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狼狽皇子様4

オレンジ登場な話
バトレーはクロヴィスの騎士ではあるが、コーネリアの騎士ギルフォードやつい最近就任したユーフェミアの騎士、枢木スザクのように近接戦闘やKMFの操縦に長けていると言うわけではない。
おそらく戦場で相対すれば、さほど運動神経が良くないルルーシュにすら一蹴されるだろう。



だが、それはすなわち無能、と言うことを意味するのではない。

むしろ間逆、そういった護衛としての戦闘能力を持たないにもかかわらず騎士になりえるほど極めて有能である。
事務処理能力や政務等、戦いにかかわらない分野については本当に優秀なのだ……将軍という肩書きをもって、エリア11のほぼすべての戦力を預かっていたわりには指揮能力等は凡庸そのものでしかないが。
とにかく、シュナイゼルからの引き抜きの話すらあったほど有能である。
クロヴィスが芸術以外の分野では全くのごく潰しであるにもかかわらず、第三皇子という高位の位にとどまっていられたのはほとんど彼のおかげである。


その彼が第三皇子と位的にはシュナイゼルに次ぐ地位に立っているものの政務に全く興味を持たない主、クロヴィスを守るためにとった手段、それはブリタニアの法で厳格に禁じられているはずの兵器 、生体兵器の開発であった。




今現在、ブリタニアの軍部において主力を占めているのは、KMFこと人型ロボットの関係者である。
ここを抑えておけば、皇位継承においても随分有利になるのだ。


だが、KMF開発の優秀な技術者は、閃光のマリアンヌの活躍を見ていち早くその有用性に気付いたシュナイゼルの青田買いによってほぼ独占されている。
ブリタニアの気質上、ナンバーズ出身の技術者は確かにあまりいないが、そういったものは当然ながらEUや中華連邦に取られてしまっている。

また、KMF操縦に長けるものは閃光と呼ばれてその技術のみで平民でありながら后妃まで上り詰めていったマリアンヌにあこがれていたためか多くがヴィ家の配下となっており、その結果として八年前にその大半が没落しているか、あるいは自身もKMF操者として名高い第二皇女コーネリアの配下となっている。


日本との戦いにおいてその有用性を証明したKMFは、これからの軍事を担う重要なものであり、クロヴィスが皇族としての地位を保つためにも有用になりえるものであったが、この二人の優秀な皇族と対するに当たり、出遅れたクロヴィス陣営がこの分野でのアドバンテージを奪えるはずもない。


そもそも、あの二人は本人自体が元々優秀なのだ……自らの主であるクロヴィスと違って。
その彼らに心酔しているであろう技術者達を引き剥がし、今からクロヴィスの配下とするのは無理がある。
主をけなすわけではないがバトレーがそこそこ優秀な頭脳で出したその結論に実際間違いはなかった。引き抜きは、ほとんど成功しなかった。




にもかかわらず主クロヴィスは自らエリア11の総督を願い出て、野心をあらわにしてしまった…………本人はかの地で散って言ったルルーシュとナナリーの敵討ちとばかりに全くもって善意でやったことに過ぎないが、それは単なるお飾り皇族でいるつもりはないとシュナイゼルらに宣言してしまったに等しい。

すなわち、たとえルルーシュに殺されなかったとしてもこのままいけばいずれシュナイゼルかコーネリアのどちらかが帝位を継いだときに排除されかねない状況だったのだ。
げに恐ろしき、「弱肉強食」を家訓にするブリタニア皇族よ。




それでも何とかクロヴィスのため、と願ったバトレーは、逆にこの二人に選ばれなかった分野、機械工学ではなく生物学の分野の技術者を集めに集めて研究を始めた。
同分野であれば勝ち目はない、かといってオデュッセウスほどの血統の正しさも持ちえていない。
ならば、違う分野で圧倒的なアドバンテージを奪い取るのだ。


KMFだって、アッシュフォード家がフレームと言う福祉用ロボットの開発に乗り出したとき、そしてそれを軍事に組み入れようとしたときなぞ誰もが笑ったではないか。
人型のロボットを軍事に用いようなぞと言うのはばかげている、と。

それが変わったのは、閃光のマリアンヌによるあまりに鮮やかな活躍と、超高性能燃料となりうるサクラダイトによる充電池であるエネルギーパック、通称エナジーフィラーの開発によるものであり、今ではKMF無しの軍事など考えられない。
EUや中華連邦、そしてなにより日本との戦いで世界の三分の一を支配するとはいえたった一国であるブリタニアが優位に立ち回っているのは、まさにKMFのおかげである。


ならば、こちらがそれに代わる技術を開発しさえすれば……


研究対象は、生体と機械の融合、そして偶然手に入れた不老不死の少女、CCの研究による新たな技術と派遣先の日本にあった極秘遺跡の調査であった。



それらの事柄は今代の皇帝シャルル・ジ・ブリタニアが定めた法に違反するものばかりであり、皇帝にばれれば第三皇子とはいえ廃嫡間違い無しの重罪であった。
しかし、それしか生き残る手段がないと考えたバトレーによってそれは具申され、クロヴィスもそれを受け入れた。

なんといっても他の皇位継承者が誰も持っていないと思われる研究素材CCの存在は、それほどまでに大きかったのだ。



今思えば皇帝であったシャルルがこのCの分野での研究を独占するために法で禁じていたのであろうが、そんなこととは露知らず研究を行っていたバトレーは、主が皇帝になった際にもその身を守るために一層その分野に力を注いでいった。

皇帝直属としての一気に増えた権力に極秘資料、そして何より資金と人材をふんだんに使って推し進められた計画は、そのCCの力を手に入れる、といったものとは別の、しかしそれから派生したものとしてあるひとつの技術を完成させた。



すなわち、非人型機動兵器 ナイトギガフォートレスである。



皇帝として得たシュナイゼル以上のKMFの権限と、今まで研究を続けてきた生体科学の融合したことにより、汎用性を追及したKMFとは異なり操縦者自身の体を改造し、肉体の耐久性や反応伝達速度等を引き上げることで、今まで研究を重ねてきた「特派」に勝てるもの、と言うことで研究を重ねられていた機動兵器は、劇的に機体性能そのものの引き上げにも成功した。
それこそがKMFとは完全に別種の機動兵器、KGF試作第一号機「ジークフリート」と、そのテストパイロットにして改造人間一号、「ジェレミア・ゴットバルト」である。


フロートシステムで宙を縦横無尽に駆け抜け、あらゆる攻撃を弾き、周囲を覆うようにつけられたとげ、円錐型スラッシュハーケンによってすべてを破壊する機体と、神経伝達と言う手法によって今まで以上の操作性と正確さ、そして周囲360度すべての情報を瞬時に受け取り、それを元に人間の脳を使わせて相手の機動予想、すなわち擬似的な未来予知すら可能とするうえに、白兵戦でも優れた性能を発揮する操縦者。
KMFとは別種の完璧な戦闘機械である。


まだ制御は完璧ではなく、言語感覚とか思考回路とかが微妙におかしく、知性が不安定になっているっぽいので完成したとはいえないが、それも時間の問題であろう。

これさえあれば大丈夫、いかにコーネリアが超絶的な技量を持つKMFの使い手であろうと、いかにシュナイゼルの持つ技術者集団通称「特派」が保有するランスロットであろうと、世界で真っ先に飛行する機動兵器であり、強力な装甲をもつこのジークフリートさえ完成すれば十分対抗できる。
スペック上は、これ一体で軍団一つ分ぐらいに相当するはずである。
バトレーが精魂込めて指揮して作り上げた、まさに自信作だ。






その期待に満ちた試作一号機のパイロットをみたマリアンヌの一言。


「あら、ジェレミアじゃない」
「……は?」


ポットの中の溶液に浮かんでいる半裸の男を見たとたん、マリアンヌはぽろっとその名前を呼んだ。
尊敬するマリアンヌに自身の研究の成果と成長を自慢するために彼女を呼んだクロヴィスは目を見張り、マリアンヌにできれば見せたくはないのだが、とさんざん止めたにもかかわらず結局は主に押し切られてため息を吐いていたバトレーは恐る恐る彼女に尋ねた。


「そ、その……マリアンヌ様はこの者のことをご存知なのですか?」


辺境伯という高い地位に相応しい皇族への忠誠心と優れたKMF操縦の腕前を持ちながら、オレンジ事件とその後に続く失態により、ほとんどすべてのブリタニア人に見捨てられた形でたまたま道端に落ちていたというお買い得な一実験体にすぎないジェレミアを、なぜ皇族であるはずのマリアンヌが知っているのか。
そんな疑問にマリアンヌは何をそんなに驚いているの、とアーニャのものである整った幼い顔であっさりと答えた。


「確か昔、アニエス宮の護衛をしていたはずよ。ルルーシュも知っているんじゃない?」
「「っ!!」」


それだけ言って興味を失ったかのようにマリアンヌはさっさと次の目的地に歩いていったが、氷像と化したクロヴィスとバトレーはその場から動けなかった。
ちなみにマリアンヌは二人を無視してジークフリートのほうを見に行った。

基本的にマリアンヌは自分勝手で性格が悪いのだ。さすがCCの友人なだけはある。




完全にマリアンヌの気配が消えたあたりで、ようやく二人が解凍された。


「な、なんですと! アニエス宮の、ルルーシュ殿下の部下だったと」
「ど、ど、ど、どうするんだ、バトレー! 忘れていたならまだいいが、万が一ルルーシュがこいつのことを気に入っていたり、はたまたひょっとするとグルだったりしたらっ!」


ゼロに対する恨みを持っているっぽかったから被検体第一号にしたのだが、ルルーシュと顔見知りであったとなれば話は別だ。一応経歴は調べたのだが、まさかそんな昔にルルーシュと顔見知りであったというならば、今現在においても見捨てられたというのは単なるカモフラージュであり、現在もゼロと繋がっている可能性がはるかに飛躍する。

と、いうか、あのオレンジ事件の茶番はそういうことだったのか、といまさらながらに得心を得たバトレー。




二人の背筋をだらだらと冷や汗がリットル単位で流れ落ちる。

これは拙い、とんでもなく拙い。
ルルーシュにも対応するための兵器を開発しはするものの、基本的に主の意向によりルルーシュとは出来るだけ仲良くしよう、という方針を採っている(なんといってもコーネリアすら彼を殺せなかったことはあまりに大きい)にもかかわらず、彼直属の部下っぽいのを勝手に改造してしまったのだ。
今まで以上に嫌われるのは間違いない。

この間のマリアンヌ后妃殺害事件の真相はどうやらルルーシュのお気に召さなかったようで、いまだに彼は黒の騎士団を率いて今日も元気にテロっている。
コーネリアすらルルーシュを捕まえることが出来ない以上、なんとかして怒りを納めてもらわねば、と思って必死に悩んでいたにもかかわらず、この始末。

昔いたずら心を起こしてルルーシュとナナリーのショートケーキに乗っていた苺を奪ったときは、一週間ほど口を利いてくれなかったことを思い出して真っ青になるクロヴィス。
いくらなんでも十六にもなってあの年頃のように拗ねるのは有り得ないのだが、やはり兄であったクロヴィスからすればルルーシュといえば一瞬だけ会った自分を殺したときの成長した姿ではなく、小さいころ共に遊んだときの姿が重い浮かぶ。

いや、どっちの姿にしても腹心の部下を改造したなんてことがばれたら世にも恐ろしい仕返しをされるイメージは容易に浮かぶのだが。
慌てていつも通りの対処方法――すなわち、部下に丸投げするクロヴィス。


「な、なんとかしろ、バトレー! 一刻も早く元に戻せっ!!」
「む、無理です。いくらなんでも今機械化部分を取り除けば死んでしまいます」
「じゃあ、どうしろっていうんだ、私はもうルルーシュに殺されたくないっ!! 早く戻せ!!」
「だからそんなことをしたら死んでしまって、余計に恨まれます!」


クロヴィスも涙目だが、主君のためを思ってせっかく完成近くまでこぎつけた研究成果がこんな理由で駄目になるなんて、とバトレーも泣きたい気分だった。

だが、自身が泣くわけにはいかない。
この身は騎士、一度間抜けにも主君を殺されるといった大失態を犯したにもかかわらず、再び騎士として仕えることを許された、クロヴィス・ラ・ブリタニアの騎士なのだ!




そうだ、対策としてはまず…………


送り返す……無理に決まっている。いろいろと機密の塊だぞ。
治す…………それが無理だから困っている。機械部分と融合してしまっている生体部品の摘出はあまりに難しい。
殺す…………余計に怒りを買うこと必死。
捨てる………駄目だ、記憶を操作したとしても、万が一ばれたときに一層イメージが悪くなる。


…………もう詰んでいる気がしないか?


「と、とにかく落ち着いてください、殿下。何とかします、何か別の方法でルルーシュ殿下にお許しいただけるような方法を考えますから、しばしお待ちください!」
「た、頼んだぞ、バトレー!!」
「イエス・ユア・ハイネス!」




そして、バトレーの三日三晩に及ぶ検討の末、勝手にルルーシュの腹心っぽいものを改造してしまったお詫びの結果として…………








ナナリーが皇族に復帰した。


「ナナリィーーー! おのれ、おのれ、あの男めーー!!!」
「(ふぅ、本当にシャルルは何をたくらんでいるんだ? 全く読めなくなったぞ)」


基本的にクロヴィスは皇族を尊いものだと思っているし、バトレーも純血派の台頭を抑えるために名誉ブリタニア人制度を活用したりはしたものの、日本人なんかに価値を見出していない。
当然、平民の身に落ちているルルーシュを気の毒には思っている。

そのため、なんかルルーシュは反抗期で怖いからせめてようやく見つけたナナリーだけでも早く皇族に戻して保護してあげよう、と言う百パーセント善意で行ったその措置だったが、いっそ見事なまでにルルーシュの怒りを買っていることに、皇帝とその側近は全く持って気付いていなかった。


ちなみにルルーシュ、この時点では当然ながらジェレミアのことはオレンジとしか覚えていないので、気にもかけていなかったりする。



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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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