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外史につくろう穢土幕府・25

ついに一刀が完全に出てこなくなってしまった。
ばっさり切ったほうがよかったですかねえ……ヒロイン勢めちゃくちゃ数いるんで、一人一人に描写割り振ってたら結局一人あたりが薄く軽くなって中途半端になる気もしますし。
でも、三国志で一応戦争モノが舞台なのに、武将出さないわけにもいかないし。
悩みどころです……










「馬超様、左翼より公孫賛軍より伝令! このまま迂回して背後に付く、とのことです」
「ああ、こっちからも見えた。ようっし、うまくいってるな……あたしたちはこのまま早さで撹乱しつつ、少しずつ切り刻んでくぞ!」


公孫賛軍と西域連合は、遠征してきた官軍及び董卓含む周辺諸侯連合と比べると、半分以下の規模しか持たない。
元々それほど肥沃な土地というわけでもないから普段から兵をそう多く養えるわけがないし、またたびたび国境を侵してくる五胡との戦いによって数多くの衛視たちが毎年のように散っていっていることを考えれば、元々強大な上に黄巾党の乱すらなくずっと内政パートで力を蓄えていた袁紹の全兵力とは、比べるのがおこがましいほどだ。
公孫賛など、もし袁紹が相国の座についていないでこの周辺にいたとすれば、どれほど劉備のために尽力したとしても援軍さえ出してもらえずにぷちっとろくな描写もなく踏み潰された挙句、一行ぐらいでその死を流される未来さえありえる。ああ、あんなに反董卓連合のときはいい人オーラ出しまくって手助けしてたのに、真名さえ設定されていなかったなんて旧版ひどすぎる、といわれたって仕方がないほどの戦力差だ。


「麗羽の奴がいなくなっていたのがこうなると幸いだったな。それを感謝することなんてないけどな……ようし、全軍回りきったな? 西域連合と挟み撃ちにするぞ!」


が、彼女たちにとって幸運なことにすでにこの地に袁紹はいなく、わざわざ官軍が派遣されてはいるものの、それは袁紹の馬鹿みたいな財力を背景にしてこの地を守っていた彼女の私兵ではなく、苦しい台所事情を持つ漢王朝の懐具合にふさわしい程度の規模の遠征軍だった。
すなわち、袁紹勢力をある意味吸収して強化されたはずの漢王朝から送り出されてきた兵士の数は、元々袁紹が領土として公孫賛の隣にいたときに貼り付けていた兵の数よりも、大分少なかった。


一体何故身分的には繰り上がっているはずの袁紹が出してきた兵の数が、以前彼女がこの地で保有していた数よりも減っているのか?
結論からいうとすれば、袁紹がアホだからである。

彼女は、「華麗なわたくしの軍こそ皇帝陛下をお守りするのに相応しいのですわ」との言葉を残して、ほぼ全軍を率いて洛陽に駐屯、そこからその軍事力を背景に自領および王朝の直轄領の実質支配に乗り出したのだ。
まあ、皇帝をお飾りとして宮廷を実質支配するのにはそれだけの数の目に見える力が必要だったのかもしれないが、それにしても彼女は「何もそこまで連れてかんでも」といいたくなるほどの兵を自領から連れて行ってしまった。
結果として、袁紹が元々保有していた領土の兵の数はもうほんと必要最小限度ぎりぎりまでしか配置されていなかった。
連合どころか、公孫賛単独でも片手間で対抗できる程度の残してきた兵だけでは、きっちりと自領をそつなく普通に治めてきた公孫賛軍の押さえとしては余りに役立たずだった。


勿論、いくらお気楽極楽な彼女とは言え、たったそれだけの数で公孫賛や西域連合と渡り合えると思うほどではない。というか、最初はある程度までそのつもりで、指揮する将軍だけ宮廷から送るつもりであったのだが、彼女のブレーンである顔良がいくらなんでも無理すぎると止めた。
それほどずば抜けて優秀というわけではないが、それでも優等生的なある程度の能力を持つ顔良は、当然ながら応援を派遣することで数で圧倒して勝利しよう、という選択肢を取ろうとする。

よって、彼女の主が高笑いと共に連れて行った膨大な数の私兵が再び戻ってくることになったのであるが……その数は、洛陽に向かったときよりも明らかに減っていた。


「もう、麗羽様ったら……だから以前言ったとおりある程度の人数は置いておかないとダメだっていったのに」
「まあまあ、連中だって王都見物したかっただろうから、いい気分転換になったんじゃないか?」
「文ちゃん、そういう問題じゃないよ~……はあ、一体いくら掛かっちゃうんだろう」


公孫賛の領地のすぐ隣から兵を動かすのと、それより少し離れた洛陽から兵を動かすのでは掛かる金額が違いすぎるがために、その兵数は採算を無視して維持されていたかつての袁紹とは程遠い、常識的な兵数でしかなかった。
要するに、域の旅費はあったものの、帰りの旅費を全員分出すことが出来なかったからその旅費が足りない分の連中が洛陽に残されて二分されており、現在袁紹が保有する戦力は数多の説話で愚行とされている「戦力の分散」を自ら行っているに等しい状態なのだ。
勿論、反乱を抑えるために公孫賛と西域連合を抑えることが出来ると彼女が考えるだけの兵数は用意されていたが……この世界においてはちょっと有能、程度が指し図った基準にしたがった用兵では才能にあふれた連中には絶対に勝てないのである。





兵の数は確かに公孫賛らのほうが劣る。
だが、一刀や袁紹のように顔良が馬鹿ではない以上、その数の差は常識的な範囲で収まってしまっていた。
彼らの馬鹿みたいな常識はずれの戦略ともいえない物量作戦こそが、英雄を凡人が倒すたった一つの手だったというのに。
そして、将の質の差は歴然としていた。


「おおおおおおおおおお!! そこを退けぇ」
「死にたくなければ、とっとと逃げるのだ!」


青龍偃月刀が振るわれるたびに雑兵がはじけ飛び、丈八蛇矛が返されるごとに戦場に血の花が咲く。
間違いなく才能に裏打ちされた上で磨き鍛えられた関羽と張飛の力と技は、雪蓮のそれと遜色ないものであり、袁紹配下の弱兵が止められるものではなかった。
彼女ら二人の周りだけがこの混雑した戦場において空白となり、それによって歪んだ隊列の隙を突いて公孫賛の軍はどんどんと前進して兵をすりつぶしていく。

たった二人とは到底思えない突破力で敵軍を切り崩していく公孫賛の客将を見て、友軍である馬超らさえも思わず目を剥いた。


「な、なんなの、あいつら」
「公孫賛殿、エライ配下持ってるな……おっしゃ、こっちも負けてられっか。いくぞ、蒲公英」
「ああん、ちょっとまって、お姉様」


公孫賛と、馬超を長とする西域連合。
思想の違いと温度差がある故に完璧な意思の疎通が成されているとはいえなかったが、それでも強大な敵に共に向かうことになった同士。
それなりに連絡を密にして、今までも幾度となく文を交わした後でこの決戦に挑んでいた。

だが、その馬超をして公孫賛がこれほどまでの武の持ち主を囲っていたとは思いもよらなかった。
そのものが出てきたときの旗印からすると、正式な配下というわけではなく客将ということなのだろうが、それにしても凄まじい。
よくもまあこれほどまでの豪傑が二人もそろっていて今まで無名であったものだ、とこの黄巾党の乱がない世界において流れの武将が名を挙げることがどれほど大変なことかをイマイチ理解していない馬超はそう感じて改めて同盟相手となった公孫賛軍への評価を上方修正する。
実際に、趙雲などは未だ無名なぐらいここのところしばらくは平和だったのだ……そしてそれはすなわち、今回の騒動を見て各地の無名の武官たちが名を挙げる機会を求めてやってくる、ということでもある。


だが、彼女たちが味方である以上、馬超が感じるのは恐れでも武人としての対戦を望む心構えでもなく、彼女らに負けぬ活躍をしなければならないということ。
彼女らと同じく才と天運に恵まれた馬超の武とて二人に劣るものでは決してないが故に、馬超は自分自身が自軍における彼女たちと同じ役割にならんと手に持つ十文字槍、銀閃をぶん、と一度大きく振るったあと、一気に浮き足立ってこちらに逃げてきていた官軍に向けて一気呵成に攻め込んだ。


関羽に張飛、そして馬超。
その圧倒的なまでの切れ味を誇る武具の化身らは、以前一刀が孫策に対して取った暴力的なまでの人海戦術を防がれた以上、雑兵たちに止められるものではなかった。
彼らの必死の抵抗さえ、彼女らからしてみれば何するものぞ、何の役にも立たない。
一刀の能力によって死への恐怖を消し去られるような操られてでもいない限り、その前に立ち向かうことさえ考えることの出来ない暴虐の嵐は、彼らの人生も希望も願いも残された家族への思いもすべて一切合財汲むことなく、無慈悲に平等に死の風を運び、飲み込み続けた。
彼らでは、どれだけ頑張ろうとも、どれだけ願おうとも、彼女たちは止められない。


英雄を止められるのは……やはり、英雄だけなのだ。
だから。


「邪魔……」
「な、お前は!」


がっき、と、到底常人には死人さえ出来ぬ速度で振るわれた戟がたった一振りで、今まで十分に実った稲穂を刈り取るがごとき気楽さで敵対者の命を奪っていた二つの武具をあっさりと食い止め、弾き返した。
恵まれた身体能力に裏打ちされた弛まぬ鍛錬によって振るわれた超重武器は、それ以上の武とそれ以上の重さの武器によって今までの立場をまるで裏返したかのようにいとも簡単に留められたのだ。

誰一人止められなかった関羽と張飛という二人の超人の攻撃が、止められた。
それが意味することは、決してたった一人の凡人が恐怖を押し殺して、しかし守らなければならない背後の者のために振るった一撃が功を奏したということではなく、何年も、何十年も鍛え続けた凡人の刃の一端がついに届いた、ということでもない。
彼女たち以上の超人が、この戦場に光臨したことだけが、『関羽と張飛の剣が止められた』、そんな常識はずれのことを事実へと変えたのだ。


「まさか……」
「あの方はもしや! はは、勝った、勝ったぞ、この戦い!」
「そんな、もう戻ってきていたなんて……」


彼女の姿が戦場に現れた瞬間から呟かれ続けた驚愕と尊敬と畏敬と畏怖の声が、彼女が誰なのかを無口な本人以上に雄弁に語っていた。

味方は誇り、恐れ。
敵方は絶望し、恐れ。

敵も味方も問わずにその名を語るときは、圧倒的なまでの暴力とそれに対する恐れがどうしても抜けない。
たった一瞥しただけで常人に容易に死のイメージを抱かせるそのいでたちから発せられた雰囲気は、他の英雄豪傑と比べても余りに桁違いだった。


振るわれたその武器の名は、数多の名品を押しのけて天下に名だたる巨大戟。
振るったその持ち主は、多くの英雄豪傑を歯牙にもかけず天下無双の名を誇る無垢なる暴将。


「そうかお前が……」
「呂布なのか!」
「お前ら……ウザい…」


この外史において誰よりも天に愛され、誰よりも恵まれた彼女―――方天画戟の呂布が、ついに出てきたのだ。








一応ひとかどの武将と呼ぶだけの能力はあるものの、能力値のすべてが『普通』とは評価されちゃう不憫な公孫賛は、普通の常識を持ったものとして最高責任者が武器を持って前線に立って戦うような無責任な真似をするほど吹っ切ることもなく、その結果として客将であるはずの関羽と張飛が超大暴れをして手柄と評判を稼いでいたのを遠目で見ることしか出来なかった。

彼女だって、がんばってはいるのだ。
名門に生まれ、袁紹という反面教師が常に近くにいたがために勉強だって武芸だって一生懸命取り組んでここまで来ていた。

が、何分努力なんて実らないのがこの世界だ。
多分、この十数世紀後、この世界においては多分女の子の万能の天才はこういうはずだ。
「成功には、99パーセントの努力と1パーセントの才能が必要……つまり、1パーセントの才能さえなければどれだけ努力しても無駄なのよね」と。
その言葉に象徴されるかのように、どれほど努力しても公孫賛―――白蓮は普通の域を出ない。

この戦いにおいても兵士もそれを養う為の資金もすべて彼女が出しているにもかかわらず、この戦場における主役は彼女ではなく、関羽と張飛、そしてそれを指揮する劉備へと移りつつあった。
で、「あれ、私いらない子? また真名も呼ばれずに一行で退場させられちゃうの?」とかハイライトの消えた暗い目をして思い始めていた公孫賛であったが、呂布が出てきたと見るや一気に生気を取り出して、精力的に命令を出し始めた。
そんなことをしている場合ではないと、強敵の出現によって自分の立場というものを思い出したのである。


「不味いな、呂布か……よし、総員集結! あいつを迂回して他の連中から削ってくぞ!」


事前に行っていた遅延工作によって未だ洛陽にいるはずの呂布がすでに到達していることに焦りを感じながらも、公孫賛は自分に出来る最適の判断を下した。
彼女がそれなりに強ければ、天下無双の名を持つ武将と一騎打ちして自身の名を世界にとどろかせることを考えたかもしれないが、先の関羽と張飛のアレっぷりを見たあとではそんな気持ちなどとっくにどっかにすっ飛んでいる。
武将として呂布には言うにも及ばず、関羽や張飛とさえ一合あわせるのが精一杯であるとある程度自分の実力を正確に把握していた彼女は、だからこそ呂布を相手に戦って自分と自分の指揮する軍隊が勝利できるなんて夢想するほど愚かではなかった。
曲がりなりにもひとかどの武将としては余りに臆病としかいえない選択肢であったが、それでもこの場においてそれは正しかった。


最強の戦力である呂布をあえて「無視」して、彼女の周囲を囲う兵士たちを撃破することを命ずる。
無論、そんなことをしても呂布側から攻めてくる手が止まるわけではない。
呂布自身は関羽と張飛にかろうじて抑えられているものの、彼女が率いてきた兵は未だに健在である。
呂布のあまりにあまりな武勲に敵は奮いあがり、自軍である公孫賛指揮下の兵はおびえて普段の実力を発揮することは出来そうにない。
関羽と張飛が敗れた瞬間に、その差はさらに広がるだろう。
だが、それでも敵は同じ兵士だ。あんな化け物相手に立ち回りをするよりよっぽど勝機がある。

未だ、呂布と激戦を繰り広げる二人を尻目に、公孫賛は馬を返す。
悔しさはある……どれほど努力を続けようと、『普通』レベルから抜け出せない自分と比べて先ほど戦っていた三人は明らかに武の神に愛されている。
武人として、同じ舞台に立てないことは余りに口惜しく、同時にそれが故に舞台にはなから上がらない自分のことを後で民たちがどう見るのか、ということを考えるとその屈辱の大きさに憤死してしまいかねないほどの感情が荒れ狂う。
それでも彼女は、直情的にそういった負の感情を振り払う為に無理やり自分を舞台にあがらせようとはしない。
彼女にとって、普通と、凡人と呼ばれ続けた彼女にとってそんな感情は今まで何度だってあったことなのだ。


そんな公孫賛が寄る辺とするものは、武なんかではない。
彼女が守らなければならないモノは、名誉ではない。

『自分にできる範囲で、自分に背負えるだけのものを見る』
これが、才豊かなものを尻目にじりじりとしか積み上げていくことしかできなかった彼女の処世術だ。


「さっきまでの関羽たちの活躍と呂布の乱入によって、完全に陣形は崩れてる。これは好機だ」


袁紹に対して立った時点で、白蓮の行動はもはや彼女一人のものではなくなってしまった。
後ろには何百何千何万もの民がいる。自分が敗北することは、すなわち彼らに袁紹の暴政が及ぶことに他ならない。そんな状態で嘆いても投げ捨てても何の意味も無い。
すでに賽は振られたのだ。

ならば、一対一の戦いという場面において彼女たちと同じところに立つことが出来ない自分は、戦術的な勝利でそれを挽回しなければならない。
それを、桃香と共に育ってきたときなどによって自分は凡人であるという現実を、今まで常に突きつけられてきていた白蓮は、そのことを誰よりも理解していた。

だから、理解していてもあふれ出てくる悔しさ、という感情は奥歯をきつく、きつくかみ締めるだけで押さえ込む。


「負けてたまるか……天才なんかに、負けてたまるもんか! 幽州は私の土地だ、私が守るんだ!!」


意識せずとも呪文のように呟いたその独り言が、いつしか大きな叫びとなっていたことに白蓮は気付いて、思わずしまった、という顔をする。
だが、ここは戦場、ましてや彼女は馬上において先の現場から踵を返して失踪中だ。
あたりにあふれる戦場特有の金属音と肉を割き骨を砕く音と悲鳴と歓声と怒号と騒乱の声と、それらすべてを流しさる風のベールが彼女の言葉なんてあっという間にさらっていった。
だから、誰の耳にも入らずにその言葉は空気に溶けた。


(呂布や麗羽……それに、関羽に桃香にだって、絶対に負けるもんか!)


だが、その誰にも聞かれなかったその思いと叫びが、今まで踏み潰されてきた雑兵すべての気持ちを背負ったがごとき気迫の篭ったものであったことだけは確かなことだった。


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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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