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玉響(ランスクエスト)

ただ今、ワールド3で放置中。
なかなか追加パッチ来ないなあ……ハニーキングを倒す為だけに同じシナリオループするのもしんどいから、そろそろなんかカンフルが欲しいのに。
個人的にスカウトが少なすぎる気がするから、月光・しのぶとか犬飼とか来たら凄く嬉しいんですが。
忍者超好きです。













雪上にて。
一人、少女が剣を振るう。


「ふっ、はぁ!」


何度も、何度も似たような動作を繰り返す。
迷いよ、ここに消えよ、とばかりに。
力よ、ここに宿れ、とばかりに。


速く、鋭く、見事な一撃。


その動作の対手、その眼前において立ちはだかる魔物はその少女の相手に相応しく、大きく、力強かった。
八甲田山隠しボス、桜花にほん兵。通常のにほん兵をさらに大きくして、Japan風の意匠の兜を付けたモンスターだ。
その大海より出でる津波を思わせる体当たりを、かわすのではなく同じ力をぶつけることで受け止めるべく、その少女、Japanにおいて軍神とまで称えられる剣の妙手、上杉謙信は刀に力を入れた。

だが、大きさとはすなわち強さだ。
デカントやバウのような巨体を武器にする魔物が非常に強力な分類に位置することも、それを如実に物語る。
桜花にほん兵の純粋な質量により生まれる威力は、大地を穿たんばかりであったが、それを受けるには謙信はあまりに普通の女性だ。
女性にしては多少大柄ではあるが、とある女傑のように男に混じっても全く体格負けしないというほどではない。その外見はごくごく普通でしかし美しい、華奢ではかない少女である。
敵の突撃を前に、その少女の姿はあまりに小さく見えた。


『カミカゼ、アターーック!!』


桜花にほん兵の叫びが、雪山をこだまする。
激突のために雪の大地を踏みしめる衝撃と爆音が、それに追随した。
ガードの盾さえも貫きかねない強力な突進だ。並の人間に耐えられるものではない。
しかし、謙信はそれを避けようとはしなかった。
ただ、一歩足を真横に滑らせて、大きく刀を振りかぶる。剣を返して一瞬だけ刃の状態を確認した後、脱力したこぶしに包んだ柄を徐々に緊張させながら、思いっきり握り締め、振り下ろした。
その巨体に相対するにはあまりにも細い剣と、桜花にほん兵の頑丈な頭の距離は、高速で迫りつつあった。

爆音。
ついで、衝撃。

雪煙が舞い、あたりの景色を白で埋め尽くしてその中心にいる謙信を飲み込んだ。
だが……


「はぁあ!」


裂帛の気合が、響き渡る。
瞬間、雪煙が吹き飛んだ。
中心部から生まれた闘気を伴う刃の竜巻が、その全てをかき消し、巻き込んだのだ。

大きさの違いも性別の優劣も種族の差異もすべてを吹き消すその刃は、剣戦闘LV2という事実によって形作られたものである。
人間というこの世界のこの時代のメインプレイヤーの中でも、ごくごく一部にしか与えられていないそれは、しかしその希少さに相応しく戦場の中では猛威を振るう。
魔物相手であろうと、ハニー相手であろうと……人間相手であろうと。


ただの一本の剣のたった一振りで巨大な砲弾にも似た一撃を受け止めた謙信は、しかしそれだけにとどまらずに連続で剣を振るう。
一合、二合、三合……繰り返される剣戟に、初めは応えた様子も無かった桜花にほん兵は、やがてその勢いにたたらを踏み、ついで押され、ついには仰向けになって無防備に請け続けるしか出来なくなる。


「ふぅ……」


やがて、剣戟が終わった。
合計、八つの斬撃が一瞬のうちに叩き込まれた結果は、ほとんど無傷の謙信と、傷だらけで全身から血を流しながら倒れふす、桜花にほん兵だった。

ボスモンスターでさえ、敵わないほどの高速精密な連撃連斬。
名を、「車懸かりの剣」。

剣戦闘レベル2のなせる業だ。
数多の魔物と人とハニーを切り裂いてきたことで得た力を持って、謙信はこの雪山の隠しボスを打倒した。


だが。
『桜花』にほん兵。
この白一色に染まる雪山の隠しボスが、何ゆえその桃色の花の名を冠されたのか、謙信はこのあとその身で知ることとなる。


『ニッポ……バンザーイ…』
「むっ……しまった」


瞬間、桜花にほん兵に積み込まれたぷちハニー十匹分のはにはにが、母体の死を感知する。謙信が気付いたときには遅かった。
必殺技の終わりの僅かな間。


『オウカ…アターーック!!』


生命の灯火と引き換えに、大量の爆薬に火がともる。
全身の闘気を使い果たし、ほんの刹那の合間にその意思をとぎらせた謙信に、桃色の大爆発が襲い掛かった。


「くぅ、毘沙門天よ!」


八甲田山に爆音が轟く。閃光と共に破壊の意思を撒き散らしたその轟音は、山々に連呼する。
こだまがこだまを呼び、その桜花にほん兵の命と引き換えに起こされた大爆発は大気を、そして大地を揺らした。
謙信に与えた衝撃もさることながら、パウダースノーの降り積もるJAPANの霊峰の中央にて、そんなことを行えば起こることなど唯の一つだ。

雪原に突如現出した、白の津波が全てを飲み込む。
いくら戦闘力が高くとも、流石に山一つの雪は大きすぎた。
突然巻き起こった雪崩の中に、謙信はなす術もなく飲み込まれた。
当然ながらそれは、彼女たちが雪上に残した足跡や剣撃の痕、桜花にほん兵の血しぶきや肉片といったものも一切合財区別することなく、全てを飲み込んでいった。

それら全てが通り過ぎた後に、まるで何一つ変わらなかった雪山の光景を再び形作る為に。









どどどどどどどーーーー


ふもとにまで流れてきたときには、雪の勢いは随分とおさまっていた。
タネを流し込んだパンケーキがやがて丸くまとまるように、流れに流れた雪の波はやがてゆっくりと流れを弱くし、やがて止まった。

てばさきの放牧に使われていたであろう、休耕地に突如雪の水溜りが広がる。
いずれは日に照らされ、消えていくであろういきなり出来た大きな雪原。なだれの成果だ。
周辺にいたものが、ああ、よくあるよくある、見たいな目で見ているそのど真ん中あたりに、何かうごめくものがあった。
雪の真ん中でうごめくそれは、やがてかんしゃくのような暴風を巻き起こした。当然、撒き散らされる雪。
剣を振るった体勢のままその中央にいた謙信は、ふう、と一息吐いてその振るった成長つきの日本刀を鞘に収めた。


「何とか無事であったか。しかし……我ながら、未熟」


自爆と雪崩に巻き込まれたことは桜花にほん兵の攻撃以上に謙信の体力を削ったが、謙信の持つレベルの上昇による補正全てをぶっちぎるほどではなかった。
眩しげに目を細めてその日が照らす自分が先ほどまでいた霊峰を見つめる謙信は、紛れもなくこの国において軍神と呼ばれるに相応しいだけの力があるのだから。
しかし、遅れを取ったことは紛れもない事実。
自分の求める強さが己にはまだまだ足りないことを痛感して、謙信は眉根を寄せてわずかばかりに悲しげな表情を浮かべた。


ぐう
「……お腹が空いた」


とはいえその次の瞬間に、激戦に継ぐ激戦、その後の死闘の上で雪崩に巻き込まれてまで、そんなことがまず言えるあたりレベルによる補正だけではない胆力も見て取れるが。
周囲に響くほどの腹の音を立てても特に恥じることもなく、ぽつりと呟いた謙信だったが、もって来たせんべいその他はすでにとっくに食い尽くしていたために手持ちに何もないことを思い出したのか、切なげな顔になる。
食べるのがとかく好きな謙信であるが、もともとは一国のトップであり、将であり、ある意味お嬢様だ。
お供といえる直江愛が料理好きであったため正直城内の厨房にさえ入ったこともろくにない(そもそも、自分で作っている間に腹が鳴る)し、冒険だってこの間からランスにつれまわされたのが初体験といってもいい。
山篭りの時だって、基本的に誰かお供がついてくるか、あるいは大量に持ち込んだ調理済み食料がその生命線だった。

そんな彼女が山に分け入って食べられるものと食べられないものを見分け、その上で美味しく調理する、などという高等技能を身に付けているわけもない。


「謙信様、はい、どうぞ」
「おおっ!」


だからこそ途方にくれ、しかし空腹で動くこともままならずにただ中天に差し掛かった太陽の日差しに照らされていた謙信だったが、捨てる神あれば拾う神あり。

餌を取られた犬のような切なげな瞳をしていた彼女を見かねたのか、突如空よりおにぎりが取り出されてきた。
いや、違う。いつの間にか近くによって来ていた少女がその小さな手によって謙信に対して手渡したのだ。


「おお! ありがとう、香殿」


反射的に受け取った後に、おもわず脳を通さずに返された言葉であったが、その対象は間違ってはいなかった。
だからこそ、そんなはらぺこな彼女に対して特大のおにぎりを作って待っていたJapan国主、織田香はその礼を笑顔で受け取った。

雪崩に巻き込まれて雪山を下ってくるとは流石に予想外であったが、それでもそろそろ、と考えて用意していた用意が見事に用を成したことは待っていた甲斐があったというものだ。
意外と神経が図太い香は、そんなことを考えながらも謙信に深刻な怪我がないようであることを確信して密かに安堵の息を吐いた。


「いえ、山篭りお疲れ様でした」
「うむ……とはいえ、最後の最後で気が抜けていたのやも知れない。やはり私は修行が足りないな」
「謙信様でも、ですか?」


だが、そんな香の気遣いを知って知らずか、謙信は厳しい顔で自分が流れ落ちてきた雪山を見つめた。
正直、今の段階でさえ並の修験者ならばはだしで逃げ出すような荒行であるように思えてならなかった香は、彼女の身を案ずる意味もあってその言葉に疑念を投げかける。
Japan一の剣豪であるのみならず、大陸での冒険においてもいくつもの戦果を上げてきた彼女の鍛錬が足りない、などといえる人間などいまい、と思ったからだ。

だが謙信は、どこまでも敬虔で、どこまでも恋する乙女だった。


「うむ。最近のランス殿はまた迷宮に篭っておられるのだろう? やはり私もまた呼ばれたときにはあの方の僅かなりとも助けになるように力を付けておかねば」
「……そう、ですか」


ここしばらくはJapanにきていて会っていないものの、大陸に残してきた二人の部下からの定期的な長距離魔法電話による通信によって、大体のところを聞いている謙信は、そう答えて一通りの冒険を終えたにもかかわらず一人鍛え続けている自らの愛する人を思って、頬を染めた。

その謙信の答えに、香はおもわず答えに窮した。
結果、兄に対する謙信の思いを眩しく思い、しかしだからこそその瞳を揺るがせて目線を僅かに逸らした。

謙信が山に篭っている間に、彼女が冒険にいっている間により詳しい情報を見聞きした香にとって、ランスの行動はそんな褒められるようなものではないように思えたからだ。


ランスのあの自暴自棄ともいえる単独行動による迷宮踏破。
実際に出発を見送り、その帰りを迎え、その間の行動を忍びより聞いていた香にしてみれば、あれは断じて謙信が語った修行などではない。
謙信のようにいずれ来るかもしれない災厄に備えての鍛錬などではない。


あれは……あれは逃避だ。
シィル・プラインという誰よりも彼にとって大切な少女を失ったことによる、自責の念と無念さと理不尽に対する怒りが形となったものだ。

ランスがJapanに渡ってきてよりほとんどずっと同じところにいた香は、途中に加入した謙信よりもずっとずっとランスとシィルのことをよく知っている。
漁色家であり、ガキ大将のような乱暴ささえ持ち合わせていたあのランスが素直ではないものの、どれほどシィルを頼り、求め、愛していたのかをつぶさに見てきた。

きっと、ランスを心底心配する気持ちは二人同じだったとしても、その事実の差は二人の中に違ったものを生み出す。
検診とて察していないわけではあるまいが、しかしその彼女が考えているものよりも遥かに大きな存在であった桃色の少女は「あの」ランスをして特別な存在だったのだ。
自身も彼にある意味特別に愛されている自覚がある香は、だからこそ謙信以上にカラーの女王でさえも魔王の掛けた呪いを解除できないと聞いたときにランスの感じた衝撃を、謙信よりもずっと正確に推し量っていた。



きっと、これからどれほどの冒険を続けようと、どれだけの戦いを乗り越えようと、どれほどの美女を手に入れようと……きっと、誰一人、何一つ、彼女の代わりにはなれない。

それは、心底彼を愛している謙信の献身が今のランスにほとんど届いていないことは明らかだ。
彼女と比べても負けぬほどランスを慕っているつもりの香であったが、だからといって己がランスにとってのシィルの代わりになれるとは微塵も思えない。
今はまだ幼いが故にそんな一助も出来ぬこの体を投げ出したところで、きっとほんの一時の慰めにしかならないだろう。
勿論、男性としてではなく兄としてであってもその身を引き換えにしてもランスを救いたいと思う香は、己が成長した暁には一時の慰めのためであってもそれを厭うものではないが、それでもかつての彼がそこまで悲しみに身を浸しているそんな事実がとても、とても悲しかった。

ただ、それを彼女に対していったところで意味はないことも分かっている香は、割り切れぬ思いを抱えたままでも笑顔を見せてその謙信の建設的な態度を見習おうと明るく声を掛けた。


「そうですね、私も頑張ります。あ、そうだ……謙信様、一度稽古を見ていただけませんか?」
「香殿はまだまだ強くなれるだろう。その僅かばかりの助けになるのであれば、よろこんで」


だからこそ笑顔でそう語りかけ、了承を貰う。
軍神と呼ばれる彼女との稽古は非常に人気が高く、競争率からして中々確約がもらえない。
だからこそわざわざここで彼女を待ち構えてまで求めていたそんな約束を得られて、当初の目的を果たすことが出来たことで香は安堵の息を吐いた。
これでもっと自分も強くなって……兄様の役に立てる、と。


(でも……きっとこのままでは)


だが、当初の目的は確実に果たしたにもかかわらず、内心の憂鬱は全く消えようとしないことに香は気付いた。
謙信が知らぬシィルとの絆以外にも、懸念事項はまだある。


逃避であろうと、八つ当たりであろうと、奪われた命は経験値という名で紛れもなくランスの中で蓄積されていく。
そして、才能限界無限という世界に愛された希少中の希少技能を保有するランスは、戦って、戦って、どこまでも、どこまでも強くなる。
イカマンを吹き飛ばし、ハニーを叩き割り、サメラ~イを断ち切り、クロメを突き刺し、デカントをばらばらにして、ドラゴンを喰らい、全てを叩き壊し、殺し尽くして……いずれ魔人や魔王、そして神に届くまでに。

そして、才能限界に恵まれ、技能レベルを持って生まれてきた自分たちだっていつかは全く届かない高みにまで上がってしまう。
無限に成長を続ける彼の歩みを考えれば、いかに自分が成長期とはいえそれが間に合わないという悪夢を振り払うには足りない。
このまま行けば、どれだけ鍛えても、どれだけ鍛錬を重ねても、どれだけ彼を愛しても、足手まとい以外の何物にもなれないときが来るに決まっているのだ。


シィル・プラインを助けることにも、戦場にて彼の背中を守ることにも、そして女として彼を癒すことにも、何の役にも立てないときが、いつか必ず……


「(私では、軍神と呼ばれる謙信様をそのまま見習うことは出来ません)」


それを謙信と語り合ったことはない。
しかし、おそらくそれを知ってもなお強くあれる謙信と違い、その事実は香にはあまりにも重かった。


ぐぅ~


そんな思案を全く置き去りにするように突如、鳴り響いた腹の音に謙信が恥ずかしげに頬を染める。
それを見て香は、おもわずかすかな笑いを浮かべた。


「す、すまぬ」
「ふふ、稽古のときもご飯たくさん用意しておきますね。とりあえず、城に着くまではこれでおなかをもたせておいてください」
「おお、本当にありがとう」


先ほど渡したおにぎりだけではきっと旺盛な食欲を誇る謙信には足りなかったのであろう。
先ほど用意していた食事のいくらかは雪崩に流されてしまっている。
今残っているだけではおそらく足りるまい、と考えた香は自分の手元に残っていた最後の食料を謙信に渡すと同時に、彼女を先導するように声をかけて歩き出した。


(兄上……どうか、ランス兄様を助ける力を私に下さい。迷いを振り切る心の強さを教えてください)


自分の限界。

それを知ってもなお、己が謙信のようにどこまでも、どこまでも信じ続けてただひたすらに鍛錬をつむことが出来るか、ということを香は疑わざるを得ない。
軍神と呼ばれるJapan一の傑物には出来るかもしれないが、未だ心も体も技も亡き兄にも及ばぬ未熟な自分では……


Japanの唯一無二の国主にして、ランスの未来の女たる織田香は、己に付いて離れぬ老いと限界を恐れて謙信に見えぬ位置でそう願い、溜息を吐いた。



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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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