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外史につくろう穢土幕府・21

久々の連日更新。
連休だから、というのもありますが、もともと前回と今回の内容が連続しているから余り間を空けるのも、と思っていたからです。
前回の内容だけじゃ冒頭の一刀に対する詠の考えが完全に浮いちゃいますからね。

何とか本日中に更新できてよかったです。














(うまくいったみたいね……まあ、驚いてもらえなきゃせっかく作ったこれもそのかいがないってものでしょ)


不意をうち、一方的にこちらの声を突きつけ、思考の隙に新たなる驚愕を叩きつけて冷静な対処が出来ないであろうときに内に取り込もうとするその手腕は、まさに賈駆の軍師としての面目躍如といったところか。

自らの策によって生じた、二人の平静を保とうとして、しかしその内なる驚愕を隠し切れない表情をあらためて見て、詠は二人の仕官を心から望む。
二人のその美貌は、まさに己の配下に相応しいものだからだ。



郭嘉。
真名はどうやら凛というらしい。
スレンダーな肢体を持ちながらも付くところにはきちんと肉が付いた体型であり、太ももなども十分なまでに張っている。未だ成長途中、といった感もなく十分に成熟しきった、しかし未だその期間が短く初々しさを感じさせる美女だ。
真名に相応しい凛としたまなざしと、その白いかんばせは、りりしい秋花と例えたとしても緒人から異論を受けることはなかろう。
なお、詠は知らないがこの外史においては貴重な『ろりぃ』でない軍師の一人である。


程立。
風という真名を名乗っている少女。
浮世離れした外見はその僅かに毒の混じった言葉すらも忘れさせるほどの雰囲気を漂わせている。
真名が示すとおりふわふわとした髪と言動とともに、その瞳を常に細めながらも周囲を容赦なく見つめる彼女は、体型自体は詠よりも幼いといってもいい。
だが、肌の白さやその微笑の甘さに誘われる男は確実にいるであろう。
同姓である詠には未だよくわからぬ概念ではあるが、少なくとも彼女が女として大喬小喬に劣るところがあるようには見受けられない。
一刀の好みに当てはまらないことはないであろう。


二人が二人とも、リストにあった人物。
その軍師としての能力は、正直なところ未知数であるといってもいい。
今までたった一人で董卓を支えてきたとして、自分の能力に相当の自負を持つ賈駆からしてみれば、生まれたときからそういった訓練を積んできたわけでもない人間に対する不信感というものは、未だに残っている。
血縁からの同族支配による統治、という手段は確かに美点ばかりではないことはわかってはいるが、それでも幼いころよりそのこと専門に教え込まれる、という教育による育成ということの価値は何事にも変えがたいものだと詠は思っているからだ。


だが、それでもなお、詠は二人の仕官を望む。

一刀との契約を守る為にも、この二人を絶対に逃がすわけにはいかない。
絶対に、だ。

リストに挙げられる条件は、能力ではない。
そこに上がっているものは皆、「一刀の基準」で有名なものばかり。
この世界においても、美貌を持つと思われる女性の名前が、そこには列挙されているのだ。






思い返すのは、一刀にこの竹簡の元となるものを書かせたときのことだ。



「……めんどくさい」
「ちょっと! こんなにしてあげたってのに、約束守らないつもりなの!」



特注の巨大な寝台の上で、言い立てる詠を前にしても一刀はやる気を見せない。
せっかくこんな恥ずかしい猫を模した耳に尻尾まで付けさせられて、『にゃー』とか言わされたにもかかわらず、そんな態度。
約束違反にもほどがあった。


が、二人の立場においては一刀が圧倒的に有利なのだ。
月を握っている以上一刀がいかなる不義理を果たしたとしても、それを本当の意味で真っ当に糾弾することなど詠には出来やしない。
このままだと、精々、愚痴ったり無視したり、といった軍師らしくないしょうもない嫌がらせが出来るだけだ、とわかっていた詠は、必死になって自身の心を押さえつけようとする。

だが……だが!
さっきまで、自分が教え込まれてやってた『にゃーにゃーにゃー、御主人様のミルクがほしいにゃん♪』とか言ってたことを思い出すと、もう全部投げ打ってこいつを殺してやろうか、という感情がとめどなくあふれてくるのは否めなかった。


そんな詠の内心の凄まじい葛藤を知るよしもない一刀は、ひたすらに言い訳を暢気に呟いていた。



「いくら俺が知ってたとはいえ、全部を全部覚えてるわけじゃないし……」
「思い出しなさいよ! それがあるのとないのじゃ、この後の仕事が大違いなのよ」
「別に俺には関係ないし……」
「きぃぃぃーーーー!!」



そんな態度に、言っても仕方がないとはわかっていても、詰め寄ってしまう詠。
そんな詠の姿も可愛いなあ、見たいな感じで生暖かく見つめる一刀。
もう、悪党とかそういう方向性でなくても、めちゃくちゃ嫌なやつだった。



(落ち着けー、落ち着くのよ、詠。こいつは使える、使えるの……月の役に立つの。生かしておけば、今後もいろんな形で使えるの。だから、今ちょっとだけ嫌な目にあっても、殺しちゃ駄目なの)



とにかく、ありとあらゆる自己欺瞞を使って自分で自分をごまかすことで、詠は何とか理性を取り戻す。
本当に、自分は何をしているんだろう、と涙がこぼれそうになる。

親友たる月のためとはいえ、今まで学んできた知識も、軍略もすべて捨てて、ただひたすらに寝台の上での彼のおもちゃ、愛玩動物として扱われる。
擦り切れるほど読んだ孫子の兵法も、指にたこが出来るほど握ってすり減らした筆の軸も、使いきったすずりの山も、この場においては何の価値も認めてもらえなかった。

ただ、軍師としては無駄に育ってきた胸だとか、伸ばすに任せて余り手入れさえしていなかった髪だとか、あるいは月に一度の面倒を起こすだけだった場所だとか、そういったところばかりが使われる。


何やっているんだろう。
本当に、何をやっているんだろう。


こんな自問自答がひたすら続けば、いかに月のため、ただひたすらに月のためと胸のうちで呟いてみても、それだけではやっていけなくなるときも出てきてしまう。

そんな自分の現状にため息一つを吐いて、とりあえず会話を続けることで仕事の糸口を得ようと必死になる詠。



「……あんたの目的は、天下の統一なのよね」
「うん? ああ、そうだ。俺ならきっとこの世界を統一できる」
「……(何もしてないくせに)」



そんな彼女とは対照的に、最近は安楽に慣れてしまい、実際には何一つ行動に移していないにもかかわらず、その口にする野望だけはでかい一刀。
それに対して詠のこめかみに青筋が浮かびそうになるが、深呼吸一つでそれを治めて、なんとか月のためにこの男のやる気を出させなければいけない、と思っている詠は、その軍師としての頭脳をフル回転させて、何とかしてこの愚物にやる気を出させる方法はないものか、と考えをめぐらせる。

そして、今までの一刀と過ごした日々より来る経験から詠は、正しい答えを導き出すのに十分な知識を頭の中に入れていた。



(ああ、そっか。この男を操るんだったら、こういう言い方じゃ駄目だったんだっけ)



やがて気付いたそれは、本当に情けなくなるぐらい自身の誇りを損ねるものだった。
それでも、思いついたからには本当に自然に詠の口からその言葉が飛び出してきた。



「……僕が手伝ってあげるわよ。あんたのために」
「え?」
「要するに、美女がほしいんでしょ、あんた」
「……身もふたもないなあ」
「僕が、集めてあげる。地のはてにいる美女でも、蛮族の美少女でも、僕がありとあらゆる手段を使って、あんたの為に集めてあげる」



かつて聞かされた、天下万民の安寧なぞには一片の興味もない一刀が天下統一を望む理由。
彼の知る知識の中では優れた能力を持っている各地の英傑たちを下し、自分の女とする。


ただ、それだけのために、一刀は天下を求めようとしている。
たった、それだけの理由で、自分たちは狙われた。


高名な、優秀な人物を下すという名誉欲に入り混じった、その彼女たちを自分の股間の剣で這い蹲らせたい、という歪んだ色欲。
それこそが、この男―――北郷一刀の野心の源泉だ。


不条理で、理不尽で、許せないその理由は、しかしその人格の劣等さとは裏腹にどういうわけか優れた力を持っている一刀が行うのであれば、一種の正義だ。
なぜならば……この戦乱の兆しが見えつつある時代においては、秦の始皇帝の例を出すまでもなく、『強者が正しい』のだから。

そして、この男は紛れもない強者だ。
人の弱みを的確に見抜き、それを必要最小限の力で確実に実行する……そのための知識とそれに必要な能力をこの一刀という男はたんまりと溜め込んでいる。


血筋も、力も、権勢も、人望も何一つ持たないまま、その生まれ持った才覚一つを武器にしてこの河東を必死に維持して、自分よりもこれらに劣るものを蹴落としてきた詠には、それを否定することを叫ぶ資格など無いという自覚がある。

自分にそれがあればもっともっと上手に使いこなしてみせる、と思いはしても、彼しか持たぬその知識と人望は、どれだけ望んでも、どれだけ努力しても詠には与えられなかったものだ。
自分に余人よりも遥かに高レベルな軍師としての才が与えられたように、自分よりも遥かに高いところにこの男の才は与えられている。
そうである以上、そこにはそんじょそこらの努力程度ではひっくり返せないことは、同じ構図で今まで凡人に負けたことのない詠には経験としてわかっている。


なれば、月のためにこの男を利用してやろうと企む詠にしたところで、結局はこの男の意向、望みを無視してその結果を実現することは、不可能だ。
この男の利害を侵害しないように細心の注意を払って、この男の機嫌を損ねることなく……時には自分の利益を侵害してまでも、この男のシモベとなって尽くした後に、そのおこぼれに預かることが出来る。
圧倒的強者であるこの男の、虎の威を借りて狐となることだけが、詠に許される月のための働きだ。



「……急にどうしたんだ?」



戸惑ったように呟かれるその声にすら、詠は圧倒的なまでの強者の力の影を見た。
そんなこちらの内心の変化の理由を気付けない、気付かなくてもやっていけるほどに、この男は強いのだ。
そんな些細なことでさえ、今の詠には今まさに突き刺さろうとする棘に見える。


弱肉強食の意味は、小勢力をたった一人で切り盛りしてきた詠には痛いほどわかっているはずだ……わかっていなければならない当然の論理のはずなのだ。
だからこそ自分は、喰われるのであればせめて飢えを満たすためだけに腹に詰め込まれる餌ではなく、それなりの敬意を払って食される質の高い料理となりたかった、ならねばならないのだ。


そのためには、この男に自分が利益を生むのだ、大切にしなければならない有能な『弱肉』なのだ、ということを理解してもらわねばならない。
この賈駆が、そしてその賈駆を臣従させている董卓が、他のも数多くいる『弱肉』たちよりも優先的におこぼれを与えるに足るだけの、使い勝手のいい道具であるということを証明しなければならないのだ。


だからこそ詠は、明らかに自分よりも頭の回転の劣る相手に対して、親切丁寧に、細心の注意を払って順序だてて説明を行った。



「でも、ちょっと思い出してよ。あんたが言ったことよ?」
「……? 何を?」
「あんたが知っている有能な武将が、大体美女なんでしょ? そいつらがほしくて、あんたは天下の統一をしようと思った」



その言葉に一刀の顔にはすぐに疑問符が浮かんだ。
一刀からしてみれば、それは当然のこと。
自分が言い出したことゆえにそんなこと今更言われるまでもない。


そう、『わかっていると思い込んでいる』一刀はその確認に対して変な顔をしていたが、それを一切無視して詠は説明を続ける。
この場合であれば『一刀が武将らの名前を思い出すことによって詠が彼に対して差し出す莫大な利益』についての説明を、馬鹿でもわかるように、ひたすら丁重に。



「だったら、あんたがいろんなことを思い出せば思い出すほど、僕がそいつらを集めるペースは速くなるでしょ……それとも、劉備とか言う奴、要らないの? 今のままじゃ絶対無理よ?」
「っ!!」
「だから、あんたが気が向いたときだけでかまわないから……この国を強くするの、手伝ってよ」



それはもはや、懇願であったが、それにすら自分のことで精一杯の一刀が気づくことはない。
詠の声に、思いもよらぬところを突かれたように一刀はびくん、と体を振るわせた。



(そうだ……確かにそうだった!)



一刀は思い起こす。
自分でも覚えていたと思い込んでいた、日々の暮らしの中で忘れていた事実について、はっきりと思い出す。
自分の野望は、確かにそうだった、と。

袁術を捕らえ、孫策を下し、董卓をシモベにし、賈駆を玩具にする日々の安寧さにほとんど忘れかけていたが、確かに自分が望んでいたのは、三国志という史書に残るほどの英雄を残らず自分の女にすることだったはずだ。
だからこそ、全支配地を裏から占拠して誰かが天下を統一したときにそれをひっくり返そうと思っていたはずだったのだ。



この地は、やたらと居心地がよかった。
命じたことしかやらない、出来ない美羽・七乃とは異なり、詠は太平要術の書で操っていないにもかかわらず、こちらが何も言わないでもいろいろな手配をしてくれた。
こちらに対して決してなついているとは言いがたいが、それでも他の女とは違い様々な新鮮な反応で自分を楽しませてくれ、またこちらを飽きさせないように様々な趣向を凝らしてくれた。

楽しかった。
すべてを忘れるほど、楽しかった。
正直、元の世界のことなんて思い出しもしない日々だった。


それ自体が詠が一刀の確保の為に全力で尽くし、全力で策を練った結果だったということに一刀は気付いていない。
ただ、妙にここでの日々が楽しかったのでちょっと今まで気付かなかっただけだ、とそんな甘い考えを持っていた。



そんな程度の一刀だからこそ、次なる詠の誘導にもあっさりと引っかかった。

なんとなく、こんな日々が続けばいいな、とかいう日和見な感情を持ちつつあった自分だったが、思い出してみると現状は完全無欠に理想の状況ではない。

確かに最初は「天下統一」とか、そんなことを思っていたのだ。
そして、それもまた面白そうだという心は今なお消えてはいない。
というか、正直今までも時たま、思い出したりはしてたのだ。


が、一刀は俗物である。
将来の大金の為に目先の小銭を捨てることなんて出来ない。
詠との日々が余りに新鮮で楽しかったので、考えないふりをしていただけだ。
今の安寧とした日々を捨てて、また旅の空に出るのが面倒になっていた。

自分が積極的に詠の望むことを『できる範囲』で叶えてあげるだけで、この日々を維持したまま野望へのお膳立てを全部詠がしてくれる、というのだ。

断る理由など、どこにもありはしなかった。



「よ~し、ちょっとまって、思い出す、必死こいて思い出すから。え~っと、確か蜀の五虎将軍が、関羽張飛、趙雲、馬超、黄忠の五人で、そいつらがそれぞれ……」
(やった、うまくいった!)



一刀が必死になってぶつぶつと呟きながらかつての記憶を取り戻そうとするその横で慌てて筆と硯、紙を取り出した詠は、未だに全裸に猫耳・猫尻尾をしたままの状態ではあったものの満面の笑みを浮かべながらこの国の未来のために、その第一筆を記し始める。




『一刀のために』尽くしていたその笑顔が、賈駆と程立が自らの地での任官……臣従を誓ってきたときの笑顔と全く同一のものであったことを見ている者は、この時点ではだれもいなかった。


  22へ

Comment

詠が健気ですw好きになってきた。
人材も増えて、状況が好転するかな。
しかし一刀は実際運が良いと思う。天が勝てと言っているのか。

『一刀のために』尽くしていたその笑顔、
とあるけど、本気で一刀に尽くしてしまうようになったんだろうか。
それとも詠と一緒で、風達も利用する気なんだぞー、ということを
示している言葉なのかな。どちらか微妙です。

俗物すぎるな、かずと。
だが、そこがいい。

ところで任官・・・詠の部下になるってことは、
直属じゃないからかずとには手を出しにくくなる。
またはレベルダウンするんじゃないのか?

もしかして月みたいに劉備を・・・・えげつねぇwww
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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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