホか。
今時幼稚園児ぐらいにしかはやんねえよ、そんなもん。

まあ、最近は純真で清純で勇気があって友達も多くて処女な少女なんてのは、ほとんど先に正義の味方にはいってるからこういった妖精連中も過当競争真っ只中なんだろうけど、だからって個人的な感想を言わせて貰うなら、男はないわ。
魔法少年とか字面からしてイマイチだし、どう見てもこのスティック女もんじゃねえかよ。




大体俺に戦闘能力はいらねえんだよ。
俺の武器はあくまでこの身ひとつと能力だけだ。
乗っ取りたくらむビッグな男には、余計なものは必要ねえ。

だってよ、そんなもんあったら面白くねえだろうが。
明らかに自分より格下のやつに嵌められるから笑えんだ。
正義の味方が自分より弱い奴に仲間人質に取られて手も足も出ないでおろおろする、万が一仕込んでる途中でばれたらそっこーやられるっつうこのドキドキ感がたまんねーんだろうが、分かってねえなあ。


そういう侘び寂びが分かってない奴は、教育してやらねばならん。

と、いうわけで。



「スタン・アタ~ック!」
「へぶっ!」


渡された幅広のスティックを使って、返す刀でハエ叩きの要領で叩き落す。
それは、俺流必殺技の名称に相応しく、一撃でハエの意識を刈り取り、全身を麻痺させた。

さすが魔法の道具、素晴らしい耐久力だ。
撲殺スティックとしては貰っておいてやってもいいかもしれない……ま、明日になりゃ多分飽きてゴミ箱行きだろうけど。




さて、この上もなく簡単に捕らえたこいつだが……さてどうしよう。

俺もヤフオクに出してみるか? 
でもなあ……それで稼げる程度の小銭には困ってねえし、そもそも見ず知らずの他人のガキの二番煎じなんざぁお断りだしなあ。

だが、手駒として使おうにもこいつの持ってる魔法的な技術を手に入れたって、どうせ戦う気のない俺には応用できねえ。
かといって、組織に持って帰ったところでドクターが喜ぶだけで、俺にはちっとも旨みがねえしなあ。





う~ん…………あ、そうだ!
よし、決めたぜ。


未だに目を回しているハエだか妖精だかの頭をがっと掴む。
適当に洗脳しておもろい感じのスパイとしてこないだ見つけたナンチャラレンジャーの自宅に放りこんじゃる。
あんだけ温い連中なら、多分疑いもせんとこいつ受け入れるだろうし、俺の力を解除するだけの技術力もないだろ。

まあ、あったらあったで、ばれたらばれたでおもしれえしな。
いかにも正義の味方のマスコットキャラ的な奴が敵に回るんだ、果たしてお綺麗なヒーローさんは操られたこいつを殺せますかねえ。




ゆっくりと、両手で掴んだこいつの頭あたりを凝視しながら集中する。

俺の能力は脳に干渉する術だ。
それも、脳の物理的な大きさだとか、成熟度によってコントロールが出来たり出来なかったりする細かいものだ。


だから、たぶんどっかの異世界とかから来たらしいこいつに脳的な臓器がなければどうしようもねえし、あったとしても人間とははるかにかけ離れた存在だったら弄り方が分かんねえが、今回はどうやら上手くいきそうだ。

どうやら見た目どおり人間が異常にちっちゃくなって羽根生えてるだけみたいだ。
理論的には人間の体をそのまんま縮小したとすれば現代人と同じだけの思考能力とか記憶力とかは持てないはずだが、まあ魔法かなんかで動いてんだろうから、深くは考えねえ。
喋った感じでは頭悪そうだったから、その魔法とやらも完璧じゃないみたいだが。





とりあえず、見聞きした情報をすべて秘密裏にこっちに流すように、ということと今後も俺の命令は無条件で聞くこと、そして最後に俺が操っていることがばれたらその場にいるやつ全員無差別に殺すようにと、こいつの考えを作り変える。

他の洗脳系の奴がどうやってるのかはしらねえが、俺の場合は脳のシナプスなどの物理的な繋がりを特殊な電磁波で読み取った後いろいろ受け入れやすいように弄り、耳から入ってきた俺の言葉を信念だとか理念だとか本能だとかの人格形成上重要な情報が置いてある場所の位置に置き換えるって寸法だ。

つまり、いわゆる催眠術みたいに思い込ませているんじゃなくて、文字通り書き換えている。
それだけに命令植えつけるツールは言葉だから早くて済むし内容も結構自由に刻めんだが、その前段階として相手が無防備に俺の手の中に入ってねえとやりにくいし、結局脳細胞一個一個書き換えるわけだからそこまで相手の脳を書き換える導入状態まで落とすのに結構時間が掛かる。
外人相手だと命令植えつけんのも電磁波でやんなきゃいかんからやたらと面倒になるのも、不便な点だ。

まあ、それは個人差があるし、基本的に脳みそが小さい動物はたとえあいつらが日本語使えなかったとしてもスキャン、書き換え共に割りと短時間でおわる。
この八分の一フィギュアみたいな妖精っぽいハエを手駒に書き換えるのに掛かった時間は、十分もなかった。

非常に単純な脳の神経構造してたからな、こいつ。
多分、一つの価値観だけで純粋培養されてきたんだろ、女王様に忠誠を誓うべし! ってね。




まあ、そんなこんなでチキチキ妖精型時限爆弾完成~!!
実際爆発するわけじゃねーけど、これである程度レンジャーどもの動きが分かるし、それどころかこいつに相手の行動を誘導させることも出来るかもしんねえ。



いいねえ、卑怯だねえ、悪役っぽいねえ、光ってるねえ。
やっぱ悪役がただ強力な攻撃魔法ばっか使うなんて邪道だぜ。
補助魔法でめちゃくちゃ相手弱体化させてから雑魚で囲んでなぶり殺しにするようなことこそ、正しい悪の味方ってもんだ。


よっしゃ、乗ってきたぞ。
だんどりはちゃっちゃとやろうぜ、っつーことで、早速こいつをレンジャーどもの自宅の郵便受けにでも放りこんどこ。
だれのところがいいかな~~~!

やっぱ魔法少女モノだろうからピンクの家がいいかなあ? 
いやいやここは、リーダーっぽいレッドの家のほうがいいかなあ。
むっつりっぽいグリーンが死んじゃったのがあれだけど、硬派を気取ってるブラックの家に押し込むのも面白いかもなあ……

あ、言ってなかったけど、喋り方からも分かるようにこのハエは男の子です、多分。
脳弄ってる最中暇だったので服捲ってみたら、すっげーちっちゃ行けどそれっぽいのがついてたので。

ついでに男連中を密かに誘惑するような暗示も掛けとくか、へっへっへ。
もし成功しちまったなら、妖精(ショタ)と正義のヒーロー(男)のカップルとか、超笑えるぜ~、これは。



ああ、楽しみになってきたなあ。
そんなこんなで俺ことリキュール、休日にもかかわらず頑張って組織を乗っ取る為に功績と手駒作りに働いてるぜ! 



次の話

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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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