スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

狼狽皇子様2

次の話
「おお、バトレーよ、良くぞきてくれたっ!」
「…恐悦……至極に存じます」


つい先日死亡した神聖ブリタニア帝国第三皇子クロヴィスの騎士でもあった禿頭の将軍、バトレー・アスプリウスは正直言って困惑していた。
直接の主君であるクロヴィスを自らのミスによってテロリストに殺害されて、彼はどれほど後悔してもし足りないほど悔いていた。死してすぐなえるものであればすぐに自ら命を立つ所存ではあったが、今だ犯人が捕まっていない現状ではそんなことなどできるはずがない。

皇帝からの勅命としての召喚命令を受けたときもそれは同じ。自らが処刑されるのはまだしも、主の敵を取れないことに対する後悔は、誇り高きブリタニア貴族であり騎士である彼をして、このブリタニアにおいて自らが犯した失敗は大きすぎ、無駄だと理解しながらも地に頭を擦り付けてでもクロヴィスの敵をとるまではおのれの助命を嘆願しようとまで決心させていた。
彼は心底クロヴィスに忠誠を誓う、忠実な騎士だったのだから。


だが、そこまで決心しての処刑されるためのはずの皇居に到着してからの展開は彼の予想をはるかに凌駕していた。


「お前たち、下がってよい」
「し、しかし陛下。このものはクロヴィス殿下をお守りできないような無能…」
「下がれといっておる」
「はっ!」


自らを断罪のために召喚したはずの皇帝は上機嫌で自らを迎えたばかりか、処刑のしょの字も浮かばせずに自らを近くに寄せた挙句、己のみを残して側近達を周囲から遠ざけたのだ。


そしていまや、この場にはおのれと皇帝の二人っきり。
護衛の親衛隊すら周囲にいない。

確かに弱肉強食を唱えるだけあって強靭な肉体を持つ皇帝ではあるが、だからといって自分のような信ずるに値しないもののみをその御身に近づけるとは。
断じて違うが、自分は今やクロヴィス殿下殺害の手引きをしたもの、とすら思われているのに。

はっきり言って、この場におけるすべての状況がバトレーにとっては訳のわからない展開である。


なんと言っても皇帝にしてみれば自らは皇帝の実子をたかが無名のテロリストから守ることも出来なかった無能である。弱肉強食を常に唱えている普段の皇帝から考えれば、間違ってもこのような対応をするべき相手ではない。
即刻処刑を命じるどころか、皇帝が命令を下して殺させる価値すらないもののはずだ。それをわざわざの召喚、ということでよほどの怒りを覚えられたのか、と思ってみればこの始末。


それとも、それほどまで自らの主であるクロヴィスは嫌われている息子だったのだろうか、死んだことを父親が喜ぶほどに。


いや、そんなはずはないはずだ、とバトレーは自らその疑問を否定する。
確かに第二皇子や第三皇女のように統治能力や指揮能力に長けていたわけではなかったが、それを部下に任せる度量は持っていたし、芸術方面に関する才能は他の追随を許さないほどの才能もあった。

血筋も、才も、度量もある、クロヴィスはれっきとした第三皇子にふさわしい皇子だったと彼の騎士となって十年以上、恐れ多くもある意味自分がクロヴィスを育て上げたとすら思っているこの中年の将軍は、そこだけは主を殺された間抜けな騎士であろうと自信を持って言うことが出来ると思っていた。


では、クロヴィス殿下に問題があったわけでもないにもかかわらず、何故皇帝陛下ともあろうモノが自分なんぞにこれほどまでに親しげに接してくださるのか……これではまるで十年来の忠臣に対するような態度ではないか、とまで考えたところで皇帝がこれまたバトレーにとっては意味不明な一言を発せられた。


「我が騎士バトレーよ、私だ、クロヴィスだ!」
「…………は?」




皇帝陛下、ご乱心。
バトレーは思わずそう思った。それが普通である。








その後なんだかんだあって、ようやくバトレーがクロヴィスのことを認識したはいいが、そこからが問題だった。
坊ちゃん育ちのクロヴィスが、心細いたった一人の裸の王室で、ようやく唯一の味方を手に入れてまともに精神を立て直せるはずがない。

ここ数日皇帝に成り代わってしまったばっかりにそれがばれた際の暗殺の恐怖におびえて誰にも自分の素性を話せなかったストレスよ今ここに消え去れ! とばかりにクロヴィスはバトレーに向かって現状に対する不満を一気にまくし立てていた。


「絶対にこんなことになったのはルルーシュのせいだ! ああ、ルルーシュ、一体私に何の恨みがあると言うのだ。あれか、こっそりタルトの苺を奪っていたのがバレていたのか? それともうっかりナナリーを抱き落としてしまったことが悪かったのか? だが、あのことについてはもうさんざん謝ったじゃないかっ!」
「殿下、殿下、落ち着いてください……」
「あ、ああ。すまない。とにかく、ルルーシュによってこんなことになったのは間違いない」
「しかし、あのCCがやすやすと他人に力を与えるとは思えませんが……そもそもそのような非現実的な力がこの世に存在するのですか?」


普通に考えて、死人が生者に乗り移って乗っ取らさせる、なんていうことが出来る力が有り得るはずがない、とバトレーはこれまたごく真っ当な正論を言う。
彼らはCCや遺跡の調査を行ってはいたが、とても全容を解明できているとは言えず、せいぜいCCが不老不死である、程度のレベルでしか研究が進んでいなかった。


既存の物理法則とは全く持ってかけ離れた法則を持つ『力』を、独自に研究解明するほどの力はクロヴィス保有の研究所にはなかったということだ。

故にバトレーはこのような事態をルルーシュというたった一人の人間が引き起こした、というクロヴィスの説明に対しては否定的だった。
彼が配下のものにCCの研究をさせていたのは、あくまで彼女の持つ不老不死の力を主君にささげよう、とすることがメインだった。

まあ、真っ当な研究者であれば他人を操ったり人の心を読んだり記憶を書き換えたりするような超能力が存在するはずがない、と思うだろう。
ネコ庇ってトラックに轢かれたら何故かゲームの世界に入り込んでいた、ぐらい有り得ない。


「じゃあこの状況をどうやって説明すると言うのだ! 私は間違いなく、クロヴィス・ラ・ブリタニアなんだぞっ!!」
「いえ、そこはもう私も疑ってはおりませんよ、殿下」


とはいえ、見た目はもはや初老のロールケーキ頭に成り下がっているが、このかんしゃくの起こしようや身振り手振り、どうみても幼きころより見守ってきた自らの主君だ。
どれほど姿かたちが変わっていようと、そこを騎士たる自分が見間違うはずがない。
というかそもそも、こんな取り乱す皇帝など有り得ないし。

そう結論付けたバトレーは、いつも通りこの芸術家肌ですぐに冷静さを欠く主君に向かってなだめるように声をかけた。


「とりあえず、そのルルーシュ殿……いえ、ルルーシュのことはおいておきましょう。今後の方針を固めた後に原因についてはゆっくりと」


原因を探すのは後回しだ。
今はとにかく皇帝の偽者として誰かに暗殺されないように対策を練ることのほうが大切である、と言い聞かせるようにクロヴィスに伝えていくと、先の見えない未来に対してようやく誰かが光明をかざしてくれた、と今までと同じような雰囲気で主君は喜んだ。


ああ、単純で、適当で、紛れもなく自分が十年以上育ててきたいとおしい我が主君。
相手が誰であろうと、二度と殺させるものか、


「あ、ああ……そうだな。そうしよう……とりあえずお前は後で正式に皇帝直属の秘書にでも任命しておく」
「おお、ありがとうございます。一度はお守りできなかった私をまだ使っていただけるとは……」
「私を殺させたのは確かに許せないことであるが、あのルルーシュが相手ではな」


自らの忠節が変わらぬように、大失態を犯したにもかかわらずクロヴィスがおのれをまだ一番の臣下として認めてくれていることが、バトレーにはうれしかった。
たとえそれが今は自分しか頼ることが出来ないがゆえだったとしても、今度こそはこの主君を守り抜いてみせる、と誓いを新たにするほどに。


そんな下々の気持ちなど気付かずに、気軽にクロヴィスは自身の死について「無理もない」と答えを返す。
ようやくこの宮廷にて自分の素性を知る味方が出来たことがよほどうれしいのであろう。


それゆえ、今までどおり幾度となく対処法の検討を配下に任せる。
皇族とはいい意味でのお飾りであれ、と言うことをある種の信念としているクロヴィスにとって、それは自分ではどうにも出来ない問題に対する最上の対処法なのだ。


「二度もルルーシュに殺されるなんて真っ平ゴメンだし、だからといって兄上に殺されるのもいやだ。今度こそは本当に頼むぞ」
「イエス・ユア・ハイネス」
「…………今はもうお前だけが頼りだ」


そしてその信頼に、最近やたらとクロヴィスが耳にするようになった皇帝に対する呼称、『マジェスティ』ではなく、皇子皇女に対する呼称である『ハイネス』という返事をするバトレー。
久々に聞くことが出来たおのれの騎士からの皇帝に対するものでない返事に、思わずクロヴィスは笑み崩れた。


「な~んか、シャルルの様子が変なのよね。また、VVが何かしたのかしら」



……以前の耽美な姿ならばさておき今の姿でやってもキモイことこの上なかったし、その笑みのまま会議に出たりしたので、いきなりばれてはいけないような人にばれていたが。




次のお話へ

Comment

非公開コメント

プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
カウンター
検索フォーム
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。