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外史につくろう穢土幕府・11

この二人が恋姫で一番好きかも知れない。


2月24日 修正
描写がくどいという声を受けて、会話文を増やしてみたり。
が、まだ少ない気がするなあ。









荊州太守の袁術―――美羽の一言から、とある一日が幕を開ける。



「のう、七乃」
「はぁ~い、なんですか、美羽様?」
「何か面白いことはないかのう」


金の髪を大仰にたなびかせて玉座に座るのは、どう見ても幼女にしか見えない十八歳以上。
その薄い胸を張って退屈したのだ、という事を全身全霊でアピールして見せた美羽に対して、その傍で控えていた部下は曖昧に笑っていたのをふと辞めて、目を細めて彼女を見つめた。

また、いつものわがまま。
ここ最近は質のよい蜂蜜が手に入っていたとかで始終ご機嫌だった主君だったが、そろそろそれも普通になってしまったので新たな刺激が欲しいのであろう、と袁術配下の筆頭、張勲こと七乃は思った。

その体躯に相応しく思考自体も幼い美羽に、我慢なんて考えがあるわけがない。


だが、普通の人間ならばそのたび重なるわがままに痺れを切らすところを笑顔でいられるのが七乃である。
むしろ、待ってました、といわんばかりの笑顔で美羽の無茶振りに対して小首をかしげて考える。

彼女の価値観としては、美羽>すべて である。
例え民が苦しもうが、袁家の財がすべて吹っ飛ぼうが、孫策一派が必死になって勢力拡大していようが、現時点での美羽が笑顔であれば何もいうことはないのだ。

美羽にたいして毒も吐くがそれも愛情ゆえの事。
だから七乃は、特に考えることもなくいつも通り何かなかったかな~、と考えながら思いついたことを口にした。



「うう~ん、そうですねぇ……あ、お嬢様。なんでも城下に旅芸人の劇場が出来たらしいですよ?」
「なんと! うむうむ、そのように城下が栄えるとは、やはり妾の治世の賜物じゃな」
「さ~すが、お嬢様。何にもしてないではちみつ水飲んでるだけなのにそこまで言い切れちゃうなんて、そこに痺れる憧れるぅ~」
「ほっほっほ、もっと褒めてたも」



基本的に美羽はそこまで物事を深く洞察する能力はないし、七乃は能力自体はあるのかもしれないがそんな事に手間をかけようとする人間ではない。
孫策であれば城下にそのような特に商品があるわけでもないにもかかわらず、人を集める店ができるというのであれば認可制にしたであろうし、曹操であれば誰かをやってその突然出来た劇場に対して不可思議さを感じて誰かを調べにやらせたであろうが、七乃はそんな事をするぐらいであれば美羽との時間を多くとりたいと思っている。

だからこそ、統治者側のトップであるにもかかわらず突如城下に劇場が出来る、という事態に対しても深く考える事はなく、むしろ一般市民と同様の楽しげな反応を見せた。



「それで、どうします、美羽様? 退屈しのぎにちょっと街まで繰り出してみませんか?」
「うむうむ、良い考えじゃな。流石七乃。よおし、それでは早速出かけるとするかのう」



そして、微妙に君主側の警戒心が薄いのは、この恋姫世界共通の法則でもある。
護衛を一杯付けてとはいえ、余りにも気安く袁術は城下に向かって遊びにいくことを宣言した。









「ううむ、なんじゃこれは。見えぬ、見えぬぞ、七乃」
「や~ん、美羽様がちっさいからですよぅ。わたしにはちゃ~んとみえてますから」
「むむむ、何で妾がこんなところで」
「しょうがないですよぅ、今話題の劇場なんですから」


新しくできたとか言う劇場は、ものめずらしさもあってだろうがそこそこ繁盛しているように見える。
元々美羽のような王者でもない限り、この世の娯楽というものは庶民には少々お高い。
紙を使った娯楽小説は将軍クラスではないと買える物ではないし、衣服だって同じ。
食べるのに精一杯の者がいる一方で、装いに彼らの一生分の稼ぎを使える者がいるのはどこの世界でも変わりはないが、この外史はその程度が少々大きい。

結果として、日々ぼろを纏っている人間が感受できる娯楽というものはそう多くなかった。
そのため、値段設定さえ間違わなければものめずらしさから最初の一週間程度であればどんな質の娯楽であっても賑わいをみせる、ということを七乃は知っていたから、この人ごみも仕方がない、と主君に告げる。


「見えん、見えんぞよ、七乃~。何とかしてたも」


だが、そんな理屈が通じるようであれば、それは美羽ではない。美羽的な何かだ。
その低身長ゆえに人ごみの中何一つ見物する事が出来ない事にあっという間に不満を爆発させる。

それがわかっていたからこそ七乃は、可愛くて仕方がない主君に対してすぐさま返事を送る。


「しょうがないですねぇ。は~い、美羽様、私の肩に乗ってください。肩車して差し上げますから」
「うむ、頼むぞ、七乃……おお、見える、見えるぞ! ……歌っておるの」
「はい、そうですよ? ここは、歌を歌って見せるところらしいです。えっと……そうそう、数え役萬しすたーず? とかいうのらしいです」


ぐい、と持ち上げられた背丈からは、舞台がよく見えた。
むき出しの板に粗末な屋根、僅かばかりの木材によって四方を支える大黒柱が、一層舞台の急場さを露骨に示す。

だが、それでも。


『みんな~、楽しんでる~?』
『次の曲も、ちゃんと聴いてね?』
「おおおおおおおぉ、なんじゃ、なんじゃあれは!」



美羽にしてみれば、初めての舞台。
初めての、「楽曲」ではなく「コンサート」。

玉座に座って自分に捧げられる曲を聞いたことはあっても、このように周囲と共に歌と踊りを楽しむ一体感、というのは未知の経験だった。

舞台の上で歌い踊るのは二人の少女。
美羽からしてみれば露出こそ高いもののさして高価そうに見えない衣装も、この場で見るならば己の服以上に輝いて見えたし、その王都での宴の際にいつも耳にしている曲とは比べ物にならないほどつたない楽士の奏でる曲もここではいつも以上に心地よく耳に響いた。

天からの知識をある程度吸収して練り直されたそれは、妖術じみた力はないもののそれでもその斬新さでそこそこ人をひきつけるだけの力を持っていた。


そしてなにより。
壇上で民の歓声を一身に受けて踊る少女らは。
彼女が求める君主の像とまるっきり一致していた……袁術にとって民とは所詮その程度の存在という認識である。


「これじゃ! うむうむ、こうやればよいのじゃな。覚えたぞ」
「はい? 今度は一体何を思いつかれたのですか、美羽様」


美羽が突拍子のないことを言い出すことは決して珍しい事ではない。
加えて、現時点で目の前で少女らが歌ってるのを美羽が見ていた、という事から大体の見当は付いていたものの、七乃は礼儀として問いかける。

もう、かわいいなあ、といわんばかりの笑顔は、美羽が自分もアイドルとして人の前で歌って踊ってみたい、と言い出すのを完全に予期していた。



「ふむふむ、あそこをあーやってこーやってこうすればよいのじゃな……よぉし、七乃。城に帰るぞよ。妾もあんなふうに歌って踊ってキャーキャーいわれたいのじゃ」
「はぁ~い、わかりました。それにしても、こんなに堂々とパクってやる、って宣言できるなんて、流石は美羽様。普通の人なら恥ずかしくってそんな事出来ませんよ~」
「ほっほっほっほっほ。妾は凡人とは違うからの」



そんな二人を影から見つめる男が一人。
まあ、隠す理由もないので言ってしまうと、当然ながらこの話の主人公の悪一刀である。



「なんか、変なの掛かったぞ。美羽とかいってたな……って、あれが袁術!?」



姉妹の観客を術の力で操った人間で水増ししながら、その水増しされた評判を見て集まってきた新たな駒を攫ってこっそりと術をかけていた彼にとって、いくらなんでも太守がその網に掛かってくるのは予想外すぎた。

かくして、張勲にとっては予想通りの、そして網を張っていたものである一刀にとっては予想外のアイドル合戦が始まる事となってしまった。













「おほほほほほほほほ、妾こそが一番なのじゃ」
「ふんっ、そんなぽっとでの温室育ちのお嬢様にちぃ達が負ける訳ないでしょ!」
「ちぃ姉さん、落ち着いて。油断してると足元掬われるわよ」



とりあえず予想以上の大物が掛かったので慎重にいこうと二三日様子を見るつもりだったのだが。
国家権力の強大さは一刀が作ったショボイ匪賊団なぞとは比べ物にならなかったことを、一刀は思い知っていた。

たった数日。
たった数日で作られたステージは、「この世界の文化水準ってところどころおかしいよなあ」と一刀が常々思っていた通りにもはや彼のいた元の世界のステージと遜色がないほどの出来栄えとなっていた。

どういう原理かは全くもって不明だが、スポットライトやマイク、スピーカーのようなものまで用意されている現状を前に、ちょっと事態についていけない一刀を置いて、すでに舞台では二組の歌姫達がスタンバっていた。


そこでバチバチと火花を散らすのは、張姉妹の活躍によってにわかに歌に対しての盛り上がりを見せる荊州首都において、ここ数日で一気にトップスターまでのし上がってきた幼女と、その彼女に対して王者として君臨する二人の少女達だった。


「はい、というわけで始まりました~。荊州太守にして稀代の歌姫、絶対可憐袁術様と!」
「最近話題の~私の妹『数え役萬姉妹』の」
「「歌合戦で~す♪」」
「(……どうしてこうなるんだ?)」



一刀の計画からいけば、張姉妹である程度の人間を集めてそこから切り崩して徐々に徐々に政治とか軍事まで食い込んでいくはずだったのだ。

初めはたいしたことがないように見える。
だが、緩慢に、しかし確実に街は蝕まれ、気が付けばいつの間にか闇はすべて統べられ、奪い取られている。
気付いたときにはもはや手遅れ。
どんなに手を講じても、すでに加速度的に進む侵略の前に、尋常の手段ではもはやどうすることも出来ない。
ただただ、震えてその魔の手が順番に自分がなくなるまで迫ってくるのを待つしかないのだ!

とか、そんなノリで行くつもりだったのに。
前回あんなにもクールに決めたつもりだったのに。



「解説はみんなのお姉ちゃんの天和ちゃんと」
「袁術様のシモベの張勲がやっちゃいますよ~」



それが、何故かいきなりトップが目の前でアイドルマスターを。
彼女ら取ったら荊州クリアである。



まあ、普通に考えれば、旅芸人と太守なんて一刀の思うとおり接点があるはずがないのだから、一刀が考えていた展開になる可能性のほうが高かった。
にもかかわらず、因果は巡り、めぐり巡ってこの始末。
結果だけを見るならば余りに身元不明の出自でありながら、貴人にこの距離まで近づけた事は喜ぶべき事であるはずなのだが、軍師である雛里に続いて始めてこの世界の豪傑を間近で見る事になった一刀にとって、仮にも統治者サイドであるはずの袁術・張勲のあまりのあまりさは予想外にもほどがあるものだった。


(まあ、操ってる俺が言うのもなんだけど、よくこんなんで政治が回っていってるな)


まあ確かに、太平要術の書によって反則的に忠誠の値を「99」に書き換えることが出来るならばさておき、よくもまあこんな太守相手に下克上を試みる者がいないものだと、ある意味歴史の修正力に驚愕する一刀。
とはいえ、驚いてばかりもいられない。



「ほほほほほ、それでは先行は妾からじゃな。やはり王者たるものなるべくしてなるようになっておるのじゃ」
「きぃ~~、くやしいくやしいくやしい! あそこでパーを、パーさえだしてればぁ!」
「……姉さん、落ち着いて。トリを勤める方が明らかに有利よ」
「それじゃあ、美羽様からで~す。『蜂蜜不思議』、聞いてくださ~い」



後ろではすでにコンサートが始まっているが、それは一刀にとっては何の意味ももたないものだ。
聞けば袁術の歌は相当のものらしいので、いくつか現代日本のアイドルの知識を吹き込んだとはいえまともにやれば張姉妹が敵うわけはなかろうが、すでに会場には自分の術をかけた配下を多数送り込んでいる。

群集心理を操る太平要術の書によってコントロールされている聴衆たちは、一刀の思い通りに声を張り上げて声援を送り、手を叩いて歓喜を見せかけて、間接的に歌姫や解説役の心を操る。

民の為に懸命に歌う美羽は、術こそ掛かっていないもののこの時間だけは完全に一刀の操り人形と同意だ。


盛り上げるのも沈静化させるのも、勝負を長引かせるのも短くするのも。
どちらに勝敗を動かすのも指先一つで決められる一刀にとって、トップのわがままによってがたがたになっている荊州の事務官らの心に楔を打ち込むには十分な時間の確保が約束されていた。


「簡単なのはいいけど、なんだかな~」


前回の自分の決心はなんだったんだ、と拍子抜けする一刀であったが、やっている悪行自体は当初の予定と大して変わっていないことについてまで理解が及んでいたとは言いがたい状態だったのは、やはり彼も彼女らの発するスターのオーラに乗せられていたのかもしれない。

背後で自分の操る人間による盛り上がりが、やがて周りを巻き込んだ本物のテンションになっていくのを感じながら、一刀はゆっくりとならず者たちを連れて役所の方へと進んでいった。






「これが鍵になります、一刀様」
「ああ……だけど、こんなものよく手に入ったな」
「一刀様みたいな賢人以外に心底仕えようとする人間なんて、そんなにいやしませんよ」


意外な事に袁術自体は浪費を好んでいるというほどではない。
というのも、その精神的幼さから未だ享楽に溺れるほどそれらの味わいの奥深さを感じ取れる年頃でもないのだから、精々使って蜂蜜代程度。
この当時にしてみれば効果な薬である蜂蜜を湯水のように消費する様は庶民から見れば憤懣極まりないものであろうが、それによって国が傾くほど舐める事は体格的にも不可能である。

張勲からしてみればもっといろんな楽しみを覚えて笑顔を見せてもらいたいとは思っているが、それでも今は蜂蜜を調達するだけで笑顔になる彼女は、曹操がその感性の高さゆえに未だ小城の情趣でしかない現状でさえ衣食に最高を求めている事を考えてみれば比較的質素であったとさえいえよう。



「護衛の兵はほとんど会場のほうへといってる、っていってたな」
「へい。一応警備の兵はそれなりにいるらしいですが、基本的に外からの進入を警戒する役目ばっかっす。そいつらも、買収するなり、酒色で釣るなりして出来る限り遠ざけておきました」
「(……術かかってんのにえらい有能だな、コイツ。まあ、元々得意分野だったんだろうけど)」



が、王が浪費をしない、という事とそれが民に還元されている、という事は明らかに別物であった。

袁術配下の役人達は、主君がいい加減な事をいいことに腐敗しきっている。
規模がでかいだけに腐り堕ちるまではいまだ時間が必要であろうが、賄賂や売官は当たり前といった感じでその様は大将軍何進と宦官十常侍らの争いによってひどいことになっている洛陽の様と大差はない。
人々は日々の享楽に溺れて考える事を止め、その日その日の暮らしを送るのに精一杯のもんゴアいる一方で、そういったものたちから搾り取った財で贅を尽くすものもいる。

王者は無能である事それ自体が罪であり、例えマイナス要素がなかったとしてもプラス要素で満ち溢れていない限りそれは評価に値しないのだ。
官僚に好き勝手にやらせた事は明らかに袁術と張勲自身の失策であったといえよう。



「じゃあ、ここにいるのはほとんど女官みたいな連中ばっかってことだな。三国志時代で竹中半兵衛やることになるなんでね……」
「う~す、とりあえず詰め所みたいなところ押さえて、一刀様に説得していただければ堕ちたも同然っすよ」
「まあ、女官が落とせればほぼフリーパス手に入れたも同然だからな」



当然ながらそんな環境の中にいては太守に対する忠誠心といったものもさして強く育つはずもなく、結果として一刀はアッサリと買収と術を駆使して王城の中へと進入する事に成功していた。









「え、ちょっと、あなたたち、誰!」
「口をふさげ!」
「了解!」
「っ! ……! ……っ…」
『俺に従え!』



太平要術の書は、殺意を持って向かってくる敵対者に対しては使用できない。
武を持ってこちらに迫ってくるものを術の力でとどめる事は不可能なのだ。
あくまでこちらが優位な状況において自身と言葉を交わす相手にしか使用できないそれは、配下を増やす為ならばさておき敵を制するには明らかに向いていない。



「よ~し、もういいぞ。放していい」
「え? もうっすか……さすが一刀様」
「袁術の寝所はどっちの方だ?」
「あの……あっちです」



だからこそ、未だ真っ当な兵力を持たぬ一刀はゲリラ戦術に出るしかなかったのであり、街で暴れるしょぼいチンピラどもを纏め上げて裏を統べれる規模の匪賊団を作った後でも、正面から袁術と競う気など起こさせもしなかった。
この戦国の世で一人無双をするためには少々術が中途半端なことに、一刀が不満を感じていなかったといえば嘘になる。

チンピラ程度を落とすならば数で押さえつければ何とかなるが、結局一刀の牙はそれ以上に対しては直接は刺さりもしない。



「き、貴様ら! この城で何をしている!」
ぴーーー!!
「しまった! 抑えろ!」
「ぐっ……わ、私を殺しても無駄だぞ。今の呼子ですぐに兵が駆けつけてくる。貴様らごときすぐに」
「ああ、そりゃそうだ。でも、来た連中にあんたの口から勘違いだった、誤報だ、って説明すれば話は別だろ?」



あくまで雑兵を纏め上げる能力しか持たぬのが、太平要術の書だ。
だがそれは、逆に言ってしまえばある程度の武力を持っている者でなければ、抵抗すらできないといってもいい。

城にいる軍師、文官、女官、等の軍人ではない役人。
彼ら一人一人の身を守る為に護衛が数十人付いている事はまずありえないし、彼女達が周囲を守られている状況とはいえ、たった一人となる時間が全くないこともまた、ありえない。

ある程度の武を持っていないものに対してならば、非戦闘地域にて雑兵を数十人で襲い掛からせれば一刀にとっての術をかけるに相応しい『場』が作り出せないはずがないのだ。



「よっしゃ、後は袁術が帰ってくるのを待つだけだ」
「じゃあ、この国の兵の服装させた状態で隣の部屋に待機させときます」
「おうよ……ふう、意外と何とかなるもんだな」



要するに、城の中に内通者を作り、まともな近衛を遠ざけ、警備の巡回シフトを理解した上で、数十人忍び込めた時点で、その数十人を一片に吹き飛ばせる武官がいない国ではほとんど『詰み』なのだ。









「ふぅ~、美羽様、お疲れ様でした~」
「ほっほっほ、妾の実力からすればこんなものじゃな」


自分がこのようなことを思いついたきっかけである芸人達を、歌合戦で完膚なきまでに負かした美羽は最高の気分だった。

彼女にとって見れば自分が一番である事など言うまでもないことであったが、それを客観的に証明できた事は嬉しい事であるし、何より暗愚な君主といってもいい袁術にとって、これほどまで直接的に民の喜びの声を聞いたことなど今まで記憶になかったからだ。


「よかったですねぇ~、美羽様。みんな美羽様の魅力に釘付けでしたよ」
「そうであろうそうであろう。もっと褒めてたも……それにしてもいっぱい歌ったら、喉が渇いたのじゃ。張勲、蜂蜜水を持て」
「はぁーい、ただちに」
「あと、献上品の桃の蜂蜜漬けがあったであろう。あれももってくるのじゃ」


そして、彼女の喜びは七乃の喜びでもある。
だからこそ七乃は先の出し物が美羽が喜ぶ結果になってよかったと心底喜んでいた。

万が一美羽のほうが不利であれば軍を動かしてでもこっそり八百長させる気満々であったが、そんな必要もなく望む結果が得られたことでちょっとだけ気が大きくなっていた彼女は、しかし限度を超えて甘やかす事はしまいと心を鬼にして美羽に対して諫言をする。


「両方は駄目ですよ。蜂蜜水か桃の蜂蜜漬け、どっちか一つにしてください」
「どうしてなのじゃ、妾は両方欲しいのじゃ」
「またこの前みたいにぽんぽん痛くなってもしりませんよ?」


それは、あくまで美羽のことを思っての諫言であり、彼女がこの上なく彼女を愛していた証でもあった。


だからこそ。


「いやいや、そのくらいいいんじゃないのか? 七乃さん」
「っ! 誰です!!」


すでにこの国の中枢部まで奪い取った一刀に対して、美羽の身の危険を犯してまでも反抗する事は出来なかった。

七乃自身であれば雑兵を数十人相手にすることは可能だ。
数万を相手に出来る呂布とは比べ物にならないが、七乃自身も雑魚とは比べ物にならない腕を持っている。
だが、袁術自身は……

雪崩れ込んでくる大勢の『自国』の兵士が、何故か美羽の身柄を押さえた時点で、彼女のすべてが『詰』んでいた。





「この様子じゃどうせこれ以上下がる能力値もないだろうしな」
「うむうむ、もっとほめてたも、一刀」
「や~ん、あいかわらず皮肉に全く気付きもしない美羽様って、素敵ぃ♪」





12へ

Comment

自分も全くもって同意見!美羽の次は麗羽だって信じてますw

バカは扱いやすいなぁww
次は袁紹文醜顔良の3バカ、
その気になれば街中をうろついている張飛ぐらいなら
あまり頭は良くないですし言葉巧みにやれば何とかなりそうですね

あと会話文の量はこれぐらいがちょうどいいと思いますよ
個人的には前の描写重視も好きでしたが
非公開コメント

プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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