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外史につくろう穢土幕府・45

恋姫で一番人気があるキャラって誰なんでしょうね? 
公式人気投票はあえてでしょうけど、全キャラでは競ってないし。
個人的にはどのssでも華琳の扱いはいい気がしてます。






19時私信 地震、凄いらしいですが無事です。というか、気付きさえしませんでした……








「天の御使い?」
「そうです。話を聞いた商人によると河東を治める董卓はその者に忠誠を誓ったとか」


幼いころより共に育ってきた忠臣が公式なものではない、という前置きの上で耳に入れてきたその情報に、彼女は眉根を寄せた。
その聡明な脳裏に、今入ってきた情報を入力してそれを整理する為、すっとその藍の瞳を閉じる。
ほんの僅か、顎を下げてもってきた右手の上に乗せて思案する為の体勢をとったことで、くるくると特徴的な形をした髪の先端が揺れる。
衣服や体、そして髪をまとめるリボンに焚き込まれている香が、鬱陶しくない程度に香った。
光を反射する金の髪が、きょうもしっかりと決まっていることに、忠臣たる長身の美女は眩しげに目を細めた。


「は? 天の御使い……誰かに買い物でも頼まれたのか、秋蘭。それなら私も一緒に」
「……姉者。そういう話ではない」


その後に続いた、どうにも前半しか話を聞いていなかったらしい姉の言葉に愛しさと共に力が抜けていくような感覚も覚えたが、そんな声さえも我等が主君たる曹操様には届いていない。
ようやく『魏』として弱小ながらも一勢力として名乗ることが出来るようになったことで得た城の中。
曹操の思案の邪魔をしないように声量を抑えて姉に応えたが、頭上に疑問符を浮かべるだけでどうにも理解していないようなので溜息を吐いた秋蘭―――夏侯淵は、とりあえずそれはそれとして主の考えを邪魔してはなるまい、と目配せを送る。
決して頭がよかったり、気配りがきいたりするわけではないが、それでも主君を敬愛することひとしきりの姉である夏侯惇は、それだけで察して自分の疑問を完全に棚に上げておいて、曹操のために沈黙を用意した。

その二人の気遣いに気付いているであろう曹操はやがて思案が終わったのかゆっくりとまぶたを開け、しかし側近二人の気遣いには何も言わない。
二人もそれを当然と受け取り、ただ主の言葉を待った。
少々歪な形ではあるが、それでもこれがこの主従のあり方だった。


「私も噂程度なら耳にしていなかったわけではないけど、まさか本当に名乗り始めてくるとはね」
「……袁紹と付き合うにはそういった権威を必要としたのでしょう」
「そうね……妙手、とはいえないけれど、悪くはないわね」
「?」


袁紹、という知っている名前が出てきたことで、ようやく「ああ、河東ってこの間話していたあのへんのことかぁ」見たいな顔をしている夏侯惇のことをおいておいて、二人はその耳にした噂についての考察を始める。
もっともそれは、あくまで曹操の考えを纏める為に夏侯淵が合いの手をいれている、というていのものだったが、己が役割を理解している蒼の武将は完璧にその役目を果たしていた。


「当面の間同盟を維持するつもりはあるようですね」
「麗羽相手にまともに同盟を組めるとは思えないけど……一時的なものならば話は別、か」
「河東の発展は凄まじい勢いです。天の御使いを嘯くのも、それに見合うほどの自信があってのことでしょう」


徐々に勢力を広げつつある、とはいえ反乱軍に対する戦場での華やかな活躍も、強欲で数だけ多い匪賊の討伐による好意も得られなかった曹操の勢力はいまだ小さい。
それでも、己が才こそがこの乱世を治める為の至上の手段であると信じ、乱世の梟雄として将来を見据えてその実現のために虎視眈々と機会を狙う曹操は、決して己が目の前の物事だけしか見ないようなことはしない。

そうでなくても、遥かかなたの北の地に起こった唐突で、不可解で、されど強大な同盟を無視することなど、現状を無視して己が夢に逃げるような愚物でない限り出来るはずもない。
天下を狙う群雄―――もっとも、もはやその大部分が脱落しているといっても過言ではないが―――であれば、この間の戦乱で一気に名を上げた河東と、最大勢力である袁紹が治める洛陽の名は、外すことが出来ないほどの要注意案件だ。

河東と幽州の激突した戦場跡から盗み取ったあぶみの完成度一つ見ても、天の御使い、という言葉が決して大言壮語でないことを知っていた曹操は、だからこそそのものの姿を深く鋭く想像する。

いかなる男だろうか?
密偵たちにどこを突付かせても将からも、兵からも、民からも、悪い評がほとんど出てこないその者は。

降将を厚し、それを既存の者たちに不満をも持たせないその懐の深さ、数々の斬新で、ともすれば意味不明としか思えない政策を実現させるその手腕、そして何より……将に命は愚か、その名さえも捨てさせる求心力。
無貌の将というその武を持って世に誇る豪傑に名誉も武勲も誇りもすべて捨てさせる異常で狂った戦法を可能とし、賈駆という一世を馳せた名軍師にその「真名」を一般兵にまで預けさせるほどの忠誠を買ったその男のやったことは、曹操の関心もまた強く買った。


勿論、内部には曹操の知らぬ理由があるのであろう。
武将たちを女として寵愛している、という話もあることだし、噂や風聞で聞けるものが天の御使いと河東に住まうものの関係すべてである、とは到底いえないだろう。
表に出ない何かがあるからそのようなことが起こったのかもしれないし、あるいは誰か、あるいは何かを立てにしての脅迫によってそれらを実現しているのかもしれない。
そういったことは、この遠く離れた東の地にいてはわからないことだ。

だからこそ、彼と彼女たちがやったことということだけを聞いて、それを一方的に自分の価値観だけで「配下の者を何だと思っているのだ!」などと糾弾しようなどとは思っていない。
正義を、悪を並べ立てるにはあまりに曹操はそのものに対する知識が乏しすぎる―――その判断こそが、曹操の政武におけるバランス感覚を表していた。
だが、火のないところに煙は立たないという。
その曹操の感覚をもってしてもその数々の噂は、あまりに他の君主と比べての逸脱が激しいように感じる。



曹操は、自分の両脇を固める二人へと改めて視線をやる。
自分には出来るだろうか? 
誇り高き武将、夏侯惇の戦場での評判すべてを失わせ、覆面を被らせてその戦果のすべてを己一人に集めることが。
忠心厚き武将である夏侯淵に命じ、己がただの一戦勝利する為に一般兵にその神聖不可侵な真名を預けさせることが。

彼女達のことだ。
曹操が命ずれば、おそらくその内心すべての葛藤を胸の内に押し込めて、ただすべての献身だけで従うだろう。
その信頼関係において、曹操は決して河東の者たちと比べて自分たちが劣っているなどとは考えていない。
だが、だからこそ曹操はそんなことなど出来ない。
彼女達の胸に抱いた誇りを汚させるようなことを自分が命ずることなど、それこそ自身の誇りにかけて決して出来はしない。

そういった己の誇りがあるからこそ、彼女達の忠心とおそらく同等ほどの忠義を受けておいて、平然とそれを無視してただ勝利のために命ずることの出来る男の存在は、天の御使いという名乗りとあいまってまるでこの世界の人間ではないような不気味さを曹操に感じさせた。

おそらく袁紹などという愚物より、この男こそが自分の天下布武への一番の障害となる。
自分と全く種類の違う、しかし優れた好敵手の存在を認め、曹操は奮い立った……否、そうでもしなければ、「間に合うのか」という内心の不安を押し殺せなかったのだ。


「その男、名はなんと名乗っているのかしら」
「何分最近になって急に表に出てきたもので情報が交錯しておりますが……たしか、『北郷一刀』だったかと」


その名を胸に刻む。
伝え聞く範囲では自身も認めていた孫呉はほぼ滅び、注目していた劉備とやらも所詮はただの一義勇軍モドキだった。
袁紹や袁術のような無能、劉璋や南蛮王のような凡俗と同じ心持でいては、こちらが舞台にあがるまでに潰されてしまうかもしれないのだ。
だからこそ、誰よりも、それこそ名目上この天下を治める皇帝よりも強くその名を記憶した……いずれ必ず倒すべく相手として。

北郷一刀。
待っているがいい、この曹操の挑戦を。

それこそが曹操―――華琳による初めの宣戦布告だった。
そこには、相手のあまりの強大さとくらべて自分のあまりに遅い歩みに苛立つ気持ちが確かにあった。



「か、華琳様!」
「……何、春蘭?」
「どうかしたのか、姉者?」


そして、その空気をぶち壊すかのように、先の商人は天の御使い、としてしか知らなかった為に以前聞き及んだ情報とつき合わせて無理やり記憶の底から搾り出したその名を秋蘭が挙げたとたんに、先ほどまで全く会話についてこれなくて捨てられた犬のような目をしていた春蘭が、ここぞとばかりに声を張り上げた。


「私でしたら大丈夫です! そんな男のからくり乳母車なぞどれほど来ようと、この七星餓狼でことごとく粉砕してご覧に入れます」


…………。
そもそも、その「北郷一刀」とやらは北方での大戦のあと、急に話にあがるようになった輩なのであり、その政治力や統率力はさておき戦場で名を挙げたというわけではない。
天から来た、とまで言い切る男だから凄まじいまでの腕を持つ、という可能性もないではないが、それほどまでの腕を持っていたというのであれば、あの北方大乱で名を挙げることでその神秘性の裏づけしたに決まっている。
『降臨』した時期的なものが原因なのかもしれないが、それでも反乱鎮圧という絶好の機会においてそれをしなかった、おそらく出来なかった、という時点で曹操はその者の武の腕前はおそらく取るに足らないものであると判断していた。

そしてその後も、別に襲い来る刺客を一太刀で切り捨てたり、かつては金ずくで刺客を請け負いながら子供づれで放浪していたり、はたまた密偵の頭領と川辺で死闘を繰り広げたり、といった逸話はこの魏のすべてを治めすべての情報を知りうる立場にある曹操の耳にさえ一切入っていない……そもそもそんな事実ないし。
故に、別に戦場での武勇については全く話していないにもかかわらず、この魏武の大剣が唐突にわけのわからぬ絡繰を相手が操ると断定した挙句、己が腕を持って倒して見せる、とアピールするのはイマイチ筋が通らない。

幼馴染であり、無二の親友であり、可愛いネコであり、そして誰よりも忠実な臣下である夏侯惇の唐突な物言いはいつものことではあるが、それでも一応曹操はそれを無視することなくきちんと拾ってあげて姉と同等の信頼を寄せる妹の方へと投げかけてやった。
若干あきれているような気配は否めなかったが。


「……秋蘭、説明しなさい」
「はっ! おそらく、また何か受信したものかと」


が、残念ながらその絶大なる戦闘能力と引き換えに何か大事なものを失ったとしか思えない姉の思考回路を完全に理解するのは、天真爛漫の姉を誰よりも敬愛している血を分けた妹の夏侯淵であっても難しかった。


「? 何か間違っていたか、秋蘭」
「いろいろと、な……まあ気にしなくてもいいことだ、姉者」


とはいえ、彼女の価値はそんなところにないことは主君も妹も重々承知していた為、たとえ自分のいったことがどれだけ的外れなのか、全く持って理解していなかったとしても、そのことを理由に夏侯惇を責めようとは欠片たりとも思わなかったが。



   46話へ

Comment

No title

曹操サイトも一刀を警戒しているが一刀の方も既に曹操に目を付けてるんだよな……
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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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