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外史につくろう穢土幕府・23

トップを張る主人公と、それを支える副官的ポジションのヒロインという立ち位置が好きです。
しかし、いろいろと当初の予定からずれてきたなあ……最初に作っておいたプロットはいつしかお空のかなたにいってしまいました。
まあ、ノープランでいくのは流石に怖いんで新しいの作ってはありますけど、それもいつまで持つのやら。



周辺の不穏な雰囲気、というものはとどめようとしても留められるわけではない。
この時代、物流に規模は小さく、情報は口コミが主なもの。
遠方の君主の考えや顔があっさりとメディアを通じて知ることが出来るわけではないこの時代は、しかしだからこそ市中の人間たちは高まりつつある戦の雰囲気に一際敏感であった。
なんといっても、力を持たない一般市民からしてみれば、戦が始まるということはすなわち自分たちの生命、身体及び財産に多大な被害が起こる可能性がきわめて高くなるということと同義だ。

何が理由でこの乱が起こりそうなのか、そういったことにまで理解が及ぶような人間はそれほど多くはなかったが、それでも何かが起こる、ということぐらいは大抵の者は察知でき、またそれを周辺のものにも伝えた。
一刀がいた現代に比べればまだ人と人とのつながりが深く、人と国との繋がりの間で信頼が固まりきっていなかった時代、呂布・張遼による総勢数万にも及ぶ戦争の準備という悪事はまさに千里を走って人々の耳目を集めていた。



そしてそれは、いかに名政治家たる賈駆が程立や郭嘉を使って秘密にしていようと尽力しようと、多少の時間の差はあれ間違いなく宮中の雰囲気にも伝染していった。
ましてやここは、馬超と公孫賛と袁紹の三勢力のちょうど中央に位置する弱小勢力。
たとえ呪いによって能力が低下していたとしても、無視することが出来ないほどのそれらの動きには注意をはらわなければならない立場だ。

それはすなわち、強欲で臆病な匪賊、北郷一刀にも、戦の気配が伝わるということでもある。


「また戦争、か……袁紹、馬超、公孫賛。美人だって話だけど、どいつもこいつも血の気が多いなあ」


普通の『君主』であれば、それは悪いことではない。

名目上の君主は未だに董卓であり、実際に実務に励んでいるのは賈駆その他の文官である以上、一刀の立場はさほど強力なものではなく、世間一般の目からしてみればニート街道まっしぐらな一刀の公的な立場は、『董卓の愛人』が精々関の山である。
賈駆が董卓を溺愛していることを知らないものであれば、ふーん、で終わってしまう程度の薄くて軽い地位だ。

しかし、それでも彼は能力値的には袁紹や袁術などと並んでおきらく極楽な、しかし強大な力を持つこの河東一帯を裏から支配する実質的な支配者のはずだ。
だからこそ、本来であればこの地において誰よりも早く自国が巻き込まれる戦争についての情報を受け取り、それに対する対策を考えなければならない立場であるはずである。



だが、もうじき、このあたりで戦争が起こる、ということを理解した我等が悪一刀が考えること。
それは……


(そろそろここも潮時だな……)


いつここを逃げ出すか、ということだった。

一刀からすれば、戦争が起こったとしても勝てないつもりはない。
なぜならば、一刀にとっては自分はこの物語の主人公だから。
三国志において最強勢力の一つとなる孫呉でさえも、あんな貧相な手駒を駆使して勝利することが出来たように、天才である自分が負けるわけが無いと、彼は半ば本気で思っている。
喉もと過ぎれば熱さ忘れるの言葉どおり、たった一人に千以上の兵をつぶされたことも、その時点では弱小であった孫呉を潰すだけで巨大勢力であった袁術の屋台骨を粉々にしたことの反省もまるでない。


だからこそ、選択肢の一つとして戦うことが出てもおかしくはないのであるが……その前に大前提が一つあった。


「まあ、戦争だろうが略奪だろうが好きにやってくれりゃあいいさ……その間に俺は逃げるしよ」


彼にとって国など所詮は一時の腰掛。
この国が発展しようが滅びようが、全くかまわないのだ。

君主たる義務? 民を守るべき決意?
なるほど、一刀はここ半年ほどの間、ずっとこの地より糧を得ていた。
この地よりいでし米を食み、この地で紡がれた糸にくるまれ、この地より支払われた金銭により購われた。
それほどの大恩を受けておりながら、一切還元しないことは確かに人の道に外れよう。

だがしかし、この男はもとより外道。
恩を受けても恩と思わず、他者から奪ったことを省みるようなたちではありえない。

日々馬鹿な遊びをしていてそれを省みることさえないのは、いざとなればすべてを捨ててあっさりと次の獲物を狙うことが出来るが故の余裕。
机上の空論ばかりとはいえ、それでもそんじょそこらの凡人の軍師を遥かに凌駕する戦の知識も、使われるのは賈駆との取引という戯れのときだけで、彼自身が活用するつもりなど微塵もない。
彼がいればどれほどあの気丈で、必死になって親友を守ろうとしている少女が助かるか、ということを理解していながらもそちらに重きを置くことはしない。


すべては己がために。
それこそが、この世界に突然迷い込んだ異邦人、北郷一刀の行動原理だ。



なればこそ、少しでもわが身が危なくなれば袁術のときと同じように逃げ出すことを考えるのは、至極当然の考えであった。
元々この地に根をおろしたのは、董卓が多分漢王朝を取るだろう、という未来知識からの予想と、それが崩れた後は他の地に向かうまでのちょっとした休憩のつもりだったのだ。
その二つの条件が袁紹による戦争という形で崩れた以上、一刀にとってここだけに固執する理由は特にない。

戦争が始まってしまえばいくら自身を天才であると信じる一刀であっても、危険が皆無というわけではないということぐらいは理解している。
いかに術の力があるとはいえ、周辺を包囲されるなどによって雪蓮の腕力便りの場面に遭遇するかもしれないし、そうなってしまえば何よりも大事な自分の命が危険にさらされるかもしれない。
だからこそ、相手の互角以下の戦力から始まる戦争なんていう面白くもなんともないものに正面から向き合う気なんて、一刀にはさらさらなかった。


「しかし、どうしよっかな~流石に月ちゃんと詠ちゃんを引き抜くのはマズイだろうけど、程立ちゃんと郭嘉ちゃんぐらいだったらいいかな? まだ二人とも口説けてないし」


そこには、情を交わしたはずの女を死地においていくことへの罪悪感はない。
彼にしてみればあくまでここは自分のために作られたゲームや物語の世界。
当然、そこの登場人物も、架空のキャラクターという印象に近い。
自己の精神を守る為、自己の欲求を満たすため、己自身に言い聞かせ続けたその自己欺瞞は、もはや彼の精神とは切り離せないほど癒着していた。


これが、まだまともにこの外史に入り込んだとしたのであれば印象も異なったかもしれないが、彼の手元に太平要術の書がある以上、一刀からしてみれば彼女らはいつでも思い通りに操ることの出来る人形に近い。
執着心はあっても、それは友情だとか愛情だとか言った人対人とのつながりの間に生じるものではなく、どちらかというとお気に入りの人形やポスターに抱くものだった……少なくとも、彼はある種無自覚にそう思っていた。
確かに大事は大事だが、自分の命と天秤にかけられるようなものでは決してない。

目の前で残虐非道に殺されるなどであればさておき、自分のあずかり知らぬところで死んでいったとしても惜しくない程度。
はっきりと口に出して考えてはいないものの、一刀はそう自覚していた。


そして、口には出してはいないもののそのことは賈駆らにも伝わってしまっていた、という長い長い前振りをもってして、今回のお話しは始まるのであった。













いつもの執務室ではなく、一刀が占拠している一室のベッドの上にて。
戦争を前に一刀を尻に敷いて、さて、どうしてくれよう、と詠は思った。

今現在、ここ河東地域は危機に瀕している以上、例え一刀の部屋の中にいたとしてもその対策を考えないわけにはいかない。


「とりあえず、いろいろとこの男には働いてもらわなきゃならないわ」
「…………」


今回の戦争、そのきっかけは袁紹による暴政だ。

やれ五胡を退治しろだとか、やれ袁紹の相克就任一周年記念式典に資金と人材をよこせだとか、やれ竜の珠をもってこいだとかいった命令が、今の中華全土には矢のように飛び交っている。
今は雌伏のときだと重々理解している領主―――例えば、劉璋。正確にはその配下たちや、あるいは最近少し名を聴くようになってきた小勢力の長、一刀いわく後の三大勢力の一つとして立つらしい曹操などは、それをはいはいと聞きながら虎視眈々と機会を狙っている。
詠自身も、ここ最近の付き合いで随分と腹芸と我慢が得意になってきてしまっていたので、どうせそのうち失敗するだろうから今はひたすら国力を高めなければ、とその馬鹿げた我侭にも根気よく付き合ってきていた。


「確かに袁紹は馬鹿だけど、それに乗せられるあいつらはもっと馬鹿よ」
「……」
「あんな調子じゃ、どーせほっといてもそのうち自滅するに決まってるんだから」


とはいえ、国政の「こ」の字も知らないのではないのか、と思わされる袁紹のやり方に、ムカついていたのは確かだが。
お前、今までどうやって自分の領地運営してきたんだよ、と聞きたくなるほどの御粗末な国家運営に一言物申したくなる気分はわからんでもない。


だからこそ、ほとんど反乱に近いことを行わんと今必死になって軍備を整えている公孫賛、西域連合のことを一概に責めるつもりはなかった。
最も、彼女たちに同調して勝ち目の少ない戦いに身を投じるつもりはなかったので、内々の手紙は断りを入れざるをえないが。


「天子がなんだか言っていたけど、あんな袁紹が勝手に座らせた方よりも大事な者があるでしょうに」
「……」


袁紹に対して兵を挙げんとする彼女たちと、詠のなにが違ったのか。
結局それは、漢王朝に対する忠誠心だろう。

詠にとって大切な者は天子などではない。
今漢王朝に臣従しているのは、あくまで手段の一つだ。
だから、忠実な臣下であり、皇帝以外から命令を受けないことを誇りとする西域連合のように、皇帝が袁紹にないがしろにされている怒り、なんてものはほとんど抱いていない。

そういう意味では、東の公孫賛にも似たような雰囲気を感じていただけに、彼女と袁紹との確執を知ってはいても彼女まで西域連合と共に立ったのは少々意外ではあったのだが、何か彼女の考えを変えさせるような人物でも近くに現れたのだろうか、などとは考えるが、精々そこまでだ。
その「義挙」に従ってやる必要性なんて欠片も感じられない。


「っていうか、そんなことは正直どうでもいいのよ。問題なのは、あいつらの軽挙の性でこっちまで被害が来るかもしれない、ってことよ」
「…………zzz」


だから、彼女らが袁紹と戦争を起こそうが、その結果として一族もろとも族滅されようがそんなことはどうでもいい。
問題なのは、その彼女たちの争いがこちらにまで余波を及ぼすことだ。


現在、この河東は発展途上だ。
一刀から救い上げた各種政策を節操なく片っ端から実験している状態であるため、決して現時点で豊かとはいえない。
考えがあったからといって、それが実を結び、利益を生むまでには相応の時間が必要なのだ。



こんなん考えたよ
   ↓
作りました~
   ↓
うわ~、なんて凄いんだ~。敵うわけないよ~

みたいな三行革命なんて、実際に起こるはずがないのである。


二毛作という一つの畑で季節によって二種類の作物を栽培する制度は未だにこの地において相応しい作物の組み合わせが見つかっていないのでそれなりの成果を挙げつつあるとはいえまだ収穫が十分とはいえないし、楽市楽座とかいう制度で徐々に集まりつつあった各地からの商人だって、何か不利益があるとなれば真っ先に逃げ出すだろう。
いろいろとやってはいても未だ利益と結びついていない現状にて、最悪の事態、戦争に巻き込まれる。

無関係ではいられない。
事実、袁紹側からはこの「反乱」制圧に協力するように矢のような催促が山ほど飛んできているし、先にも述べたように公孫賛らからも内応の誘いが、脅しと共に送られてきている。
自身に比べれば遥かに巨大な三つの勢力に囲まれている立地条件から、どの勢力も踏み潰すか、それとも恭順するか、という選択を選べと押し付けてきている。


「これから一層天の知識を使っていこう、っていう大事な時期だったのに余計なことしといて、助けてくれ?どの面下げていってんのよ……その辺わかってんのかしら?」
「zzz……zzz……」


一刀から聞き取った知識によると、西域連合はさておき公孫賛は袁紹に殺される、と天の歴史ではなっているらしいので袁紹側についていれば勝ち馬には乗れる気がする……まあ、その知識も今現在の状況とは大分ずれつつあるようなのでどこまで信用できるかはわからないが。

ただ、あの袁紹相手にどこまで恩賞や援助が求められるのか、という問題は尽きない。
何度も言うようにここは小勢力。公孫賛と西域連合がその気になれば両側からぷちっと潰せる程度でしかないのだ。
例え最終的には袁紹が勝利するとしても、その過程として自分たちが犠牲とならなければならないのであればそんなもの受けるわけにはいかないに決まっている。


だからこそ、今からは細心の注意を払う立ち回りが常に要求されるのであるが……


「って、もう! いい加減に気付きなさいよっ」
「ぐ、な、なんか、腹の上あたりがやたらと重いような……って、え? 何これ? ちょ、詠ちゃんなにしてんの!?」
「はぁ、まったく……目は覚めた?」


寝台にくくりつけて身動きを取れなくして物理的に己の尻の下に置かれていたことを再度どすん、と腹に衝撃を加えて自覚させることでようやく目を覚ましたらしいこの男からは、そんな重大さは欠片たりとも見受けられなかった。
ここ最近の戦争の雰囲気を感じてか、挙動不審にもほどがあったこの河東の主をすんでのところで抑えることが出来た安堵の溜息を詠は吐いて、改めて何とか一刀の逃亡を抑えることが出来たことを内心で喜んでいた。

一刀が、ここを逃げ出そうとしていることには気付いていた。
この男は天下統一とか一定ながらも、その根本となっているのは自身の安寧だ。
故に、ここが危なくなれば詠のもとから逃げ出そうとするのは当然だ、ということはわかってはいても、ちくりと胸に突き刺さる何かがあるのは否めなかった。

今後群雄割拠が予想される現状において、詠はとっくの昔に一刀の排除を考えてはいない。
それは、今後自分たち小勢力が生き残っていく為には一刀を排除して自力で独立独歩を保つよりも一刀の力を利用して勢力を大きくして身を守る方が確率が高い、とする冷徹な計算によるものもあったが、それ以上に肌を交わしたことによって一刀という存在に対する悪感情が和らいだことも大きかった。


(こ、コイツは馬鹿で助平で阿呆だけど、いいところがないってわけじゃないんだし、私が面倒見てあげなきゃなにするかわかんないもの……そ、そう。これは監視、監視なの。こんな獣を世に放たない為にも私が我慢するしかないの!)


彼女にとっては親友を誑かした憎たらしい仇敵でしかなかった一刀であるが、いつしかその存在は詠の中で大きくなりつつあったのだ。

だからこそ、一刀の自分勝手な逃亡を防止できたことに対する喜びは、貴重な知恵袋が手元からなくならなかった、以上の何かしらの感情が介在していた。



なぜかは不明であるが、あの女、雪―――こないだ聞きだしたところによると、先に滅亡した孫家の主、孫策らしい―――がこの場にいなくてよかった。
あの女がここにいれば、力ずくなんて手段は取れるはずもなかったのだが、そうでなければなんか夜逃げっぽいことをしていたこいつを抑えられるはずがなかった。

とりあえず、夜に逃亡するつもりだったのか、寝溜めといわんばかりに昼寝していた一刀を縛り上げることが出来た幸運からじっくりとそんなことを考える。
その尻の下で、あれほどまで大掛かりな逃亡の準備をしていながら気付かれているとは微塵も考えていなかった一刀は目が覚めた瞬間にこの国から逃亡どころかベッドから降りることも出来ない己の緊縛されっぷりに焦りの声を上げた。



「な、何で俺にこんなことを! Mか、今日は俺がMの日なのか!?」
「……なにいってんのか意味わかんないけど、多分違うと思うわ。僕だって不本意だけど、あんたこうでもしないと逃げちゃうつもりだったでしょ?」
「っ!」


SMプレイ気分のさなかに急に図星を刺されて一刀の声が一瞬詰まる。
そもそも彼からしてみれば、不意打ちを喰らってこんな状態になっている、という現状は異常なものだ。


多分もうみんな忘れているとは思うのだが、大喬小喬の房中における諜報を見破ったように、太平要術の書には洗脳と戦争のやり方だけではなく、『自分に対する陰謀を感知する』という能力もある。
どれも心理掌握を得手とする妖術から派生したものであるし、直接の殴り合いの場にあっては全くもって意味を成さない力ばかりであるが、これはこれで意外と芸達者な本なのだ。

陰謀の防ぎ方についてまでは教えてくれないが、自分に対する悪意、あるいは不利益に基づく何かがあれば、それを所有者たる一刀に教えてくれる。
雛里の反抗を詠に教えたのもその能力によるものであるので、一刀はそれによって安穏と生活できているわけだから、その力は今も変わらず働き続けているはずだった。
その能力からすると、いかに縛られているだけとはいえ、他者より己の言動が制限されるようなことをされていることはいかにもおかしく思える。


が、別に詠には悪意はない。
というか、一刀にこの地にいてほしい、というその感情は、どちらかというと正の方向性であるがためにそれらの陰謀防止の機能は発揮されなかった。

そして、今まで詠が術に掛かっていないがために自分にいろいろと工夫を凝らして仕えてくれていた、術をかけてしまうとあの痒いところまで手が届く感がなくなり袁術や張勲みたいになってしまうかもしれない、という躊躇は、自身が不意打ちを何故か喰らっているという混乱とあいまって、妖術という暴力を使ってまで詠の行動を押し留めようとする一刀の心を鈍らせた。

結局のところ、無意識のうちに見捨てることは出来るとしても、今更操り人形にすることには戸惑いを覚えるぐらいには、一刀にとっても「術の掛かっていない」詠の存在は大きなものへとなりつつあったということである。
そしてそれを自分自身によって叩きつけられた一刀に取れる方法は、もはや限られすぎていた。


「や、やだなあ、詠ちゃん。俺がそんなことするわけないじゃないか。勘違いじゃない?」
「はぁ……まだ寝ぼけてんの。この状況でとぼけても意味ないことぐらいわかるでしょうに……もういいわ、寝てなさい。僕が全部してあげる」


この期に及んでも言い訳をしようとする一刀を見て、なんというかいろいろとめんどくさくなった詠は、そう一言呟いて寝台に寝そべる形となっている彼を押し倒した。
その目が何処か優しい色をしていたように一刀に見えたのは、果たして夢か現か幻か。

だが、そんな彼の見とれる動作も一瞬のこと。
ふわりふわりと撫でるように、柔らかく温かい彼女の手のひらが、一刀の衣服を乱していく。
かつての彼女からは想像も出来ないほどに慣れた手つきで暴れる一刀の動きを制しながら、その下履きを脱がすところまでよどみなく進まれては、そんな穏やかな気持ちを保てるはずはない。
余りに吹っ切れすぎているその姿は、一刀に激しい肉欲と戸惑いを生んだ。

いくらなんでも現状がわからないままこの餌に食いつくのは不味いと野生の勘で察知したのか、己の腹辺りに置かれた尻の柔らかさとその手の優しさによって徐々に自分の息子が暴れん棒になっていくのを一刀は何とか押し留めようとするが、寝起きが故のあふれんばかりの若さとあいまって常より激しさを増す血液の流れを押し留めることが出来るほどには彼の意思は固くなかった。


「え、ちょ、ま! 嬉しいは嬉しいけど、今は……」
「そういいながらも元気一杯じゃないの。はいはい、とりあえず一発抜いて冷静になりなさい」


というか、豆腐のごとき意志力であった。それも、木綿じゃなくて絹ごしの方。
はしでつまめば容易く崩れるほどのぐっずぐずのそれは、遠慮なく掴みにかかる詠によって見事に粉砕された。

かくして、いろいろ考えることが多すぎて徹夜明けの詠の脳みそは、深く考えることもなく目の前の男に教えられた手管を使ってとりあえず事態の収集を図ることにした。
そして詠が取ったその方法は、この状況下においては一刀の「逃亡しよう」とする気概をくじく上では正しい選択肢であった……色を前にして、一刀がそれを拒絶して「この場から一刻も早く逃げる」という正しい選択肢を選べる、と考えるのは無理があるのだから。





このような経緯で、河東は戦争へと巻き込まれることとなり、その渦中のさなかにはしっかりきっかりと他所からこの外史から来た男も巻き込まれることとなったのである。



24へ

Comment

詠が可愛すぎる…

> しかし、いろいろと当初の予定からずれてきたなあ…
首ったけのテーマはギャップ、だったそうですが…
今回のテーマはツンデレですか??

詠・・・

まさにダメ男に貢ダメ女の典型www

面白いです。更新がまたはじまってかなり嬉しいです。

副官キャラは素敵ですよね。
メ様とココノとか…。詠と一刀もあんな関係になれるのかな?
今の悪一刀じゃ無理でも冒頭の一刀はかなり違う性格みたいだし。
一人くらい愛するのも良いんじゃないかと。

一刀、外道なのはいいんだが馬鹿なのがなぁ。
いやそれも別にいいけど、小物なのが。
しかし逆にそれがいいのか。
蟻の集団も働かない奴がいてこそ、より働き蟻が働くことになって全体的には利するらしいし。同様に一刀も?

そろそろ物語が動くのかな、袁紹関係で。

"元々持っていた能力"まで発現し始めたか…。
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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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