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狼狽皇子様8

再開な話











「では、心臓あたりのこちらはこのように」
「それではここに不都合が」
「しかし、バイパス関係で言えば、できる限り人体への影響を減らすとすれば、こうせざるを得ないのではないか?」


クロヴィス陣営に改造されたジェレミアは、今現在嚮団にて調整をうけていた。
殺すことも捨てることも出来ない以上、ルルーシュに返すしかないので出来る限り誠意を見せよ、と現教主ということとなるクロヴィスが命じたからだ。
少なくとも言語機能だけでもまともにしないと、言い訳の伝言をすることも出来ない。

だが、しかし。


「回廊への道が閉ざされつつある」
「VV様とは違い、今の教主様はCの世界を何を通してみておられるのか?」
「VV様は自らの将来すら捨てて挑まれておられたものの」
「われらの未来、いとかなしけり」
「あにはからんや」
「威厳なき教主にはたして統べる資格ありか?」


嚮団の技術者達の間でジェレミアを再改造が進められながらそんな会話がもれ聞こえてくる。途中で平安貴族が混じっているような気がしないでもないが、基本的に芝居がかった彼らの言葉をわかりやすく要約すると、要するにこうなる。


『現在の教主のシャルルウザクねー?』
『だよなだよな、俺らのことなんだと思ってんだよ』
『ショタロリ教主様を返せー!!』
『一応教主だから従わなけりゃならんのが一層ムカつく』


まあ、自分たちのボスが美女、幼児と続いていきなりジジイになってしまって、しかも訳のわからない命令ばっかり下るとなればしかたあるまい。
今までCの世界に確実に近づいていたはずのCC、VVときて、ここに来てテンパリまくったクロヴィスによる意味不明の命令乱舞であれば、普通に考えて反乱とか起こしても仕方がないぐらいの勢いだ。

だが、嚮団において教主は絶対であり、その位は禅譲のみならず、簒奪も認められている以上、クロヴィスは間違いなく教主だ。
CCの決定に対して異を唱えられなかったように、彼らは教主に従うことこそ自身の理想への一番の近道だと信じきっているのだ。故に、答えは従う、以外の選択肢が取れるはずもない。

その結果。


『だよなー……そうだ! なら、命令に反しない限りでこいつ改造してやれ』
『ソレダ! なんかうまくいかなかったら教主困るらしいけど、俺らまともに喋れるようにしろ、としか言われてないし』
『よしわかった。つまり、喋れるようにするためにはこう改造するしかなかったんです、といえば何してもオッケーってことだな』
『リアル仮面ラ○ダーか……よし、まずはサクラダイトを動力源に』
『かっこいい仮面もつけて、っと』
『いやいやまてまて、腕に剣をつけるほうが先だ』
『皇帝の以前かけたギアス妨害するため、キャンセラーもつけてやろうぜ!』


それでも、わずかばかりに生じた不満は、結果としてクロヴィスの意に反することを生じさせた。確かにまともに喋れるようにしろ、という命令だったのだがそれはあくまで「出来る限りもとの人間に近づけて」という暗黙の了解があったにもかかわらず、かれらはそれをおもっくそ無視をしていった。


結果的にこれが嚮団自身の首を絞めることになるのだが、このとき彼らはノリノリでジェレミア本人の同意も取らずに好き勝手に改造を始めた。

常人よりもはるかに強靭な筋力、刃どころかKMFの自爆すら通さぬ鋼の体。武器と一体化した腕に超絶的な反射神経、さらにはオートでギアスを封じるキャンセラーまで、無節操なことこの上ない感じでさまざまな技術がジェレミアの体に無理やり、しかしそれなりの秩序を持って組み込まれていく。

斯くして、しっちゃかめっちゃかな『僕の考えた最強のギアスユーザー』のノリで作られたジェレミア=ゴッドバルト(改)であるが、きちんと完成したあたりが嚮団の技術力の高さを証明していた。うまくいったのが奇跡のようなたまたまの連続によるものだったとしても。









「ここでいいんだな、」
「ええ! こっちですわ」
「ありがとう、ユフィ」


ルルーシュは、幼少のころに日本に対して人質として出された。故に、現在の王宮の状況に詳しいわけではない。さらに言うなら現在の王宮は、権威は誇示してこそと信ずるシャルルがいろいろ建てた上に、元々派手好きの芸術家肌のクロヴィスが好き勝手に改装させているので、ルルーシュがいたころとは随分情勢が変わってきている。

結論として、ルルーシュはシャルルがどこに住んでいるのかまったく持って分かっていなかった。

勿論適当な相手にギアスをかけて聞き出してしまえばすむのであるが、暗殺というスピードが勝負である今では、その適当な相手を捜し当てる時間が惜しい。
そこで皇帝へと暗殺のために進むルルーシュの前に登場するのが、ユーフェミアだった。
コーネリアのおかげで割りと高位にあった上に、最近シャルル(というか中の人のクロヴィス)と仲が良いので皇帝の居住地域にも詳しい彼女は、ルルーシュがひそかに皇帝の下へと忍び込むのにうってつけの役だった。
身分的にメットを被った従者を引き連れていてもおかしくないし。

ちなみに、特区日本なんていうブリタニアの国是に真っ向から反対する政策を取っていながら、ユフィの身分は剥奪されていなかったりする。なぜなら、ユフィ=副総督であるが、同時にナナリー=副総督でもあるからだ。さらにいうなら、ナナリーも特区日本に賛成である以上、国是に逆らった罪はナナリーも同罪。

どう考えてもいまさらナナリーの身分を剥奪することなんてクロヴィスには不可能なので、結果としてユフィも無事だった。というか、これでゼロの活動が収まってくれるならば、エリア11ぐらい安いものだとクロヴィスは思っていた。
日本が開放されたらすべてのエリアで反乱が起こることに思い当たっていないほど、クロヴィスはルルーシュを恐れていたのだ。



まあ、それはさておき、ユフィは驚くほどスムーズに皇帝暗殺の協力を行っていた。
それは、ルルーシュが父に会う目的をいっていないこともあるのだが、それ以上に…………


「ありがとう。ユフィはここで待っていてくれ」
「ええ、わかったわ。これが終わったら結婚してくれるのでしょう?」
「もちろんだよ。いくぞ、CC」
「…………」
「いってらっしゃいね、ルルーシュ。コカ・コーラ……じゃなくて、CCさんも」
「…………」


結婚してやるからこれをやってくれ、の一言ですべての矛盾を今のユーフェミアは忘れてしまうのだ。
ギアス、恐るべし!

斯くしてユフィは、どう見ても愛人ポジションのCCを牽制しながら彼女らの父であるシャルルを暗殺するために進んでいくルルーシュを、きゅっとハグして送り出した。そしてその耳元でダンディに囁いていっそう垂らしこむルルーシュは、颯爽と立ち去った。





角を曲がって手を振っていたユフィが見えなくなっても、さっさと進んでいくルルーシュと、その後ろに何かいいたげについていくCC。しばらくは無言で順調に進む二人(出会ったものは問答無用でギアス)だったが、ついにその沈黙に耐え切れず、ルルーシュが声をかけた。


「…………言いたい事があるのなら言ってみろ」
「いや…………今まで長生きしてるだけあっていろんな犯罪の片棒を担いできたが、まさか結婚詐欺師の共犯者になるとはな、と思ってな」
「黙れ!」


CCに怒鳴りつけながらも、ルルーシュはある意味納得していた。
まあ確かにルルーシュ自身に自覚はないものの、ギアスを使って大掛かりなことをやっているように見せて、やっていることはいつもの女生徒への扱いとそう大差がない。割と大事にしている本名をユーフェミアに清涼飲料水呼ばわりされたCCがいやみの一つぐらい言ってもおかしくない、とは好意に対する鈍感さとは裏腹の深層意識で気付いていた。

というか、さっきまでのCCはなんだか妙におとなしすぎる気がしていたので、こんなものでちょうどいいとルルーシュは思い始めていた。なんだか順調にCCに調教されている感がないでもないが、会話を続けながらも静かなる侵攻はさらに続く。

かつ、かつ、と二人の足音だけをBGMに朗々たる二人の声が通路に響き渡る。
しかし、超常の力に支配されたこの場所には、邪魔者は入らない。


「それで、本当に結婚するつもりなのか?」
「…………ああ。ユフィに償うのは、それしかないだろう」


ユフィのギアスを解く方法を見つけるまで、ルルーシュは真剣にユフィと結婚するつもりだった。女性として愛することは出来なくても、妹として愛して結婚することは出来るはずだ、と彼女の心を捻じ曲げたことに最大の後悔を感じながら、コーネリアに土下座しても結婚させてもらうつもりだった。
それこそが、彼女の意思を捻じ曲げた自分に出来る償いだ、と。


だが、契約者であり、ある意味ルルーシュの先輩でもあるCCはそんなことを許すつもりなど毛頭なかった。


「お笑いだな、それで仮にあの女はいいとしても、他にギアスを使った人間がいないとでもいうつもりか?」
「っ!!」


考えまい、と思っていたことをずばり言われて思わず口ごもるルルーシュに、CCはさらに追い討ちをかける。その言葉は、かつて同じようにギアスで他者の意思を捻じ曲げた己に対する断罪にも似ていた。


「枢木スザクからは死という自由を奪い、マオからは言葉を奪った。片瀬やクロヴィスからは結果的に命すら奪った。ああ、あのオレンジとかもそうだな。そいつらにはどうやって償うつもりだ? 一人一人に求婚してまわるつもりか? 死後婚でもするか?」
「CC……」
「だからといって、死ぬなんてなおさら無意味だがな。お前が人々のために死んだところで、さっきの連中が喜ぶわけないだろう。もう死んでいるならなおさらな」


からかうような口調ではあるが、そこには長年生き続けた、罪に塗れながらも生き続けてしまったCCの苦い思いを感じて、反論は封じられた。
ナナリーさえ無事であればと贖罪か、それとも死か、という精神状態だったルルーシュに、CCは容赦なく追い討ちをかけていく。
だがそれは、迷いを生む結果にしかならない。
長い長い、皇族専用通路を進みながらも、二人の議論は一向に進まない。


「ならば、どうしろというのだ! ブリタニア皇帝を倒せば、ナナリーの安全さえ確保できるのなら、今まで弄んで来たすべての犠牲者に「ふう、お前はそういう奴だったよな。わかった、じゃあそれでいい……だが、何か忘れていないか?」? …………ああ、お前との契約か」


このままでは到着するまでに結論は出ない、とルルーシュが興奮して気付いていない廊下の終わりが見えてきたことで、CCは説得の路線を変えた。

聡明なルルーシュは、すぐにCCの指していることが何かに気付いて、苦笑した。
確かにそちらの方が、先約だ。
自分は今までの犠牲者達に命をささげる前に、この魔女に魂すらささげる義務がある。

この女が何を望んでいるのかは知らないが、今までこれほどまで恩義を受けた以上、ナナリーを不幸にすること以外であればたとえ奴隷になれといわれても従うつもりである。

そしてルルーシュは、ここに来る前にCの世界経由でマリアンヌから暴露されたシャルル=クロヴィスということを受けてCCが、どう考えてもまともな敵討ちになるはずがないからもうここまで来たなら思いっきりかき回せるだけかき回してやれ、とやけになっていることに全く気付いていなかった。


「そうだ。あの女に償いをする前に、まず私との契約を果たせ。それこそが、お前の贖罪の第一歩だ…………そう、するならまず私と結婚しろ」













「…………は?」


故に、この願いは予想外にもほどがあった。
それよりほんの僅かだけ時を早くして、皇族専用通路が終了して扉が開き、そこに自身の敵が存在したこととあいまって、ルルーシュは完全にその聡明な頭脳を停止させた。


荘厳なる神聖ブリタニア帝国の玉座前にて突然のプロポーズ。
皇帝の前で求婚される、一生の思い出です。
「まあ、なんてロマンチック♪」などという余裕もなかった。



当然、乱入された側であるクロヴィスとバトレーもそれは同じだった。


「「は?」」


思わず聞き返すが、自身の研究対象だったはずのCCが中身はルルーシュと思われる顔の見えないメットを被った男に対して求婚したことだけを切り取ってみて、一体全体どうしてこんなことになっているのかわからない。

だが、とりあえずルルーシュの機嫌を取らねばならない、と思っている二人は、反射的に呟いた。


「…………ルルーシュ。結婚、おめでとう?」
「殿下、おめでとうございます?」


ルルーシュにしてみれば、これからナナリーのために相打ちすら可能性の上に入れて皇帝の命を取りに華麗に登場するつもりだったのに、ごくごく普通に入ってきて呆けてしまった。
あまつさえ、目下最大の敵に祝福されるというこの屈辱。


「良かったな、ルルーシュ。これで親公認だ」
「ふ、ふざけるなぁ!!」


とりあえず、こんなことは想定の範囲外もいいところだった。


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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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