スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

狼狽皇子様12

原作どおりの話













ギアスだとか、Cのコードだとかいうことについて、クロヴィスはイマイチその内容を理解していない。なんといっても、ギアスを得たのも、そののちにコードを継承したのも、ほとんど事故みたいなものだったのだ。
シャルル本人のように望んで手に入れたわけでも、VVのように禅譲を受けたわけでもない彼にとってみれば、ギアス関係について把握している知識と言うものはあの用心深いシャルルが僅かに残した覚書程度のものを見て確認した程度に過ぎない。

が、かといって誰かに教えてもらおうにも、VVは完全に拗ねているのでほとんど協力してくれないし、マリアンヌはマリアンヌで自分に面白いようにいろいろ都合よく捻じ曲げた挙句適当なことをいうだけだったので、結果的にほとんど彼はそれらのことを理解していなかった。


とはいえ、彼が奪ったシャルルボディはその年齢にもかかわらず不断の鍛錬と弱肉強食を是とする強靭な信念により人間としてほぼ限界近くまで鍛え上げられていた上に、ギアス能力者としてもトップクラスに磨き上げられていた。
シャルルに与えられた能力は記憶の改竄という余り強力ではないものであったが、彼はそれを自在に使いこなし、皇帝の座までのし上がったのだが、それにもかかわらずとある読心能力者のように能力に飲み込まれることもなく完全に制御しきっていた。
クロヴィス自身の能力は死の間際に人を乗っ取るだけなので大して彼が使いこなせていたとはいえないが、それでもその体であるシャルルボディはギアス能力者として成熟していたものであり、だからこそVVのコードも奪えた。

で、彼らの目的は、VVとCCのコードの統合である。

その上でVVのコードによって不死となったクロヴィスの存在を考えてもらうと、ある事実が忽然と浮かび上がる。
そのあまりにばかばかしい現状がゆえにはっきりと気付いているものは正直皆無といっていい状況であるが、実際テロ活動のリーダーがテンパっているのでそこまで抵抗運動が完全に機能しているとは言いがたい以上遺跡の収集は結構順調であり、この場にはCCだってちゃんといる。


よって、VVのコードをクロヴィスが奪い取った現状において、すでにオレンジのギアスキャンセラーにより消滅したマリアンヌとクロヴィスに体を乗っ取られているシャルル、そしてコードを奪われギアスがあるだけのほぼ無力な幼児と化してしまったVVの目的であったコードの統合をするためにクロヴィスに必要なのは、あとCCのコードだけだ、ということを頭においていただきたい。








ぶつかった岩によってぱかりと、おばあさんに拾われたイレブンの民話の桃のようにみごとに二つに割れたゼロのマスク。
まあ、その民話でも主人公は正義の味方、弱者の味方を名乗って鬼退治と称して一方的に戦闘を仕掛けて略奪していくし、実態は似ていないこともなかったが、鬼が島の鬼の大将であるクロヴィスからすればもう恐怖以外のいかなる感情も生じ得ない。

黒いチューリップにも似たそこからは、世で噂されているように大きな火傷跡を残した醜い素顔でも、エリア11の総力を挙げて作られたロボットらしい機械が入っているわけでもなかった。
そこから現れたのは、先のような変な想像をしたことが恥ずかしくなるほどの美しい顔だった。
線は細く、瞳は澄んで、髪はつややかに。男であるにもかかわらずその唇さえも美しいその美貌は、ともすれば女性的とさえいっていいものであった。

ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
その母と同じく、天に愛された造形美の持ち主だ……例え本人が、どれほどその目立つ容姿を疎ましく思っていたとしても。


「ひぃぃぃぃ!!」


が、そんなものに見とれる余裕など、クロヴィスにあるわけがなかった。
いままで、嫌な予感―――というよりも、確信に近いものがあったとはいえ、彼はまだ「ひょっとするとゼロはただ単にブリタニアに恨みを持っているイレブンなんじゃないかな」という一抹の期待を抱いていた。
例えその中身がかつての戦いで局地戦とはいえKMFもなしに唯一ブリタニアに勝利した奇跡の藤堂だとか、日本の天子的な存在である皇なんちゃらなどというエリア11支配の為には極めてめんどくさいことになるようなやつが中身であっても、クロヴィス的には大歓迎だった。

それならば、まだ形式の面では至極真っ当なブリタニア対旧日本という形になるのだから、普通に超大国ブリタニアの君主として挑めばいいだけの話である。
いかにヘタレっぷりしかさらしていないクロヴィスであろうと、れっきとした生まれながらの皇族だ。支配階級であるナンバーズの挑戦としての抵抗運動であれば、王者としての態度で受けるだけの度胸は持ち合わせている。
曲がりなりにも弱肉強食を是とするブリタニアにおいて高位で生き残ってきたのは伊達ではない。少なくとも、彼とて決して無能ではないのだから。


だが、現実は非情である。
もう、とにかく、自分が頭に思い描いていた彼以外だったら誰でもよかったのに、やっぱりゼロの中身はよりにもよってあのルルーシュだった。
それにもかかわらず頼みの綱のマリアンヌが成仏したという現状だけでもいっぱいいっぱいなのに、よりにもよって反逆企てているであろうシュナイゼルの配下が第七世代KMFに乗ってこちらに乗り込んできやがるなんて、いくらなんでもひどすぎる、と彼はいつも以上に天を怨んで嘆いてその上で一周回ってむしろ祈っていた。
ルルーシュ、超怖い、誰か助けて、と。


「くっ、スザク! お前はどこまで俺の邪魔を」
「お下がりください、ルルーシュ様!」
『どうしてユフィにあんなことをしたんだ、ルルーシュ!』


今のところ、彼はあのランスロットとか言うのに釘付けになっているっぽいのでこっちに対してスルーしているが、ゼロの正体がわかったところで素顔が割れたとおとなしくするような相手ではないのは明らかだ。
ナナリーを皇族に復帰させてからはナナリーの身を気遣ってか若干ながら公共施設に対してのテロ行為を控えていたように見えた彼であるが、正体を知られたとなればもはや遠慮もせずに堂々と正面から攻撃してくる可能性は、十分にある。

というか、ここまで乗り込んできている時点でもう完全に一人テロである。
クロヴィスの思考能力ではどうやってもこのかつての反省を元に作り上げられた幾重もの防衛網をたった一人で潜り抜ける方法など思いつかないが、この幼少の頃よりその超絶知力の片鱗を見せ付けていた異母弟にはそれができてしまうことに、クロヴィスは戦慄する。
どういう手段を使ったのかはいまだに不明であるが、あの可愛くも聡明であった義母弟はあのイカレタ伯父上(VV)の系譜としてふさわしく、ずんばらりんな手法で乗り込んできた挙句に実の父の体に入った腹違いとはいえ実の兄に対して銃を突きつけるような男になってしまったのだ。
いくらなんでも嫌な方向で成長しすぎであろう……まあ、前も一回シンジュクゲットーでしてるけど。


「こい、我がKGF、ジークフリート!!」
「(何で!)」


そして飛び込んでくる橙色で緑の棘を持ったオレンジ型の機体。
主が主ならばその部下は部下で、地下にある格納庫から掛け声一つで突如ジークフリートを呼び出す始末。
思わずバトレーは心の中で突っ込みを入れてしまった。

つけていない。
そんな機能はつけていない。

クロヴィス軍団虎の子の最新最強のKGFであるが、基本的にKMFからの派生技術から生み出されたものである以上は音声認識なんて機能はなく、当然ながらそれを聞いていきなり起動してここに突っ込んでくる、などという機能も一応の開発に関わっているバトレーには一切覚えがなかった。
ここはあくまでコードでギアスな世界観であって、Gなガンダムな世界ではないのだ。

にもかかわらず、目の前では普通にKMF対KGF戦が唐突に始まってしまう現状に、クロヴィスとバトレーはほとんどついていけていなかった。


『くっ、なんだ、この機体は!』
「……いいぞ、やってしまえ、我が騎士ジェレミア! ここでスザクを断てるのならば、それに越した事は無い、フハ、フハハハハハハ!」


そしてそんな連中も今は反目しあっているように見えるが、だからといってなぜか双方から共通の敵とみなされているっぽい以上、シュナイゼルと手を結んで二人でこちらに対して攻め寄せてこないとも限らない。
不安と恐怖にクロヴィスは発狂しそうになった。

とりあえず、逃げたい。
だが、どこに逃げるというのか。

皇帝であるクロヴィスが必死こいて様々な防犯対策をした―――まあ、部下に丸投げしたわけだが―――玉座以上に、彼にとって安全な場所なんて多分地上においてもはやどこにもない。
すなわち、逆説的にここにこうも容易く何人にも侵入されるようでは、地球上のどこに逃げても同じであることの証明となってしまう。
まあ彼は知らないが、どのようなシステムであろうともその一部でも人間が関わっているのであればルルーシュの侵入を防げるような建造物はほとんどない。何せたった一人でも関係者が見つかってしまえば、後は芋づる式にルルーシュの手駒にひっくり返ってしまうのだから。
それこそ宮殿ごと天空に舞い上がらせてバリア張ってさらに原爆で威嚇することで物理的に近づけないみたいな馬鹿なことやらない限りほとんど不可能なわけであるが、それを改めてクロヴィスは自覚したのである。

どこに逃げようとも、待っているのは恐怖の上での死。
だが、先ほどからどれほど声を張り上げても護衛であるはずの近衛兵や膨大な金銭や地位を使って味方につけたはずのナイト・オブ・ラウンズたちが来る気配はさっぱりない。
いったいどうしたというのだろうか?


例)
ワン  →マリアンヌにいい含まれて外していた。ぶっちゃけ彼にとってはマリアンヌ>皇帝。成仏には気付いていない。
スリー →専用機未開発のため、ヨーロッパのテロ鎮圧の責任者となって手一杯。そもそもかませだし。
シックス→気絶中。背後霊が消えたよ。やったね、あにゃちゃん。
テンさん→情報が届いていないので領地で究極のトマトジュースを配下に作らせている。ほら、一応貴族だし。
その他 →モブを脱出しようと必死。が、このせっかくの見せ場に出てこないあたり、所詮モブ。


流石にこの場に音声認識でロボット呼べるだけの人材がいれば、クロヴィスの立場ももっと前段階で楽になっていたはずである。
極めて優秀とはいえ普通の騎士であるラウンズにはそれぞれの事情があり、彼らからそれをすべてすっ飛ばして皇帝の前に駆けつけるだけの忠義を得るには、いろんな意味でクロヴィスの能力が足りない。
そんな現状を知らぬクロヴィスにとってもはや頼れるのははたにいる忠臣バトレーだけなのだが……


「で、殿下……」


ぶっちゃけ彼の能力はさほど高くない。勿論、決して低くもないのであり皇族の側近を務めるには十分なほどにそこそこ優秀であるのだが、その方向性は極めて主君によく似た有能さだ……すなわち、天才には勝てない程度の優秀さ。
ギアスだとかいう超常の存在を抜きにしても指揮や運営能力では到底ルルーシュには叶わず、運動能力ではスザクに遥かに劣る。

それゆえ、クロヴィスの縋るような視線を受けたとしても、即座に妙案が浮かぶはずも無い。
それでも彼は考えた。たとえどれほど他の皇族と比べて能力不足を詰め寄られようとも、それでも彼にとっては幼少のみぎりより仕え、見守ってきた唯一無二の主。
たとえ外見が縦ロールおっさんになっていたとしても、見捨てられるはずなど無かった。

それゆえ、その優秀な、しかし凡才の彼が頭をフル回転させた結果として彼の視界にとある少女の姿が写った。
思わず主君に目配せをやると、彼も彼女の存在を思い出したのか、わずかばかりに顔色に光が差す。


視線の先には緑髪の少女、CCの姿があった。



バトレーは人質、と思った。ちょっと優秀程度の頭脳ではそれは普通の事だった。彼はCCを捕獲していた事により、いくら不死の少女とはいえ感情も痛みもあること、そして彼女自身の生身での戦闘能力というもの自体は決して低くはないものの、体格や男女差というものを完全に無視できるほどでないことを知っていたのだから。
前線を離れて久しいとはいえ、それでも今なお軍人としてそれなりの力を持つバトレー一人では敵わなくても、クロヴィスだって王族としてのたしなみとしてある程度の格闘能力はあることを考えれば十分だ。
二対一で不意打ちを仕掛けてもなお一方的に叩きのめされるほどに実力差があるとは、かつての捕虜時代の彼女を見知っているだけにどうしても思えなかった。
そして、彼はクロヴィスとCCがCの世界ホットラインでつい先ほど契約を交わしたことを知らなかった。

クロヴィスは仲介役、と考えた。
バトレーの考えたCCの戦闘能力等のことは紙の上での報告としてしか知らないクロヴィスだったが、それとは別に彼と彼女はつい先ほど「契約」をした。あとで「チーズ君」なる未知なるモノを捧げねばならないだけに不安は残るが、しかし同時にその約束はクロヴィスがそれを手に入れるまでCCも彼を必要としていることの裏づけであろう。
捕獲して実験動物に近い扱いをしていたことで恨みを買っている恐れはあれども、今この場において明確に彼を助けると確約した者はバトレーのほかには彼女しかいない。
とにかく時間さえ稼げれば、あのランスロットとジークフリートの争いを見ての救援も来るはずだ。それまでにルルーシュがとち狂わないように、ある程度の説得をしてもらえれば御の字だ。
そして、彼はバトレーが自分が声も出さずに行ったCCとの取引を知らない事に気付いていなかった。


「(流石は我が騎士、バトレーだ。私の気持ちをよく理解している。よし、一緒になってCCに頼み込むぞ)」
「(おお、敬愛すべき我が主君よ。そうです、あなたはここで終わってしまってよいような器ではございません。たとえこの身を犠牲にしてでも、彼らと取引が出来るだけの材料を!)」


だからこそ主従はアイコンタクトの末、行動に移った。
目配せだけで互いの心が通ったと信じきって。
バトレーは捕獲を目的としており、クロヴィスはすがり付いてでも助けを求めようと思っているという違いはあれども、方向性としてはある程度に通っていたがために、二人そろってダッシュでCCに駆け寄ったのだった。

命の危機に心底おびえていた主君と従者、そして気絶中のアニャちゃん以外の二人が目の前のスーパーロボット大戦に目を取られている隙に、千載一遇のチャンスとばかりにかけよった二人の男の姿は、もちろんルルーシュとCCにもすぐに気取られた。


「お前たち、一体何を!」
「貴様ァ!」


だが、初動の違いによって命の危機がかかっている(と思っている)不死皇帝と中年将軍の決死のダッシュは、彼らに行動を起こさせる前に目的の接近を果たす事を許した。
方針の違いゆえに腕を引いてねじ倒さんとするバトレーと縋りつくようにその背に隠れようとするクロヴィスという行動の一貫性のなさに、CCは反撃しようとする足を止めて一瞬あっけに取られ、ルルーシュはその手に持った銃を向け損ねる。


「頼む、CC。さっきの契約どおり命だけは! ……って、バトレー、何をやっている!」「動くなぁ! ……って、殿下!?」


が、それはクロヴィスとバトレーにとっても同じ事。機嫌をとって許してもらわなければならない相手と、一気に制圧して次の相手への交渉材料としなければならない敵。
両者の認識の違いは当然ながら動きの違いとなり、三人は団子のようになってその場に倒れた。


「お前たち、このっ、離せ!」
「CC!」


中年男性二人にのしかかられて嫌悪感から思わず罵声を上げて張ったおそうとするCCと、いくら悪ぶっている上に今までの経緯から少女が死なないと分かっているとはいえ三人まとめて打ち抜いてしまうだけの悪辣さを持たないがゆえに皇帝を殺そうと銃を放つのではなく彼女に駆け寄る事を優先したルルーシュ。
そしてそうはさせじとルルーシュが一瞬向けた電磁銃に体を硬直させながらもCCを盾にして何とか防ごうとするクロヴィスと、ルルーシュが近付く前に何とかCCの命を握ってしまいたいバトレー。

全員が全員の都合で動く事を求めた結果としてすなわち、CCとクロヴィスのある程度の接触がなった。
「Cの力の保持者」と「ギアス能力者」の接触が。


「くっ、あああぁ!!」
「うぉ!」「ぐぇ!」
「CCゥゥゥゥ!!」


突如苦悶の声を上げ火事場の馬鹿力的な何かを発揮して成人男性二人をふっ飛ばすCCの力にクロヴィスらは抵抗できずにせっかくの団子状態を解除してしまう。
すわ、打たれる、と思い体を丸めるクロヴィスと、それに覆いかぶさるかのようにしてその身を盾にして主君を守ろうとするバトレーだったが、追撃は来なかった。

ルルーシュは必要の為ならばいくらでも悪ぶってやると決心している少年であったが、目の前の少女の苦悶を見殺しにしてまで復讐を優先するような男ではない。
CCに対する多種多様な不満はあれどもそれでも肌を交わし抱きしめあった少女が苦しんでいるのを見て、にっくき皇帝を始末する前にその下へと向かい、声をかけることを優先したのだ。


「CC,しっかりしろ! CC!」
「う、うう……」


いくら並外れて聡明とはいえいまだギアスなる力のことを完全には解明しきっていないルルーシュにはCの力が移ったことによるダメージの本質は理解できない。
だが、倒れたときに頭でも打ったかと抱き寄せる彼の瞳には、復讐者とは思えないほどの心底の心配の色が宿っていた。

彼にとってCCは決して完全無欠のパートナーではない。
彼女は未だに全てを語ろうとしないし、口は悪いし、性格も歪んでいるし、ピザばかり食べるし、部屋は汚すわ、服は脱ぎ散らすわ、勝手に人のベッドに入り込んでくるし、暇さえあれば弄んでくるしで不満は山ほどある。
だが、契約を結び、力を与えてくれ、ゼロとなり失ってしまうはずのたわいも無い会話をかわし、計略の見込み違いにより追い詰められた際にも命を助けられ、KMF戦があまり得意ではない自分を戦闘で守り、最愛の妹に決別を叫ばれたときにも抱きしめられ、孤独を突きつけられたときにも側にいてくれ、涙を流したときも慰められ、全てを失った際にも癒された。
ナナリーを失い、全てを清算する為にこの場に赴いた彼にとっては、CCは自分の最後までいるべきものであって、自分より先に倒れるなど考えたくも無いものであった。
だからこそ、倒れた少女を前にして復讐さえも忘れて、必死になって呼びかける。
その鬼気迫る姿に、クロヴィスやバトレーは銃を向けることさえ出来ていなかった。


それをうけて、緑髪の少女はゆっくりと瞳を開く。


「CC! っ、心配を掛けさせるな、この馬鹿!」


ただ、彼を認めて呟いた言葉は。


「え……あなたは? あ、新しい御主人様ですか?」


かつての彼女のそれとはまるで違う響きを持った言葉だった。


「っ!! 何を……言っている……? 悪い冗談はよせ、CC!!」
「す、すみませんすみません。すぐに起きますから打たないで下さい」


生れ落ちたときは無力な奴隷少女だった彼女は、しかしギアスに出会い、人の心を操り、そしてその力に半ば飲み込まれ、そしてギアスを与える側となった。
その中でいくつもの死を乗り越え、死を見取ってきた彼女とともにCの力があり続けた期間はあまりにも長かったのだ。
CCは中世のころより今の今までCの力の保有者であり、それは彼女の人格とさえ影響を及ぼしていた。

そして、ついに彼女がその力を受け取ったときにも行われた前提条件、成熟したギアス能力者とCCが肉体的接触が行われた。
その結果は、誰もが予想もしなかった方向へと向かっていてルルーシュを今までにないほど戸惑わせ。


「C……CC……」
「(なんかさらにやばそうな事になったーー!!)」


そして、クロヴィスの内心の叫びだけはいつもと一緒だった。



『Cの力』
CC→クロヴィス










おまけ

Q:ニーナ、どうなったの?


『日本人の皆さん、私、ゼロと結婚します!』
「そ、そんな、ユーフェミア様、どうして、どうしてそんなことを!」


イレブンはあまり好かないが、それでも敬愛するユーフェミア皇女殿下がおっしゃる事なら、と一応設けられたブリタニア側の席で特区日本の開催式典を見ていたニーナは思わず悲鳴を上げて立ち上がってしまった。


「はっ、まさか政略結婚……そんなの、そんなの!!」


いきなりあの慈愛に満ちた皇女がそんなことを言い出した背景を考えた挙句、ニーナの頭に多種多様の化学式が駆け巡る。
だって、普通に考えて仮面と結婚なんてありえない。
直接的な戦闘能力が皆無であれども、間違いなく天才の一人であるニーナ・アインシュタインの頭脳は、憧れるあまり同性愛の方向に行こうとさえしていた彼女の怒りを喰らってユーフェミアの貞操の危機を前に急速に回転する。
望むのは、テロの撲滅……ではない。ゼロなどという空虚な植民地の英雄を生み出したイレブンの反抗心を根こそぎ奪うような、強大な力。
それを今だれよりも真摯に、ニーナは願った。

が、今はまだ単なる無力な少女でしかない彼女の思惑は事態を収拾するには何一つ役に立たない。
彼女の思いをおいて、舞台上のモニターでアップ写されているユーフェミアと彼女の姉の会話は続いていく。


『ユフィ! 何を言い出している、そんなこと許さんぞ! そんなどこの馬の骨ともわからぬ男と結婚するなぞと』
『いえ、殿下、問題はそこではありません』
「そう、そうよ! ユーフェミア様が犠牲になるなんて!!」


最愛の妹の唐突な結婚報告に頭に血が上ったのか、超大国ブリタニアの第三皇女がエリア11のテロリストの首魁と結婚する、という意味とはまるで違った意味で捉えた言葉がコーネリアの口から発せられ、慌てて側近から訂正される。
それは提督としてはまるで相応しい言葉ではなかったが、兎にも角にも結婚に反対している、という事実のみで、「化粧濃いしリップも髪も紫だし可憐なユーフェミアの姉には似合わない、そのぐらいならばむしろ自分のほうが。嫌でもむしろ姉より妹として甘やかされたい」とか思っていたニーナの好感度を稼ぐ事に成功する。

が、そんな些細なことなど次に続いたユーフェミアの爆弾発言に完全に吹き飛ばされた。


『お姉さま、何が問題なんです? こんな仮面を被っているから正直びっくりしましたけど、彼は昔から料理も上手だったし、頭も良くて優しかったじゃないですか』
『ユ、ユフィ? 誰のことを言っているんだ?』
「……え?」


天才であるニーナの中で今まで培ってきた多種多様の学問がこねくり回され、ひっくり返された上で180度のオーブンに入れて10分たった結果としてそのすべてが一つの大量破壊兵器の結晶として固まってきて全四文字のうち「フ」と「レ」と「イ」まで理論体系が出てきたところで、ユーフェミアの発言で彼女の思考は止まる。
彼女の中でゼロはテロを人質にとって至高の存在であるユーフェミアの身を汚らわしい欲望のはけ口としようとする悪の化身だったはずである。


『私、小さい頃は彼の妹と本気でどっちが結婚するかで喧嘩だってしたことあるんですよ? お父様……皇帝陛下だってきっと事情を話せば認めてくださるに違いません』
『だから、誰のことを言っているんだ、ユフィ!』
『彼に秘密、って言われたからまだ言えません。でも、そのうちお姉さまにも紹介しますわ。フフ、きっとびっくりすると思いますよ?』
「そんな……嘘、嘘よ、こんなの……」


しかし、そんな男に無理やり結婚を強いられているはずの皇女殿下が、目の前にいる瞳を輝かせ、頬を桃色に染めてその桜色の唇で笑顔を絶やさないようにするその様はまるで恋する少女がその成就を祈るようで。
彼女に恋をしており、誰よりも彼女を愛していると思っている少女の頭の中の「イレブン虐殺する大規模爆弾作ってテロを潰してその手柄で第三皇女殿下とXXX」計画を完全に凍結させるに相応しいだけの破壊力を持っていた。


『だから皆さんにも今はナイショです! でも、そのうち紹介しますね、フフフ』
「……そうか。ユーフェミア様は幼いころからの夢を叶えるんだよね。だったら私、応援、しなきゃ、いけないんだよね」


デビューからずっと見守ってきたアイドルが結婚すると聞いて無理やり自分で自分を納得させる親衛隊員のような気持ちで、ニーナは呟き涙を流しながら歪んだ、されどどこか吹っ切れたような顔でモニターを見ながら微笑んで見せた。
相手が腹違いとはいえ実の兄であるという重要なことを知りもしないで、もはや祝福するしかないと思い込むニーナ。ある意味盲目的に偶像崇拝していた彼女にとっては、ユーフェミアの言葉だけが真実だったのだ。


「ユーフェミア様、お幸せに!」


そんな彼女に、いや、そもそもお前は舞台に上がれていないから、と突っ込んでくれる人は誰もいなかった。



A:のちにかつてイレブンとさげすんでいた日本人の青年と結婚し、二児の母となった。しかし自室の写真立てには家族の写真とともに今もユーフェミアの肖像画が……





Comment

非公開コメント

プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
カウンター
検索フォーム
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。