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外史につくろう穢土幕府・43

「この、ゴボウ、メンマ、孫の手!」

↑の台詞の横にAAとやらを張ってみようと思ったけど、麗羽様のはどこにもなかったんよ……
いくら恋姫自体がそれほどまでにはメジャーでないとはいえ、
あのくるんくるん小娘は山のようにあるのにどうしてれーは様のはないの?
美羽&七乃さえあったのに……


というわけで、流石に本文にそんなことは出来なくても、ブログでの前書きぐらいは遊んでみようと思ったのに、見つけられませんでした。
まあ、今までAAとかやったことないのでやったところで確実にずれると思うんですが。

しかし、何故麗羽様だけ……
はっ! ……よもや、人気ないのか? まさか、俺の麗羽様が! そ、そんな馬鹿な! 
曹操のようなペタン娘に比べてどこが劣っているというのか。
ぼん、きゅ、ぼん、でお金持ちでしかもお馬鹿なんですよ? 最高じゃないか!
というわけで、麗羽様のよさを布教すべく、今日更新いたしました。


二月二十一日追記

何がなんだか分からない、という声を受けて多少の加筆修正。
こんなもんでいかがでしょ?






袁紹の洗脳に失敗したことで、今まで一刀たちが張り巡らせていた多種多様の陰謀による河東勢の戦略はすでにほぼ完全に破綻した。
河東のありとあらゆる戦略上における大前提である太平要術の書の力が、完全に機能不全を起こしているからだ。

強大な力を持つ袁紹を自陣内に誘い込むことに対する苦労については散々協議を重ね、謀略をめぐらせていた一刀であったが、いくらなんでも相手に妖術が効かないなどということは想定の範囲外にもほどがあった。
今まで袁術、孫策、董卓に関羽と数々の三国志の登場人物を下してきた絶対の力が、何故袁紹には効かないのか。
戦略的に最大勢力である袁紹軍に喧嘩を売った、ということ以上にその事実は一刀を追い詰めた。


「(俺の……俺の、力が!)」


最悪全面戦争を正面から行うことになったとしても大丈夫な準備を整えてきた一刀であるが、この外史に落ちてきてからの一刀の基盤となったのは、そういった戦争の為の兵力や将、軍師などではなくこの妖術の力に他ならない。
この力があったからこそ一刀は悪行をなし、民草や敵兵を死へと追いやり、人身を弄び、力ずくで女を犯したのだ。それは、例えば直接はその力を向けていない張角三姉妹や賈駆、程立に対してであっても同じだ。
この外史に来てより行ったありとあらゆる行動の基礎として、常に太平要術の書の存在はあった。

この力があったからこそ彼は驕り、この力があったからこそ彼は立った。
もはや彼の人格とその力は切り離せないほど癒着したものであったのだ。


それが、効かない。
しかも、原因すら不明だ。
袁紹に対してだけは馬鹿すぎるから効かないのならばまだいい。
だが、こういう事態になってくると小心者である一刀にしてみれば無防備に袁紹が手の内に入ってきたことさえも疑わざるを得ない。

小刻みに震える彼の体は、武者震いなどではなく間違いなく恐怖によるものだった。
最愛の少女を失ったときすらも怒りで昂揚していた頬さえも、今は青白い。
血走った瞳は、震える吐息は、今まで支配者としておごり高ぶっていた彼には全くありえなかったものである。
だが、それも無理はない。

袁紹に対して術が効力をおよばさなかった頃よりしばらく、一刀の脳裏には様々な最悪の事態がよぎり続けてきた。


「っ! …………」


一刀の視線が、袁紹から一時はなれて、宙をさまよう。
その視線は、洛陽よりもずっと向こうの南のほうへと向いていた。
ちょうど、方向的にはとある君主の支配地として今まで眺めていた方向である……袁紹を降した後妖術によって対抗を計っていた、曹操の支配地として。


もしも、妖術書がその力を失った、あるいは失いつつあるとしたならば、どうだ?
今まで特に考えもなく術の力を乱発していた一刀であるが、考えてみればそれがいつまでも続く保障なんてどこにもありはしない。そういったことに対して、一刀は今まであまりにも無防備でありすぎた。
そういうことをほとんど考えずに、ただ熱に浮かされるかのように遊び半分で術の力をもてあそんできて、書を使う方法こそ熟達してきてはいても妖術そのものの心得がない彼はメンテナンスの一つもしなかった。
彼が現代日本より持ってきたスタンガンが僅か三人をノックアウトしただけでその力を失ったように、動力源不明の妖術書にだって人数制限や有効期間というものがあったかもしれないのだ。
これ以上妖術をかけられないとすれば、これから一刀はほとんど特別な力を持たない単なるこの世界の異邦人として天下を狙う争いに戦っていかなければならない。
最大勢力たる袁紹軍と最強兵力である呂布、そして最優の君主である曹操相手にだ。



「……まさか、こんなことが?」
「そんな、ありえません……」
「いったい……何故?」


それだけならばまだいい。
それすらも、まだ最悪のケースというには僅かに足りない。
そうなれば、今度は手間こそ掛かるが英傑たる己が直接指揮して戦場に立たなければならないという面倒こそ起こるが、それだけだ。


口々に呟かれる声を聞いて、思わず一刀は怯えた瞳を返した。
そこに居並ぶいずれも劣らぬ美女―――妖術や暴力によってその心を縛っている三国の美妃たちが、こちらを見る視線にさえ、彼は気まずそうに視線を逸らす。
縋るような、頼るようなその瞳たちには限りない愛情と庇護、そして一刀の身を気遣う者がほとんどであったが、それでさえも今の彼には恐怖の対象だ。


だが、もしも今保有している孫策らにかけている妖術さえも維持できなくなったとしたならば……待っているのは破滅だけだ。
絶対服従の呪いによって能力を低下させてまでも縛らなければ、彼のような低俗な人間に従おうとする英傑などいない。そのことは、鳳統らの反発から一刀も十分学んでいる。
ならば……もしもそんなことが起こったならば。
孫策も、鳳統も、関羽もそれどころか河東数万の兵とその数十倍の民が、今までの一刀の暴政に対する断罪の刃を向けてくることは、想像に難くない。


「(まさかこれを全部知っていたから、アレほどまで無防備に。そうか、だから曹操は……畜生、畜生!)」


しかも、あまりにも無防備だった袁紹の行動からすると、ひょっとすると彼女は―――そして、彼女以外の各地の勢力の長も―――その妖術の力が失われつつあったことを知っていたのかもしれない。

自分の言ったことで周囲が妙な雰囲気になったことを察してか少々不思議げに、しかし自分が間違ったことを言ったはずなどないという確信があるかのように依然堂々とした態度で縛られた状態でもなお胸を張る袁紹を一刀は憎憎しげに見つめる。
が、その呪うような視線を持ってもなお、袁紹が突如その瞳の中の怒りを和らげ、一刀に向かって頭を垂れて甘い声をかけるようなことは起こらなかった。
術が効いていないのは夢幻などではなく、もはや確定した単なる事実なのだ。


そういった暴君たる一刀の力の源が失われつつあることを諸侯はすでに察知していたからこそ、こういった第一手目を袁紹が奪い、いまだ呂布も曹操も劉璋も動いていないという現状があったのかもしれない。
使い手である己さえ知らなかったことをこうも容易く、というのは情報伝達の速度を考えるとありえないとは頭の片隅の冷静な部分で思うのであるが、この時点ではそういった考えすぎとも言えることでさえ否定できるだけの要素は皆無だ。
術の効力がないことを知っていたからこそ、袁紹はこうも無防備に手中に入ってきて、呂布も曹操もいまだにこちらに対して進軍してこないのかもしれない。
疑い出せば、どこまでもきりがない。
冷静な部分とは逆にどこまで払っても消えない黒い霧は、一刀の心を常に蝕み続けた。


どれが正しいのか、どれが間違っているのか。
この時点で知る者はなく、だからこそその疑念を否定してくれるものは例え天の御使いであってもありえなかった。
今までの行動すべてが揺らぐがごとく動揺する一刀。
一刀の行動のすべての大前提である太平要術の書の無効化という事実は、それだけの疑いと衝撃を一刀自身に直撃させたのだ。





この状況下で果たして北郷一刀というこの外史の主人公はいかなる行動を取ればよかったのだろうか?


太平要術が効力をすべて霧散させたことを前提にして、ありとあらゆる手段で袁紹の懐柔を試み、それが不可能であったならば迫り来るであろう袁紹軍に対する対策を術ではなく言葉を尽くして元部下たちと練るべきであったかもしれない。
術が切れていようが使えなくなろうがそれが明確に分からない以上は同じであるとしてあえて無視して、ただいまの時点で純粋に術の効かない者に対する対処として、袁紹を捕獲ないし殺害した上で、その事実を公表するか、あるいはその首をどの勢力に手土産として持っていくのが正しいのかに頭をひねるべきだったのかもしれない。
あるいは覚悟を決めて、いざというときのために自分個人の武器を携帯し、その手入れでもしておくべきだったかもしれない。

が、それらすべてが、所詮流行っておけば過ぎない、というレベルのことであることにも変わりはない。


いかなるメカニズムで袁紹に対して太平要術の書が機能しなかったのか、その理由をきちんと系統立てて説明できる者がいない段階では、きっとどういった行動を取るのが正解なのか、答えを出せる者はただの一人もいないであろう。
どういった選択をしようとも、リスクとメリットがそれぞれきちんと存在してしまう。

ましてや、一刀は今までそういったことをほとんど考えずにすべて妖術の力ずくで押し通ってきてしまったというのに。
信念も持たず、経験も積まず、決断さえも下さないで流されるまま生きてきて、そしてこの外史に落ちてからもそれを続けることこそあれ、変えることなどほとんどなかった。
たとえ本人がどう思っていたとしても、彼は決して三国志の登場人物たる英傑ではなかったのだから。

ならば、現実的に彼が取れる手段もまた、限りなく少ないものへと限られていた。



頭を抱えて布団にもぐり、ひたすらにその生暖かい空間に篭って現実を逃避する。
苦痛から逃げ、苦労から逃げ、ひたすら美味しいところだけを得ようと今まで積み重ねてきた彼からするならば、それが一番妥当な結果だろう。
所詮、北郷一刀などその程度の男だ、と……日々を安楽に過ごすことのみを目的とする愚物であれば、それ以外の選択肢などないも同然だ。
即座に逃げ出して、どうしようどうしようとうつろにつぶやくことになったとしても、誰一人として意外に思わなかったであろう。


「(クソが、ふざけるな!)」


だが、違った。
一刀は、そんな選択など、端から考えもしなかった。
いや、一瞬考えはしたが、怒りとともにそれを考えた事実そのものをすぐさま強く打ち消した。
そう、愚かで強欲な匪賊であるはずの男は、すでにもういなくなっているのだから。

先に述べた推測は、あくまでかつての彼を前提とした分析だ。
一つ、彼が通った些細にして重大な経験のことを見落としている。

言葉にするならばたった一言で終わる単純なそれは、臆病にして強欲なだけだった匪賊の一刀に対しては複雑にして言葉に尽くせないほどの大きな影響を与えている。
それを元に、新たに考え直すのであれば……



「っ…………来い!」
「きゃっ、ちょっと、あなた! いったいどういう」
「黙れ!」


術が効かなかったことを完全に知った一刀はすぐさま玉座から飛び降り、そこに芋虫のように縛られて地面に付している袁紹の縄を解いたかと思えば、即座にその手を握って駆け出すかのようにその場から離れていった。
その行為は彼の数倍の知力を持つであろう孔明や程立が声を出すよりも早く、彼など一太刀で殺害できるほどの反射神経を持つ孫策や関羽が止める間もないほど唐突ですばやいものだった。

そう、愚物であった彼であるが、その術の無効化という事実によるあまりにも大きな衝撃が通り過ぎた後、すぐさま誰よりも早く動き始めたのである。
それは決して、今後の利害を計りきった綿密な計算によるものでも、今後どうすればいいのか、という確固たるビジョンがあってやったことでもない。
彼からしてみれば反射的に体が動いたに等しく、それは熟考というよりもむしろ考えなしの衝動に近いものであったが、それでも彼は間違いなく自分の意思で決断を下した。


「(腹をくくれ、北郷一刀……泥沼の戦争、上等じゃないか。術がなくても、戦力で劣っても、これはただのフラグだ! 止まるな、怯えるな……笑えっ!)」


かつての彼であれば何も出来ずに立ちすくむだけだっただろう。
だが、すでに一刀は心に決めていた。
彼が望むのは、完全無欠の己による天下統一。
払った犠牲に相応しいだけの価値を打ちたてることこそを願う彼は、だからこそもはや後戻りすることなど微塵も考えずに大胆な行動に出た。
様々な不安要素を感じては怯える、ほかならぬ自分自身に対する怒りがその行動を後押しした。



この未曾有の危機を前にして、いまだ震えるだけでいいのか?
対策を丸投げにして、自分は玉座でふんぞり返っているだけでいいのか?
かつてと同じく与えられる餌を口をあけて待つだけでいいのか?
誰かがこの問題を解決してくれるだろう、と願うことしかしないでいいのか?

それで、かつてと同じ間違いを犯したとしても……いいのか?




いいわけがない。
いいわけがなかった。

かつての失敗は、フラグだったのだ。
ほかならぬ一刀自身にその失敗を実感させ、それによってより自分自身を成長させ、更なる価値を得る事が出来るように成長するための、必要な犠牲だった。
ならば、それによって膨大な経験値を得た己自身は、成長していなければならない。
『今度』はうまくやるために、『今度』はノーミスで更なる賞金を獲得する為に。


定石はずれの袁紹の行動によって先手を取られてしまったとはいえ、今回の袁紹攻略にも現れていたようにたった一つの経験が怠惰であった彼の方向性を著しく変えていた。
今でも、酒食を好み、肉体労働そのものである戦場に出ることを厭う一刀の性質が変わったわけではないが、それでもなお、積み重ねてきた経験によって彼自身も変化していたのだ。


この前は、待っているだけで結局失敗した。
つまり、このゲームにおいて待ちは間違いへと繋がっている。
かつての経験を踏まえると、動くことこそが正しいのだ。
だからこそ、答えは簡単だ。適当にであっても動けばいい。
英雄であり、スライムを倒したことで経験を得てレベルアップをした自分が正しい選択をしたのであれば、例えそれが適当に進んだとしてもいい方向につながらないわけがないのだから。
それなのに……例え僅かにであってもこの自分が不安に思って、かつてと同じ間違い、「停滞」という選択肢を選びかけるとは!


あやうく間違った選択―――怯えて震えるだけ、という行為をほかならぬ自分自身が取ってしまいかねなかった無様さに、一刀は怒りさえ感じていた。
それはまるで、何度も何度も1-1のキノコ妖怪に引っかかって死亡し続ける不器用な自分を繰り返すようなものではないか。
いつまで同じ事を繰り返すのか、ほかならぬ自分自身であるからこそ冷静になって考えてみればそれは余計に醜悪に見えた。
だからこそ、そんな無様な自分の姿を客観視して恥じた彼は、そんな先ほどの自分の無様さを脳裏から打ち消さんとばかりに自分自身でも分かるほどあえて積極的な行動に、誰にも意見される前に自分自身の意思で袁紹の処遇を決める為に動いたのだ。


ひたすら袁紹の手を引いて進んでいった一刀は、やがて目的地へとたどり着く。
扉を開ける魔さえ惜しいといわんばかりの速度、ほとんど体当たりに近い形でその部屋に入った彼は、すぐさま目線を目的の場所へと移し、それが常と変わらずそこにあることを一応の確認する。
当然ながら、彼の部屋であるそこを彼に居かなく荒らすようなものがいるわけもなく、当然ながらそれは朝彼が出たときとほとんど変わらぬままそこにあった。
いまだ頭の上に大きな疑問符を浮かべている袁紹を自室に無理やり連れ込んだ一刀……当然、やることは一つだ。

己が力を一方的に無視されたことに対する怒りと自身で決めたルールだけは破ってはならぬと思う硬い制約によって、術の無効化に伴う様々な弊害による恐怖を無理やり押し殺した一刀の行為は、確かに拙速と呼ぶに相応しいものであった。
だが、それは停滞よりもよっぽどマシな行為であり……それどころかこの場において、もっとも正しい選択肢の一つでもあったのだ。


「おらっ!」
「きゃっ!」


つれてきた袁紹の手を握っていた腕を、一刀は大きく振って放した。
当然、慣性の法則にしたがって袁紹はバランスを崩し、その場―――彼が普段いろんな意味で使っている寝台の上にしどけなく倒れこんだ。
想定外の相手の対応に多少混乱していた袁紹は、だからこそただの女のように軽い悲鳴を上げることしか出来ていない。
そもそも、袁紹は確かに三国志に名を残すものではあるが、正直なところ無能以外の評価は当てはまらない。
文官、軍師としての能力はいうに及ばず、個人としての戦闘能力もまあ一刀と大差はない。
これが袁家の二枚看板、文醜と顔良であればそんなことなど出来はしなかったが、少なくとも袁紹に対してならば一刀ごときの筋力でも、力ずくということが可能であったのだ。

それを今までの綿密な調査や風評、そして今日までの袁紹の対応で知っていた一刀は、だからこそその場の勢いに任せて寝台の上に寝そべる形となった袁紹に飛びつくような形で、力ずくで押し倒した。


「何を!」
「うるさい! 黙って喘いでろ!」


その豊かな肢体を彩る豪奢な衣装を力ずくで剥いでいき、滑らかな肌を無骨な指でぎゅっと握り締めて、無理やり一刀は袁紹を組み敷いていく。
抵抗は無論される。だが、その程度もはや一刀にとっては慣れたものだ。
彼は術の力を使って従順に傅く女を抱くことも多いが、同時に力の限り抵抗する虜となった女相手に楽しみのために無理やり事に及ぼうとすることも珍しいことではないのだ。

だからこそ、暴れる相手の力を地面に逃がし、そこにそっと自分の力を添えて力の方向性を制御する。
合間合間に間を取って自分の衣服も脱いでいき、相手の体をそっと撫でて無理やり身体的な準備を引き出していく。
これはこれで、なかなか立派な技だった。
勿論誰にも褒められるようなものではない下賎なものではあるのだが、それでもその一挙一動にこの外史に来てより一刀が重ねた経験のひとつが見て取れる。
決して合気道や柔術といった戦場における柔よく剛を制するではないが、ヤクザな男としての粗暴にして洗練された技術を前にしては、経験の薄い―――そして、武の才もない袁紹が防げるものではなかった。


「あ……ああっ!」


だからこそ、そんな無力な袁紹の抵抗などほとんど意味を成さずに、二人の体は布の海へとゆっくりと沈んでいった。












「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」


荒い息で寝台に腰掛ける一刀の後ろで、全裸のまま寝そべっている袁紹。
つい先ほどまでの力関係を表すかのごときその様は、色事を終えた直後の男女としては多少色気に欠けるところがないでもなかったが、それでも圧倒的なまでの迫力をもつ袁紹の体が露になっていることを考えると、ある種の絵画のようにさえ見える美しさを持っていた。

豪奢にして華麗。

少なくとも、見た目だけならば今まで一刀が手にかけてきたものの誰よりも袁紹は女らしい。
武将、あるいは軍師として磨き上げられてきたものが多い一刀の妾たちとは違い、着飾ることに、美を磨くことそのものに誰よりも力を注いできた袁紹の美しさは、諜報員として育成された大喬・小喬姉妹のそれをも上回る純粋なものだ。
他の者が武に、智に、経験に費やしてきた時間をそっくりそのまま自分自身の美に注いできた袁紹は、もともとの美貌という素質だけは他の英雄に一切劣らないだけに、その差の分だけ優位に立てる。
男の目を楽しませるために磨いてきたわけではなく、そういった方面では確かに瑕疵がないでもなかったが、それでも自分で自分を愛する為に誰よりも美しくある為に財も手間も時間も惜しまなかった袁紹は、確かに女として美しかったのだ。

だからこそ、それを強引に力ずくで奪われたことを示す赤茶色の純潔の証の混ざった白濁した液体がまとわりついたその肢体は、汚されてもなお美しいのと同時に、だからこそある種あまりに醜悪なものとしての一面も持っていた。
女同士の戯れこそあれ、男をその身を受け入れたことはついぞなかった袁紹を、一刀は力ずくに奪い去ったのだ。
だが、一刀はそれでもそのことを後悔して、立ち止まろうとはしなかった。


「よくもまあ、好き勝手にやってくれましたわね」
「……」


袁紹にしては珍しいほど、この立場に落とされた女性としては正しい言葉。
力ずくで犯したとはいえ、正直この後の展開を考えていたわけでもなかった一刀はその言葉に反論できなかった。
それでも、謝罪の言葉は、その気持ちは生まれない。


袁紹を犯したのは物の弾み、いわば洛陽軍と敵対する覚悟を決めたことを後で撤回しない為のほとんど景気付け程度の意味だったのだから、罵倒はされても仕方がない。
例え戦う準備を整えていたとしても、術の効果さえあやふやとなった今に、大軍を擁する洛陽軍と戦おうと決めるには随分な覚悟が必要であった。
戦っている途中に術がきれるかもしれない、反乱を起こされるかもしれない。
そういった危惧が頭をもたげてくる中で、それでも天下を己の手に治める為には戦うべきだ、という決心を固め、それを撤回しないで維持し続けるのには並大抵のことではない。

だからこそ、一刀は袁紹を犯した。
ひょっとすればこの場で取り繕えば何もしなくても先ほど立てた計画のまま物事が都合よく転がるかもしれない、だから自分は何もしなくてもいい、と囁く弱い己自身と決別するために、そんな都合のいい妄想を出来ないように自分自身で止めを刺した。
致命的な取り繕いのない亀裂を生むことで、己自身にもはや後戻りは出来ないのだ、と言い聞かせたのだ。


術の力が通じなかった。
ならば、北郷一刀はもっと、もっと強くあるべきだ……強くならなければならない。
躊躇いなど不要。
戸惑いなど無意味。
後悔など無価値。
強く、ただ強く、妖術にも劣らぬ、鋼の心を!


ただ単に袁紹はそのための道具にしか過ぎない。
そんな程度のことで純潔を散らされた彼女のことなど微塵も考えずに、ただ己の道を邁進する為に一刀はこうして動き始めたのだった。









「まあ、これもわたくしが美しすぎるからということを考えれば、仕方がないことかもしれませんが」
「…………は?」
「はぁ? とはなんですの! このわたくしのあまりの美しさにその劣情を隠しきれずに虜にしたのでしょう? まあ、そう考えればさほど悪い気はしませんわね」


が、袁紹はここでも一刀の予想の上―――あるいは下―――をいった。

一刀の予想としてはここで袁紹は怒り心頭、先の捕獲と合わせてもはやこちらに対する殺意を隠そうともせずに直情的にこちらに対して危害を加えてくるはずだった。
それを迎え撃ち、返り討ちにする。
こうして袁紹本人は捕獲ないし殺害することに成功したが、その結果として洛陽と全面戦争が起こる。
妖術の結果があやふやなので浮き足立っている河東軍は、ひょっとすると孫策以下すべての将兵が反乱を起こすかも起こさないかもしれない。
そして、そんな最悪の状態でも、もはや妖術書は使えない。
もはや絶体絶命のピンチである。
だが、英雄にして天才の一刀はすぐさま解決策を考え付き、それによって再び河東全軍を掌握、その兵力で持ってあっさりと洛陽軍をも返す刀で壊滅させて、やがては天下を取る。

ひょっとしたら反乱なんかは考えすぎで起こらなかったり、今後も問題なく太平要術の書は使えたり、といったことで細部は違えど、多分こういったことが起こると信じて一刀は行動を移したはずだったのだ。
少なくとも、袁紹との対決及び決着までは確実なはず。
すぐさま洛陽と戦争になり、その戦場に己が立つかもしれない、というところまではほぼ確実に一刀は覚悟してその行為を始めた。

が、その大前提である袁紹怒り心頭。
まずこの時点で、またも彼の計画は躓く事となったのである。
というのも、何故か袁紹、怒っていないのである。


「ああ、なんて罪作りなわたくし……いいですわ、このわたくしの寛大な心で許して差し上げます」
「はぁ!? おい、ちょっと待て」
「まあ、所詮凡人ではわたくしの魅力に抗うことなど出来なくても当然かもしれませんわね、おーほっほっほっほっほ!」


…………術が効いていない以上、これが彼女の素であるはずである。
そもそもゴボウや孫の手に処女をくれてやってもかまわないレベルで自分の貞操(ついでにお供二人のも)というものにイマイチ価値を見出していない彼女にとって、一刀のやった行為は見方を変えれば自分のボン・キュ・ボン! のゴイスーでグンバツなバディに対する賞賛だ。
相国というあまりに高すぎる地位と名門袁家の気位、そして何より袁紹自身の態度によってそんなとち狂ったマネに出た者が今までいなかっただけで、別に男女関係に対する負の感情は持ち合わせていない。


自分があまりに素晴らしすぎるから、この目の前の男はその衝動に抗うことが出来ずに関羽の協力を借りて自分に縄を打って、このような暴挙に及んだ。
自分に対するこんな無礼な行為は確かに許せないものではあるが、同時にこの袁紹の美貌を目の前にしてしまっては庶人でしかないこんな男など、我慢できなくても仕方がない、いやむしろ当然であろう。
罪は罪であり、この高貴なる私に対してこんな扱いをしでかすなどと、男のやったことは確かに許されないことではある。


(ですが、それをいうならば……このわたくしの美しさは、もはや存在そのものが、罪! ああ、美しすぎるということも困りものですわね)


思考の経路自体が常人とまるっきり異なっている袁紹は、心底こう考えている。
だからこそ自分で自分の台詞に酔って、一刀の事を完全に無視していつも通りの高笑いを上げる。
根性入れて暴挙と理解していながらもそれに及んだ一刀の覚悟をまるっと無視するその様は、しかし愚者にして定石はずれでしかも悪運だけはむちゃくちゃいい袁紹には相応しい態度であった。


ただひたすらに待ち続けることによって詠という少女を失った一刀であったが、それを悔いて今度は己自身が労を厭わず動いたことで袁紹という少女を手中に収めることに成功したのである。
その行動の目的としては、袁紹を得ることを諦めてやけくそ気味に全面戦争へと突っ込むことだったとしても、結果としては戦争となるほど袁紹との関係を悪化させるどころか、むしろ大いに改善していた。

一刀の内心的な必死の覚悟が丸々無駄となり、結果としては袁紹のめちゃくちゃ具合によってその真剣な決意が完全に踏みにじられる形となったとしても、最終的には一刀は大きなものを手に入れたのだ。
これも一つの決断の成果、一刀本人は不本意ではあろうが、彼自身がかつてのように「待ち」ではなく「攻め」を選んだことで得たことであることは間違いない事実である。
きっと、草葉の陰でとある少女も涙を流して喜んでいることであろう……あるいは、そのあまりのいい加減さに怒りを通り越して笑っているだけかもしれないが。


かくして、河東と洛陽の同盟が成立した。
袁紹本人以外には完全無欠に意味不明な経緯によって。



    44話へ

Comment

No title

何がなんだかわからなかったよ。

No title

決定的に最善の手を打ったのかなw
術の効果を疑いだした。どうなることか。

No title

これは棚からぼた餅?
麗羽様なら確かにこれもありかw
とりあえず同盟は組めたが…

No title

え?

ええ?

ええー!?
非公開コメント

プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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