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狼狽皇子様3

も一つ次の話
「あの純血派の……なんといったか、そう、ジェレミアだ。あのものがイレブンを逃したのは、きっとルルーシュの力のせいに違いない」
「殿下、それはいくらなんでも……」
「いや、間違いない。きっとルルーシュの力に操られていたのだ」
「……先日、ナイトオブスリーのヴァインベルク卿によって捕らえられた殿下暗殺の首謀者は、EUからの刺客でした。その前の帝都に対する自爆テロについても、中華連邦の手の者によるものだという調査があがっております」
「今度こそは本当だっ! 間違いない、あのゼロとか言う姿に扮したルルーシュが、ジェレミアを操っていたに決まっている」
「すべてをルルーシュのせいにしていては、調査員が足りませんぞ、殿下!」


バトレーを近くに寄せてしばらく。
クロヴィスは、電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも、太陽が西に沈むのも、空から雨が降ってくることもすべてルルーシュの仕業だ、と言い出しかねないほど怯えていた。

必死こいて指揮したルルーシュ殺害命令がことごとく失敗し、それどころかルルーシュが黒の騎士団とか言う私兵まで手に入れたからだ。

いかに最強国家ブリタニアの力をもってしても、自国民の住まう地域で起こるテロに対してすべてを爆撃して終わらせるわけにはいかない。
だから、事件が起こるたびに膨大な人員を配備して包囲網を形成させていたのだが、それがことごとく破られる。EUの動きが動きなのでシュナイゼルは動かせず、皇帝の権限で今動かせる最強のコマ、コーネリアを送り込んでいるにもかかわらず、いまだにゼロはぴんぴんしているのだ。

はっきりいって、コーネリアの指揮能力でもなおゼロを倒せないとなると、もうこれはどうしようもない。
どんな手を使ってもルルーシュであろうゼロを殺害することは不可能なのだろう、と昔昔に二人で打ったあのチェスの盤面の絶望的さを思い出したクロヴィスは、もうルルーシュと対峙する心が折れていた。


加えて、シュナイゼルの探るような視線、『ナイトオブワン』ビスマルクが覚えているであろう不審、さも今までどおりであるという態度で接さなければならない配下、義理の母であるはずの皇紀たちとの生活、髪のセット、巻き舌の使い方。
クロヴィスの処理能力を超えた案件がいくつもいくつもなだれ込んでくる。


「クロヴィス」に対してではなく「ブリタニア皇帝」に対しての、今までの第三皇子に加えられていたものとは桁違いのさまざまな悪意に、にわか皇帝であるクロヴィスはびびりまくっていた。
そんな彼に頼れるものなど、バトレーと……


「そうだっ! マリアンヌ様にルルーシュを説得していただくのはどうだろうか? マリアンヌ様を殺したのは私ではないのだからな!」


ひょっこり現れた、死んだはずのルルーシュの母親だけだった。
なんか生きて…………性格には、人格のみ死んではいなかったらしい。
元々マリアンヌのことが好きだったクロヴィスは、皇族らしい猜疑心から疑いながらも、やはり喜んでマリアンヌ――性格にはその人格を内に収めていると言うナイトオブシックス、アーニャ・アールストレイムを頼っていた。
その言葉を聴いてバトレーが渋い顔をする。


「……殿下、どうかあのアールストレイム卿を重用するのはおやめください。かの者の言葉が真実である保障などありませんし、よしんば本当だったとしても、マリアンヌ様が願っておられることはブリタニア貴族としての誇りを捨てることと同じです」


主であるシュナイゼルとは違い、バトレーはアーニャを、マリアンヌを信用していない。
皇帝と行おうとしていた嘘のない世界――――すごく分かりやすい言い方をするなら、要するに全人類が隠し事が出来なくなって心の内まで一つになれば平和になるだろう、という「人類補完計画」である――――しかり、シャルル・ジ・ブリタニアがある意味で死亡したと言うにもかかわらずすぐさまクロヴィスを変わりのキーパーソンにしようとしているその性格しかり、彼女自身が語った能力があまりにクロヴィスの現状に似通ってしまっていることしかり。
ナイトオブシックスが皇帝に取り入ろうとしているにしては現状を知りすぎているため、その点については気にすることをやめたが、その他の面で不審が多すぎる。



きけば、あの研究素材だったCCとも知りあいと聞く。信用できるはずがない。



「なあに、バトレー。わかっているさ。私はマリアンヌ様のことは尊敬しているが、ナンバーズごときなどと同一存在になるとかいう計画に賛同するつもりなどない」
「でしたら……」
「だが、とりあえずはルルーシュへの対策が必要だ。何か好物でもないか聞いてきてくれ!」
「はあ、わかりました、殿下」


にもかかわらず、お気楽な主君はこちらの苦慮を考えてくれていないことに内心ため息を吐きながらも、バトレーは主君の命をかなえるべく、ナイトオブシックスを呼びにいった。







その結果として、ある作戦が実行されることとなった。







珍しいこともあるものだ、と黒の騎士団の面々はあっけに取られたかのようにモニターを見たまま微動だにしないリーダーの姿を、何か妙なものでもみるかのような視線で見た。

そのリーダー、仮面の怪人ゼロの視線の先にあるのは、誰がみるともなしにつけっぱなしにされていたテレビのモニター。
写っているのは今朝から繰り返し放送されているブリタニアが支配エリア全土に向けて発信した特別番組「マリアンヌ后妃の死の真実」という番組だ。


主な内容は実に滑稽無等なモノで、何やらVVとかいう現ブリタニア皇帝の兄が「一人テロ」によってブリタニアの后妃を殺害した、と言うものだ。
ブリタニアが政府見解として発表するものにしては珍しく随所随所に謝罪の文面が盛り込まれていて、その点についてはある程度の驚きを巻き起こしたが、ほとんど純粋な日本人のみで構成されている黒の騎士団メンバーにとってそれは大して興味をそそるものではなかった。

と言うか、何であんな昔の話を今やるんだ、という感想の方が主流であった。




が、ゼロは食い入るような視線でそれを見つめている(仮面で表情まではよくわからないけど)。
一部では人間ではなくロボではないか、と言われるほど徹底しておのれの感情を殺して冷徹な指揮を取っているように見えるゼロが、明らかに動揺している。


ブリタニアは八年前に行方不明になっている二人の皇族を探しているだの、そのうちの一人の目と足が不自由な皇族を治療する方法が見つかったなどということがそれほどまでに重要なのだろうか、などと皆が番組を真剣に見始めてそんなことを思い始めたころに、ようやくゼロは再起動を果たした。


『ど、どういうことだっ! 何故今頃……』
「どうしましたか、ゼロ! 何か今の番組に問題でもありましたか?」


ゼロが突然叫び声をあげたことをきっかけに、さっきからゼロの一挙一動にそわそわしていた赤髪の少女、カレンがすぐさま声をかける。
回りのものも声こそ出さないものの一体全体どうしたんだ、と言う興味津々の視線は消えない。


だがこのゼロ、話など聞いちゃいない。
実は中身が別人に入れ替わっているんじゃなかろうか、などと思ってしまうほど狼狽し続けている。


『馬鹿な、どうしてあの男がいまさら!』
「ゼロ、しっかりしてください、ゼロっ!」
「落ち着けよ、馬鹿に見えるぞ」
「CC!」


誰もがそんなゼロに驚く中、たった一人だけがまともにゼロの混乱を無視して中の人に意識を取り戻させることが出来た。そんな魔女と魔王との絆に赤犬は臍をかんだが、まあ正直この話の主役は彼女ではないのでその辺の葛藤とか嫉妬とかはばっさりと省略する。

とにかく、緑髪の魔女がそういったとたん、ゼロは正気を取り戻した。
かと思えば、今度は常の冷静さらしからぬ態度でCCに食って掛かった。


『おい、CC! あのVVと言う奴は』
「……もう一度言うぞ、落ち着け。ここじゃ拙いんじゃないのか?」
『っ! 来い!』


そしてそれをたしなめられた挙句、あわただしくCCを引き連れて自室に篭ったゼロを、最後まで周囲の騎士団のものは最後まであっけに取られた表情で見つめていた。
そういった些細なことにも二人の絆があるように見えてカレンがいろいろ考えたが以下略。









自室に入るや否や仮面を投げ捨て、CCに詰め寄るルルーシュ。
彼の事情からすれば無理はないとは思うが、裏切りを疑われるのはあまり気分の良いものではないな、とCCは思った。


「くそっ、一体全体どういうことだ、これは」
「私にだってわからんさ」
「CC! VVと言うのはお前の仲間ではないのかっ!」


ルルーシュの言葉は名前からの単なるあてずっぽうだが、VVがおのれと同じ不老不死となり名前を捨てた件に確かにCCはかかわっているため、そう言おうと思えば不可能ではない。

さて、どう答えたものか、とCCは悩んだ。
CCの望みは、おのれを永遠にこの世に縛り付けている不死の体を失うことだ。
それを求めて、ルルーシュにギアスを与える代わりにその望みをかなえてもらおうとして契約を結んだ。


だが、その契約とはまた別に、ずっと前からシャルル・マリアンヌ・VVと自分でたくらんでいる計画もある。
それをルルーシュに知られれば反発されることは必死なのだから、サブの契約者であるルルーシュに対して自分とVVとのつながりを知られることはあまり好ましくない。



だが、それを言うならこのシャルルらの行動の方が意味不明だ。

シャルルもマリアンヌもルルーシュの生死についてはそれほど重要視してはいないが、それはたとえ死んだとしてもCの世界で再び対面できるからであって、愛情を持っていないわけではない。
あの二人は二人なりにルルーシュに対して愛を注いでいたはずだ……傍から見れば明らかに歪みきった愛情であるとは魔女である自分ですら思うが。


そのため、計画に支障がない限りは好きにさせるはずだった。
少なくとも、以前マリアンヌと接触したときはそう言っていた。
直接は言ってはいないが、おそらくシャルルだってルルーシュ=ゼロと言うことも気付いていながらの放置のはずだ。

そうである以上、四者の上で結ばれている計画の上ではここでわざわざVVの存在を明らかにするメリットがない。
世界中に散らばるCの遺跡をすべてブリタニアの勢力圏に入れ、確保されるまであいつと私のことは出来るだけ世間から隠し通すことこそが上策だ、と言う話だったのではなかったのだろうか。
いや、クロヴィスなんていう無能者につかまっていた自分が言えることではないのかもしれないが。



今回の放送は明らかにルルーシュを皇族に復帰させようとするものだった。
果たしてそれが好意によるものかそれとも悪意によるものかは不明だが、どう考えてもあれはルルーシュの生存を知っているものによる揺さぶりだった。



自分の不老不死の源であるCのコードを奪ってもらうのは、強い意志が必要不可欠だ。
かつて、奴隷の少女が必死で愛されたい、とまるで飢え死にしかけの人間が必死に食料を求めるように願い続けたように。
目的を持たないものにギアスを与えても意味がない。


そうでなければ中国に置き去りにしてしまったあの少年のように力に飲み込まれてしまう。


今ルルーシュに対してマリアンヌの事件の真相とナナリーの身の安全が保障されてしまうなら、この誰よりも優しい男はひょっとすると歩くのをやめてしまうかもしれない。
むしろ、今までやってきたことに対する自責の念から自ら命を絶ってしまうかもしれない




それは拙い。
自分にとっては拙すぎる。




自らの同盟者であり願いをかなえてくれるはずの皇帝の突然の心変わりの理由がわからない以上、CCにとってもっとも確実な手段はルルーシュがギアスを使いこなして自分からコードを奪い取ることだ。
最悪シャルルやマリアンヌが自分を裏切った可能性すらあるのだから。


そうである以上、CCはここでルルーシュの歩みを止めるような答えを返してやることは出来なかった。
ちくり、と胸が痛んだが、それをCCはあっさり押し殺す。そんなものなどこの数百年よくあるものだったのだから。


「知り合いということは確かだが、仲間ではないな」
「何故言わなかった!」
「聞かれなかったからな」
「CC!」
「そう怒るな。お前の母をVVが殺したなんて私だって知らなかったさ」


ゆっくりと、嘘は吐かず、しかし真実も言わずにルルーシュの思考を誘導していく。
確かにルルーシュは超絶的な知力を持っているが、その本質は実に感情的だ。

求めるものがわかっているのであれば、その考えの方向性を揺さぶるのは齢数百歳の魔女にとっては決して難しくはない。


「良かったじゃないか、本当の仇がわかったんだから」
「あの男の言葉を信じろと言うのか!」
「VVがあの皇帝の兄と言うのは本当だぞ? 今までは庇っていたけど、仲たがいでもしたんじゃないのか」


本当にシャルルはどうしてしまったのだろう。
直接会ったのはもう随分前になるが、どういうわけか距離と関係なく自分と会話できるマリアンヌを通して話は聞いていた。

あの傲慢で、それでも身内に対する愛情は忘れなかった、ある意味ルルーシュに非常に良く似た男が突然どうしたというのか。

まさか、突然父性愛にでも目覚めたのか、と言うことを思いついてくすっ、とCCは笑った。
有り得ないし、もし有り得たとしてもおかしすぎる。


「っ! …………まあいい。あの話が丸々本当だったとしても、あの男に聞かなければならないことが一つ減り、殺さなければならないものが一人増えただけだ。計画に変更はない」


その笑いを自分への嘲りだとでも思ったのか、ルルーシュが顔を真っ赤にして早口で言い募る。


ほら、すごく面白いことに万が一シャルルがルルーシュに対する真っ当な愛情を抱いたのだとしても、その思いは届いていない。
ルルーシュは今でもこんなにお前のことを殺したいと思っているぞ?
どうせ憎まれるなら方針転換なんてするべきじゃなかったんだよ、シャルル。
それも私に相談もしないで。


「ふふ、そういいながらもさっきの動揺はひどかったぞ。お前は本当に突発的な変化に弱いな」
「黙れ。貴様がすべてを語っていればこんなことにはならなかったんだ。いや。今からでもいい、知っていることはすべて言え」
「断る。どうして私がそんなことをしなければならない」
「この、魔女めっ!」
「そうさ、わたしはCCだからな」


あの男の計画に自分は必要でも、自分の望みのための手段はあの男だけではないのだ。

どうせ自分は不老不死。


どんな窮地に陥っても問題なんてありはしない。ルルーシュだけ最後まで守り抜けば望みはかなうのだ。


(先に裏切ったのはお前たちだからな……シャルル、マリアンヌ)


いつも通りのやり取りをルルーシュと行いながらも、不死の魔女はそうやって「突発的な変化」に対する対応策を瞬時に練った。





そんなことを思われているとは皇帝側は露知らず。


「こ、これでいいのか、バトレー。ここまで譲歩したんだ、ルルーシュだってきっと私を許してくれるよなぁ」
「ええ、おそらく大丈夫でしょう。きっとルルーシュ殿下も殿下に感謝されることでしょう」


それどころか、ようやく一つ問題が片付いた、と一息入れていた。





次のお話へ

Comment

意思を統一するって、あれかな。

体じゃなく脳味噌を一つにする感じ?



「溶けちゃえ溶けちゃえ!脳味噌溶けちゃえ!」(byアネモネinエウレカセブン)
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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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