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外史につくろう穢土幕府・29

だから、詠ちゃんはもうええっちゅうねん!
またまた一刀が出てきません……もういっそ、主人公二人にしてしまおうか、と思うほど。
しかもなかなか上手いこと纏まらないし。

小説としてこういったぶれ方はよくないとはわかっているのですが、展開的に書かないわけにはいかない。
プロットたてが甘かったと言わざるを得ません。微妙に好評な部分もあるのが複雑ですが。
まあ、詠ちゃん無双も多分後一回。これ以上フラグはいらないから、話も進むはず。
戦争モノ書いているつもりはないけど、別に恋愛ものを書く気もなかったんですけどね~


追記
>松竹さん
前回の前書きで変にお気を使わせてしまったようで申し訳ありません。
御手数をお掛けするなんて申し訳ないので、御気持ちだけありがたく頂きます。
本当にありがとうございました。













人は、変化する。

情熱も、理性も、葛藤さえも失った一刀を見るまでもなく、それは歴然とした事実だ。
平々凡々の単なる一般人であった一刀は、世界全体から見るとそう劣った人物ではなかった。決して特別上等な人間なぞということは出来なかったであろうが、だからと言って劣等であったともいえまい。
この外史に来るまで、人を傷つけることも、人から奪うこともなく平和にただ懸命にその平凡な日々を生きてきただけの人間に過ぎない。
だが、そんな一刀さえも、今となっては外道と呼ばれることを否定することも出来ない人間へと成り下がった。

彼を捕らえようと試み、その結果として今までの生で侵した罪を死という形で償うこととなったあの三人組も、生まれたときからあんな小悪党だったわけではない。人を殺して犯して奪うことを糧にしていたものとて、最初からそのことを是とすることの出来る黒い鋼のごとき心を持ちえる者は、ごくごく僅かな例外だ。
当然その例外には当てはまらなかった彼らだって、無垢としか言えないような幼少時代があり、ひたすら光を求めた純粋なときがあった。自らが犯した罪に心を痛めて眠れぬ夜を過ごした日々も幾夜もあった。
それでもなお、現実に押しつぶされてああなってしまったのだ。


袁紹だって初めからあれほどまで自負ばかりが拡大した人間だったわけではないし、公孫賛だって世界最強を夢見たこともあった。
皆、現実を、年月を知るにつれてそういったことができないほどに傷ついてしまっただけなのだ。

勿論、それがすべてとは決していえまい。
劉備や曹操のように、現実を知ってもなお折れないものだって居るだろう。
だが、冷たい現実に日々すり減らされていくたびに、いつしか最初の情熱を失ってしまうことが一定の割合で世界に存在することもまた事実。それは決して、責めるべきことではないのだ。

それを、劣化と取るか、あるいは成長ととるか。
絶対の解を出せるものは、きっと人にあらず……神仙、あるいは妖魔の類であろう。
人であるならばそんな見方一つで変わってしまう程度の、ごくごく自然な現象なのだ。


だからこそ、この結末もある意味必然だったし、それを責めることなぞきっと誰にも許されない。
少なくとも堕ちた英雄である一刀はその選択を肯定するであろう。








「あ……詠ちゃん」
「月……」


詠と月は、幼馴染である。
ここ河東においてそこそこ裕福な家である賈家に生まれた彼女は、その家柄のよさを買われて当時からこの地方の長であった董家の一人娘である月の学友として選ばれた。
学友、と言うものは『友』とは名前がついているものの実際には将来の側近としての期待を込めて付けられる主従関係であり、いうなれば袁紹に対する文醜と顔良の関係に近い。
そこにはれっきとした上下があり、それがひっくり返ることはおろか隣に並ぶこともめったにない。あの二人だってどれほど気安げに袁紹に接していたとしても、そこにはれっきとした一線が引かれており、身分という高く分厚い壁がそびえていることでそこから進めない彼女たちと比べれば、下手すれば幼馴染である公孫賛と袁紹の距離の方が近いことだって場合によってはありえるのだ。
漢王朝の権威が衰えているとはいえ、未だ保たれている現状において彼女らのように太守や相克といった最上位の身分を有するということは、未だ別格の生活の中におかれると言うことを意味するのだ。

が、それはそっくりそのまま月と詠の関係には当てはまらない。
もともと河東自体がそう大した土地ではないのでこの地における身分関係とは大陸一のお嬢様である袁紹のそれとは比べ物にならないほど緩く、その結果として周囲のものも、月自身も詠のことはガッチガチの臣下としてではなく仲のいい友達、程度の認識で扱い、それによって彼女はすくすくと育ってきた。
詠自身も自分は彼女を補佐する為の軍師であり、何があっても彼女を守らなければならない、と思ってはいたが、それは臣下としての忠誠心と言うよりもむしろ彼女が親友であるからこそ生じた思いであった。


「今日のお仕事終わったの?」
「ええ、そうよ。月は……また、あいつのところにいってたの?」
「うん。今日はもう私はお風呂に入っておしまい……ふふ、なんだかこんなこと喋るのも、久しぶりね」
「っ!! そ、そうね……ボクも最近なんだかいろいろと、その、忙しかったから」
「うん、わかってる」


だから、詠と月は親友であったはずである。
それこそ寝所を共にし、その背を流しあうほどの。

にもかかわらず、彼女と会話をすることが久しぶりであったことに気付いて詠は驚き、そしてそのことを今まで全く気にしていなかったことに、さらに驚いた。
軍師であるがためにその技能のひとつとして彼女の口は動揺によって滞る、と言ったことはなかったが、それでのニコニコと裏表のなさそうな表情で微笑む月のように平静を保てていたわけではなかった。


(いつから? 今日で何日ぶりに、月と話すっていうの!?)


何日彼女と顔をあわせていなかったであろうか。
幼少より同じ産湯につかり、肌着を同じく揃えたほどの年月を共にしてきた親友と、これほどまで触れ合わないことなど今までなかったはずだし、そのことに対して不満を覚えないなんてこと考えることも出来ないほどありえないことのはずだ。

だが現実としてこの数週間、彼女が主君である月に顔をあわせられないことで不満を持ったことはなかった。
その代わりとして、ふらふらとそこらじゅうで遊び歩いているある男がさっぱり捕まらないことに対する苛立ちは山のように感じていたが。
まるで月に会えない辛さが、あの馬鹿に会えないもどかしさに取って代わられたがごとく今まで何も感じなかった。
そのことを、詠はつきと顔をあわせることで始めて自覚したのだ。



そして、彼女の心境の変化はそれだけにとどまらなかった。
その捕まらない男と彼女がつい先ほどまで顔を……肌をあわせていた。そのことに対して今までの親友が汚される不快感とはまた違う、何かざらりとした感情が胸を擦る。

が、そのすり替わりが何故起こったのか、明朗であるはずの頭脳が正確な答えを出す前に彼女の口は勝手に言葉を紡ぐ。


「……その、あいつの呼び出し、結構頻繁よね。もし、辛いようだったら、その……ボクからちょっと減らすように取り成してあげるわよ?」
「え? ううん、大丈夫だよ、詠ちゃん。御主人様、優しいから。心配してくれて、ありがとうね」
「っ! そ、そうよね。ごめんね、月。変な気を回しちゃって」


思わず自分の口から出てきた言葉に、さらに詠は戸惑った。
今親友たる月に告げたその言葉に含まれた音色が、余りに冷たかったからだ。
勿論、微笑んで前に佇む月に気付かれるほどのものではない。彼女に敵意や殺意を向ける、そんな以前と大幅に異なるようなものではない。
それでも、唯一無二のいかなるものを犠牲にしたとしても、と自身に誓った時と比べると、その温度は明らかに若干低下していた。


(どうして、ボクじゃなくて……月が呼ばれているの?)


流れるように出てきた言葉には、親友への気遣いも確かにあったが、それ以上に愛しい男と閨を共にする月に対する嫉妬さえも含んでいた。
そのことに、自分自身が発した言葉でありながらも詠は衝撃を受け、それを理解したあとでもなお脳裏から消え去らない、一刀の寝室に自分より友のほうが呼ばれているかもしれない、と思ったことによるわだかまりを自覚した。

ここ数ヶ月、一刀と己の才の違いを自覚させられたがゆえに強制的に負の感情と親しんでいた彼女は、やがてそのわだかまりが何と言う名前であったか、おのずと分かった。

嫉妬。
それが、この感情の名前だ。

それはありえないはずの感情―――親友たる月よりも、あの一刀に対して心を向けているからこそ起こる感情だ。
月のために身を捧げ、月のために働き、月のために戦っていたはずなのに、どうして自分がそんなことを一瞬であろうと考えたのか……いや、今なお考えているのか。
そう自分に言い聞かせても、なんともいえない胸のつかえは月と話しているだけで大きくなり、とどまることを知らない。
月と話すことそのものが、詠の心のある部分……一刀と共に過ごしているときにどことなく暖かくなっている部分に負担をかけ続ける事実となっている。

それは、数多の書物において賢人さえも抑えられなかったと言う嫉妬と言う感情そのものではないか。
ならば、それをつきに対して感じると言うことは、自分は……

守らなければならない対象がいつの間にかずれつつあることに、本人である詠がようやく気がついた。


「……それじゃあ、僕はもういくわね。あいつのせいで疲れてるの」
「ふふふ。御疲れ様でした、詠ちゃん。おやすみなさい」
「ええ……おやすみ、月」


震える内心をごまかしがてらに肩をぐるぐると回して溜息を一つはいてみる詠に、月は笑って答える。
その光景だけは、以前のままに。

その声もまた、以前のものと変わらぬものであるはずなのに、何処か他人行儀……詠と同じように。
それには彼女にしてみれば意識できないことであったが確かに一刀の操作が及んでいるがゆえに、詠と同じく何処か一線を引いた親しさ。妖術によって詠よりも一刀を優先させるようになっている。
理由は違っても、彼女もまた一刀のせいで以前と比べれば親友と一歩引いた態度を取るようになってしまっているのだ。
それを詠も察した。


そのことは、いっそう詠を打ち据えた。


『詠が最も優先しているのは一刀であり、一刀のために富国強兵を行っている』
彼女の内心がどうであれ、外形的には今の現状は沿うとしか思えない……否、もはや内面さえもそうなっているからこそ、月にそのような態度を取られたとしても詠は否定の言葉を持たないのだ。


一刀が来る前の詠の姿を知らない風や凛は昔の月と詠の立ち位置を知らないがゆえにそのことは初めからそういったものなのだ、と思っていた。
彼女を古くから知る者たちは、ある者は宮の奥深くに潜む一刀と彼女の距離を知れるほど近くにはおらず、ある者は一刀の術によって思考を剥ぎ取られ、またある者はやはり詠も女だったのか、の一言でそのことを片付けた。
だからこそ、彼女に対してそれを異常であると訴えるものは誰もおらず、結果として誰もが知っていたその事実は彼女自身が最も後に気づくことになったのである。


一体いつから、自分はこんなことになってしまったのか。普段は抜群の記憶力を誇る頭脳が、明確な時期を思い起こすことさえ出来ないことに、詠は愕然とした。
久方ぶりの親友との会話さえ心は弾まず、己から打ち切るように会話を切ってしまうその様は、以前の自分であれば決して考えられなかったことだ、と思う。


友に対して、嫉妬を抱くなどと……しかもその対象が、あの馬鹿で助平で愚かで天界の知識以外何の美点も持たない一刀を巡って?



詠は、自分の心がわからなかった。
ありとあらゆることに対して即座に答えを返してきたはずの頭脳は、いまや一刀が絡むや否やその働きを停止させる。
冷静に考えれば賈家の娘たる彼女が優先すべき大将が誰なのかはわかりきっているはずなのに、一刀はあくまで月の身を、この河東の地を保つ為の手段でしかないはずなのに。
いつの間にか、手段と目的が逆転しており、優先順位の付け方を間違えた。


「ボクの……馬鹿……」


もう、月とはきっと以前と同じ関係には戻れない。
詠はそんな予感を感じていた。

それでも詠は、それが自然であると思った。そう思い込もうとした。


(これでよかったのよ……ボクの手は、もう汚れてしまっているもの)


白く柔らかな手のひらに視線を下げて、詠はそう自嘲する。
一刀の力を使って先の戦争において多くの命を散らし、公孫賛という人間を彼の元に送り込んだ彼女の手は、正義を名乗る者が断罪するには十分な程度には確かに染まっている。

だから、月にああいった態度を取られるのは当然であるし、自分も親しげに彼女に接するわけにはいかない。
汚れてしまった自分では、あの綺麗な月の傍に立つのは相応しくないのだ。
そう、思ったからだ。


そんなはずはないのに。
月を守る為にやったことで罪を重ねたとしても、他の者はさておき月であるならば詠を責めることなど、例え同じく月が恋に狂ったとしてもありえない。むしろ、そんなことを親友に行わせた己自身を責めるであろうことは明白だ。それは詠は知らぬが、太平要術の書により術をかけられたとしても同じであっただろう。
そんなこと、今まで十年を超える期間彼女と同じ時を刻んできた詠に判らないはずがない。
だが、そんなことは関係なかった。

震える瞳と染まる頬を見ればわかるように、それは結局いいわけだ。
彼女はやはりもう自らの意思で子供の時代を抜け出してしまっていた。
だからこそ、きっと自分はそのうちこんな適当な理由を正しいと考えて、『割り切れて』しまうことも理解していた。
一刀のほうを、月よりも優先するようになることが、当然だと思えるときが来ることがわかっていた。

手を汚しても、共にいたい男がいるのだから。


「一刀ぉ……」


混乱のさなか悲しく呟く対象さえも、以前と変わってしまっている。
脳裏のすべてを割いていた月への思いの比重を減らし、その空いた分のリソースをすべて一刀への思いへと突っ込んだ彼女が頼るべき対象もまた、変わっていたのだから。
頼るべき対象を自ら切り捨てた以上、彼女の名前は呼ぶことは裏切りに等しい……たった一人の親友さえも失った彼女はそんなことを思い込んでしまった。

たった一人で親友を守る為に大人にならざるを得なかった少女は、恋を知ることによって変わる、ただの少女に戻っていく己自身の心の動きが理解出来ずにただひたすらに戸惑い、恐怖した。







はたしてこれは、劣化か、成長か?
どちらと呼ぶのが正しいのであろうか……


 30へ

Comment

詠ちゃん攻略完了ですか
じゃあやっと地味な人の出番ですねw

>劣化か、成長か?
適応でしょう、いろんな意味で。

最近二喬や三姉妹、士元が出てきてませんがそのあたり描写してくれるとうれしいです。

詠ちゃんが成長してる…。
前より魅力的になったんだし、成長でいいんじゃないかな。
月と疎遠になったぶん、一刀と付き合わないとな。じゃないと自殺しそうで恐い。詠ちゃんで副官キャラの魅力を再確認しました。
そろそろ一刀のターンが近づいてくるようですね。
いつか他のキャラも来るかな。華琳の登場が楽しみです。
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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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