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無窮(ランスクエスト)

GALZOOをやっていた当時、改めてランスの恐ろしさを痛感していました。
人とほぼ同じ女の子モンスターを容赦なく切り捨てられるあの世界の人間の倫理観は、やはり日本とは違うものだ、と。
そもそもレオ君たち、ランちゃんの部下レベルの拷問戦士ごときに苦戦してましたから、いかにランスがあの世界でも桁違いに強力なのかがよくわかります。










ランスの移動速度は、あまりに速い。
彼はファイターであり、決して斥候を得手とすることで同時に逃げ足、移動速度の向上を重点的に図っているレンジャーではない。そんな「無駄」な鍛錬を必要とするような技術など、ランスは欠片たりとも身につけたことはなかった。
だが、レベルアップによって向上した脚力は、才能に裏づけされた野生の勘働きは、そんな訓練により培われた歩行法や速度特化の鍛え方、などというものを必要としないだけの力を彼に与えている。
大地を蹴る。腕を振る。ただ、それだけの動作が彼に全てを踏破させるのだ。

電撃はそのわずかな障害にしかなりえず、無気力キノコがその胞子を散らすよりも早く駆け抜け、警報はそれによって呼び出した魔物がことごとく切り捨てられては無意味だ。
障害は全て踏み潰し、雑魚は全て切り捨てて、迂回路は全て駆け回って、迷宮という迷宮はことごとく黒い魔剣を握ったランスの前には跪く。


「クソが、クソが、クソが、クソがーー!!」
『……』


全てを切り捨て、踏みにじりながらも罵声は止まらない。
何か特別に気に触ることがあったわけではないのだが、最近のランスにとってそれはもはや口癖のようなものだった。
何をしても収まらない暴力的な衝動を抱えて、ひたすらに手も付けられないほど虐殺を、破壊を続ける。その気持ちがわかるからこそ、カオスは無言でつき従うしか出来なかった。
何が出来なかったわけでもない。誰を倒せなかったわけでもない。
望むままに喰らい、犯し、殺しているように見えるのに、ランスから延々とくすぶる苛立ちが消えることはない。
目に付くもの全てを怒りの捌け口にして、しかしそれでもなおなくならない新たな怒りこそが、今のランスの全てを動かしていた。


「そこかーー!!」
「っ!!」


その彼の前に次に現れたのは―――出てきてしまったのは、一体の女の子モンスターだった。
桃色の髪は氷付けの少女とよく似た色合い。だが、その目つきと顎辺りで切りそろえられた髪の鋭敏さはその印象を遥か遠くにかすませる。
両手に持つのは、それぞれ長剣。無骨で装飾もないそれは、しかし今までの戦闘を物語っているのか手入れが行き届いていてもなお全体を覆う細かな使用跡が見え隠れしていた。
ランスがその手に持つ神の手からなる魔剣カオスには及ばないだろうが、それでもその使い込まれた様はある種の凄みを漂わせており、その少女にも似た魔物のことを誰よりも雄弁に語っていた。

ソードマスター。
最強クラスの女の子モンスターだ。生息地域は迷宮の極めて奥深く。普通の場所にいていいような脆弱な存在ではない。
物理系最強種のバルキリーには及ばないかもしれないが、それでも剣技の腕だけならば彼女にかなう者は大国の将軍の中でもごくごく僅かであろう。二剣から繰り出される絶技は、ありとあらゆるものを切り刻む。
言い寄る男の子モンスターのことごとくを切り捨ててきたその無表情な顔は、世界最強種のひとつとしての誇りを宿したがごとく完璧な美を体現していた。


「ちっ、ソードマスターか……面倒な」


それを見て、ランスもほんの少しばかり真面目な顔になる。
実際のところ、ソードマスターに苦戦した記憶は歴戦の冒険者であるランスにとっても数多くあるのだから。
それを見て、ソードマスターもいつも通りの表情のうかべない顔はそのままに、愛剣を振りかぶって構えを見せた。
その後、一切の音が消えた。
剣鬼と鬼畜戦士の戦いが始まるこの場には、魂なきムシでさえも避けて通っているようだった。


「……」


いや、両者の間に歴然とはびこる力量差という壁を考えると、それはもはや戦いと呼べるようなものではないかもしれない。
ありとあらゆる剣技を極めたといわれるその女の子モンスターは、しかしランスの前に立った瞬間、己の命を諦めた。種族ゆえの特徴として反射的に刀を構えはしたが、それが今この場において役に立つなどと本気で信じているわけではない。
己の前へと駆け寄ってきた男のその何も移さない透明な殺意だけが秘められた瞳を見た瞬間に、この世に生を受けてよりその二腕に宿った剣の腕が今この場ではほとんど何の役にもたたないことを悟ったのである。


「おりゃっ!」
「っ!!」


だから、その女の子モンスターが剣を捨て跪き許しを乞う間もなく、ランスの具足が音を立てる。剣が大気を裂く。
刃が、煌く。
その音が、その光が、洞窟に反響して反射してソードマスターの耳に届く前に、すべてが終わった。


「ふん、雑魚が」
どさり


一瞬で間合いを盗んだランスの力任せに一撃が、ソードマスターの体をずるり、とずらし、その手に握られていた長剣を二つともカラン、と軽い音を立てて石畳の上へと転がす。
たったの一撃で、剣によって培われた人生を持つ魔物が、剣によって切り捨てられた。
かつては死力を尽くし、仲間と協力してどうにか倒すことが出来たレベルのモンスターさえ、今の彼にはちょっと面倒、程度の雑魚でしかない。
それこそが、今の彼の現状をこれ以上なく端的に表す象徴だった。

やがて赤い血を撒き散らして崩れ落ちた人間と同じサイズの生き物の体を踏みにじり、ランスが呟いた。


「ちっ、しかし本当にこんなところに美女がいるのか?」
『別に美女とか言う話はなかったろうに……』
「黙れカオス。美女だ。この塔に住んでいるのは美女以外にありえない」
『いや、ありえないとか言われても……まあ、そっちの方が嬉しいのはワシも同意するがの』


話す内容自体にはずっと以前の彼からたいした変化はない。
美女を求める為ならばどこにでも挑み、しかし途中で段々面倒くさくなってきて帰ろうとするが結局は強運で目的地までたどり着く男のせりふとして、実にそれはありそうなものであった。
だが、久々に見た女の子モンスターを面倒の一言だけで切り捨て、いらだたしげに呟くその姿に、その彼に握られる魔剣は確実に以前の彼との違いを感じていた。

だが、それでもカオスは剣だ。
その彼の肩を叩いて慰めることも、ともに酒を飲んで忘れてやることも出来ないが故に、カオスはランスの為に強き剣であることしか出来ない。
じわり、とソードマスターの血を飲み込み、わずかばかりに剣であるカオス自身にも経験値を取り込むことで切れ味を向上させた彼は、だからこそランスのその言動をとめることもせず、自分の考えだけを述べた。


『あのキースという男のよこした情報からするならば、ここに間違いないとは思うがの。まあ、そんな奴が実在する、というのならばじゃが』


技能として、冒険レベル1を持つランスに対してわざわざいう必要はない、とはわかってはいても、その千年を超えて生きる己の経験からする答えを返すカオスの言葉に、ランスは鼻で笑うだけで一顧だにしなかった。


「くそう、せめてサチコの奴でも連れてくるべきだった。疲れたが、キャンプ張るのも面倒になってきたぞ」
『いや、流石にサチコの嬢ちゃんでもこのレベルは無理だぞい。せめてあの魔想の嬢ちゃんとか謙信ちゃんとかじゃないと……まあ、その二人でもちょっときついけど』
「志津香は俺様の言うこと聞かんし、謙信ちゃんはキャンプなんぞ出来ん上に燃費が悪すぎる……ちっ、もういい。きゅーけーきゅーけー、ここで休憩だ」


自分の冒険には、もはやはや誰も付いてこれない―――力を奪う呪いの指輪さえ超えてきた天才魔法使いであろうとも、JAPAN一の大剣豪であろうとも。
それをカオスに言われるまでもなく知っていたランスは、だからこそ今度は不機嫌に鼻を鳴らすだけで積極的な賛同とそれからなる過去の悔恨を見せることもなく、いらだたしげに反論するだけに留めた。
その言葉には、ある種自分以外の全てを雑魚、足手まといだ、とするような残酷ささえ篭っていた。

が、しかしカオスが告げた二人の名前をばっさりと切り捨てるその言葉には、まだかつての彼らしさが見えた。少なくとも、カオスにはその二人が自分についてこれないことに対する大きな苛立ちはないように見えた。その顔には自分自身が強すぎることに対する物足りなさはあっても、それを他人の弱さに対する八つ当たりとまでは達していないらしい。それを声で聞いて、おもわず無い胸をなでおろすカオス。

むさぼるように戦い犯す彼をして、未だに彼の女は無意味とはなっていないのだ。
よかった。
まだ彼は、己の闇には溺れていない。
敵は殺し、味方を振り捨てて前に進んでいても、まだ戻る場所は、繋ぎとめる場所の意味は失っていない。

それこそ、桃色の少女を失って以来それなりにランスと付き合いの長い彼が見たことがないほどに荒れに荒れている現状から心配していたこと―――彼の知る最悪の権化、魔王ジルや魔人ケイブリスのようにひたすらに他者に陵辱と苦痛を強いることのみが快楽とはなっていないことは、カオスにとっては何よりもの救いだった。

その喜びを隠して、カオスは出来る限り彼の助けとなることを望んで言葉を発した。


『お、ランス……なんか今、先のところで仕掛けが動いた音がしたぞ』
「あ? まあいい、後で見にいってみるか……」


おそらく、この階層のボスモンスターであったソードマスターを倒したことで仕掛けが動いていたのだろう。それの完了とともにおそらく階段でも現れた音を察知したカオスの声で、ランスはだるそうに顔をそちらに向けるが、立ち上がることはせずにそのまま頭を戻した。

どっかりとその場に座り込んだランスは、そのまま後ろに背負った荷物から水筒を取り出し、さっき水場で汲んだ水を口に含む。
かと思えば、その水筒をほうり投げ、鎧も脱がぬままその場で唐突に後論、と横になったばかりではなく、目を閉じさえもした。
ここが城壁と兵士に囲まれた安全な街の中ではなく、魔物やハニーが跳梁跋扈する魔窟であるにもかかわらず、だ。

自身の耐久力への絶大なる自信と、返す刀の鋭さで敵対者を一撃にて切り捨てることができることを事実と知っているがためのそのあまりに無用心な態度は、しかし今まで数多の迷宮をたった一人で制覇してきたときと同じように、ランスの身を脅かすことはない。
普通のダンジョンであればボスモンスターとして君臨することさえ出来そうなこのあたりに住む魔物はしかし、ソードマスターさえも一撃で切り捨てた彼の鬼気に怯え、ただ彼に存在を見つからないように息を小さくすることしか出来ていないのだ。
結果として、彼の傍若無人なまでの油断は未だに崩れない。

それを見たカオスには、複雑な感情が宿る。
そのランスの人類の域を凌駕した桁外れの強さは、魔人の打倒を、魔王の撲滅を目指すカオスにとっては好ましいものだ……だが。

彼は魔人にはなっていない。魔王にはたどり着いていない。
だがその様は、魔人を殺すことだけを生きがいにしてきたカオスにとって何処か懐かしい様だった。
絶大なる力を背景とした世界すべてに対して無遠慮で無思慮なその様は、魔剣に対して千年前の自分を思い起こさせた。
恋人を奪われ、その怒りと憎しみで魔物全てを殺すことを目的として世界最強のパーティー、エターナルヒーローに入ってすぐ、飢えた獣のようにただひたすらに死を撒き散らしていたときの、人の身であったかつての自分を。


しかし、とカオスは考える。
千年前の彼にとって、今のランスのごとき形相であったのはそう長い期間ではなかった。
なんといっても、彼には『仲間』がいたのだから。

誰もが望み憧れる最強の戦士にしてリーダー、ブリティシュ。
性格には難があれども、M・M・ルーンにも迫る天才魔法使い、ホ・ラガ。
カオスと同様に家族を奪われ、しかしそれでもなお無益な殺生を嫌うサムライ、日光。
そして、ついこの間、予想だにしない再開がかなうこととなった小さな、しかし強靭な精神を持つ神官、カフェ・アートフル。

世界最高のシーフとして気紛れを装って魔人を殺す力を求めて彼らに近付いたカオスは、しかしその最初の利用してやろう、というだけの気持ちとは裏腹に彼らと真に仲間として今なお結ばれている。
結成当時でさえ世界最高のパーティであった彼らは、ともにいくつもの冒険を潜り抜けて等しい歩みでさらに成長していった……それこそ、失敗作であるとはいえ「神」をも殺せるほどに。

そう、『等しい』歩みで『共』に成長していったのだ。

ガード   ブリティシュ 才能限界:100 技能:剣戦闘LV2 盾防御LV2 
ファイター 日光     才能限界:71  技能:剣戦闘LV2
ソーサラー ホ・ラガ   才能限界:80  技能:魔法LV3
ヒーラー  カフェ    才能限界:66  技能:神魔法LV2

どれも、当時最強のシーフであったカオスの仲間に相応しい最高のパーティだ……そして今のランスには、当時のカオスを含めて誰一人敵わない。

極めて才能に恵まれたエターナルヒーローたちは、しかし誰一人神の定めた理を超えることは出来ていなかった。
魔人を、魔王を殺すことを、そのための手段を探すことを目的として幾重もの迷宮に潜り、数多の宝を得た彼らでさえも、ランスしか持たぬ世界のバグ、才能限界無限の特性には追いつけない。
仮に当時の自分が今ここにいたとしても、今のランスの力になれるなどとは、カオスには到底思えなかった。

冒険者である彼の本業である「冒険」に誰ひとり付いてこれない今のままでは、たとえ帰るところがあるとはしてもあまりにも辛すぎる。恵まれた才能と天運により全てを越える万能感をもっていたランスが、たった一人の少女さえも救えないとは。
出会った神によりあまりこの世の善意を信じていないカオスをして、あまりにもこの歳若い冒険者に対する運命の理不尽さを嘆かずにはいられない。


「うし、そろそろ終わらせるか」


水を飲み終わり、しばし目を閉じ、やがて開ける。カオスとさえ会話することなく、ランスのたった一人だけの休憩はその一言で終わりを告げた。
気の合う仲間との冗談も、今後の作戦会議も、これが終わった後のお楽しみの計画さえなく、ただひたすらに次の戦いのための休息。
血と埃にまみれた薄暗いダンジョンを駆け抜けるための、灰色の休憩だった。
投げ捨てた水筒を拾おうともせずに、ただズボンに付いたほこりを僅かに払い、防具の様子を軽く撫でて調べる。それだけで、キャンプも終了だ。後片付けさえほとんどない。

若さゆえか才能によるものか、僅かばかりの休息を取っただけでランスの疲労はほとんど消えて見えたが、同時にそこにはそれだけしかなかった。


『ならばまずは右のほうじゃな。さっきそっちから音がした』
「お~、よくやった、カオス。じゃあまずはそっちからだ」


孤立は力を生み、しかし余裕を奪っていくことを実感として知っているカオスは、だからこそ今回の冒険がその打破になることを心底願ってやまない。
魔人を殺す、それこそが彼の目的であったとしても、それさえ出来れば後はどうでもいい、などといえるほど彼はこの世界に絶望していないのだから。


「すべての知識を知っているという美女ちゃんに、さっさと会ってエッチして帰るか」
『じゃから、美女は付いておらんかったっちゅーに』


彼の仲間である全てを知る賢者となってしまった魔法使いとは違って。

一人と一本はこうして冒険を再開した。
ランスが所属するコパCITYのキースギルドより得た情報、「全知の賢者が住まう塔」を制覇し、永遠の少女を救い出すために。
ランスは愚かカオスも知らない、正式名称「ホ・ラガの塔」を登っていったのである。



近縁へ

Comment

No title

最後の方までホモの塔の話だと気づかなかったわwwwwwwww

No title

はて、すべての知識をもつ美女の住まう塔なんてランス世界にあったかしら?
パパイヤか?……まさかホモの塔とは。
ランス逃げてー!!

このランスとホ・ラガの組合せは非常に危ないように思えます。
まったくwktkが止まらんなwwwwwwww
非公開コメント

プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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