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狼狽皇子様7

結婚な話
ぽこん……………………ぽこん…………………



皇帝になってしまったばっかりに、生き残るためには仕事をしなければならなくなってしまったクロヴィスの執務室の中に、断続的な軽い音が鳴り響く。

いや、不死となってしまった今、たとえシュナイゼル相手であろうと殺される心配はしなくて良くなったのだが、権力すべてを奪われてこの王宮の一室に幽閉されるとかいう可能性はむしろ高まったので、結局のところ中の人がクロヴィスだとばれるわけにはいかないのだが。


ぽこん…………ぽこん…………


そのため、いやいやながら仕事をしているクロヴィスだったが、その一生懸命さに比例するかのように、音は止まないどころか、そのテンポを上げてくる。
それでも、クロヴィスは耐え忍んで、そのまま執務を続けていく。だが、そのこめかみには井桁が浮かんでいた。


ぽこん……ぽこん……ぽこん……


だが、音の主は一向に気にすることがなく、それどころか調子に乗ったのか、一層激しくテンポアップしてきた。
クロヴィスの書類に行わなければならないサインが歪んでしまうぐらいの振動も伴って。


弱みがあるが故に、クロヴィスは耐えた。
耐え忍んだ。


だが………



ぽんぽんぽこぽんぽんぽここん



ついにはその自分から発生している音がラップを奏で出したことで我慢にも限界が来て、思わずその音源に向かって叫んでしまった。




「地味な嫌がらせはやめてください、伯父上!!」
「黙れ、偽者め」











さっきから自らの背中を使ってそのちっちゃい手で、ボカボカと殴りつけていた自分よりはるかに年上(中の人年齢で)のはずのVVに溜まりかねて苦情を言うクロヴィスだったが、VVは微塵の躊躇も見せずに、拒絶の言葉を言い放つ。

彼からしてみれば、クロヴィスは自分の弟の体を乗っ取った侵略者である。
にもかかわらず、不死の力を奪われてしまった以上、もはやVVには何も出来やしない。
何をやっても死にはしない簒奪者が、最愛の弟の姿をしながらも、彼が持っていた威厳や意志の強さをカケラも見せずにただ安穏と日々を過ごしているのをただただ眺めるだけである。
基本的に子供の体格しか持たないVVは不死の力を失ってしまえばどうすることも出来ないのだ。

その苛立ちが、こんな子供じみた嫌がらせに繋がっているのだろう。




ルルーシュのせいならばさておき、自分の不思議能力で父親を乗っ取ってしまったクロヴィスからすれば、この伯父に対してなんとなく引け目のようなものを感じてしまっている以上、そういわれてしまえば何もいえなくなる―――外見はどう見てもナナリー以上に幼く見えることだし。

だが、だからといってこのまま放置していては仕事が進まないのだ。


「嚮団とやらにでも行ってこればいいじゃないですか!」
「非常に不本意ながら、今の教主は僕じゃなくてお前になっている」


そういって殴るのはやめたものの、今度は瞳をピカピカさせて威嚇してくるVV。
両目に浮かぶは、かつてクロヴィスの瞳にも浮かんでいた紋章。

ギアスだ。



すでに不死ボディであるクロヴィスにギアスは効かないのだが、それでも他者の行動を制限させる力を持つ赤光に見つめられるのは気分が良くない。
VVがいればマリアンヌはこないし、その上いきなり教主とか言う立場を押し付けられても、正直困る。

とりあえず、ルルーシュが自分に対して恨みを抱いているのではない、と分かった以上、一刻も早く和解して、何とかシュナイゼルから助けてもらわねばならないのだ。






戦場では現在、シュナイゼルが所有する技術者集団通称『特派』が作り上げた第七世代KMFが大活躍していると聞いている。


性能は抜群であり、KGF計画が頓挫した今、クロヴィス陣営ではかのナイトメアに対抗できる機体はないし、コーネリア陣営のようにそれができるような錬度の高い操縦者による軍団もいない。

急いで対策を練ってはいるものの、ナイトオブラウンズ用に作っている同世代のKMFが完成するころには、相手はさらに進歩しているだろう。


そのKMFの名はランスロット
アーサー王伝説に出てくる円卓の騎士の一人。
円卓の騎士の中でも最強と謳われ、湖の騎士とも称えられた者だが、その行く末は主君の妻を寝取った挙句、同僚をことごとく打ち倒した、裏切りの騎士。
ガウェインという騎士などは弟をほぼ皆殺しにされた挙句に、自分も結果的には彼によって破られた。


そんな不吉な名を関したKMFを、シュナイゼルが作っている……
もう、名前からして反乱起こすつもりバリバリではないか。

アーサー王を直接殺したモルドレッドの名前をつけないところがまた厭らしい。










では、VVから奪ったもう一つの力、嚮団に頼るか、とも思ったのだが、まず前教主のVVが非常に非協力的であるため、ほとんどこちらの言うことを聞かない。
引継ぎ無しで何百人もいる組織を動かせるノウハウがこのクロヴィスにあるはずがない。

VVはこっちが教主だ、見たいなことを言ってはいても、数十年にもわたって嚮団を運営してきたのはまぎれもなくVVであり、その地位を簒奪した形になるクロヴィスにとって、「相手に自由に言うことを聞かせる」様な能力も持っていない以上、そう簡単に操れるはずがない。

王位にせよ、教主位にせよ、地位の簒奪というのは、奪うまでよりも、奪ってからの方が大変なのだ。
他者を操るような特別なショートカット手段を持っていないクロヴィスにとって、シュナイゼルの蜂起より先に嚮団を纏め上げることなどできそうになかった。


そのため、一応嚮団の技術を使ってジェレミアをもうちょっとだけまともに戻せるよう再改造するためにバトレーを送り込んだりもしたが、やはりナナリーの話などから総合するに、王位など望んでいないっぽいルルーシュとの和解こそが最良の道だった。

と、いうかそれしか生き残る道がない。



不死ボディを得た代わりに、死んでも死んでも他者に成り代われる能力を失ってしまったクロヴィスでは確実に敗北して、死なないまでもあまりよろしくない結果になってしまうであろう。
VVを見れば分かるとおり、死なないだけで常人並の力しか持っていない、というのはメリットだけではなくディメリットだって相応に大きいのだ。


と、いうか、正体がばれた場合、自分がCCにやったようなことが跳ね返ってくる可能性が最も高い。

クロヴィスは、自分でやっておきながらも、それは嫌だ、と思ってしまうような無責任な人間だった。
まあ、イレブンをさんざん虐殺しているのだから、あの国での古い言葉で言うところの、因果応報と言えなくもないだろうが、それは一回死んだことでチャラにして欲しいなあ、と思っている。




故に、シュナイゼルの蜂起を知っている以上、ルルーシュに頼ってかの第二皇子を何とか排除した挙句に、オデュッセウスかコーネリアあたりに皇位を譲って隠居することしか、今のクロヴィスの頭の中にはなかった。



そして、そんな中。


「陛下、大変です! ユーフェミア皇女殿下が!」
「ユフィがどうかしたのか!」



吉兆のような、凶兆のような、報告が襲い掛かってくることとなる。











「どうして分かってくれないのです、お兄様……お父様は後悔しておいでです」
「ナナリー、いくらお前の頼みでもそれだけは……」
「お願いです、お兄様……」
「うぅ……」


行政特区日本の成立式典に立ち会った後に、いろいろとすったもんだはあったがそれでも外見上は堂々と総督府へと赴いたルルーシュは、ギアスを使って何とか最愛の妹の元へとたどり着いていたが、そこでの話し合いは平行線をたどっていた。
中の人クロヴィスの雰囲気に当てられて、何とか親子仲良く、それが出来ないまでもせめて一目だけでも父親にあってもらいたい、と思っているナナリーに対して、この場にナナリーを救出するために来たつもりだったルルーシュは答えることが出来なかった。

自分が実はテロリストのリーダーをやっていて、今回のナナリーの件だってそれを引きずり出そうとする皇帝の罠なんだ、などといえるはずがないからだ。

故に言葉を濁しながらも何とかナナリーを説得しようとするが、それがナナリーにはもどかしい。
皇帝と、そして異母姉であるユーフェミアと共に過ごした時間は、紛れもない彼女の望んだ優しい世界であり、彼女はそれを兄にも上げたかった。
だが、ユーフェミアは、もう、あのゼロに…………だからせめて、




そんな状態でも、ルルーシュはナナリーほど父であるシャルルを信じ切れなかった。
このようなナナリーの言い分も、自身も策を弄するのを得意とするだけに、それを利用した皇帝の策だと本気で思っていた。

かつて母の死んだ日に父より弱者として拒絶されたこともそうであるし、なによりナナリーがこのように他人を信じられるように育った背景には、ルルーシュがその分世界の悪意を受けて育ったという裏があるのだ。


誰一人庇護するものを持たぬままこの激戦区で生き抜き、ナナリーを守るためには、ルルーシュは彼女の何倍も他人を疑わなければ生きていけなかったのだ。






故に平行線。

今回の件だけを言えば、クロヴィスにはそんなつもりが全くないだけにナナリーの言うことのほうが正しい。
ナナリー自身もじかに皇帝の姿を見てそれを確信しているのは、兄に大切に大切に育てられた彼女に人を見る目があった、ということであり、その彼女からしてみれば優しい世界の実現が出来そうであるにもかかわらず、それを拒絶する兄の意図が分からなかった。
今まで自分の望みはすべてかなえてくれた大好きな兄が、これだけは許してくれない。

それさえ出来れば、父はエリア11を日本に戻してもいい、と言っていたのに。
自分は、兄にこそ「優しい世界」にいてもらいたいのに。



目が治り、足も治り、徐々に本来の活発さを取り戻しつつあったナナリーにとって、その兄の態度はどうにも煮え切らないものに見えた。ましてや、異母姉であるユーフェミアがあんなことになっているのだから、いっそう協力してあげないといけないのに。
目が見えない状態であれば儚げに笑って兄の意に従ったかもしれないが、ナイトメアでオブなナナリーに近づいていたこのナナリーにとって、どうして分かってくれないの、という感情はかんしゃくのように爆発する。

そしてそれは、目と足の障害によって押しとどめられていたナナリーの精神の成長、すなわち第二次反抗期を促した。


「お兄様の、お兄様なんて…………嫌い!」
「っ!!!! ナ、ナナリー…………」


衝動的にそういって駆け出していってしまったナナリーを、ルルーシュは追いかけることが出来なかった。
それが一時的な衝動によるものなどと思いもせずに、ナナリーの足が治ってほぉらあんなに元気に走ってるよ、良かった良かったあはははは~などと思いながら。






最愛の妹から拒絶され、思わず膝を突くルルーシュ。
分かりやすくいうと、orzの体勢になる。


幼いころに母を失ったルルーシュにとって、ナナリーが世界のすべてだった……いや、まあ基本的に甘いので最近ユフィ分とかスザク分とかも増えてきていたが、それでもやはり彼の世界はナナリーのためにあった。
彼女がいてくれさえすればおのれがどんな目にあっても納得できたし、優しすぎる彼が他者を殺さなければならないという巨大な罪悪感にも耐えられた。
ナナリーのためにギアスと言う力を手に入れ、ナナリーのために黒の騎士団を結成し、ナナリーのためにスザクと戦う覚悟も出来たし、ナナリーのためにクロヴィスも殺して見せた。
偶発とはいえ、もう一人の妹にギアスをかけさえした。


すべてはナナリーのためだった。
今回の件だって、ナナリーのために皇帝の魔の手から彼女を守るつもりでこんな敵地真っ只中のブリタニアの総督府にたった一人で忍び込んできたのに。
肝心の彼女に拒絶されるなんて、ルルーシュは思ってもいなかった。

いや、ぶっちゃけナナリーだって今は勢いで言っただけでいまだにお兄様スキスキ状態であることには代わりがないのだが、基本的に打たれ弱いルルーシュがそう簡単にそんな可能性に思い当たるはずがない。
もう完全に、彼女に心底嫌われたと思い込んでいた。













だが、彼はどこまでもナナリーのためなら強くなれた。


「あるいはこんなことになるんじゃないかと思っていたよ……」
「ああ、CCか……」


どういうルートを使ってかは不明だが、どういうわけかたいした騒ぎも起こさずに今現在ルルーシュがいる場所、エリア11の総督府副総督室にCCがついたころには、ルルーシュは覚悟を決めていた。
自分が考える上で最もナナリーのためとなるであろう行動、皇帝暗殺を。


「……ナナリーがいったことは予定外だったが、いいんだ。
ユフィとの関係が昔と同じであるというのであれば、俺がいなくてもコーネリアは特区日本を、そしてナナリーを排除できまい。あの女の庇護さえあれば、皇族に復帰したナナリーを守ることは、大貴族どもにギアスをかけてこの特区日本を保護させれば、そう難しいことではないはずなんだ」
「……」
「どの道これはゼロを引きずり出すための皇帝が仕組んだ策だ。後は、あの男さえ排除してしまえば、ここまで大事になってしまった特区日本を排除することは、シュナイゼルら他の皇族にとっても無理だろう……ナナリーの傍にはスザクもいるだろうしな」


確かに、ブリタニアの国是である弱肉強食を否定してしまった特区日本という存在は、ユフィの皇女としての地位を否定するぐらいではつりあわないほど大きな罪だ。
いかにユフィが相続を放棄したとしても、おそらくあの男は認めないだろうし、ゼロを確保できればすぐに潰すだろう。

だが、皇帝であるあの男自身を排除してしまえば、話は別だ。
ユフィが行った失態を取り戻さなければならないコーネリアの立場からすれば特区日本の解体は不可能なことであり、いかにナンバーズ嫌いな彼女とはいえ擁護の立場に回るだろう。


そうであるならば、他の貴族を操ってコーネリアの援護をさせれば、シュナイゼルをもってしてもあの箱庭の宣言は壊せない。
いかに今回の件でコーネリアの株が下がったといっても、やはりこの二人が皇位継承の本命なのだから、シュナイゼルといえど容易には崩せまい。



ああ、いっそシュナイゼルも操ってしまえばいいかもしれない。
あの男は確実にナナリーと自分にとっての災いとなる予感がする。

そうすれば、ナナリーを害そうとするものなどもはやいまい。


ナナリーに嫌われるぐらいならばいっそ皇帝の策に乗っかってみようか、とも思わなかったわけではないが、やはり母の死の真相を聞きだすまで(正確には現在の報道の裏づけ)は、そのようなことなどできるはずはない。
ナナリーの安全の確保さえ出来れば、己の身などどうでも良い、と思っている以上、ここは皇帝を排除して自分が消えるのが、ナナリーにとっての最善であろう。




そんなエンペラーっぽい思案を続けていたルルーシュだったが、CCの一言がそれを止めさせた。



「確かにナナリーはそれでいいだろう……だが、お前はどうするんだ、ルルーシュ」
「…………ブリタニア皇族となったナナリーにとって、ゼロであったという過去を持つ俺はもはや敵でしか有り得ない。皇帝さえ排除すればナナリーにとっての優しい世界は完成する以上、俺はもう…………ナナリーにとって、必要ないんだ」


……基本的にルルーシュはこういう奴である。
自己の幸せより他人の幸せを求めるものであり、世界すべてが敵ではなければきっとナナリーのようにすべてを愛せたであろう、純粋な少年だ。
世俗の塵に塗れながらも、自分に可能な限りで世界にやさしくあろうとした少年に対して、CCは惨いことと知っていながらもう一度だけ、確認をした。


「お前は本当にそれでいいのか?」
「いいんだ! …………いいんだ」


そういって、もはや抑えることも出来なくなったギアスのある左目を覆っている眼帯を左手で覆いながら、顔を垂れる。




彼は気付いているのだろうか?
いや、きっと気付いていないだろう。

その眼帯と、それに覆われていないもう片方の瞳がしずくをこぼしていることを。





衝撃の大きさと、それをどうにかして理性で割り切って合理的に自分という駒を進めようとして、それでもなお心が大きすぎる傷によって一時の休息を求めてその場を動けなくなっているルルーシュを、CCはそっとその胸元に抱きしめた。


「お前は私の共犯者だ。私の願いを叶えるまで、潰れるんじゃないぞ」
「ああ、わかっている。わかっているさ、CC」
「(私だけは……最後までそばにいてやるさ)」


与えることは、愛することは知っていても…………与えられること、愛されることは知らなかった黒の皇子に。
魔女だけは、最後まで傍にいた。

そしてそれを知ってルルーシュは、自分を抱きしめている少女の腰に回していた手にほんの少しだけ力を込めて、最愛の妹に贈る兄としての最後の仕事をするための決心を固めた。












そこに乱入者が一人。















ブリタニア皇族の一員でれっきとした皇位継承者の一人が、たった一人で皇帝を殺そうとたくらんでいるこのゼロのいる部屋へと乱入してきた。


「ルル、いえ、ゼロ! 見つけましたわ、さあ、結婚しましょう!」
「ユフィ! それは、その、違うんだ」


テロリストである我らがゼロに結婚を迫る第三皇女殿下が登場した。
あわててCCを抱きしめていた手を離してぱっとはなれてユフィをなだめる、仮面をつけていないゼロことルルーシュ。


「……やれやれ、女を抱きしめるときは、他の女のことは片をつけてからにするべきだぞ、ルルーシュ」
「黙れ! 逃げるぞ、この魔女めっ!」
「まちなさい! スザク、どこにいるのです。早くゼロを……ルルーシュを捕らえなさい!!」


そう、兄を殺し、シャーリーの父までも巻き込んでしまい、カレンの裸を見て、スザクと敵対し、姉に殺されかけ、CCには前から後ろから純潔を奪われ、ギアスによりユフィに結婚を迫られたあげくに、最愛の妹であるナナリーを失った男には、もはや怖いものなど何もなかった。

そのため、手段を選ぶつもりもまたなかった。



次のお話へ

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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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