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近縁(ランスクエスト)

ランスクエストで特に印象に残っているイベントは、マジックに乾し肉の食べ方を教えるランスです。
なんかああいう冒険者! なやり取りが新鮮だったので。
マグナムでは香ちゃんの一連のイベントで普段会話がないような組み合わせがあったのが楽しかったです。
あれだけ人数いるんだから中でもいろいろとあるんでしょうけど、未だに志津香とかなみちゃんがお互いどう思ってるのかとか描写がほとんどないんですよね。
そういった意味でもマグナムはお祭りディスク的なので面白かった。

というわけで、そういったのもわずかばかりに補完していければと思います。











ありとあらゆる設備・施設を詰め込んだ上でめちゃくちゃに設計され、その上でリーザス・ゼス・JAPAN・コパ帝国の援助によってそれなりの形になるように修正されたランス城は、その冗談のような建造経緯とは裏腹に世界屈指の名城といってもいい。
確かにランスのセンスが前面に出た統一感の欠片もない意匠の数々は伝統を重んじるものにとっては眉をひそめるようなものでもあるのだが、高額な建築費とリアとコパンドンによる異常なまでの監視と圧力によって建築が行われたことにより、世界唯一の品としては極めて完成度の高いものだ。
リーザス風でもゼス風でもJAPAN風でもないその独特の外見や内装は、CITYの中でも一際異彩を放ち、ランスの悪名によるものもあってひどく注目を浴びている。
大国の名城に比べれば規模こそ小さいもののその豪奢さと設備は、はっきりいって一冒険者が持つようなものではない。

その中の施設の一つ、露天風呂。
わざわざ地下まで掘り当てた天然の温泉を、これまた手間隙と技術とコストを掛けて屋上まで引き当てたその施設は、ほとんど彼の女であることと同義である城の住人には常に解放されている。そしてついでに言うと、ランス以外の男メンバーは常に城主命令で拒絶されている……一応、混浴とはなってはいるがそれが例えばロッキーやバーナードに適用される事はない。実質、利用者の9割がたが女性だ。
もっとも、ランスがいるときは覗かれる事は愚か突然乱入される事さえも覚悟しなければならない、という事もあって屋内にある大浴場同様普段からはそこまで利用者層が多いわけではないが、彼の不在時には話が別だ。

可能な限り部屋から出たくない、むしろ風呂にも出来るだけ入りたくないアテン・ヌー。
修行どうこうでドラム缶に自分で湯を沸かして入っているマチルダ・マテウリ。
世話する側であるという自覚からか自室で済ませ進んで入ることはないビスケッタ・ベルンズ。
体質上、このランス城の中さえも他人がいる以上は全幅の信頼は寄せれず装備をはずすようなことは中々出来ないクレインとフェリス。
入ろうとするたびに城内であるにもかかわらず何故か出現するハニーに邪魔される沖田のぞみ。

こういったごくごく例外をのぞけば、ランス不在時にはわりといろいろな人間が入りに来る施設だ。
日によっては魚がいないのにガチンコ漁法を試みるキバ子がいたり、あてな2号がアルカネーゼと泳いで競争していたり、カパーラが気持ちよさげに一人リサイタル(あまり上手くない)を行っていたり、メグがコパンドンの前にもかかわらず湯船で乳を浮かべ谷間で波を作っていたりと日によって様々なメンバーが入れ替わり立ち代り利用している。


「ふ~んふ~んふ~ん」


それゆえ、この日もこの豪勢な露天風呂には一人の女の姿があった。
流れるような金の髪に均整の取れた長身、そして女性ならば誰もが憧れるようなスタイルの美女が、鼻歌交じりに湯船で手足を伸ばしていた。


「ここのお風呂はJAPAN風でいいですね~。ああ、なんだかハニワ平原を思い出します。景勝は元気でしょうか?」


ぐぐー、と伸びをすると、その大きな胸がぷるん、と揺れる。と同時に、湯で温められた彼女の肌から甘い匂いが立ち上り、あたり一帯へと漂っていく。

リズナ・ランフビット。ランスの女の一人だ。
性的に調教されつくしたその体の動作の一つ一つが男殺しな魅力を持っている彼女は、しかし今ばかりはそんな自身の体質についてはまるで考えていないような幸せそうな笑顔を浮かべて、改めて岩に囲まれた湯船に肩までつかる。
ランスと僅か数センチしか変わらぬその長身を考えても随分と大きな胸をぷかぷかと浮かばせて、リズナはその湯から伝わってくる快に目を細めた。

今までの人生において割りと不幸なことが多かった彼女であるが、実のところ今の彼女は随分自分は幸福であると感じていた。
基本的に人がいいランス城の住民たちには自分を悪質な嘘で騙そうとする人間はあまりおらず(たまにランスがからかうが最近はそれもない)、金銭的にも魔法戦士として恵まれた才能を持つ彼女はそれなりの冒険者家業をしていれば特に困る事もない。
上げ膳据え膳の玄武城でもあまりに暇であった為家事をやっていた彼女はメイドの存在に戸惑う事もないでもないが、それとてビスケッタの気遣いにより出来るところは自分で、そして困るところは助けてもらっている。
体質は相変わらずであるがそれとてランスに一声掛ければ嬉々として付き合ってくれる以上、最近ではあまり利かなくなってきた薬に頼ることも少なくなった。
御世話になった先生の墓参りも出来たし、たまには景勝のところに遊びに行っているし、あの小さな王子様は立派になっていたし、友人だって出来た。

ランスのことは気に掛かっているが……それは考えても仕方がないのかもしれない。ランスのことを考えたその一瞬はリズナの顔が曇ったが、正直なところ彼に関しては手詰まりになっている感があるリズナはだからこそこの自分に対する幸福を改めてかみ締めており、それと同時にある種の後ろめたさを胸に押し殺したまま生活していた。

だがそれは、彼女にとって心苦しいことではあっても確かに平和で幸せな日々だったのだ。


「おじゃましま~す」
「あ……どうぞどうぞ」


故に以前に比べれば多少なりとも心の余裕が出来ていた彼女は、唐突に浴室の扉がひらき小さな影が入ってきたときにかつてのように反射的に「騙されないようにしないと」とわずかに身を固めるはしたものの、すぐにのほほんと歓迎の声を上げた。
目線をやった先に見えた姿は今まであまり親しく話した事がない相手であったが、だからといって拒むようなことなどなど考えもしなかった。

促した声にしたがって、長くウェーブした髪をなびかせながら一人の少女が入ってきた。
ミル・ヨークスと対して変わらぬ程度の体格の少女は、いつも騒がしい彼女とは打って変わって落ち着いた様子で、しかしあまり慣れていないようで辺りを見渡している。
入ってきた彼女の名はたしか……カフェといっただろうか?


「ねえ、この時代のお風呂って何か作法があったりするの? 私、あまりよく知らないの」
「いえ、お湯を体にかけてから入っていただければ……あ、タオルは湯船につけない方がいいかと」
「そっか、ありがとう」


それゆえ、こちらに対して質問してきた相手に実に友好的にリズナはこたえた。
カフェの言い回しに若干の疑問を感じないでもなかったが、それでも彼女の回答は適切だったのか、カフェは現代の風俗から考えるにあまり変なこともなく湯船に浸かって、ふう、と一息はいた。
そのカフェに対して、今度は最初の位置から割りと声が届く近くに座っているリズナから声を掛ける。
温泉でゆだった彼女の声は、いつも以上にゆるゆるとしたものであった。


「えっと、カフェさんでしたよね? 私はリズナ・ランフビットといいます」
「あ、最近ここに住むようになったばかりだったからあまり知らないよね。カフェ・アートフルです。よろしくね」
「……? カフェさんは」


それとは対照的に、カフェの答えはその外見からすると不釣合いなほどしっかりしたものだった。リズナと比べると頭半分ほど小さいようにしか見えないが、外見上の幼さはあってもそれ以上にしっかりとした声。
どう考えても子供ではないその様では、リセットやカーマの友達ということもあるまい。はて、一体この女の子はどういう経緯でランス城にいるのか、とリズナは頭をひねったが、ようやく思い出してぽん、と手を叩いた。


「あ、あのクグ、の……すみません」
「あ、別にいいよ」


そして、即座に謝った。
ダンジョンの奥地に転がっているパーツを三つ集め、その上で中の人間の本名を答えなければ解放できない拷問アイテム「クグの拷問機械」に囚われていた女性であったと聞いた事を思い出し、おもわず声に出してしまったリズナだったが、それはすぐに小さな声となった。
パーツの状態ならばさておき拷問を受けている直接の光景についてリズナは直接見たことはないが、拷問機械、拷問アイテムに囚われていた相手にとって愉快な過去ではない事は明白だったからだ。
自身もある意味『経験』があるにもかかわらず、無配慮にその過去に踏み込んでしまったことに即座にリズナは謝罪を行ったが、カフェはそれを笑って受け入れた。
どう見てもリズナ本人よりも年下に見える少女は、しかし今この笑顔ばかりは遥かに年上に見えた。


「だって、正直あの機械は一回ごとに記憶がリセットされるから今じゃあんまり覚えていないし」
「ですが……」
「それにあなたもあのパーツを集めるの、手伝ってくれたんでしょ? だから私にとってはあなたは恩人だもの。そのくらい、気にしないで」


リズナがカフェを助けた……少なくとも、その手助けをした。
彼女の言う事は確かに事実であるが、同時にそこまでいうほどの貢献を彼女に出来たとはリズナは思えなかった。
確かに彼女はなんどかクグのパーツを見つけたことはあったが、それはあくまでそのパーツがダンジョンの低階層にあったときの話だ。リズナが知る限り、クグのパーツがそろったのは最低でも四回……つまり、三度は助けられなかった。
3回目までについては幾つかの破片を見つけるときにパーティメンバーにいたこともあってある程度の貢献をしたということもいえなくはないだろうが、それが限界だ。
リズナは鈴女に見せられた写真でカフェ・アートフルという名前を出す事は出来なかったし、4回目以降パーツが眠っていたのであろう深く険しいダンジョンを踏破することもできなかった。
それら全て―――たった一人で高難度のダンジョンを駆け巡ってパーツを集め、見ず知らずの女性の名前を探し当てた―――をやったのは、ランスなのだから。

だからこそそれを言われても罪悪感はまるで消えようとしない。
そのリズナの眉根を寄せた表情にそれを悟ったのか、ばつの悪い苦笑いのような表情をカフェは浮かべた。


「でも、それをやったのは全部ランスさんですし……」
「だから、年上の話は聞いておきなさい。ランス君のおかげなのは確かだけれども、もう終わった事だからいいじゃない?」


年上、という言葉に違和感を覚えたリズナだったが、すぐに納得する。
彼女が拷問機械に囚われ続けていた、というならば外見年齢などあてにならない。
何せ自身も今年で51歳だ。この自分よりも幼く見える少女とて、実際に百年以上生きていてもおかしくはない。
クグの拷問機械の力は、使徒による永久保護魔法の力は、それを可能とする。
永遠を可能とする牢獄の住人だったのだから。


「それに……たかが『50年』の話だもの。私に―――私たちにとってもその期間は決して短くはないけれども、それだけですべてを捨てて絶望するほどの長さでもないから」
「え?」


にもかかわらず、慈愛に満ちた笑顔を投げかけてくるカフェの事が、リズナは理解できなかった。
クグの拷問機械はマジックアイテムだ。AL教団のリストにはあがっていないとのことなのでバランスブレイカーと呼ばれるようなものではないらしいが、それでも今の言だと不老不死にされて50年も性的拷問を受け続けていたらしい彼女が、どうしてここまで強靭でいられるのか。
時の止まった世界、玄武城に31年間囚われ、その中で心が壊れるほどの性的調教を受け続けたリズナにとって、その年月を「たかが」と言い切ってしまうカフェの笑顔は、その幼さの残る容姿とは裏腹にずっとずっと長い経験を感じさせた。

ずきり、と彼女の胸が痛んだ。
自分はあのとき、誰かを身代わりにしてでも助かりたいと思ってしまった。
心底親切心より自分を助けると告げてくれたランスとシィルの気遣いを無視して、その彼らを騙す事によって助かろうとしたのだ。
たとえそれはアベルトやチドセセー他幾人にも騙された事や、それを心配した景勝の誘導があったとしても、決して罪が一等減じられるものではない。
カフェがたかが、と言い切っただけの年月さえもリズナは耐え切れなかった。ならば、どうして……リズナの口から、おもわず声が転げ出た。


「どうして……どうしてカフェさんはそんなに強いんですか?」
「え?」


それはまるで、自身に対して断罪を願う声にも似ていた。
つらつらと、リズナは自分の身に起こった数々の試練に、そしてそんなものなどあっさりと解決してくれたランスの行動を語り始めた。
頭ではそんなこと、初対面にも等しい相手に語ることではない、ということはわかっていた。こんな温泉で語り、聞くような軽い話でもない。いくら表面上は平然としているとはいえ、開放されたばかりの相手に対してその傷を抉るような真似など恥じるべきだ、という事もわかっていた。
それでも、震える声は、漏れ出た言葉は止まらなかった。

ランスもシィルも気にしない、終わった事だ、といってくれた。
だが、それでも自分ではランスに対して恩を返しきれたとは思えない……それどころか、この体質の性で日々借りが増えていくばかりであるような気さえしていく。
才能限界から生まれるレベルの差によって、冒険についていってそこでの働きでランスに恩を返すことが出来なくなったリズナにとって、それは出来る限り考えないようにしていることであったが、それでも自分が何もしないでもいいと思っているわけではない。自分が何かをしなければならないことを忘れているわけではない。
だが、実際のところこうやって体を磨いて待っていることだけしか出来ない事に、未だにシィルが氷付けのままでいることに、内心忸怩たる思いは常にあるのだ。

だからこそ、自力で呪いに耐え切ったカフェに、自身が歩めたかもしれない強い心に、なんとしても答えを教えてほしかった。


「そっか……あなたも私と同じ。でも、きっとあなたも大丈夫。私だって大きな間違いをしちゃったけど、きっとやり直せる、って信じている」


そのリズナの願いに対して、カフェは……1500年をカオスや日光のように物としてではなく、人として生きてきたエターナルヒーローの一人は、熟考の上答えを返す。
どこまでも英雄と呼ばれるに相応しい高潔さが、浴場ゆえに一糸も纏わぬ裸身の上からでも見て取れる。そしてその外見に相応しい落ち着いた声で、カフェは言う。
リズナと彼女の決定的な違いを。



「だって、私には仲間がいるもの」
「仲間……」



仲間。嬉しそうに、大切そうに、カフェはその言葉を語った。
身体的にはリズナのほうがずっと大人であるにもかかわらず、そこに積み重ねてきた実際の年月の違いゆえか、その声はすっとリズナの耳に、心に入ってきた。


「カオスにも再開できたし、聞いた話によると日光さんだって元気なんだって。ブリティシュっていう私達のリーダーだってきっとまだ何処かにいるはずよ」
「……それが、仲間の方のお名前ですか?」
「うん、そう。あと、ホ・ラガっていう魔法使いも仲間なの。全部で五人のパーティだったのよ?」


その仲間の名前を次々と上げていくカフェの声は、実に弾んだものだった。一人一人の名前を上げるたびに、その相手に対する信頼と愛情がリズナにまで伝わってくる。
じわり、とその声を聞いたとたんに何かわからぬ感情が胸を浸した。
ああ、自分にもそんな声で語れる仲間がいるだろうか。自分が彼らを仲間と呼んでもいいのだろうか?
それを知ってか知らずか、カフェは言葉を続ける。


「私ね、みんなを探してみようとおもっているの。私だけ、馬鹿な願いをしちゃったけれど皆きっとまだ頑張ってると思うから、駄目だっていわれなければ助けに行きたいな、って」


真っ先に、ある男の姿が思い浮かぶ。ハニーの彼は友達ではあるため、仲間という言葉では連想しにくい。だからこそ、その最初に脳裏に描いた男の衣服は緑色だった。

彼にとって自分の存在はきっとそれほど大きくは無いだろう。
彼は一流の冒険者であり、いくつもの冒険を乗り越えてきた歴戦の戦士だ。
ともに戦場を駆けたというにはあまりにリズナとは出会った時期が遅すぎる。そして、彼の女としても数多くいる中の隅っこにおいてもらっているだけの一人に過ぎない、と自覚している。
自分では、到底カフェと彼女の仲間が築いたのと同じ関係が出来ているとはいえない。
だから、彼に対して自分が仲間、と告げるのはおこがましい事なのかもしれない。


「ちょっとランス君とカオスにはこれ以上ついていけそうにないから……う~ん、まずはホ・ラガを探そうかな。ブリティシュは……まだちょっと心の整理が付かないから会えないし」


楽しげに仲間のことを語るカフェの言葉を聞いていると、まるで見たことのないその者たちがありありと目に浮かぶようだ。
それはリズナにとって目もくらまんばかりに眩しい。

それと同じ関係をランスに望むには、あまりにもリズナの力量はつりあっていない。薙刀も魔法もよく使う彼女をして、今のランスにとっては背を預けるにはあまりに不安な脆弱な存在であろう。

だがそれは、あくまでランスからリズナにむける感情の動きに対する事実だ。
リズナが一方的にランスを心底仲間であると信じ、動く為には何の問題もないはずだ。
彼の助けになりたい。彼の傍にいたい。彼と同じ時を過ごしたい。
この胸の奥でたぎる思いがカフェのそれに劣るとは、己にいろいろな意味で劣等感を抱くリズナをしてどうしても思えなかった。
互いに助け合えるカフェたちとは違い、その思いは勝手な一方通行のものかもしれないが、だがだからこそ彼に切り捨てられる一時の盾としてでも力になりたいというその感情は実に強いものであってもいいはずだ。

それこそ、ランスの為に道の魔物をほんの僅かに片付ける。
意味なく撃たれた、今のランスにとっては取るに足らないグリーンハニーの攻撃を、その身で受けて防ぐ。
またランスに対して呪いなぞが向けられようものならば、今度こそこの身の絶対魔法防御で身を挺して防ぐ。
疲れた体を揉んであげる。道中のうし馬車を代わりに運転してあげる。代わりに何か依頼の情報を集めてあげる。
彼の仲間として、女として、出来ることはいくらでもある。勿論、同じことを考えている『仲間』も大勢いるだろうが、だからといってリズナが何もしなくてもいい、というわけではない。
今まではそれさえも邪魔になりはしないかと慮り、そういったでしゃばりじみたことには手を出さなかったリズナであるが、そういったことで『邪魔』をする方がまだ無為に時を過ごすよりも自分の好きなランスが望む態度ではないか、と思ったのだ。

それこそ彼が、エッチな事がしたくなったときに、すぐに濡れる自分の体は彼にとっても決して使い勝手が悪い、ということもないだろう。
それでも足りないところは多々あるだろうし、隔絶した力量を持つランスの隣に立つのは並大抵のことではないだろうが……そのときは『仲間』に頼ろう。きっと、同じように考えている人間はあの青年の側にならばいくらでもいるだろうから。
自分と同じぐらいの力を持ち、同じ経験を積んでいくことでランスから一方的に助けられるのとは違う、お互いに助け、助けられるカフェのような仲間をこれから作っていこう―――ランスを助ける、という同じ目的の為に。

今までは無理だった。人を信じるには、リズナはあまりにも多くの人に騙され続けてきた。
また今度も嘘をつかれるかもしれない。それを疑いながら、しかしそれでも信じる心を捨てきれずに磨耗しきっていた彼女は、アイスフレームなどで今まで行動を共にするものとも昔からの知り合いを通じてでもない限りそれほど親しく語り合うことはせず、ある程度の一線を引いてきた。友達は出来ても、自分から進んで冒険へといざなう「仲間」は出来なかった。
彼女はもはや女学生ではなくれっきとした冒険者なのに、実際にはランスについていくか、あるいはソロで格下相手に戦うだけ。

だが。
仲間を作る。仲間とともに歩んでいく。
そんな、かつての何も知らなかった少女のときのように何の打算もなく、利害もなく、相手を信じ、信じられる……そんな夢のような未来も。
ここランス城なら、彼を慕う女が数多く集まるこの場所なら、叶うかもしれない。


「ホ・ラガさんって方はどのような方なのですか?」
「それがね、おかしいの。見た目は凄く格好いいんだけれども性格がすごく変。しかも女嫌いだから私もよく自然に意地悪みたいなのされたもの」


だからこそ、浴場の湯気にまぎれて浮かんだ涙をそっと拭ったリズナは、先輩であり、仲間としてやっていけるかもしれない少女と談笑を続けた。
仲間の輪を広げ、ランスを助ける為に。幸せな少女の時代をもう少しだけ続けて、そこから一歩進むことを決めたのだった。







そして、そのリズナの決意と時を同じくして。未だに仲間を愛している、しかしそれを現すことを許されない男が言った。


「ふむ、私はその問いに答えることが出来る」


シィル・プラインを助ける方法。
かの大国の諸王たちでさえ手がかりもつかめないランスが求めてやまないそのことが、まるでたやすいことであるかのように男は答えた。
その低くよく響くバリトンはその内に眠る計り知れないだけの知力を感じさせ、先の言葉が真実である、と信じさせることを補強していた。

おもわず勢い込んで体を乗り出したランスをみて、しかし男はその興奮を抑えるかのように手のひらを前に突き出してランスを制する。
常に彼と行動を共にする魔剣のおしゃべりさえも止めるほど、その手の隙間から見え隠れした眼光は鋭いものであった。

なるほど、男の宿す知はまさに神の領域のものである。
だが、同時に彼は『慈悲深い神』などというものではなく、紛れもなく人間である。
無償で『見ず知らずではない』とはいえ赤の他人を助けられるほど彼はこの世の善意を信じておらず、むしろそんなものをせせら笑わざるを得ないほどにこの世の悪意を『知りすぎて』いた。
仲間、信じる、決意、信念。そんなものに対して斜に構えずにはいられないほどに、彼は世の中を見知っているのだ。


「だが、条件がある」


だからこそ、その後に出た女嫌いのおかしな賢者が発した言葉は実に真っ当な、対価を求めるものであった。




聖賢へ

Comment

No title

ランスがホモの標的に?

シィルの為に泣く泣くってのはランスのキャラじゃなさすぎるから、適当なイケメンを生贄だね。

No title

ランスとの出会いはLP2年でリーザス陥落の9ヵ月後なのでそこまで出会いが遅いということはないような。
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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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