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獅子(ランスクエスト)

ランスクエストの追加パッチの製作が発表されました。追加シナリオのための人員追加とかも考えると……ちょ、ちょっと期待がもてるかも。
後日談のサチコとカーマのあまりにあんまりな扱いを見てちょっと悲しくなってきていたのですが、Q&Aをみても希望が湧いてきました。
でも、期待しすぎると裏切られたとき怖いと最近思い知っているので、自給自足は続けます。






そこは、綺羅の空間だった。
どこもかしこもまばゆいばかりの輝きと光に包まれており、富と名誉の象徴のような空間だった。
多くも少なくもなく厳選された上で贅を尽くして飾られた名工の手による調度品のなんと見事なことよ。
部屋のいたるところに見受けられる計算されつくした黄金比による設計のなんと壮観なことよ。

すべてが主の独特の感性にてありとあらゆるものがごちゃ混ぜになっているこの城の中において、この部屋だけは計算されつくした美に満ちている。


そんなすべてが豪奢で絢爛な部屋のほぼ中央に、一人の少女が跪いていた。
臙脂色の実用を意識した丈の短い着物と呼ばれる衣装はこの空間において彼女が主賓の一人として出張るには相応しいとはいえないが、その彼女が這い蹲っているのであれば、それはいかにも違和感は無い。
そう、思わせるほどにこの豪奢可憐な空間の雰囲気をすべて掌握した少女が、その這い蹲る忍者―――見当かなみの前にはいた。
かなみにとってはあまりに豪奢すぎるその部屋さえも、その部屋の主たる彼女にしてみれば珍しくもなんとも無い日常の一風景。

それゆえ、水晶で出来た光り輝くシャンデリアも、塵一つないほど掃き清められた深紅のカーペットも、その一本一本に丹精込めた彫刻がなされている大理石の柱も、ごくごく当たり前なものとしてほとんど無視してただ会話―――否、命令とそれによる報告の声だけがその部屋の空気に響いた。


「以上がランスの行動です」
「そう……やっぱり、ダーリンは魔物狩りに行ってたんだ」


配下の報告を聞いて、リア・パラパラ・リーザスは溜息を吐いて座り込む。
その座する場所は豪奢な椅子。それ一つで何百もの民を一年以上養えるものだったが、彼女がそれを気にすることはなく無造作に体重を叩きつけた。
どれほどこれに富が費やされようと、どれほど彼女自身が乱暴に扱おうとも、誰に何もいわれる筋合いはない……この本物の四分の一の大きさしかない部屋と同じく簡易的な、間に合わせのものとはいえ、その椅子の名は紛れもない玉座なのだから。

当然、その光景を見ていた背後に控える筆頭侍女も、下に控える御付の忍者も、何も言わない。
彼女たちにしてみれば、気にすべきなのは主君の機嫌だけだ。
その機嫌が最近下降の一途を辿っていることを考えれば、その他のことなど塵芥も同然だ。
それゆえに彼女たちは、それぞれがそれぞれの確固たる意思を持って、その脳裏を最大限に回転させてこの現状における取り得ない正解を探し続けている。


そんな配下の気遣いなど歯牙にもかけずに、きしり、とリアはその形のよい歯を食いしばった。その感情は苛立ち。
理由は明白だった。彼女の「ダーリン」が隣にいないからだ。

幼少の頃よりという筋金入りのサディストにして、ランス限定のマゾヒストである彼女は、彼に対してはどんな行為をされたとしてもそれを厭うことはありえない。
たとえ鞭打たれようが歯形を付けられようが媚薬を盛られようが、嬉々として付き合っていた。むしろ、何故か今まで自分を避けていたように見えるランスが、無理にでも自分にそういった行為を強いてくる今の現状だけを切り取ってみるのであれば、望ましいものだった。

だからこそ、彼のすべてを受け入れ、許容した。

しかし、彼女は同時に肉体的にはどこまでも普通の人間だった。才能限界20というそこそこ恵まれた才能ではあるが、それとて高いとまでいえるほどのものではない。ぎりぎり一般人の範疇に入ってしまう。当然、体力だってランスに比べればかなり落ちる。
それゆえここ数日ほど異常なまでに荒れていた彼と連日閨をともにしていたときは極めて上機嫌だったのだが、どうしても限界がある。彼に対して疲れにまみれた醜い姿を見せたくないと考え、ほんの僅かな休息と化粧の時間をと彼から眼を放した隙に、ランスは消えていた。
ほんの僅かな時間の停滞が、彼を我に帰らせてしまいこの肉色の鎖につなぎとめることが出来なかったのだ。

彼女が全身全霊を尽くしてすべてを捧げていた彼は、一体何が不満だったのか。


20にもならぬ年にて己の父さえも追放して世界有数の大国を支配するほどに優れた知能を持つ彼女は、当然ながらその答えを十分に知っていた。


「あんな、あんな奴隷なんかより、リアのほうがずっと美人でお金も権力もあるのに……」


そのいかにもなお姫様な外見とは裏腹に、将来の夢が世界征服であり、好きなものが権力であると豪語する彼女の口から出た言葉は、猛烈なまでの悪意が篭っていた。
幼少の頃より権謀術数の渦巻く王宮で育ってきた彼女は、断じて見た目どおりの可憐でか弱い天真爛漫な少女ではないが、それにしてもその言葉に篭った怨念は凄まじいものだ。

大抵の敵対者でさえも自分の敵や競争相手ではなく、単なる障害物であるとして内心ではすべてを見下しさげすんでいる彼女がもつには余りに感情の篭ったその言葉に含まれているものは、嫉妬だ。


「マリス。手段どころか生死も問わないわ。あの氷を割る方法は本当に無いの? もう、真っ二つになってもかまわないわ」
「……申し訳ありません、リア様」


絶対の信頼を持つ己の侍女が、もしそんな方法を知っているのであればとっくに自分に対して教えているだろうことはわかりきっているにもかかわらず、そんなせんの無い問いを投げかけてしまうほどに、その感情の炎は彼女の身の内を猛烈に妬き焦がす。
その対象は、そんな妄念の炎でさえも妬くことの出来ない場所でひたすら今も眠り続けている。


シィル=プライン。
忌々しく憎らしい、桃色の髪を持つランスの奴隷。
地上最強の生物、魔王の作った氷の檻に彼を庇って巻き込まれた、永遠の囚人。
そして、ランスにとっておそらく唯一の……



ただひたすらに美食を喰らい、女を犯し、そして時折それにさえも耐え切れなくなったかのようにたった一人で飛び出して殺戮で気を紛らわせる。
ランスの現状は、彼女の帰還が叶わないと彼が知ったときに、生まれたものだ。
そんな彼さえも彼女は受け入れていたが、それは決して望ましいものではない。

ああ、いっそあの女に対して死という形をくれてやることが出来れば、すべてが解決するのだろう。
たとえ、ランスにとって不可避の影響と憎しみをもたらすであろうその選択さえも、もし手中にあるのだとすればリアは今の焦燥に身を削り続けるかのごときランスを見続けるぐらいであればためらうことなく殺害を支持しただろう。
今まで何度も失敗してきており、しかしそれでもなお自身の能力であればランス自身の意向に背くという彼女からすれば信じられないほどの大罪を誰かに被らせて彼の憎しみをそちらに向けさせることなど容易いことだと信じているが故に。

だが、英雄たるランスをも苦しめる魔王の力はそれさえも許しはしない。
大国の女王であるリアでも、個人において最強と信じるランスにも、そして最高の呪術師であるカラーの女王にさえも無理なことを、一体誰が出来るというのか。
しかし、それでも忌々しいことに死んで骸になって朽ちてはいかず、そのままの姿をいつまでも晒し続ける……おそらく、リアが年老い、その美を失い、やがては老いて死ぬその日にも。
僅かな希望だけは常に示し続けながら、永遠の停滞をすべてのものに強いるその態度に、リアは強い怒りを抱いた。

生者に対してならば、どんな手段を使ってでも今後に築く未来で勝ち取って見せる。
死者に対してならば、ありとあらゆる方法でその存在した過去を忘れさせて見せる。

だが、よりにもよってあの女は。
脳裏に浮かぶ少女は、氷に囚われてもなお穏やかな顔をしていた。

どこまで自分を不快にさせれば気が済むというのか。

手に持った冒険用の鞭を固く捻って絞るが、そんなことではこの胸の中に宿る不快感はまるで消えやしない。これを思いっきりぶつけたとしても今のあの女はまったく意にも解さないだろう。
もともとはライトニングドラゴンという高位の存在であるはるまきのブレスでさえ、わずかばかりに傷をつけるのが精一杯だったのだ。
非力なリアの腕でどれほど打ち据えたとしても、あの非常識な強度を持つ氷に対して傷をつけることが出来るかも怪しい。
そして、仮に傷を付けられたとしても、それは彼女の気をわずかばかりに晴らすだけの役にしかたたないことも、分かっていた。

何も。
何も、出来ない。
世界最大の規模と文化を持つリーザス国の王たる、このリア・パラパラ・リーザスが。
富も、権力も、兵力さえも保有する世界最高の人類である、「王」が。
いかに魔王の力によるものとはいえ、何一つ出来ないのか。

彼女の顔に、らしくない焦りさえ見え始める。
己こそが世界最高だと、紛れもなくその全身全霊を持って信じ込んでいる彼女をして、めったにはありえないその表情に、側近たる侍女は悲しげに眉根をひそめ、配下たる忍びはそっと目を逸らした。
リーザス王国始まって以来の智謀と知識を持つ大陸最高の侍女でさえ氷を破る術を持たず、数多の経験を積んでしのびとして闇のつぼみを花開かせつつある忍者でさえも開放する手がかりさえつかめない。

最愛にして至上の主の願いをかなえられないこと。
敬愛する主君の助けになれず、またそれと同時に未だ囚われる友人の力になれないこと。

理由は違えど、それぞれがそれぞれなりに無力を感じ、絶望を受けている。

どれほど彼女たちが死力を尽くそうとも、どれだけ彼女たちが思案を続けようとも、リアのその迷いが晴れることは無い。

どこまでも、どこまでもこの世界は、残酷で、気紛れだった。


「まあいいわ。どうせ今回だって、ダーリンが何とかしちゃうに決まってるんだから」
「フフ、そうですね。リア様」
「まあ確かに、アイツが誰であろうと女の子とやることを諦めるとかありえませんしね。多分そのうち何とかしちゃうに決まってます」


だが彼女たちはあきらめることはなかった。
あえて明るい声を作って自分を奮い立たせようとする主君の顔に演技を感じはしても、嫌だからこそその側近たちもそれに同調する。

そうだ、今までだって、絶望的な状況なんて数多くあったではないか。
魔人と手を組むなどという狂った手法によって危険な隣国に一度は支配され、その至高の身さえも危うくなったことだってあったのだ。
自軍が崩壊し、時に裏切られ、生き残った忠義の士でさえもその力を発揮できずに潰されていったそんなさなかで、よりによって史上最悪の魔王が蘇りさえした。
あの、人類全てを奴隷へと貶め、終わらぬ夜を千年にもわたり紡ぎ続けたジルの復活。そんなことさえ、このリーザスの王を襲った。



しかし、それさえも覆した男がいるのだ。
きっと、きっと今回だって、何とかなる。
一度は悩み迷っているような彼だって、きっとそのうち立ち直ってくれるはずだ。


なぜなら彼は、英雄なのだから。
そして自分は、その妻であり、それを支える侍女であり、忍びなのだから。



そう、それぞれがそれぞれ決意を胸に秘めたところで、部屋の隅より一人の少女が現れた。
何の変哲も無い、ただのメイド。マリスの部下だ。
英雄譚の登場人物たる彼女達の行動を動かすには、あまりに不足な人間。


「リア様……ランス殿がご帰城なさったそうです」


しかし、その人間は平凡であっても、それによってもたらされた情報は違った。
それをマリスごしに聞いたとたん、リアが表情を一気に輝かせて叫ぶ。


「え! マリス、すぐに湯浴みの準備をしてちょうだい」
「はい、分かっております、リア様。すでに整えるよう命じておきましたので、今からお向かいになられても大丈夫ですわ」


もはや、思案のときは終わった。
リアの体力も自身の保有する貴重な秘薬や配下の希少な技能で十分に回復が出来た。
ならば、今しなければならないことは……女としての己の体を磨き上げるのみ。


「かなみも一緒に来なさい。ことによってはあなたの……まあ、正確にはあの幽霊の力を借りるかもしれないわ」
「え゛っ……はい、リア様。うう、やっぱり今回私も巻き込まれるんですね。鈴女さんのおまけで」


英雄たる彼を支える為に、彼が立ち直ってくれるまでに、全力を尽くせるよう自分自身をもっとも魅力的な女にするために、大陸有数の権謀家にして誰にも劣らぬほどランスという男を愛する少女、リア・パラパラ・リーザスは彼の帰還という報を聞いて、憂さ晴らしの戦闘を終えてすぐさま彼が望むであろうことを自分の体というもので用意する為に、準備を整えにいった。


「ダーリンのためだったら何でもするわ。あのおデコちゃんとか、軍神とかいうのなんか相手にもなんない。あの奴隷女だって……そのうち何とかした上で、ボロ雑巾のようにしてあげる」



だから、ダーリンのためにさっさとそこから出てきて、その上で捨てられなさい。



残酷で、怜悧で……そして、何処かそれらとは裏腹な天真爛漫さを漂わせて、彼女は大きく高笑った。



黒耀へ

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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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