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ドラゴンに首ったけ1

その1



さあ、物語を始めよう。



ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは疲れきっていた。
何故か、と問うなら答えはひとつ。
さっきからさっぱりしっかりきっかりと使い魔召喚の呪文、サモン・サーヴァントが功を奏さないからだ。

普段からゼロゼロ言われている彼女にとって、今回の儀式は最後のチャンスなのだ。
どれだけ努力してもなぜだかさっぱり魔法が成功しない彼女は、常に学園中から侮蔑の視線を受けている。
「あのスクウェアクラスのご両親を持っていながら何の魔法も使えないんですって」、「彼女があの有名な出来損ない、何をやっても爆発させてしまうゼロのルイズよ」、と。

今回の使い魔召喚の儀式すら失敗してしまえば、それに加えて進級試験に失敗したということとなり、トリステイン魔法学院史上初の留年したメイジ、「ダブりのルイズ」となってしまう。基本的にこんな初歩の魔法すら使えないものは、『メイジ』としてこの学院に入学できないからだ。

今までわれわれの娘だ、いつかは魔法ぐらい使えるようになるだろうと暖かい目で見守っていてくれていた父母とて今度こそ多分本当に愛想をつかす。上によくできる姉が二人もいるならなおさらだ。
そうなったら、なまじ実家が王国有数の貴族であるだけに、「てへっ、わたし進級試験落ちちゃった」の一言ですむことはないだろう。
おそらく、この学園を辞めさせられ、幼いころからの憧れだった王子様との婚約も解消させられ、地方の修道院に多額の寄付金の名の口止め料とともに一生幽閉されることとなるだろう。

それだけはいやだった。
たとえ今はゼロと呼ばれ続けていても、自分はこの国有数の名門、ヴァリエール公爵家の三女なのだ。きっと自分にはとてつもない才能が眠っているはずだ。
たとえばグラモン家の馬鹿息子のゴーレムをあっという間に両断したり、あのにっくきツェルプストーの魔法でも倒せないような巨大ゴーレムを異世界の知識であっさり倒したりするようなカッコいい使い魔を呼び出せるような。
震える心で、それでもルイズは自分の才を最後まで諦めなかった。


「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、五つの力を司るペンタゴン。我の運命に従いし使い魔を召喚せよ!」


そう思って、今度こそとありったけの力を唱えて魔法を唱えた。
今度もどうせだめだろう、早くさっさと失格にしちまえよこのコッパゲ、などという周囲の視線とは裏腹に、その瞬間ルイズは今までにないほどの手ごたえを感じていた。

よっしゃ。ルイズは内心ガッツポーズをとった。

そして彼女は、その手ごたえ同様眼前に今まで見たことがないほどとてつもない光が生み出されるのを見た。

 










光が収まると同時に、今までルイズに野次を飛ばしていた周りのクラスメートも思わず黙り込む。あまりにその光景が非常識だったからだ。


「……………………」
「……………………」
「……………………」


ルイズの召喚魔法は確かに成功した。

目の前でいかにもティータイムを楽しんでましたよ~という感じでくつろぐいかにも貴族然とした男とその横に控える執事服を着た少女を召喚することが進級試験のひとつ、サモン・サーヴァントであるというならば。
ついでに言うならテーブルと椅子とポットとカップなども召喚されていたが、まさかこれら非生物が使い魔ではあるまい。

男の方は長身。
絶世の美男子とはお世辞にもいえないが、高価そうな衣服と優雅な物腰とあいまって見た目も悪くない。戦士には見えないが、だからといって華奢な感じはせず、服の下にある程度の筋肉は感じさせる。
長めの髪が目の辺りまで覆っているが、その優美な姿とあいまって、まさに青年貴族、という感じをかもし出している。軍人や騎士、ではなくあくまで貴族だ。

少女の方は、そのいかにも貴族然とした主人と比べると、少々変わっていた。
真っ赤な長い髪を二つに結んでいることや大きな瞳と華奢な手足などから、ともすれば幼げにすら見えるにもかかわらず、身を包んでいるのはかなりの地位の高さを感じさせる高価そうな執事服。
行儀見習い程度の年齢に見える彼女が身に着けるには、かなり不釣合いな格好である。だが、衣服に着られている感じは全くなく、まるで長年着続けているとでも言わん感じに着こなしている。

実に見栄えのする二人だったが、どこまでいっても爬虫類や鳥類を主なものとする、メイジの僕たる使い魔には見えなかった。


人間を召喚、二人も。
しかも、貴族≒メイジ=召喚する側。

前代未聞もいいところである。


使い魔の契約とは、要するに知能の低い生物に契約詐欺を仕掛けることによってメイジ以外の生物を奴隷にする二種の魔法からなりたっている、と今まで魔法を実践で扱えないがゆえに誰よりも知識を得ることに努力を注いできたルイズは理解している。
逆に言えばこの程度の制約の罠ぐらい仕掛けなければ多種多様の生き物を人間の僕と変えることなどできはしまいと。

つまり、魔法によって「こうこうこういう条件でこういうメイジが人材を募集してますよ~」という告知と主の前につながるワープゲートを出す(サモン・サーヴァント)→「お、いいんじゃね?」と思った生き物が同意してゲートをくぐる→いきなりKISS(コントラクト・サーヴァント)→「ハーハッハッハ、馬鹿め、引っかかったな。このルーンには洗脳効果があるのだ! じょじょに私のために命も捨てる奴隷になるがいい!」「何だってー!!」

とまあ、こういう感じなはずなので、この呪文の大体の内容を知っているメイジ、およびある程度知能のある生き物は通常召喚できないはずなのだ。まあ、使い手の実力がよほど優れていれば無理やり引きずり込んだりもできるらしいし、食うに困った貧民なら応じる可能性もゼロではないが、そんなことなぞまずめったにないらしい。

無論これはルイズが知っているただの一説だ。
魔法が学問というよりはむしろ才能によって動かされる技術といった側面の強いハルケギニア世界においてこの説が正しいと立証したものはおらず、この考えが間違っている可能性はないとはいわないが、だからといって事前に今までありえなかった人間召喚が可能であると推察するのは不可能だった。


この仮設のことを知っているものは決して多くはないものの、だからと言って全くいないというものでもない。
結果としてルイズ同様それらの事実を知っている生徒や教師からは、何故同じ貴族が召喚に応える、と明らかな困惑が見て取れた。

そして、それはその説のことを知らないものでも同じだった。


何といっても、洗脳のあるなしはさておき、ゲートをくぐった以上誰かに使い魔として使役される、という事実に同意していることは間違いないのだから。


この場所全体が一体何故、という雰囲気に包まれたのは否めない。
実際、今回召喚された中でもっとも知能が高いと思われる竜ですら、なぜかそこらの動物より賢い? と思える程度の動作しかしていないのにここにきて同じメイジである。なぜこんな契約に応じたのか、という疑問はあるものの、知能的にはおそらくトップの「人間」という使い魔の召喚には、誰もが唖然とした。


成績最下位であったルイズであるが、メイジの実力と使い魔の実力は一般的に等しいとされている。
(もっとも、学園長の使い魔はネズミである。つまり、その公式によると学生以下の実力の持ち主となってしまうため、そこまで当てになるわけではないが)

実際今年の学生たちが呼び出した使い魔たちは、ちっちゃいカエル→姿勢の悪いヒトカゲ→でっかいモグラ→単なるネコ→持主に似てちょっと太っちょなフクロウ→鈴木土下座衛門→なぜか行動が幼いような気がする風竜などなどときて、いきなりメイジである。
しかも、身に着けている衣服や装飾品からしてこの国有数の大貴族であるルイズに勝るとも劣らない身分の。どっかの王族とかだった場合、へたすりゃ国際問題になる。

ゼロなのか、それとも微熱や雪風以上なのか、ルイズの評価がまったくできない状態に思わずあたりがざわめく。

そのざわめきが今のルイズには心地いい。
成功の余韻に浸りきった彼女には、まさか事故でこの二人が選ばれた、などということは頭の端にも浮かばず、完全にこの貴族が自分の召喚契約に応じたものだと思い込んでいた。


「な、何で貴族がゼロのルイズなんかに……」
「どうして……」
「何で貴族がメイジの召喚に答えるんだ?」


もはや「ゼロ」だなどと、この現実の前には小動物しか使い魔にできなかった者の単なる妬みにしかルイズには聞こえない。
この貴族がルイズの呼びかけに応じた。すなわち、どこかの王族クラスの大貴族が、ルイズをメイジとしてふさわしいと身をもって示してくれているのだ。もはや、陰口をたたくことはできても、この貴族以下のものであれば誰一人としてルイズのメイジとしての才能を否定することはできない。
潜在能力は世界一、大器晩成型であると言うことの証明が今はっきりとなされたのだ。
明日からもっと魔法の練習を頑張ろう、とルイズは誓いを新たにした。


が、しかし。


「そもそもどっちと契約……お、女のほう、エルフだ!!! 」
「喰われるぞ! みんな、に、逃げろーーー!」 
「ゼロのルイズがよりにもよって『あの』エルフを召喚したぞー!!」


 と、そんな現実を認められなかった連中の中のひとりが、いきなり召喚されて事情がつかめていないような二人を注視して、その片割れの耳がとがっていることに気づいて悲鳴を上げる。今の今まで人間が二人出てきた、というそのことにまず驚いていたギャラリーたちは、その声に反応して今度はこの二人の個性に注目してみると、髪で隠れている貴族の男はともかく、確かに従者の少女の方は明らかに耳が尖っている。

 次の瞬間、先ほどまでのざわめきが一瞬とまり、爆発的な悲鳴とともに半ばトリップしていたルイズのみを一人残して生徒たちの輪が三周りほど大きくなった。いや、遠巻きに残っているのはいいほうで、ひとによっては魔法を使うことも忘れて全力ダッシュで学園のほうに逃げ帰っているものもいた。

ここ、ハルケギニアにとってエルフとは、メイジの天敵といっても過言ではないがゆえに。






だが、そんなことは召喚された側であるこの二人には、まったく存じぬことであった。
その一糸乱れぬ行動に、思わず召喚された側である二人はいきなり何なんだといった気おされた雰囲気をかもし出す。
彼らは名を、ブラッドとクーと言う。姓がつかない名から分かるとおり、二人ともハルケギニアの貴族なぞではない。
それどころか、実のところ人間ですらなかった。

混血竜ブラッドと魔族クー。
その本性は万獣の王であるドラゴンと、その忠実な僕である。



そんな彼らは戸惑っていた。

別に彼らは召喚とやらに答えたつもりはなかった。彼らからしてみれば青年が部屋でくつろいで執事の少女から今週の収支報告を聞いていたら、なにやら天井から光るゲートがいきなりびみょみょ~んと降りてきて、気づいたらこんなところにいたのだけであった。
ゆえに、特にこちらに住み着く気などさらさらなく、何故ここに呼び出されたのか、ということを聞いた後はさっさと帰る気だった。


なにゆえそんな食い違いが生じたのか。
虚無ゆえに召喚ゲートが歪んだのか、それともルイズの未熟ゆえに失敗したのか、あるいはとある日本の少年の出会い系サイトへの同意同様、ブラッドのクーへの「もう結婚するぐらいならいっそどっかに逃げるかな」というジョークが契約への同意と認証されてしまったのか。
未だにこの使い魔召喚の魔法は謎が多く、その理由は後年になってもついぞ判明しなかったが、それのどれであったとしてもどの道召喚された彼らはルイズの事情など知りもせず、当然あとでこんな風に無防備に召喚させた警備主任に厳罰を下さねばならぬとは思いはしても、使い魔なぞになる気もなかった。


ゆえに、彼らもルイズたちに負けず劣らず誰かに説明してもらわないとわけがわからない状態だったが、基本的に両方とも気も寿命も長い生物なので、さほどあせることもなく、まあとりあえずこの半狂乱の状態をほおって見てみるか、と思うぐらいマイペースだった。


とりあえず、執事服の赤い髪の少女が一緒に召喚されたテーブルに乗っていたポットからお茶を入れ、それを二人で飲んでみた。
得意料理が生卵とサラダの彼女でも、さすがにすでに入れてある紅茶を不味くすることはなかった。と、言うか彼女は飲み物は作れる。料理がちょっとアレなだけだ。
だからこそ、とりあえずのティータイムはいつも通りに維持されていた。





しかし、トリステイン学園側はそれどころではなく、エルフの召喚だ、と勘違いは収まるどころが広がる一方だった。


「ミス・ヴァリエール! 下がりなさい!!」


どんな相手であっても決して油断はせずに、コルベールが進み出て叫ぶ。
ハルケギニアにおいて、耳が尖ってる=エルフ=メイジの天敵という公式は五歳の赤子でも知っている。何故メイジっぽい貴族の男の隣にいるのかは知らないが、エルフとは存在そのものがメイジの敵、危険極まりない。
今は何故かおとなしくしているようだが、なにせ誇り高き始祖の約束の地を勝手に占領したりする連中である。いきなりゴーレムを召喚したり、死者を生き返らせたり、いかなる魔法も反射させたりするかもしれない。

かつての惨劇を生んだ身として攻撃魔法は使いたくなかったコルベールだったが、それでも彼は立派に生徒を守る先生だった。たとえかなわぬかもしれないまでも、生徒たちよりも先に倒れるわけには行かなかった。たとえ数十秒でも、生徒の盾となって果てる覚悟を決める。
すくなくとも、生物すべてに効果があると思われるあの切り札を使えば、たとえ相手がエルフであろうと多少の効果はあるはずだと自らを勇気付ける。

それはまさに教師という職を選んだコルベールの一世一代の出番だった。



だが、いきなり呼び寄せられていきなり囲まれていきなりなんか訳わからん敵意をぶつけられるようになった彼らにとってその行動は、やはり意味不明きわまるものだった。ゆえに敵意に敵意をぶつけるでもなく、ただただ戸惑っていた。
お茶を一杯飲み終わっても誰も説明してくれないので、仕方なく二人だけで会話をすることで思考をまとめることにする。


「クー、あいつらは何をいっているんだ?」


ここはどこだ、とか、あいつらを倒すぞ、いう現状の打破が第一声として出てこないあたりが、彼らの種族の強力さを証明している。
その問いに、可愛らしくクーは小首をかしげながらもすっと自分の推論を口に出した。


「さあ? でも、エルフ……森の住人とか言ってましたから、きっと私の耳を見て早とちりでもしたんじゃないですか?」
「ああ、長いもんな、耳」
「チャームポイントですから」


そういったあと、周りにも聞こえるように一瞬だけ後ろの生徒たちのほうへと振り返り、声を大きくして声を届かせる。


「あ、私はエルフなんかじゃありませんよ~~~」


特に意味はないが、それなりにエリートである自分が森の奥でこそこそするしか能がない森の住人なんぞと同一視されるのは、不愉快だったかららしい。
その一言だけ周囲にアピールして、再び二人の会話に戻る。


「でも、森の住人なんかのどこが怖いんですかね? 基本的に温厚な種族ですよ、彼女ら」
「さあ? 俺は基本的にリュミスで慣れてるからほかの物事が怖いと思ったことはないしな」
「……それ、全っ然自慢になりませんよ」


二人はあくまでマイペースだった。
その会話を聞いていたものが、おもわず自分の聞いたことが間違いかと思って回りを見渡し、同じような動作をしているものを見つけてああ、やっぱり俺の勘違いじゃなかったのだ、と安心して胸をなでおろす。

と、そこでようやく脳に情報が回ったようだ。
 ……エルフじゃない?
ふたたびトリステイン学園の生徒たちの間に沈黙が流れ、そろそろと包囲網の輪が縮んでいく。
エルフらしき本人がエルフじゃないぞといっても信用できるわけがないのだが、そこは好奇心旺盛な思春期の少年少女たち。
この興味深い事態への好奇心が、話に聞かされていたエルフへの恐怖を上回った。


「さあ、契約を結びましょう」
「ミ、ミス・ヴァリエール!!」


そしてその代表格。
極度の緊張とその後の驚愕に精神の安定が保てずトリップしていたゼロのルイズがいきなりふたりに向かっていこうとしたのだから。彼女にしてみれば、エルフだろうが、メイジだろうが、使い魔がレアであるほうが喜ばしいことで、歓迎すべきことなのだから。
長年のコンプレックスを解消できるのであれば、もうなりふりをかまっていられる場合ではなかったのだ。
そのルイズをコルベールが顔色を変えて押しとどめる。


「なんですか、コルベール先生!」
「あなたはまだコントラクト・サーヴァントを結んでいません。つまり、彼らはあなたに対して好意を抱いているとは限らないのです。いきなり攻撃されないとも限りません」


教師として最低限彼女を守る義務があるとコルベールは必死で危険からルイズを遠ざけようとする。こういった生徒の身に危険が迫りそうな使い魔を生徒が召喚してしまったときこそが、学園の中でもかなり戦闘力の高い彼がこの場にいる意味なのだから。
だが、もはや契約することを確定事項であると思っているルイズにとって、その行為は単なる邪魔にしか見えなかった。
そのため、反射的に反論する。


「そんな……あれは私が呼び出した使い魔です。どこのメイジたちかはわかりませんが、召喚に答えたということは、彼らも私の使い魔になるということを同意したということじゃないですか! メイジを使い魔にしてはいけないというルールはないはずです」
「男性のほうはさておき、女性のほうがエルフの可能性があることを忘れてはなりません! エルフたちならこのサモン・サーヴァントを逆手にとって王国に進入工作を企んでくることとてないとはいえません」


エルフに対する偏見丸出しではあるが、その言葉にぐっと詰まるルイズ。
確かにその言葉はこの国の常識からするとすごく正論ではある。学生であると同時にこの国の一角を担う貴族である以上、ルイズは国のためにすこしでも国家に害を与える可能性があるものをみすみす使い魔として庇護するわけには行かない。
その理屈はわかる。

だが、こっちも切羽詰まっているのだとルイズはコルベールをそのつり目がちな目でにらみつける。
ようやく成功したサモン・サーヴァントなのだ。しかも、他の生徒たちとは方向性こそ違えど、明らかに一線を画する立派さ。正直少女のほうはさておき青年のほうはそれほど美形というわけでもないのだが、十六年間のコンプレックスから今解き放たれ、他の者よりレアな使い魔を召喚できたというルイズには誰よりもすばらしく見えた。
なにせ自分の家とおそらく同格以上の貴族が自分の使い魔として仕えてくれるのだ。それに加えてなんだかエルフっぽい珍しい執事までおまけに付いてくる。

こんな立派なメイジが使い魔の契約に応じてくれたのだから、ここで契約を結ばず彼らを送り返し、再び成功するかしないか不安なサモン・サーヴァントを結ぶなんて言う賭けに出れるわけがない。仮に成功したとしても、今度は優柔不断で何のとりえもない変な正義感だけ人一倍持った単なる平民の学生とかが出てきたらどうしてくれるというのか。
ある意味そいつもレアなわけだが、メイジやエルフもどきの次に出てくるのではどうしてもインパクトが弱い。だいたい、それなら平民を雇えばいいだけの話であるし。
二人して魔法を使えないのであれば、再びゼロの名が冠されることもあろう。



そんなルイズの内心の葛藤に気づくはずもなく、その召喚された二人はのんきに二人で話し合っていた。


「そういえば、ずいぶん巣の周囲と違ってあったかい気候だが、ここはどこなんだ?」
「さあ? どう見ても巣の中ではありませんから、さっきの光が転移魔法か何かだったんじゃないですか?」
「ああ、あの葵屋温泉にいったときみたいなのか」
「はい、多分今回はこの周りにいる彼らが勝手にわれわれを呼んだのだと思いますが」


基本的にどこに行こうと強者である二人は戸惑いはしていたもののルイズたちに比べれば、余裕しゃくしゃくだった。
帰ろうと思えばクーの転移魔法でいつでも帰れると思っているからそれも当然だった。


「迷惑な。温泉も無いようだしとっとと帰る………………いや、ちょっとまて」
「はい?」


さっさと巣(=自宅)に帰ろう、とブラッドがクーに命じようとした次の瞬間、彼の頭に天啓が舞い降りてきた。






これこそがすべての元凶であり、始まりだった。







「ここがどこかは知らないが、あのときの転移魔法も痕跡を残すようなタイプじゃなかったよな」
「はあ……それはそうだったと思いますけど」


いぶかしげに聞き返すクーを尻目に、ブラッドは自らの思いつきに夢中になった。ひゃっほうとか叫びだしかねないテンションで、すぐさま己の忠実……忠実? まあとにかく部下である執事に提案する。利害関係で結びついている協力者ではあるが、今回の提案はその利害にも都合のいいものであるはずがゆえに。


「決めた。ここがどこか知らんが、このあたりにも巣―――別荘を作ろう」
「はあ?」


クーは訳がわからなかった。すでに一個巣、あるじゃん、と思わず突込みが出そうになる。



その二人にトテトテと軽い足取りでルイズが近づいてきていた。その後ろにはなにやら苦虫を噛み潰したような顔をしたコルベールが立っている。
どうやら言い負かされたらしい。
しかし、そのことに必死に言葉をつむぐ青年と、呆れ顔の少女は気づかない。

そして、同時に。
ルイズも彼がいっていた言葉がこのあとどれほどの災厄を生むことになるのかに気づいていなかった。


「いったいなんで別荘なんて言い出されたのですか、御主人様」
「いや、ここに俺がいるってリュミスも知らないわけだろ? いつリュミスが来るかってびくびくしながらいるよりも、最近は巣の経営も軌道に乗ってきたことだし、もう一個巣を作っていざって時の避難所にしようかと」


リュミスとは、彼の許婚である。
彼は、誰よりも彼女のことを恐れていた。

それでいいのか最強種族、と聞きたくなるようなネガティブな思考回路であるが、最強種族である竜の中でも最弱に近いブラッドからすれば、間違いなく竜族最強であろうリュミス対策にこの程度はむしろ当然であろうとすら思っていた。
それは理解できるものの、それでもクーは容赦ない突込みを入れるのをやめたりはしなかった。

が、その会話に夢中になって第三者のことを彼ら二人とも忘れていたのが、その「第三者」にとっての不幸の始まりだった。


「うわ~、またずいぶん後ろ向きな考えですね」
「う、うるさいな。いいじゃないか、男なんだから秘密基地の一つや二つ「あの」……うん?」
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」


いまさら契約同意の意思を変えられてはたまらない(サモンゲートをくぐった時点で同意したとルイズは完全に思い込んでいる)と、不意をついてルイズのコントラクト・サーヴァントの呪文と、祝福と呪いの口付けが交わされた。

それは、稼ぎの大きさに比例して、地味ながらも金をかけて着飾っていた青年―――本人は知らぬものの世界最強の許婚の照れ隠しに日々死にそうになる悲劇の混血竜 ブラッド―――の左手に、持主にすべての武器を自在に操る力を与えるガンダールヴの紋章を刻………まなかった。

竜族平均で言うと決して強いとはいえないとはいえ、曲がりなりにも本体はDNAの100%がドラゴンであるブラッドの魔法抵抗力は半端じゃないのだから。


    ピキーン 

トリステイン学園 のステータスが更新されました。
ブラッド と クー の召喚に成功しました。


その2へ

Comment

No title

Night Talkerさんに途中まで掲載されていた分しか読めなかったので、大変楽しみにしています。
改訂は楽しみなんですが、出来るなら改訂前ので構いませんので、Night Talkerさんで削除された分も併せて一気にアップして頂きたいところです。
なんせプロ(笑)の私には、「改訂する、アップする」とか言いながらそのまま消えていった数多のサイトの記憶がありますので。
もしよろしければ御一考ください。

では気がついた誤字報告などを。

たとえ今はゼロと呼ばれて続けていても
たとえ今はゼロと呼ばれ続けていても

この仮設のことを知っているものは
この仮説のことを知っているものは
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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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