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神も仏もあるものか・対偶

装甲悪鬼村正のキャラは大抵好きなのですが、特に四公方は全員素晴らしい個性があって信念があって能力があって好きです。
ちなみに、剱冑で好きなのはアベンジとGUTS EIDER。
いつかアベンジの短編も書きたいなあと思いながらも、これにて『神も仏もあるものか』完結です。
村正をクリアした方が少しでも楽しんでいただけたのならば、幸いです。











『っ!』
『な、なんだ! 何が起こったんだ』
『おい、見ろ! 天守閣が』


爆音に思わず振り向くと、彼が守るべき六波羅の象徴とも言える天守閣が突如弾け跳んだ。
その余りに突然の事態に対して、六波羅の頂点の一人篠川公方にして隠密を司る大鳥獅子吼をしても正直驚愕を隠せなかった。

予想外の事態が続いているとはいえ、天守は六波羅幕府の中心といってもいい場所だ。
実務上においてはもっと守らねばならぬ場所はいくらでもあるし、そこに座している四郎邦氏は脆弱にして惰弱、先代である足利護氏がいたときならばさておき、現時点ではいてもいなくても変わらぬお飾りのすむおままごとの家であることは確か。
だが、それでも守らねばならぬ建前の中心地であり、幾重にも武者が守る六波羅の中での最終防衛戦であった。


それが、壊れる……堕ちる。
それは、実際には戦力には何の影響を及ぼさぬものであったにもかかわらず、獅子吼に六波羅幕府そのものの終わりと、自身の身の終焉を強く印象付けた。


『そんな、六波羅が……大和が、破れるなんて』
『糞、銀星号といい、GHQといい!』


当然それは、部下にも伝播する。
否、獅子吼から部下に伝わった、とだけいうのはおそらく正しくない。
その光景による心がおられんばかりの衝撃は、部下から彼に伝わってきたともいえるであろう。



銀星号の出現と、それに呼応するかのごとき零零式の異形化と暴走。
六波羅最精鋭と呼ばれる篠川衆とはいえ、すでにその心にひびが入っていたそれが、さらに大きく広がってしまった。

『象徴』の崩壊とは、それほど大きな事態への影響を意味するのだ。

今における必死の飛翔も、熱量の過剰消費による脳裏への激痛も、全身の筋肉の酷使も、すべて『あれ』を守る為になしていた事。
故にそれが、六波羅が、落ちたというのであれば、己が何のために戦っているのか、分からなくなるのは無理もない。


だからこそ、長年影に徹し、すべてを捧げ、最良を目指した結果として主家に牙を向いたほどの鋼の心を持つといってもいい大鳥獅子吼にすら、衝撃を伝わらせる事になったのだ。

獅子吼のように身命を大和のために捧げつくし今際の際までそれを燃やし尽くす事を当然とし、今なお先代大鳥当主に対して心からの忠誠を誓っているような、大和が倒れようとも自身の全力を尽くすほどの精神の強度を保っているものは、いかに篠川の最精鋭部隊とはいえ持ち合わせていないものも多い。


『グ、アアアアアァァ』
『大田!』


そしてそんな隙は、そんな六波羅が誇る天守閣がほぼ全壊したという事実に対して……いや、そもそも先の爆音自体に何一つ感じ入っていない存在、銀の軍勢にとっては絶好の好機だったのだろう。
己に付き従う武者がまた一騎、銀星号の配下によって散らされた事を獅子吼はその同僚であるもう一人の部下の悲鳴で知り、ぎしり、と音が鳴るまでに悔しげに奥歯をかみ締める。


目線を戻せば、そこには武者が。
銀の装甲に身を包み、自在に空を駆けて遠間から一撃必殺の鉄槌を振りかざす、異形の武者がそこには無数にいる。

接近戦ではいかなる武器をも凌駕する破壊力を持つ真打すら抱える獅子吼の部隊に対して、決して近づかず、数の優位と弾幕でもって近づかせず、常に一定の距離を保ってこちらを的確に削っていく。

その姿だけは、かつて獅子吼の部下であり、大和を守る為に燃えていたときと同じように。
守るべき大和の空を、傍若無人に蹂躙していた。


『くくっ』


その形相に、あえて口元で小さく獅子吼は笑う。

これは、負け戦だ。
れっきとした負け戦である。
だが、その程度で笑えなくなるようでは、精々底が見えている。
今まで数多くの者を、闇から闇へと葬る事で他人に負け戦を強制してきた獅子吼にとって、いざ自分がその立場になったからといって『何故!』と醜く喚く事など自分自身にだからこそ許せる事ではない。

だからこそ笑うのであるが、それでも胸のうちから迫り来る激情はそんな理性を今にも食い破って叫びだしそうになっている。
自身が政戦でほんの僅かに取った遅れが大きく影響した事で、自分が手塩をかけて育てた部隊が今守るべき大和に牙を剥いている。
それは、部下を失った悔しさとは別の感情を、獅子吼にもたらした。




それでも獅子吼は、混乱のさなかにいる部下達を収めようとはしなかった。


その間にも銀色の軍団―――元・零零式竜騎兵たちの猛攻は止まらず、獅子吼の部下達は一騎、また一騎と徐々に数を減らしていく。
時代を変える兵器、数打をして真打の装甲を抜く事を可能とした武器「発振砲」は、その使い手たちが大和を守ると理想に燃えていたあのときと変わらず今も猛威を振るっていた。



一騎、また一騎と落とされてゆき、やがて絶望が彼らを包みそうになったまさにそのときに、ようやく獅子吼は口を開く。


『隊列は無視しろ……俺の指示も、待たなくてもいい。狂ったとはいえ、奴らも我々と同じ訓練を受けている、まともにやっても落とされるだけだ。訓練に則らず、今まで培ってきたすべてを使って回避しろ!』
『『『っ!』』』
『貴様らが背後に背負っているのは、己の命なぞという軽いものではない。大和そのものだ。味方を盾にして、友を見捨て、そして俺を踏み台にして、やつらに大和を守るという事がどういうことか、教えてやれ』
『『『……はっ!』』』


仮にも部隊の指揮官としてはあまりにあまり、指示ともいえない指示。
今まで彼の支持の下、各々の役割に徹した高度に組織された軍隊として剱冑を駆ってきた彼らにとって、それは受けた事のない指示だった。

戦いに奇麗事を求める事を嫌い、いかなる手段を取ったとしても着実な結果を求める。
命令に対する絶対服従とそれによる確実な戦果をして、六波羅最精鋭と呼ばれるようになった篠川軍を指揮してきた獅子吼から、今まで聞いたことのない珍妙な命令。



だが、それは瞬時に徹底され、零零式の持つ発振砲の威力を誰よりも知るからこそ諦めかけていた彼らに、再び胸のうちに火をつけることに成功した。


彼らにとって獅子吼は恐ろしい指揮官だった。
元暗殺者であったと噂されるに相応しい身のこなしに、それに似合いの漆黒の剱冑。
訓練では常に限界の一つ上を要求し、それが僅かなりとも出来なければ容赦ない叱責が拳とともに飛ぶ。
彼に再起不能にされた同僚は数知れず、そのうちの誰一人彼に対して一矢報いる事さえできずにいつの間にか消えていた。


それでも、その指揮に従ったのは、彼が誰よりもその自分自身の言葉に従っていたからだ。
誰よりも厳しい訓練をこなし、弱音は決して吐かず、贅沢と怠惰を嫌い、日々のすべてを大和のために。
六波羅の軍人とはこうあるべきだ、ということを背中で示した模範がすぐ傍にいたからこそである。

そして、その背は未だにいつものままである、という事実は恐慌に陥った彼らに普段の訓練を思い出させるのにこれ以上ないほど雄弁に語っていた。




『ふん、忘れたのか。貴様らに発振砲を与えたのが誰だったのか』


撃墜されて堕ちたもはやすでに命の火がなくなっている部下を獅子吼は拾い上げる。
だが、それは同情や憐憫、死者に対する哀悼などからなっているものではなかった。

獅子吼は、その堕ちた剱冑の装甲を盾に前進する。
いくつもの発振砲の一撃が獅子吼に迫るが、獅子吼はそれらすべてをよりにも酔って同胞の以外を使って防ぎきった。

銀の軍勢から音なき驚愕が伝わってくるかのように、獅子吼の部下達には見えた。


発振砲は金打声を利用した超音波兵器とでも言うべきものだ。
内部燃料に引火したり、あるいは仕手の肉体そのものに損害を与える一撃必殺の威力を持つが、所詮音波。

直進性はさておき、貫通性は精々装甲一枚分。
元々大電力による運用を無理やり小型化したものなので、開発に際しては剱冑一機分の装甲を貫くだけで十分と割り切られている。
それは、たとえ銀星号によって強大な力を与えられていたとしても、覆す事の出来ない『限界』だった。


だからこそ、「味方の死体」という重厚な盾を装備した獅子吼の駆る銘伏を貫く事は出来ず、その事態を狂った頭脳は理解できなかったのか、容易く接近を許すこととなる。


そして、近づいてさえしまえば零零式の利点などありはしない。
手近にいた銀の軍勢の一員に対して銘伏より繰り出したその一刀は、影働きで鍛えに鍛えた仕手の技量もあって無銘ながらも名物にも僅かも劣らずに鋼を切り裂いて、その首を落とした。

戦場においても一定の敬意を払われるべき以外を傍若無人にもたてにしたうえで、一刀の下かつての部下を容赦なく切り殺したその姿は、彼の語る「味方を犠牲にしても」という言葉を何よりも雄弁に語っていた。



無言ながらも若干慌てたような気配で、その周辺にいた銀の軍勢が逃げようとするのを追って一騎、また一騎と落としていく獅子吼に勇気付けられたのか、彼の部下もかつての同僚に向かって必死で喰らいついていく。


時に味方を盾にして敵を殺し、時に自分が盾となって味方を守って、無慈悲で無機質な死の一撃を回避して近づき、武者としての技量を競い合う双輪懸、過去の遺物となりつつある戦いを強制して何とか少しずつ落としていく。

それはまるで、かつて元寇の武者達が集団戦法を取っているにもかかわらず、あいも変わらず一騎打ちを挑んで散っていった古の武者を思わせる光景だった。



歴史の証明通り、無論そんな無理がいつまでも通るはずがない。

そもそも一機分の合当理で二機分の装甲を空に浮かばせる事自体が無理な事だ。
過剰な重量を背負った剱冑の動きは当然遅くなり、旋回性も加速性も大いに現ずる事となったそれは直線状の一撃ならばさておき囲まれた状態での多方向からの同時発射には耐えられない。
盾と出来る味方の数には勿論限りがあるし、その非人道的な人間の盾にしたところで発振砲を何発も受けることになれば徐々に壊れていく。



ならば結果は論ずるまでも無い。
ある者は熱量の欠乏により飛翔そのものがかなわなくなり地に堕ち、ある者は互いの意思疎通がうまくいかずに味方同士がぶつかってしまった瞬間を発振砲に狙われて二機纏めて打ち落とされた。
ある者たちは回避を重ねるあまりに仲間とは分断されてしまい、何も出来ずにつるべ打ちを喰らい堕ちた。


そもそも、現行のそんな戦術で対抗できないからこそ切り札として零零式は量産されたのだ。
ならば、数にも劣る旧式の彼らがいくら頑張ったとしても、勝てるはずがない。


そんな事は、彼ら篠川衆であれば誰にだってわかっている。
時代を終わらせる兵器であると知り、忸怩たる思いを抱えつつもそれでもGHQへの反逆のために認めざるをえなかった超兵器が相手なのだ。
高速鉄鋼弾やステルス技術と同じく、自分たちの闘いを過去の遺物へと押しやるだけの力を持っていることなど、重々承知の上だ。

だが、わかっていても彼らは飛び続ける。


その純然たる事実を誰よりも固執していながら、それでも最も最前線で戦う彼らの司令官がまだ戦場に残っているからだ。







獅子吼は、さらに一体銀の剱冑を葬った後にちらりと崩れた天守閣を確認した。
四郎が生きていることが確認できればよし、生きていなければこいつらを打ち倒した後の展開についても考えなければならないからだ。

そして、その視界に六波羅最強の武者が駆る金の剱冑と相対する、一つの剱冑を見つけた。

思わず、剱冑の中にいながらも癖となっていた閉じていた片目をうっすらと開けて、その後細める。

あの崩れた天守閣後にて、自身をも凌駕する六波羅最強の武者、今川雷蝶と互角に戦っているのが誰かわかったのだ。


『くくっ、お前も出てくる羽目になったか。そうだ、それでいい……やるならば、全力を尽くして我らを裏切るべきだ』


黄土と黒の入り混じった、虎縞のような模様を持つ剱冑を見た瞬間、獅子吼は何故かその剱冑そのものが茶々丸であることを確信した。
獅子吼は別に、茶々丸が生きた剱冑であることを知っているわけでも、虎徹の装甲状態を見たことがあるわけでもなかった。
茶々丸の戦い自体は見たことがあっても、今あの体を操っているのは彼女ではないゆえ、動きから判別したわけでもない。


それでも彼は、あれが足利茶々丸であるという確信があった。


獅子吼はただ考えて、その結果として到ったに過ぎない。
この銀の軍勢を企んだ者が誰なのか、今この時間、この瞬間において四郎を、雷蝶を狙わねばならない理由をもつであろう者がほぼ一人しか存在しないであろうことが。
そして、雷蝶と互角に死闘を演ずることが出来る人間の心当たりが、一人だけあったため。




と、ここで獅子吼は茶々丸からの連想で、脳裏にすでに無き彼の弟を何処か思わせる男の姿を思い浮かべ、その男に対して自分が語ったらしくない言葉を思い出した。



「誰にでもひとつくらいは無条件で信じられる価値があってもいい。
いくつもあったら単なる馬鹿か聖人だがな」
「家族だの、親友だの。今の俺にはどちらもないが……国家がある」
「この大和という国だけは信じられる。守り通すために身命を擲てる」



おそらく、彼をつれてきた茶々丸が裏切った以上、あの男―――超現実主義者の彼にして何処か亡き弟を思わせた湊斗景明もまた、何らかの茶々丸の陰謀の駒の一つ、つまりは自分の敵なのであろう。

それがわかってもなお、獅子吼は何故か景明を怨めなかった。
いや、彼はこんな現状になってもなお、誰一人怨んでなぞいなかった。


また一騎、こちらに向かって発振砲を向けてくるのを見て瞬時に銘伏の陰義、自己隠蔽を発動させつつ回避して、改めてその訳を考えて獅子吼は呟いた。



『そうだな……俺とお前はやはり同類だ。譲れぬ己の私利私欲のためにすべてを捨てている。だから茶々丸なぞの言にのったのであろう』



彼が大和を守りたいのは、何も力なき民を守る為、といった大儀によるわけではない。
そんなちんけな『正義』の為であれば、力を持って弱者を制する今の六波羅のやり方を誰よりも実践してきたはずが無い。


彼が大和を守りたい訳はたった一つ。
たった一人、大鳥家先々代当主、大鳥時治が大和を愛したというただの一点。
大恩があり、今も誰よりも敬愛し、尊敬する時治が望んだ事を叶えたいというただそれだけを胸に今まで手を汚してきた。


『所詮こんな混乱の世は弱肉強食。我欲と我欲のぶつかりあいだ』


そう、獅子吼は己が正義などというたわけた存在でない事を自覚している。
大和を守りたいのは、『己』がそれをしたいという欲望を持っているからなのだ。

自分のために、大和の平和を求めているこの男は、だからこそ誰かが誰かの都合で自分の邪魔をする事も正当であると自認する。

他人の我欲を踏みにじって、自分の我欲を押し通してきた。
それが敵ったのは、獅子吼が正しかったからではない……強かったからなのだ。
なればこそ、強くなければ次は己が踏みにじられる番だ、という事ぐらい自認しておらねば、あまりに醜悪、あまりに愚劣。



だからこそ。
自身の我欲を貫いて、誰かの我欲を粉砕する為に、獅子吼は再び一刀を振り下ろして吼えた。




『こいつらを片付けた後は、貴様の番だぞ、湊斗景明ぃ!』







そうして大鳥獅子吼は。
大空に堕ちた。



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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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