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悪徳の宴・12

『キャベツ畑』や『コウノトリ』を信じている可愛い女の子に。







その長い髪を手にとって己のものをしごく男がいた。
そのたおやかな手に無理やり己のものを握らせる男がいた。
そのつややかな唇に醜い肉塊をねじ込む男がいた。
その沁み一つない胸元に粘ついた黄色がかった白濁液をぶちまける男がいた。

そしてその中の一人として、彼は居た。
脂汗を流し、ヤニ臭く荒い息を吐いて、頬を高揚させて、男はただひたすらに情欲に囚われていた。

眼前の光景に、暗い情熱が燃え上がるのが自分自身でも痛いほどわかる。
白い、白い肌。あまりにも目にまぶしいそれは、かつての彼が見ることも出来なかったものだ。


「どうしたんだよ、エリート様! そんなにこれがいいのか!?」
『おら、その程度でへばってんじゃねえぞ!! 根性見せろ!』


白くやわらかい肉を自分の意のままに嬲る歓喜に浸る自分の声で、かつてのトラウマがかき消されるのを確かに男は感じていた。
突き刺した肉棒から直接的な快楽と、それを上回りかねない圧倒的なまでの征服欲に男の心は一食に染め上げられる。
かつて彼を殴った鬼教官とはまるで違う、まるで小動物のように可憐な少女……しかし、彼にとってはまぎれもなく「憎むべきエリート管理局員」。
劣等感と入り混じったそれは、暴力的なまでの衝動へと変わり外へとあふれ出す。

一生触れることなど出来ないものだと思っていた。
きっと、リンカーコアに恵まれず、それどころか訓練にさえもまともについていけずに落ちこぼれ、そしてドロップアウトした自分にとってはもはや直視する事さえ許されぬはずのものだった。
真っ当な方法で己が得ることなど夢以外ではなかったはずのものだった。
にもかかわらず、今まさにこの瞬間は確かな現実としてこの場にある。


自分はどこで間違えたのだろう。
どこで人生が狂ったのだろう。
この目の前にあるあまりにもありえない光景に、管理局員の彼―――ただし、「元」がつく
―――は改めて自問する。


「これで給料貰ってんのに勤務時間中にこんなに物欲しげに男のものくわえ込みやがって!」
『歩いているだけで給料出る最高の仕事だろうが! ほら、踏み出すたびにちゃりんちゃりんって聞こえてんだろ!』


勝手な言葉とともにもはや悲鳴さえ上げない少女の中を削岩していく男の表情は興奮により撒き散らされる涎によってもはや正視に耐えないものになっている。
しかし男は、そんなことなどもはや気にも留めていないように夢中になって目の前の金の少女の胸を握りつぶさんばかりの勢いで揉みしだき、腰の回転を高めていく。
かつて彼を殴りつけた硬い拳とはまるで異なり、その肢体はどこまでもなめらかで、柔らかいものだった。

過去の彼は、ごくごく普通に学業に励み、ごくごく普通に学校に通った。
当たり前に友人と時間を過ごし、当たり前に同級生に恋をして。
夢を見て、懸命に努力して、だけど叶わなくて……

きっとそれは、特別なリンカーコアなどないごくごく普通の人間の辿った道としては何の変哲もない平均的なものであったに違いない。
少なくとも、その当時の彼は自分がエースの一人として数えられる管理局の少女をこのように路上にて無理やり犯すような気狂いの集団の一人になっているなどと想像もしていなかった。


「規律を守るんじゃなかったのか! 正義だったんじゃねえのか、このメス犬が!」
『そういえば、今日は台風が近付いているらしいぞ。もしもだが自室の鍵をかけ忘れているような愚か者の部屋はぐちゃぐちゃだろうな。だが、点呼のときまで片付いていなければ……まあ、そんなことはないか』


周りを囲む何人もの男の手により無理やり刺激を与えられる事で、力を奪われた少女が僅かに挙げた甘い声を受けて男はさらに罵倒をする。それと同時に自分の仙骨の辺りにも痺れるような快感とともに急激な射精感が現れるのを彼は実感したが、無理に我慢する。
なにせようやく回ってきた順番なのだ、ここで出してしまうとまたも順番待ちのための列に無理やり引き戻されてしまう。
せっかくの機会だというのに!
だから彼は、無心に腰を使うと同時に何とか己を長く持たせようと、心の一部を冷やす罵倒をやめようとしない。
土煙と照りつける夏の太陽が祝福する中で汗と涙を流しながら腕立て伏せを続けた、あの日と同じ体勢で。


学生時代に平凡ながら幸せだった日々を過ごす事。
そこに間違いがあったとは思えない。

ならば、彼の間違いはどこに?
一般企業への就職にことごとく失敗してやむなく、しかし自分では真剣に考えた上で時空管理局に入るという選択肢か?
常に人手不足故に募集をしている「公務員」に正義感ではなく待遇ゆえに惹かれ、なろうと思ったことが間違っているというのか。

それらが間違っていたというのは、金がなくても、糧がなくても、才能がなければ、信念がなければ、生きる事など許されないと告げることと等しい、と彼は心の中で叫びながら腰を振る。


「これしか出来ないって言うなら、せいぜいこっちを楽しませろよ! そら、もっと気合入れて絞めてみろ!」
『ようし、これから休憩時間だ。まあ……出来ない奴はそういうときでも訓練やるもんだけどな』


疲れか、諦めか。少女の体から抵抗の力はもはや抜け、それどころか肉体の反射的な反応さえも緩んできたことでゆるくなってきた自分の一物への締め付けに彼は不満を感じ、かつての罵倒を思い出したその勢いだけで手を振り下ろした。
目の前の柔らかい肉体に対して振り下ろした手のひらに僅かな熱とかゆみを覚えるとほぼ同時に、急速に、強烈に彼の肉棒が締め付けられるのを彼は歓喜を持って感じていた。
まるで肉体に今も残る苦痛がそれで癒される、といわんばかりに。

理屈では、わかっている。
教育課程というのは厳しいものだ。
ただの一般人を兵士に、変えるためのものだ。
生半可な気持ちで志願したわけではないとはいえ、今までそれを目指してもいなかった彼がその管理外世界である地球で言うところの軍隊と警察と災害救助部隊を足して割らないような職業に付く以上は、そのための訓練期間が楽なはずがない。
そして、才がない以上はらくらく階級を飛び越えてすぐさま幹部になれるはずもない。ならば罵倒され、肉体的に振り絞らされ、限界まで追い込まれ、ようやく戦士になれるのだ。
金儲けや福利厚生だけを考えて治安を守る、正義を守る組織に入るようなことが許されるはずがないことなど、重々承知していたはずだ。


「大変そうなフリしてないで、お前ももうちょっと頑張れ、ほら、もっと鳴け!」
『辛そうなフリだけは上手だなぁ、お前ら! やる気あんのか? 一度ぐらいは死ぬ寸前ってぐらいまで頑張ってみろよ』


口までも別の男の汚らわしい欲望でふさがれている少女に対して、男はそう無理を強いる。
たった一人の少女に幾人もの男が挑みかかる体勢自体が無理があるが、男はその無理を力ずくで押し通す。
魔王によってその力を奪われその心を砕かれた少女に対して、演出者の手の上で踊っている事さえもほとんど感じる事もなく、踊りのパートナーとして愚かな芝居を続ける。
確かに傷はつけていない。
非殺傷設定にも似た特殊な術式をあらかじめ掛けられた彼らの肉体は、ある一定以上の衝撃を彼女の体につけることが出来ず、それを解除するには彼らのリンカーコアは出力が足りない。
だからこそどれだけ爪を立てても、強く握り締めても、ある一定以上の行為には至れないがため、その金の少女の肉体が傷つけられる、ということはない。
だが、それは間違いなく正義を犯す「暴力」であった。


事務方の作業もあるだろうが、士官学校に入りもせずにキャリア官僚になれるだけの人並みはずれた学力や何の訓練もなく魔導師ランクにしてAを超えるようなリンカーコアによる資質を持ち合わせていない彼に求められたのは、おそらく街頭に立って人々に安心を与える事などに代表される直接の実働部隊としての職務。
肉体的にも、精神的にも他者から力の象徴として見られなければならない立場。
ならば、訓練学校時代の訓練が生ぬるいはずがないということは事前にも重々わかっていたはずだった。

だが……その視線の一つから気に食わないと叱咤され、その限界まで振り絞った体力はまだ足りぬと責め立てられる。
ごくごく少数のエリートを除く大半の管理局員をして二度と通いたくないと口を揃えて言われる地獄の訓練校時代。
情熱に恵まれたものでさえも容易に過ごす事は出来ない日々は、安穏と、しかし優しい日々を送っていた彼にとっては耐え切れるものではなかった。

鍛え上げる為の手法としての叱責と理解はしていても、彼にはそれは心を穿つ罵倒にしか聞こえなかった。
間違ったときに放たれる修正の魔砲は、それに耐え切れるだけの信念を抱いて管理局に入ることが出来なかった彼にはれっきとした暴力にしか感じられなかった。

それを弱さと呼ぶならば、確かに彼は弱かったのだろう。
次元世界を守る為の強さをもてなかった彼は、確かに管理局員として彼は相応しくなかったのだろう。
弱さが罪だとするならば、強さが正義だとするならば、確かに彼は悪であった。

だが。


「休みなんてないぞ、まだまだ俺の後も何人も待ってるんだ、それが終わったらまた俺の番だ!」
『普通はどんな奴にでも休み前にはよし、遊んで来い! って送り出してやるもんだが……そんな気持ちには欠片もならんな。お前らみたいなクズは本当に今までで始めてだよ!』


視線をほんの僅かに逸らせば、そこには人、人、人。
自分よりも遥かに年少の男がいると思えば、己の父親の年齢を遥かに超えたような齢のものもいる。
その年齢や背格好もまるで違う男たちは、しかし外見上はその羨望と欲情と渇望に塗りつぶされた表情という一点で共通した点を持っており、それに象徴される内面においても似通っていた。

そこには、成績不良によりリストラされた元一流企業社員がいた。セクハラで訴えられ職を失った元教師がいた。資料の捏造により追放された元学者がいた。食い詰めてホームレスになった男がいた。プロになれなかったアスリートがいた。三浪中の予備校生がいた。上司に不満しか持たぬサラリーマンがいた。就職出来ずに職安に通いつめる無職がいた。潰れそうな商店の店主がいた。無理な夜勤で目を血走らせたフリーターがいた。借金取りに追い立てられて夜逃げした元社長がいた。汚職の不始末を押し付けられた元取締役がいた。イジメによって学校に通わなくなった学生がいた。理不尽なクレームに頭を下げ疲れた営業マンがいた。雑誌の悪評で店を潰された料理人がいた。不況により仕事がなくなった職人がいた。

そんな高度に発達した魔法社会においてもなお消えぬ、社会の最底辺。
いまだ幼い少女が目の前で嬲られている今の現状を見て、助けなければ、と思うよりも自分も嬲ってみたい、と感じるような、恵まれぬ己の現状への代償として他人の不幸こそを望む人間のクズたち。
よくわからない銀の男に集められた、彼の同士にしてライバル。
自分の順番が終わってしまえば、次に彼らを追い越してこの目の前の少女に突っ込めるようになるにはどれほどの時間が必要となることか。
そんな残酷な現実に対して我慢も出来ずに喚きたてたい焦燥を感じながら、しかし男はもはや脳裏にちかちかと煌く白い爆発と背筋を走る崩れ落ちそうなほどの快感を抑える事など出来そうにないとも覚悟していた。

そんな彼に、彼らに足りなかったのは一体何か。
根性か?
信念か?
友情か?
知識か?
あるいは……資質か?
その答えは誰も彼に、彼らに教えてくれなかった。

だから、管理局についていけなかった彼に残ったのは僅かばかりの退職金と、それを対価にして納得するには遥かに大きすぎた心の傷と、限りない恨み。
そしてその彼と欲望を同じくするもの達の心にあるのもまた、それと極めてよく似た強い後悔と行き場のない憤りとそれらをまぜこぜにした黒い衝動。
世をすべて怨んで妬む、しかし力がないからそれは社会に対して何の影響も与え得ない、そんな無意味で無価値な感情。


「お前なんか管理局には必要ない! できないんだったらやめちまえ!!」
『お前なんか管理局には必要ない! できないんだったらやめちまえ!!』


それを果たす機会を銀髪の魔王に与えられて、彼は今この瞬間この世の誰よりも今の時間を謳歌してその思いのたけを高嶺の花だった少女、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンの奥底に対して白濁した欲望として吐き出した……自分はどこで間違ったのだ、という自問を胸の奥底に沈めたままで。











事が終わった後の一服は格別だ。

白濁の欲望の証でその白い肌を汚しながらベッドのシーツの海にうつぶせて荒い息を吐く高町なのはの側に座りながら、そんなことを雨塚は思い出していた。
彼の好みとして喫煙はあまり趣味に合わないが、かといってこの時間にコーヒーをセラフィに頼むのも間違っている気がする。
それが故に思い出した言葉だったのだが、果たしてそれは誰から聞いた事だったのか。至極優れた記憶力を持つ天才を持ってもそんな与太話をどこで聞いたのかを思い出すにはいささか労力の要ることだ。
だからこそ彼は、そんな脳裏に浮かんだ疑問を無視して次の『策謀』に進めることにした。

今なお移るモニターの中で今なお少女に飢えた獣のように群がる男たちを視界の端に捕らえたまま、雨塚は声を発した。


「なあ、一つ聞きたいんだが……管理局ってのはどのあたりまでメッツァーやシルヴァ君のことを掴んでいるんだい?」


答えが返ってくるとは端から思っていない独り言を、しかし雨塚はそれをきちんと少女に届くだけの音量で放った。
この部屋にて彼から散々嬲られていた彼女にそれを冷静な頭で聞くことが出来るだけの余裕があるとは思えなかったが、目の前に写されたモニターにて親友だった少女がひたすら男たちに犯されていた光景を見せられていたときよりかは多少なりとも聞く耳を持つだろうと思い、続ける。
街頭にて客を引く一番安い娼婦以下の扱いをされる親友を見てももはや、助けてと叫ぶだけの体力も残っていないのだろう……もっとも、彼女がそんな街娼と言う存在を知っているとは思えないが。
枯れた声を僅かに出して、こちらを睨みつけるその視線の強さだけが未だに彼女を高町なのはだと保障しているだけの、無力な少女に対して教え込むように、抑揚のついた魅力的な声が部屋に響く。

今まで捕らえられ、無理やり肉の喜びを植えつけられ続けてきたときにはなかったそんな会話に、なのはの目の奥が鈍く輝く。


「目的だとか、技術レベルだとか、拠点の位置だとか……まあ多分、ほとんどつかめていないんだろう? あのディラックがいるから無理のないことだろうが」


肉欲を強制的に植え付けられ、それを散々無理やりに引き出された後の彼女の脳裏にとっては判断のつきにくいことだったかもしれないが、その言葉は正しい。
なのはにしろ、フェイトにしろ、ヴォルケンリッターにしろ、何度か彼らの拠点に「侵入」したことはあった……ただの一室に閉じ込められて、延々と嬲られる事を侵入と呼ぶのならば、だが。

なのはにとって敵とはこの目の前の男のことだけだった。
なのはは、今まさに彼の言葉によって他の者の存在を示唆されるまで、この一連のテロ行為はかつてのJS事件のようにこのファルケと名乗る男が首魁となってやっていることだと信じて疑わなかった。
今まで解決してきた数々の陰謀のように、たった一人の野心によってなされたものだ、たった一つの困難さえ解決できれば、後は皆で笑い会える類のものだと。
それを否定され、わずかばかりになのははそのシーツの海で衝撃を受けたかのように身をよじらせる。

シルヴァ、と名乗る男もこの男の配下であると思っていたなのはにとって、拠点が別々、という言葉の意味は大きい。
シルヴァ・ラドクリフという男がはやてを主とする管理局員との僅かな接触においても得られなかった情報であるが、今の話し振りからすると少なくとも三人。
協力関係にあって、でも拠点も目的も技術もばらばらな人間がこの事件を起こしている。
すなわち、解決するには、三つの組織を壊滅させなければならない。
一人ではなく複数を相手にするということは、単純に三倍になるだけではなく、それらが絡み合いより一層困難な事態になる、ということはエリート教導官として高度な戦術・戦略教育を受けてきたなのはには十分理解できる事だ。
疲れた脳裏でなお無言でなのはは雨塚がとても簡単に与えた、しかし極めて重要な情報の分析を始める……それがこの男のやり口なのだ、と理解していても。

なにせ、予言を含む探知系の能力は化け物じみた力量の魔導師によりほぼ封じられている。
かといって、この目の前の男、雨塚が接触したと思われる特殊なバリアジャケットの使い手や先ほどまでフェイトを嬲っていた男たちから情報を得ようとしても、その命を持って機密保持を命ずる術式を開発しているらしい彼らの目的は聞き取れていない……尋問しようとすれば、その前にこの目の前の男の見えざる手によって殺される以上は。
故に、彼らとの戦いが始まってしばらく立った今なお、推測以外の彼らの情報というものはほとんど入ってきていない。
手がかりがつかめず、足で稼いだ操作はことごとく空を切り、それどころか各個撃破を許してしまう。相手の戦力の規模さえいまだ定かではないにもかかわらず、こちらの戦力が削られるばかり。
転移と召喚、そして洗脳の恐ろしさは、スカリエッティがその脅威を立証してもなお、容易に対策が取れるものではないのだから、なのはとしても千載一遇のこの機会を逃す事も出来ず、必死になって身を伏せたまま耳を澄まし、目を見開き、感覚を研ぎ澄ます……これこそ、この男を打破する為の手段になると信じて。


「まあ、勿論俺のものを教えてやるわけにはいかない。君と俺は「仲間」なんかじゃないからね」


それを十二分に知ってなお、己の腕の中に収めて見せると雨塚は誇り、その上で魔手を伸ばし続けた。なんといっても、今日こそが待ちに待った機会なのだ。
なのはの肉体をそれなりに性的に開発しつくし、量産型強化スキンで彼女の心を揺さぶり、シルヴァ・ラドクリフの変容魔法の脅威が管理局内で浸透し、その上でメッツァー・ハインケルが何らかの思惑でフェイト・ハラオウンを路上調教しているといういままさに好機。
これを気に雨塚は一気に彼女に対する篭絡の手を進めてしまいたかった。

そのひとつとして「仲間」のところにあえてアクセントを乗せて発言すると、びくん、となのはが体をふるわせる。
一瞬視線を走らせたのは、モニターの中。もはや人だかりとも言える男達の陰に隠れて姿などまるで見えないが、確かにそこには「仲間」がいたのだろう、と思わせるだけの思いが見て取れる。
その絶望と悲しみに染まった瞳を見て、雨塚はつくづく今この瞬間に合わせてくれたメッツァーとそれを掴み取る事が出来た己の強運に感謝をする。


「だが、敵の敵は味方、という言葉もある。君が俺のより大きな敵を倒してくれる敵だって言うなら、俺たちが戦うのは別に今じゃなくてもいい」


なのはからのフェイトへの思いを改めて感じ、そのことを隠す余力さえもないほどに少女を削った事を確信した雨塚は、一手一手、じわりじわりと這い寄るように、しかし一気呵成に「侵略」を続ける。

それは、決して暴力を伴うような映像で移るかんしゃくのような野蛮な洗練されていない手法ではない。
だが、声の抑揚を操作し、特殊なリズムで腕を、足を、気付かれないように鳴らし、なのはが一心不乱に見つめ続けるモニターに彼女が気付かない程度に別の映像を混ぜ込む。
彼が開発した機械的な洗脳装置の理論の基礎となる心理誘導により、ゆっくりと、しかし確実に雨塚はなのはの心へ手を伸ばす。


「例えば……あんな事をフェイト・ハラオウンにやらしているメッツァー・ハインケルを倒した後でも、ね」
「っ!!」


姿を隠してより一度たりとも管理局に戻っていないフェイトがなぜあんな事になっているのか。この男が行為の最中に言っていた「俺がやらしているわけではないから止められない」という言葉が真実だとするならば、一体なぜ。
なのはが知りたくて知りたくて仕方がなかった情報をこともなげに解答する男に、なのはの目が見開く。

先ほどから出てきていた名前の一つ。
メッツァー・ハインケル。
それがフェイトが追っていて……そして捕らえられた次元犯罪者の名前だというのか。
なのはの背筋に電流が走る。

直接戦場に出てくるファルケやシルヴァとは違い、今のメッツァーは居城の奥深くに潜み配下に指示を飛ばすことで侵略の魔手を伸ばしている。
異名の通り王と呼ばれるに相応しいそのやり口は徹底しており、実際に戦場にその姿がミッドチルダに表れたことは一度もない。彼が副官と僅かなマナだけで島流しにされたスイートナイツとやりあっていたときのように、その力を彼によって剥ぎ取られているシルヴァやファルケとは違い、今はいくらでも戦力を持つようになった彼が戦場に出る意味などないからだ。
それゆえにその人物を知ることさえもなのはたちには極めて困難なことであった。
交戦時に唯一記録映像をもって離脱できた際に移るゼルゲス、というらしい触手にまみれた異形が首魁だとは流石に思っていなかった管理局の捜査部だが、実際にはココノにさえもたどり着いていなかった彼女らにとって、これは極めて重要な第一歩だった。

いや、それどころか先ほどの口ぶりからするとこの男はどれほどの情報を保有しているというのか。この男の組織も一枚岩でないとするならば、もしこの場でファルケを捉えることが出来たのならば、芋づる式にこの事件を解決できるかもしれない。
いや、ファルケを捕らえられなかったとしても、情報さえ得られれば。
疲労と眠気で濁りつつあったなのはの瞳に、力が宿る。

それを知った上で、雨塚は言葉を続ける……時空管理局を倒した後のことを考えた上で。


「何、別に君に俺たちを見逃せと頼むわけじゃない。別にこっちに油断や隙があればいつでも挑んできてくれて結構だ……だが。親友を取り戻す為、まずは倒すべき共通の敵がいるんじゃないかな?」


だから、親友を助ける為に、自分と協力しろ。
その間にファルケの侵略行為を、犠牲になる新型バリアジャケットの被験者による被害には目を瞑って。
そう雨塚鷹佑は―――次元犯罪者ファルケは、なのはの耳元で嘯いた。

おそらくそれは、本来の高町なのはならば一顧だにせずに否定したはずの選択肢だ。
フェイトやはやてとは違い、なのはは親友とそれ以外について区別をしようとはしないからだ。
友だから助けるのではない。家族が望むから助けるのではない。
高町なのはが助けたいから助けるのだ、と。
そう内なる声が、高町の血が叫ぶのだ。


『お前なんか管理局には必要ない! できないんだったらやめちまえ!!』


だがその声は、眼前の光景に打ち砕かれる……フェイトを今まさに嬲っている人たちに。
その身に寸鉄も帯びていなければ、リンカーコアを持っているわけでもないし、上魔と呼ばれる化け物のようにいやらしい媚薬をその身から発しているわけではない。
ごくごく平凡な、どこにでもいるような、今までなのはがいくらでも見たことのあるような、そんな男。
メッツァー・ハインケルという名の男に誑かされている哀れな被害者なはずの男たちだ。

だが。
今の光景を見て、なのはは彼らを守らなければならない対象と見るには無理があると知った。
理不尽なわけのわからないことを叫び、彼らを守る為に奮闘し、力及ばす倒れたフェイトに暴力で持って性交を強制する彼らを助けたいとはどうしても思えない。
人畜無害に生きており、今までなのはに助けられてきた多くの人々。彼らは犯罪に手を染めるような愚かな行為に走ったことなどなかった。
だがそれはその精神の潔白さゆえではなく、ただ機会がなかったがために犯罪に走らなかっただけ。
その胸の内には次元犯罪者に負けず劣らず醜い欲望を抱えた、しかし力がなかったために実行に移していなかっただけの「善良な人々」。

今まさに力づくで自分を犯したファルケに対してさえ哀れみを持っている少女にさえも、目の前の光景はあまりにそれを象徴する醜悪さに見えたのだ。

物語の主人公じみた奇跡を再現し続ける事ですべての人を救い続けた正義の魔法少女は、今この場になって初めて友人とそれ以外の価値の違いの一端を知った……知ってしまった。


今のこの状況では完全無欠な皆の笑い合える幸せな未来というのはもはや望めない。
全てを救うことは、奇跡が起こらなかったこの物語では不可能なのだ。
ならば、決まりを破り、禁じられた忌避されるべき手段に手を染めるような者が犠牲になったとしても。
それを犠牲に価値あるものが守れるとするならば。

その冷たい方程式はお前の望む「正義」ではないだろうか?
ファルケの声は、そんな悪魔のささやきをなのはの耳に残す。

びくん、と体を振るわせたなのはの目が見開かれ、やがてゆっくりと閉じていく。
その目じりから流れ落ちた涙を見て、雨塚は己の策謀が正しかった事を改めて確信する。
もはやエース・オブ・エースはその名の意味を変えた、と。

だからこそ、最後の念押しだけで彼のこの場での仕事は終わりだった。


「別に俺は君に何一つ強制はしない。しかし、世界に平和を、皆に幸せをもたらす為に。俺を利用して、『順番』をつけることは君にも悪いことではないはずだよ、高町なのは」


そう告げた後、彼は含み笑いをしながら踵を返す。
親友を迎えに行く少女に対して身支度をするだけの時間を与える必要があると思ったからだ。
一世一代の決心をして親友を救うために飛び出していく淑女の身づくろいを長々と眺めるなど、紳士たるもののすべき行為ではないに違いない、と。

だからこそ彼は笑い声だけを残して去っていく。
事が終わった後の一服は格別だ。
改めてその言葉を思い出して。


この無垢なる少女の心を汚して堕とすまさにこの瞬間。
これを成しえた後の例えようもないほどの快楽と歓喜を紫煙などでけぶらせる事など、愚かな事だ、とあざ笑いながら。


 つづく

Comment

No title

とうとう来たか
凌辱系エロゲー名物であり、なのは同人誌でもよくある衆愚による輪姦
なのはらがエロい体を持ってるのは横に置いといて人間の負の感情を煽ってエリートとただの凡人を噛み合わせる手法とそれを見せつけて彼女らの正義を歪めさせる手管はさすが外道どもだぜ
さて、三人娘ももう元には戻らない、三悪党の暗闘も更にハードになってきた
彼女ら、彼らの行く末は?

No title

順番をつける。
普通の人間には当たり前のことで、しかし正義のヒロインには最大の禁忌ですな。
特に高町なのはには物凄い毒といえますし。
基本誰かに依存してるフェイトや、立場ゆえに順番をつけることに慣れているはやてとは違いますからね。
皆を救うと宣言して、救えてしまう主人公だから。
だからこそ彼女は悪という理不尽に対して最強で最大の脅威なわけで……
しかしその核たる要素が汚染されてしまえば、ファルケからすればただの小娘でしかありませんな。
そういう意味では何度犯されて肉欲に満たされようとも、基本的に市民を守るものと認識してる正ルートの魔法戦士はある意味凄いw

No title

守るべき民衆からの凌辱はお約束ですよねーw
メ様的に救出なり横やりまで入る事も想定して嬲ってそうなヨカーン
非公開コメント

プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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