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外史につくろう穢土幕府・07

なんか最近拍手数がものすごいことになってて逆にちょっと怖いんですけど……
こんなに見てる人いたんだとちとびっくり。
てっきり誰かが一人でカウンターを何百も回しているものだとばっかり。

さて、それはさておき悪一刀の冒険、張角三姉妹の続きです。
なかなかお話が進みませんが、本日も更新です。











人の欲望は限りない。

初めは、ただそれがあるだけで満足だった。
それを手に入れられたことだけを喜び、何時間見つめ続けていても飽きる事はなかった。
物であれ、者であれ、それは同じだ。


だが、感動は時間と共に薄れていくし、喜びもそれと共に徐々に日常へと化していく。
足ることを知る賢人ならばさておき、凡人ならば最初の感動と同じだけの大きさの感情の揺れ幅が常に欲しくなる。
だが、かつての者はもはやその輝きを失っているようにしか自分には見えない。

だからこそ、新しいものへと手を伸ばし続けるのだ。
以前よりもよいものを手に入れられれば、再び感動を得られる。喜びを受けられる。

だからこそ人は、より高い物を、より旨い酒を、よりよい女を求め続けるのだ。


普通の人間ならば、その繰り返しでいずれ限界に達する。
金銭的な問題や、物理的制約から「以前よりもよりよいもの」を手に入れられる限度があるからだ。
年収六百万の男が毎年六百万以上のものを手に入れられるはずがない。

だからこそ人は現状で満足=妥協を覚えるか、あるいはそういった物質的快楽とはまた別物の「子供を育てる」といった娯楽で満足しようと自分に言い聞かせる。


だが、普通でない人間はそこでは止まれない。
二千万、という年収を持っていれば、毎年六百万の浪費は難しいものではないし、それが年々増えていったとしても三兆の財産があればその限界は随分と先のことになるだろう。


そう、王者であればその「よりよいものを得続ける」という手段で持って常に新しい感動を得ることが可能なのだ。

無論、そういった王者にも金銭的、物理的制約は存在するものの、それらは常人のものと比べて遥かに大きい。
そうである以上、時として彼らはその広大な制約が限界に達するよりも早くに、人としての破綻を迎える事となる。



その破綻への道に、一刀は手をかけ始めた。




この時代、娯楽は少ない。
現代人である一刀からするならば、テレビもゲームもパソコンもないこんな世界では、女を抱く・酒を飲む・本を読む・飯を食うのほとんど四択でしかない。

庶民にとって見れば、酒も本もかなり高価なものであるし、女を買うとしてもそれなりの金がいるから、さらに選択肢は狭くなる。

だからこそ、旅芸人なんていうのが成り立つ訳であるが……パンと見世物であれば、優先されるのはパンだ。


「みんな~、次は私たちの新曲だよ~」
おおおおおおおおおお!!
「たっぷりと、楽しんでね♪」
おおおおおおおおおお!!
「それじゃあ、聞いてください」
おおおおおおおおおお!!


少女達が声をかけるたびに何人もの男達が周りを巻き込んで熱狂の渦と化し、その会場全体に熱波を広げようとする。
だが、それはすぐさま霧散する。

確かに男達の勢いは凄まじいものがあり、それが数多く集まればまさに今一刀がやっているような理性を持った狂信ともいえるような状態を生むのであるが、それは決して会場すべてにまで伝播しては行かなかった。


パンのないことによる空腹を忘れさせる事の出来るほどの見世物なんて、なかなか用意できるはずもない。
別の歴史では黄巾党を作り上げた張角三姉妹も、この外史においてはその壁を打ち破る事が出来なかった。


熱狂的な一部の男とたちとは裏腹に、それを遠巻きにするかのように集まったほかの男達は談笑しながら張角たちの舞台を見る。
ある者はその曲を聴きながらかつて聞いた芸人のそれと比べてどちらがよかったかと思い起こし、ある者はその芸を見ながら久々に街で女でも買おうと胸を膨らませる。
あるいはこの会場をただ単に商売のタネでもないかともぐりこんだに過ぎない者もいるし、そもそも一刀の一味がサクラとしてもぐりこませたものさえいる。

結果として、張角らの魅力に囚われ、心底から彼女らの熱狂的なファンといえるような人間の数は、会場全体から見るとそう多いものではなかった。


「まあまあ、うまくいっているみたいだな」
「彼女達が食べていくには十分でしょう。ただ……上納金まで出るかは微妙なところですがね」


影から見つめる一刀の顔にも、熱狂はない。
彼はそれほど熱心というわけではなかったが、それでも毎年数百と出る音楽と舞台に囲まれて育ってきた人間だ。
楽器も、設備も、仕草も、すべてが計算されてその上で鎬を削っていたかつてのことを思えば、張三姉妹のそれは余りにつたなく、田舎くさいものに見えてしまった。


あくまで娯楽がない世界だからこそ人が集まったそれは、しかしそれ以上の力までは持っておらず、この外史においては黄巾を作るには力不足だったということだ……太平要術の書を持たない彼女達では。
実際に彼女たちに舞台さえ与えられれば何とかなるほどの圧倒的なまでの実力があれば、前の街で食べるのもカツカツなぐらいに興行がうまくいかないこともないだろう。

だから、一刀の気紛れでこの街で事務所と専門の劇場を与えられたとしても、それを大きくしていくのはさぞや大変だろう。
ちょっとばかし大きな舞台を与えられた旅芸人に対する、それは正統な評価であった。
勿論、かつてクラスメートと一緒に行ったカラオケよりかはよっぽど楽しんでいたが、彼女達が軍事的に使えるほどという評価は、一刀のみならず彼の側近も誰一人していない。

だからこそ一刀は、賭けの勝利を確信してその場を後にした。







「君達がこの街で無許可で興行をしようとしてたって人たちかな?」
「はぁ? そもそもあんた誰よ! なんでちぃ達が歌うのにあんたらなんかの許可がいんのよ」
「っ! ちぃ姉さん、ダメ!!」


一刀の尋ねに三姉妹の真ん中―――張宝こと地和が速攻で噛み付く。
彼女にしてみれば自分たちはただ歌っていただけなのに、突如不法な目にあっているのだ。
今までも決して安全快適なだけの旅ではなかったが、ここまでの目にあったのは初めてだった彼女からしてみれば、その反論は正統な権利でしかない。

が、それを妹である張梁こと人和が止める。
その顔は、男達に囲まれているという事以上に真っ青になっていた。
姉である張角、天和もまた言葉には出さなかったものの同じような表情をしていた。

それを受けて「何でよ!」と怒鳴り返そうとした地和であったが、周りの雰囲気をようやく察知したのか、その声が口から出ることはなかった。
一刀の目が、笑っておらず、かといって詫びてもいないようにしか見えなかったからだ。


「姉の無礼は、私が心よりお詫びいたします。どうかお許しください」
「ああ、まあ何も言わずにつれてきたこっちも悪かったから、おあいこという事で」


人和の詫びに笑って応える一刀は、しかし彼女達にとっては刃物を持って脅しつけているようにしか見えなかった。

彼は、決して本質が冷酷になったわけではない。
だが、人を従え、女を抱き、財を成した彼はそれによってある程度の自信とやくざとして相応しい人を脅しつけるだけの押し出しの強さは確実に自身の力として手に入れた。
それは太平要術の書の妖力によるものではないが、書があったからこそ手に入れたものである……だが、それでもそれは確実に彼自身が獲得した力だ。
特筆すべきものを何一つ持たず、身一つでこの外史に産み落とされた彼が性根のよささえすり減らしながら始めて手に入れた彼自身の技能だ。

それゆえ、胸に見とれてしまっていて今にも破綻しそうな張りぼてのものであっても、とりあえず交渉の一手段として彼女らを脅しつけるぐらいのことは何とか可能となっていた。


周りを屈強そうな男に囲まれた上で一刀の目を目にした地和は、それに押されて声も出せなくなる。


「とりあえず~、私たちも興行でお金を稼いだらきちんとお礼しますので、もうちょっとだけ待っててもらえませんか~」


そんな妹を庇うかのように天和が一歩前に出て、一刀に向かって懇願する。
彼女はいろいろとゆるいが、だからといって長姉としての自覚が全くないわけではないのだ。
その一挙動一挙動で縦横無尽に跳ね回る胸のゴム鞠を見て、思わず反射的に仮面を外して太平要術の書を使って自分の信者にしたくなる一刀であるが、かろうじて踏みとどまった。

彼の中ではまだ彼女らは「己の身の安全を蝕む」様な存在では全くない。
大喬小喬のように自分で自分に言い訳できるような状態ではないのだ。

それゆえ、有名無実となりながらもまだひと欠片だけ存在する彼の良心が、術で操る事だけは拒んだ。
だがそれは、決して彼の意思が強いからではない。

今までの経緯から見てもわかるとおり、彼の意思の固さなんて豆腐ぐらいしかない……どれだけ大幅に見積もっても、木綿豆腐が関の山。
だから、術をかけることを諦めたのは決して、彼が善人だからではない。


「見逃してといわれて見逃してたら、治安維持はなりたたないっすよね、御頭」
「ま、そうだな」
「そこを何とか、お願いします。この通りです」
「条件によるなぁ……そうだ、じゃあ俺と賭けをしないか?」


絶対有利な場においてカードの一枚を捨てるぐらいかまわないという気持ちが彼の良心を強力に後押ししたからこそ、彼は術を使うのを思いとどまったに過ぎない。

他に彼女らを篭絡する手段を思いついたからこそ、そんな寛大さを持つことが出来ただけなのだ。







「れんほーちゃ~ん、お金はどう? そろそろこの町を出ても大丈夫なくらい、溜まったかしら~」
「だったらちぃ、ちょっとぐらい美味しいもの食べた~い。こっちに来てすぐあの男に絡まれてから、ほんと碌なもの食べてないんだから!」
「…………」


興行を終えて暢気な事を言っている二人を前に、眉をしかめている人和は、溜息を着くことだけはかろうじて抑えた。
姉達にここで何かを言っても始まらないのはつくづく思い知っているし、人和は絶望的な状況に立たされてもそれでもなお明るくいられる二人のことを心から愛しているからだ。

だが、そんな二人の姉を前にして微笑みを保てないほど、人和は心労を抱えていた。


「あはは~、冗談冗談。明日もまた、頑張ろうね二人とも」
「もっちろん! 明日もちぃが、みんなの心を鷲づかみよ」
「姉さん……」


そんな人和を見て二人は明るく笑って先の言葉を取り消したが、いつもわがままで且つ天真爛漫な二人にまでそんな気を使わしていることに、人和は一層悲壮そうな表情を強めた。

それを見て、普段は無邪気な天和がほんの少しだけ眉根を寄せた。


一刀から出された賭けとは、彼女らの矜持を試すものだった。

彼はまず、彼女達に専用の舞台を与えてくれた。
単なる一旅芸人である彼女らにしてみれば、街で辻興行を行う事はあってもこのような自分たちを見るためにわざわざ人が見に来てくれるというその環境は、望んだとしても得られない大きな物。
自分たちの実力に自信はあっても、未だに大舞台への機会が得られず少々焦っていた彼女達にとって、それは願ってもない機会だった。
それだけならば、彼女らは喜んでそのプレゼントを受け取り、日々楽しく次の夢へと邁進する事が出来た。






だが、それ以上の爆弾も一刀一味は彼女らに括り付けていった。

『一月の時間でもってこの劇場で上納金を稼いで見ろ』

明らかに無茶な条件である。
確かに普通の芸人であれば上納金とやらはそう高いものではないが、一刀はそれに劇場の建設費まで乗せてきた。
より正確に言うのであれば、その建設費分の金額だけを上納金として要求してきた。

自らの芸に自信を持っていて、機会さえあればすぐにでものし上がってやると夢見る三人にしても、その金額は劇場を建てた建設費を考えるならば妥当とはいえそうやすやすと一月ばかりの期間だけで稼げる額には思えなかった。


だが、彼女達は逃げるわけにはいかなかった。
劇場の代金分を稼げないとはすなわち、彼女らの芸はたとえ大舞台においても通用しない、もうこれ以上芽が出ることはないということを客観的に証明するのに等しい。
それは彼女らにとって、一刀一派の暴力以上の恐怖だ。

仮にも、芸事で糧を得ているものに対して「お前の芸では食べていけない」というのは明らかな侮辱だ。
苦しいながらも三姉妹力をあわせて今まで乗り越えてきた彼女らにとって、たとえヤクザ相手でもそこは引いてはいけないところだった。

だからこそ彼女達は、この分の悪い賭けに三人そろって乗る事にしたのだ。




(うう~ん、やっぱり人和ちゃんの顔色を見ると、無理なのかなぁ)
(なんで、なんでなのよ! ちぃ達の実力を、何で認めてもらえないの!)
(少しずつお金は溜まってるけど、このままのペースじゃ絶対に間に合わない)


だが、現実は非常である。
この外史は才能がすべての世界だ。
努力も、信念も、家族愛も、すべては才の気紛れの前に屈する定め。

一刀と違って太平要術の書を手にする事の出来なかった彼女らにとって、世界はそんなに甘くない。
元々才能があれば、この世界でもすでに芽が出ているはずだ……今までそれがなかった以上、今になってすぐに花開く事などありはしない。


「(やっぱり、一ヶ月じゃ無理だったのかも……でも、ただで待ってくれるような人には見えなかったし)……おねえちゃん、ちょっと用事を思い出したから出かけてくるね~」
「ちょ! 姉さん待って……はぁ、こんなときにもう! 今日の興行は終わりとはいえ、どこに行くってのよ」
「まあ、姉さんがいても正直あんまり役に立たないけど……」
「それでも、いないよりはましでしょ」


それは誰もがわかっていながら、しかし妹二人は動く事が出来なくなっているのを見て、天和は一人で動くことを決めた。

それしか、彼女に出来ることはなかったし、彼女もまた妹たちの事を愛していた。








そして、そんな事に漬け込んだ一刀は、初めて太平要術の力を使わずに目的のものを手に入れたことで、ますます調子に乗る事になる。




   08へ

Comment

お~~ついに地力?で女を落としやがったか
しかし現時点ではただのヤクザ
これが曹操を捕獲するまでの人物にまでが非常に見ものですね~
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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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