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悪徳の宴・2

なんか前回の適当な前振りですが、気付けば何故だか異常なまでの拍手数を稼いでおります。
短編連作などは言うに及ばず、下手すれば長編たるドラ首や穢土幕府の合計よりも多いかもしれません。
……何ゆえ?

やはりリリカルは強いということなのか、よっぽど需要はあるのに供給が少ないのか、はたまた意味ありげなプロローグが期待を煽るだけ煽っている影響なのか分かりませんか、基本的に小ネタなので続きを期待されてもそれに答えられる自信はありません。

が、やはり感想と拍手コメント等が何の役にもたたないか、といわれればそんな訳ないわけで。
拍手数に後押されてところてん方式に脳内妄想の一部、またも漏れ出しました。





力が、ただ力が欲しかった。
全てを変えられるだけの力が。
全てを奪えるほどの力が。
この獣の心にふさわしい力が!







第333管理外世界ロアからの侵略によって魔力という力に徐々に浸食されつつあった第334管理外世界。
その中において、自社による魔力と科学の一早い融合によって今後生ずるであろう莫大な「魔力市場」マーケットを奪い取ろうと画策していた大企業インペリオ。


雨塚鷹佑は以前はそこの研究員の一人であった。

インペリオの研究員。
それは、コネや努力といったありがちなものだけでなれる立場ではない……最低でも一流大学を主席、次席レベルで出る程度のことをしなければ歯牙にもかけられない。
すでに商業上覇権を唱えかけている企業が、更なる進歩を求めて新たな市場に向けてすべてを賭けてそのものたちの頭脳を利益に変えようとするその場は、一流の環境、一流の給料、一流の情報に囲まれていた、

恵まれた環境に社会的地位、金銭的充実とすべてにおいて満ち足りていたその世界は、しかし雨塚鷹佑にとってみれば余りに足りないものであった。


常人など歯牙にもかけず、それどころか同僚たる秀才たちさえも凡才に見えるほどの知能を持っていた彼にとって、能力の差を評価に加えはしていても、なお平等公平を元にして作り上げられたその環境は余りに己には相応しくないように思えたのだ。
彼が片手間で行うことにさえ追いつけていない連中と、何故肩を並べなければならないのか。「たかが」給料の額の差程度でしかこの能力の差が評価されないこの世界が正しいはずがない。
最上の就労環境を整えたインペリオにおいてさえ、己の才に対しては不足であると雨塚は感じてしまったし、それは己自身が起業することでこの大企業を超えた企業を己が手で作り出そうとも満たされないこともまた実感として感じることとなっていた。


幼少のころより感じていたそれが就職というある種の最終段階においてすら適切に補正されることがなかったと思った彼は、当然ながらその知能を持って現状を打破することを目指したのだった。
たとえ、きっかけは自分と並び立てるほどの別の天才、悪の魔導師によって与えられたものであったとしても、彼はまぎれもなく自分の意思でその野望への道程へと踏み出したのだった。


ただ、幼少の頃より暴力と陰謀に親しみ、それによってのし上がってきたロアの魔王やパレキシアの梟雄とは違い、彼の育ちに暴力はなかった。
勉強ができずとも飢えるものはほぼおらず、運動が苦手でもそれはそれで一つの個性とみなされた。すべてが『平等』の美名のもと、天才は凡才の中で生きていくことを強いられた。
すべてに優れた彼の隣には、すべてにおいて彼より劣った数多の人間たちがごくごく普通に笑顔で暮らしている環境で、彼は生まれ育ってきている。

だからだろう。
弱肉強食を是とする異世界ではなく、建前としてではあっても平等公平を掲げる世界に生まれ育った彼にとって、その野望の形は他の二人とは明らかに違う形を取っていた。










「なあ、高町なのは。思ったことはなかったか? もし自分に力がなかったら、一体どんな人間になっていたんだろうな、って」
「…………」


戦場に相対する二つの影。
しかし、その一方である管理局所属の魔導師、高町なのはは応えなかった。

れっきとした犯罪者相手に、言葉を交わすことで隙を作ることの愚は、一騎当千の全てを解決するエース・オブ・エースとして投入された戦場で受けた数多の経験が教えてくれた。
だからこそ、口を開かず、しかしその言葉をも情報のひとつとして耳を向けながら、なのははじっと機会を待った。

が、そんななのはの態度を意にも介さない様子で男は―――このミッドチルダにおいて破壊工作を続けるテロリストは言葉を続けた。


「自慢じゃないが、俺は物心がついた頃、生まれたときから天才だった。壁が完全に無かったとは言わないが、それも全部乗り越えてきた。資料を見るところによると、アンタだってほとんどそうだったんだろ?」


全身を覆う人工の黒い肌に、ところどころ見え隠れする金属質な装甲と血の色をした筋肉。バイザーに覆われた目元、といったありとあらゆる隠された部分の中で、唯一口元だけがむき出しになり、獰猛な笑みを浮かべていた。
今まさにミッドチルダの急速な治安悪化の最大の要因となっている、犯罪者、あるいは潜在的に犯罪を求めるものたちへ無差別に特殊な質量兵器をばら撒き、煽っているその根本、ファルケと名乗る男に間違いはなかった。


「勿論、そんな仮定が無意味なのは分かっている。だから、単なる言葉遊びに過ぎないんだが……あんたは力がなければきっと、幸せになれたんじゃないか?」


特殊なバリアジャケットと思われるその黒い皮膜の上からでも見て取れるほどに鍛え上げられた肉体でもって、こちらに対して微塵も隙を見せずに構えながら、そんな軽口を叩けるほどにその態度にはこちらを見透かすような余裕と自分の持つ力に対する自負が漂っていた。
そして、それに相応しい知性の香りが彼の一挙一動から現れてくる。


「聞けば元はただの小学生だったらしいじゃないか? それがちょっとリンカーコアに恵まれていたばっかりに事件に巻き込まれて、気付けば戦場で埃まみれの傷だらけだ。結婚を考えているような恋人はいるか? 友人とあわせて有給を取って旅行に行くなんてのはどうだ? 血のつながった子供ってのは格別可愛いらしいけどな?」


強盗だの、強姦だのといった目先の欲に釣られた犯罪者ではない、もっと大きなモノを抱いて行おうとしている知能犯そのものの、深くよく響く声で、ファルケは言った。
その言葉には、本気の同情と哀れみが入っているようにさえ聞こえる。

内容に対しては今のなのはの琴線を揺るがすようなものではないにせよ、彼が本気でそういったなのはの経緯を知って同情していることは、本当のように思えた。
彼は心底、高町なのはが己の敵としてこんな戦場に立っていることに対して、哀れんでいる。


「そんな平凡な幸せを、夢見たことはないか?」


力を持っていなければごくごく普通の、平凡な幸せを求め、満足することが出来たのに。
なまじ力があるばかりに、その力で成し遂げられる最上のことを、その他の数多の幸せを犠牲にしてまで追い求めざるを得ない。
そのことに対して、男は溜息混じりに哀れみをこめて語った。

なのはには、それらが彼が自分自身に向けた慟哭に聞こえた。
才能がありすぎるが故に、平凡に暮らすことが出来なかった自分を取り巻いていた環境が憎かった、という悲痛な叫び声のように思えた。
きわめて善人ではあれど、完全無欠な聖人君子にまではなり切れていない彼女にだって、同じことで悩み眠れない夜があったことを、その声はあまりにも鮮明に思い出させるほどのリアルさを持っていたのだから。

だからなのはは、何が理由で彼が歪んでしまったのかは分からないが彼自身にも何か事情があってこのようなテロリストまがいのことをしているのかもしれない、と感じてしまった。
そんな感傷、相手を思いやる気持ちは局員として与えられた任務を阻害するものだと知っていながら、しかしそれが故にフェイトやはやてを最上の形ではないにしても救うことができたと信じるあまりにもやさしすぎる彼女の心が、おもわず戦場で言葉を交わしてはいけないと言う知識を無視して口からまろびでた。


「私は、この仕事に……皆を助けることが出来るこの力に、誇りを持っている」
だからあなたも、捕らえて……助けて見せる。やり直させて見せる。


その口に出した使命は、そして口に出さなかった後の言葉は、紛れもなくなのはの本心であった。

それが、伝われば良いと思う。届けば、良いと思う。
今、彼とは道をたがえている。
だけど、この手にある魔法は優しい魔法だ。人の命を奪わずに、戦い競うことが出来る魔法だ。
その信念を込めた彼女の魔法はすべて管理局標準の、非殺傷指定されている。たとえ相手が質量兵器の使い手であっても、狂った科学者の手勢相手であってもそれは変わらない。
彼女が滅するのは、あくまでお互いに話し合い、許しあう為の障害となる兵器だけだ。


そんな手段が無ければ、殺して、倒して、阻んでそれで終わり、とすることが出来ただろうが、なまじそんな手段―――殺さずに相手を制する手段が確立されているが故に管理局は統治側としてそう言った手法を取らざるを得ないだけだ。管理局の中でだって、そのことに対する不満はないではない。
そんな事情だってあることは知っていたが、それでも彼女はこの魔法が何物にも変えがたい素敵なものだと心底思っていた。
何度だってやり直しを与えてくれる魔法は、本気でぶつかり、主張を述べ合って、その上で間違ったことは間違ったと認めたうえで新たに進むことを許してくれる。

そのための管理局。
そのための管理局員だ。

それを信じてやまない彼女は、だからこそフェイトのように、はやてのように、そして誰より自分のように、いつも通りこの男だってやりなおせるはずだと信じた。
今は犯罪者として処することしか出来なくても、いずれ悔恨と更正によってやり直せる、今まで彼女が捕まえてきた、多くの元犯罪者達のように。

だからこそ、同情こそあれ―――いや同情があるからこそ、この男を捉えて法廷まで連れていかなければならないと、そう祈祷型デバイスであるレイジングハートに願って、強く強く握り締めた。




だが、そんな彼女の気遣いは。


「……ああ、そういうところが実に哀れだといっているんだよ」


凡百の犯罪者に向けるには正しくても。


「ただおとなしく俺の支配を待っていれば痛い目にあわずにすんだというのに、わざわざ自分から屈服させられに来るなんて」


この巨大な悪意の塊たる男に向けるにはあまりにも無意味なものだった。



瞬間、彼女のからだが一瞬硬直した。
その闇色の肌から、群青の瞳から、身の毛がよだつような鬼気が発せられたからだ。
そのあまりにも強烈なまでの邪悪な感情に、なのはは一瞬で自分の思い違いを思い知らされた。

違う。
彼は、違う。

道を違えてしまった元一般人などでは、断じてない。
あの、凶科学者スカリエッティに勝るとも劣らない、他者を踏みにじることこそを喜びとするような男だ。

なのはの平凡な幸せを語っておきながら、この男はわずかばかりにも自分がそのレールに入ることをよしとしていない。
力が無ければよかったなど欠片たりともおもわず今の自分を全肯定し、今までのその犯罪交じりの道筋を全て正しいものとして、何一つ恥じるものなど無いと心底信じている。

自分以外の全てを見下し、自分の手のひらで転がされることこそがその弱者の幸せなのだと、本気で思っているのだ!


「そんな分不相応の力を持っているからこそ、たとえ今の力が無かったとしてもいつか必ずこの場所までたどり着いたであろう俺の知能に今ここで食われて終わるんだから」


言いたいことは全て言った、そろそろ実力行使だ、とばかりにファルケのスーツの各部が異音をたて始めたことを受けて、なのはは慌てて緊張をさらに戻した。
寛容も、容赦も、この場においては、この男に対しては全く美徳にはなりえないということに、今更ながらに気付かされたのだ。

この男の本質は、まぎれもない邪悪。
人を弄ぶ為ならば演技も辞さない、屈折した悪趣味な嗜好の持ち主。
自身の同情など欠片も求めない、生粋の犯罪思考の凶悪犯だ。


「レイジングハート!」
『Yes,my master』


そんななのはの警戒を受けて、ファルケはにやり、と笑う。
そして、なのはの準備が整ったことを察した後に、ようやく発進した。
なのはは知らないが、ファルケに、雨塚鷹佑にとって戦いとは研究の一環だ。
己が開発した強化スキンという技術の成果を試し、更なる高みに上がるために必要な問題点を発見する為の大事な時間。
エース・オブ・エースはそのための実験体だ。

負ければ改良。
勝てば陵辱……そして、屈服による戦力増強。

どちらにしても、楽しい時間だ。だからこそ、その口元の笑みは止まらない。
そんなことなど理解できないなのはにとって、やはり数少ない更正の余地の無い犯罪者のそんな笑みは、理解したくない邪悪なものだった。


「ああ……ちなみに」


とても気楽な口調で、しかしそれとは裏腹な圧倒的なまでのスピードでなのはの間合いの中に飛び込んできたこの男は。
別にたいしたことでもないとでもいわんばかりの軽い態度で、なんでもないことを告げるように。
なのはの間合いに、エースオブエースの魔砲の射程範囲に入るということがどれほどの威力を受けることになるのかということをまるで理解していないかのようにごくごくあっさりと言葉による初撃を放つ。


「この強化スキンには、非殺傷指定なんて無粋な物はすべて排除される設定になっているから、そのつもりできなよ」
「えっ!」


二十歳を超えるまでその優れた才に見合っただけの力を得ることが出来ず、ただの凡人と並び証されることに耐えざるを得なかった歪んだ天才、闇色の鷹は。
最後になのはの正義さえもあざ笑って、野望の道程へと立ちふさがる雑多な木々をへし折る為に華麗に、優雅に、そして邪悪に飛び立った。

つづく

Comment

No title

あ、続き来てるw
いきなりなのはさんと対決ですか
個人的には獲物に狙いを付けて外堀から埋めていく過程とかも読みたいです
それと管理局をどうやって潰していくのかとか…

No title

確かに非殺傷指定を無効にするのも有効な戦術になりそうですよね
剣道漫画とかで常々思ってたんだけど、防具を付けなくていいとか言う奴が居るけど
ケガをする可能性はあっても明らかにハンデを背負うことにはならないよなと
防具を付けなければ動きやすくて視界も広いので強くなれるだろうし
なによりも相手が全力で打ち込みにくいし、かなり卑怯な戦法だと思う

No title

それは違うと思いますよ。十分ハンデになりえると思います。
例えば我々人間は普段服を着てますが、だからと言って「裸になったら動きやすくなって強くなった気がする」と言うわけではないでしょう。
それは何故かと言うと、普段の生活の中で服の重さに慣れているからです。いつもあるが故に、ないと不便だと思ってしまったり、服を着たいと落ち着かなくなってしまうわけです。
で、まあ剣道をしてる人間も同じように、防具を付けて剣道をすることに慣れているので、防具がないと普段とはまた違った感覚で相手と向きあわなくてはならなくなるんですよね。
故に、これは十分ハンデになると思います。
そもそも自分で防具を外すと言うことは、怪我をする可能性を自分から作るわけで、本人も冷静でいられないと思いますし。
とは言え、これは現実世界での話なんですけどね。
漫画の世界じゃ防具を外す程度じゃ怪我なんてしないと思います。漫画ですから、通常なら可笑しいこともまかり通ってしまいますし。そもそも現実世界の人間ならハンデ云々なんていちいち言わないでしょうしねw
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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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