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鬼畜ま!20

二十話

そういえば、リメイクでミルの出番はどうなるんだろ?









 朝倉和美はジャーナリストである。
周囲の評価はどうであれ、朝倉自身は常にジャーナリストとして活動しようと努めてきた。

無論、中学生である以上それでお金を稼いで食べていっているわけではないが、少なくとも今の時点で取材や記事を書くことについての努力を怠ったつもりは無いし、将来の進路としても報道関係につくことを希望している。
口さの無いものは朝倉の事を「麻帆良パパラッチ」と呼んだりもするが、朝倉が望むのは大スクープであって決してゴシップのみを追い求めているわけではない。無論、大衆受けするゴシップを否定する気はさらさらなかったが。


 その彼女にとって、「驚愕、10歳教師の乱れた淫行私生活!!」というのであればさておき、ネギに誰かが告白したという事ぐらいでは望む記事は書けそうになかった。
とはいえ、千里の道も一歩から。クラスメイトとのコネと、ひょっとしたら何か面白い事が聞けるかという期待を持って、朝倉は告白したであろう人物の大本命、宮崎のどかにインタビューを試みた。


「ねえねえ、ネギ先生と寝たって本当?」











(はあ、やれやれ。やっぱ予想通り、こんなんじゃ記事になんないよ)


 もとより期待していなかったとはいえ、ほんのちょっとは期待が裏切られるかな~と思っていた朝倉は、のどかから聞き出したほぼ完全に予想通りの青臭い告白の行方を思い返していた。
返事は期待していない、というところは少々面白かったがこれを記事にしてしまってはまさに「薮蚊」と呼ばれ忌み嫌われる意味でのパパラッチであり、そのようなことをすれば朝倉のことをスクープを取ることを目指す優秀な記者であると誰も認めまい。

 そう思ってため息を一つ吐き出し、記録していたテープの中身を証拠隠滅のために消去する。
いくらなんでもこれをあやかなどに聞かせるのは真剣なのどかと、それを受け止めるネギに失礼という物だ。


(ま、みんなが知ったら騒ぐだろうし、この件は秘密にしといてやるか。ゆっくり進む恋もあるさね)


もっとも、知ってしまったことは有効活用するのが朝倉の主義だ。せいぜい、これをネタにからかわせてもらおうとは思うが。

 ともあれ、あやかたちが期待していたような物ではないが、とりあえず調査は終わった。
が、仕事は完璧を期すべしということをいつも口すっぱく言われている朝倉は、一応裏付けを取るためにもう片方の当事者であるネギの方へと向かった。


(おっ、いたいた)


 そう長く探すまでも無くネギは見つかった。どうやらちょっと外に出るようだ。気付かれないようにこっそりと後をつける朝倉。

のどかはネギに告白したといっていたが、朝倉からしてみればペットのフェレットに話しかけている姿はどう贔屓目に見ても愛玩対象であり、恋愛対象にはなりえない。
ちょっと距離があるためネギの声は聞こえないが、告白されたショックからかへろへろしながらも必死になって動物に向かって何か独り言を言っているらしいネギの子供っぽいしぐさに思わず口元が微笑みにゆがむ。


 が、その笑みがすぐに凍りつく。

ネギの進行方向に、子猫が一匹たたずんでいたからだ。
いや、それ自体は別に問題ない。
子猫といっても一メートルあるとか言う異常なものではなく、ただ単に普通のかわいらしい子猫だ。ここは俺のテリトリーだ、入ってくるやつぁ容赦しねえとばかりの堂々とした態度で寝転んでいたが、それはいい。
 だが、その子猫のいる場所が問題だった。


 道路、ど真ん中。
 ねこ、まっしぐら、となんとなく響きだけは似ているが、そんなのんきな状況ではなかった。


 何でそんなところにのんきに座ってるんだと突っ込みを入れたくなるぐらい人間様の都合を考えない場所に居座っていた。
猫からしてみれば、確かにどこであろうと干渉されるいわれは無いかもしれないが、所詮は子猫だ。成猫ほど注意力が無く、迫り来る乗用車の脅威にまったく気付いていない。
しかも、運の悪い事にそれに気付かなければならないはずの運転手は、携帯に夢中で前方不注意により子猫の存在なぞまったく感知していない。

 いくらスクープを狙っているからといって、猫の死ぬ瞬間なぞ悪趣味極まりなく、朝倉もそれを喜ぶ感性の持ち主ではなかった。ジャーナリストにも理性は必要だ……それがなければいい絵なんて取れるはずもない。
そのため、その場で猫に一番近い人物にありったけの声を張り上げて注意を促した。


「ネギ先生! 正面、猫、車が!」


 あわてるあまり片言になってしまったが、それまでぼんやりと歩いているように見えたネギに注意を促す事はできた。だが、その距離は絶望的なまでに遠い。
そのことに朝倉も叫んだ直後に気付いた。


(駄目! 子供の足じゃ間に合わない)


 クラスメートの神楽坂明日菜ほどの脚力があるならばともかく、どう考えてもネギの短いコンパスでは間に合わない。
ネギに注意を促すために一瞬足を止めて叫んだ事を後悔しながら直後に間に合わないとわかっていてもダッシュをかける朝倉。


 そして、その行動より前に朝倉の注意によって駆け出していたネギ。思わず、ネギをとめるための声が喉まで出かける朝倉。子供の足では最速でも猫共々ミンチに! そんな予想が脳裏をよぎる。
無理に彼に対して声をかけたことに対する後悔こそが一瞬のうちに駆け抜ける。


(ギャー!! し、死んだー!!! って、嘘!)


 が、そんな朝倉の予想を裏切る速度をネギの足ははじき出し、朝倉以上の速度で一瞬のうちに子猫の元へとたどり着き、その肉体に乗用車がぶつかる前に子猫を抱えて前転して難を逃れる。
 一つの命を奪いかけた乗用車は、けしからんことにその少年の命がけの救出劇に気付くことなく走り去っていった。

 だが、それに気を取られる事もなく朝倉は、緊張が切れたのか道路わきに猫を抱えたままへたりこむネギの元に走っていった。


「大丈夫? 怪我は無い? やるじゃん、ネギ先生! よかったよ~今の気分はどう?」


 思わずレポーター魂がうずいてしまったのもご愛嬌だ。そんなせわしなく語りかけてくる朝倉に対し、ネギは腕に抱いた子猫の無事を確認するとにこっと笑って答えた。


「大丈夫です、朝倉さん。この子も無事でしたし、僕も怪我していません。教えてくれて本当にありがとうございました」
「何いってんの、全部ネギ先生のやったことだよ。ほんと、すごかったよ。足速いんだね。あ、ちょっと待って、はい、ポーズ」


 まだ興奮が収まらないのか、ネギにいろいろと語りながらふと思いついたのか猫を抱いたままのネギの姿を何枚もカメラで納める。修学旅行明けには「子供先生、わが身を省みず子猫助ける!」の文字がまほら新聞に踊る事だろう。美談は日本人の好むところだ。

 その興奮に釣られたのか、思わず朝倉が策略や真実を聞き出すためのテクニックなどをすっかり忘れてついさっきのどかから聞いたことを漏らしてしまう。


「やっぱり宮崎に告白されるだけあるね~、私も惚れちゃいそうなかっこよさだったよ、ネギ先生」
「!! 何で知ってるんですか、朝倉さん!」
「? 何のこと、ネギ先生?」


 あまり脳を通っていない発言だったため朝倉は自分が何を言ったのかすぐには思い出せなかったが、自分しか知らないと思っていたこと(コックさん~でごまかせていると半ば本気で思っていた)をいきなり言われたネギは、驚いて一体どこからそんなことを聞いたのかと朝倉に尋ねた。
 そのネギのしぐさに、一体何を自分が言ったのかようやく思い当たったのか、ポン、と手を打つ朝倉。が、特に深く考える事はなく、せっかくの機会を生かすことに決めたようだ。


「何って……その……」
「あ! いっけない、いっけない。まあいいか。ついでです、ズバリ、ネギ先生! 宮崎のどかちゃんに告白されてどうでしたか!」
「う、うう~~、の、ノーコメントです~」


 猫騒ぎで一時的に忘れさせられていた物を思い出さされたネギは、一気に顔を赤くする。
そして、そのまま猫を抱えてその卓越したダッシュで朝倉の前から逃げ去った。
とにかく今は考える時間が欲しい、という思いからだ。外に出たのだって今まで考えた事も無いことに頭を働かせたため煮詰まってきた気分転換のつもりだった。人に話せる状態では無いネギは、朝倉の追求から逃げ出した。


「あん、惜しい。まあいいや、あの反応だけでもとりあえず裏づけは取れたし」


 とにかく、ついさっきの特ダネをみんなに知らせるため、朝倉は集団の中へと駆け戻ることにした。






「ま、撒けたかな」
「そりゃ、兄貴が全力で走ったら明日菜の姐さん以外だったらほとんど追いつけないでさぁ」


 一方、朝倉の追求を態度で肯定しながらも何とか巻く事に成功した。
 先ほど、子猫を助けるのに使用したように、ネギの脚力はほとんど人間離れしている。

それは、図書館島における魔法使用禁止にしたときの自分の筋力のなさのために生徒を危険にさらした事の反省からだ。
必要なときだけ魔力で身体能力を強化するという方法であれば、あまり魔力を食わないため確かに普段から魔力を節約できる上に魔力感知の魔法等にも引っかかりにくくなるという利点がある。

しかし、身体は無意識に魔力による筋力の補助に頼って身体能力そのものは上がりにくくなるし、図書館島の時のように魔力が使えなくなったときには非常に体が重く感じてしまう。

それに対して、ネギの語学力等魔法の補助で「憶えた」ものは、勉強したものと同じで魔力がなくなっても消去されることは無い。つまり、魔法で補助して肉体を鍛えれば、たとえ魔力が一時的に使えなくなったとしても筋力が消去されることは無い。
要するに、魔力で大リーグボール要請ギブスを作りながら訓練すれば、訓練校かが上がるのでは? という事だ。

 そのため、師匠であるエヴァから実戦形式の修行に移る最初の段階で、普段は魔力で身体を鍛え、戦闘やいざというときにそれに加えて瞬時に今までどおりの魔力による身体強化を行う事ができるようにトレーニングをされてきていた。
 優れた身体能力を「生まれながらに」持つ吸血鬼であるならばさておき、生物的に劣る人間であればもとより少ない筋力を少しでも強化するために手間を惜しむ事は許されないと師匠であるエヴァはランスとの戦いで感じていたからだ。


 始めは慣れない魔法の使い方に戸惑っていたものの、この修学旅行に来るまでにある程度の時間を異界空間の『別荘』のなかでみっちりと仕込んできた成果が現れたということだ。
 その結果として今までであれば到底間に合わなかったであろう子猫の危機を救うことができたということで、ネギは師匠であるエヴァに深く感謝していた。

 が、その稀代の大魔道士直々の修行でも、今ネギを悩ませている問題の解決の役には立たなかった。まあ、おそらくあの師匠がこの場にいたとしても何の役にも立たないだろうが。


「ふ~、せっかく子猫を助けた事で忘れかけていたのに~~って、いや、忘れる事自体が駄目だ。きちんと誠意を込めてのどかさんにお返事しないと」
「とりあえず、なせばなるって言葉もあることっすし、お試し期間という事で付き合ってみたらどうっすかね」
「駄目だよ! のどかさんは僕の生徒なんだ。お姉ちゃんにもそんなことしちゃ駄目って言われてるし」
「うっ!」


 とにかく仮契約と思っているため、安易にネギに「とりあえず付き合えば?」とまるでろくな恋愛経験も無いくせに一丁前に体験談を語るお馬鹿な中学生のようないい加減なアドバイスを行ったが、どことなく苦手なネカネの事を口に出されて思わず返答に詰まるカモ。
カモにとって自分の食事に何のためらいもなく笑顔でタバスコ一瓶とかを勧めてくるネカネは、なんだかんだ仕掛けてきながらライバル関係っぽいのにあるアーニャ以上に苦手な存在だった。

 その後もあーだこーだとは言ってみたものの、結局この方面からネギの身を守るための仮契約は無理か、と見切りをつけたカモは何とか別方向で仮契約を成立させられないものかと思案するため、ネギに一声掛けて離れることにした。


「アニキ、なんか煮詰まってるみたいですし、オレっちはあっち行ってますからゆっくり考えてくだせえ」
「うん、ごめんね、カモ君。いろいろ心配掛けて」
「なあに、ネギのアニキのためならたとえ火の中水の中草の中あの子のスカートの中ってことっすよ。じゃあ、そういうことで」
「うん、また後でね」


 こうして、カモはネギとは別行動を取り、何とか尊敬するネギの兄貴の生存確率を上げるために画策できる事は無いかとうろつき始める事となる。





「あ、朝倉さん。ネギ先生のあの件はどうなりましたの?」
「それよかみんな聞いてよ。さっきネギ先生がさあ……」


 その道中、仮契約できそうな人間はいないかということで生徒の集団を見守っていたとき、先ほど出会っていた朝倉和美が、ネギが子猫を助けた事を若干誇張気味に話しているのを発見した。

 始めはそれよりネギに誰かが告白したという事を聞きたがっていた他の面々だったが、ネギがわが身も省みずに子猫の命を救ったという話になると、途端に黄色い声が上がった。
 正直異常な身体能力ということについては誰が疑問を持つか分からないので、できればあまり広めて欲しくないのだが、朝倉の話は大げさということはみんな分かっているようなのでとりあえず一安心したカモは、いざ見つかったとしてもごまかせるよう普通の動物に擬態しながらこっそりと遠目で除き見る。




その表情はその談笑の裏にある大人の事情を受けてか、何処か影を帯びたものだった。


 学園長の思惑としては次代の魔法界を担うであろう優秀な人材にできるだけ若くてかつ強い、魔法使いの従者を選んで欲しいのであろうから、10歳の教師を担任にするという無理を捻じ込んでもこのクラスとネギにかかわりがあるようにしたのだろう。

 このクラスは、いろんな意味で近右衛門的に超VIPである近衛木乃香がいるため、比較的戦闘能力が高い者である武道四天王と闇の福音、その従者である絡繰茶々丸、そして魔法無効化能力を持つ神楽坂明日菜を中心に構成されている。
いざとなれば木乃香の盾とするためにこれほど戦闘力をもつ生徒を集めたのだろうとカモは推測している。
比較的戦闘能力が高い者が多いという事は勿論従者の検索にも役立つだろうから、このクラスの担任にされた事はよかったともカモは思っているが。



 そして、これらの条件から普通に考えれば相手の魔法使いに対して絶対的なアドバンテージを持つ魔法無効化能力保有者の神楽坂明日菜か、この年代の者にしては異常、化け物といっていい戦闘能力を持つ武道四天王らに仮契約を持ちかけるべきである。

 だが、その場合問題となるのは「アニキ」の性格である。
今のところあの凶悪なまでに強い魔法剣士であるランスという男を仮想敵に修練を積んでいるネギは、決して従者の力を借りることで生徒を傷つけてまでランスを打ち倒す事を良しとはしないだろう。
つまり、この時点で接近戦特化の古菲、刹那がネギ的仮契約候補者から外れる。明日菜も微妙だが、あのネギの態度からすれば仮契約を結ぶ気は無いようだ。


 カモとしてはせっかく何人もと契約できる仮契約なのだから主義主張と多少異なってもいろいろな人間と契約して、いざ戦うときには自分ひとりで戦えばいいのではないかと思うのだが、前回の風呂場のように本当に切羽詰った冷静さを失った状態でなければ生徒を守るべき対象と思っているネギは賛成しないと思われる。
 一般社会に身をおいておきながら魔法社会に貢献しようと思えば、ばれた瞬間記憶消去を躊躇なく行うか、巻き込むこと覚悟できちんと話すかのどちらかを選択しなければならないと思っているカモであるが、さすがにそこまでの選択を魔法学校を卒業して一年にもならないネギに突きつけるのはさすがに酷であると思ったため、ここではさておく。


 つまり、ネギの良心に抵触しない従者候補としてネギが守れる位置である遠距離で戦闘またはその補助を行うような人材が欲しいわけだ。
そして、一応身に迫る危険のリスクを可能な限り軽減するためそれなりに戦闘能力を持っているものがまず欲しい。

 以上のことから、カモは残りの二人の武道四天王である諜報や遠距離攻撃もそれなりにできるであろう長瀬楓、遠距離からの様々な特殊弾による狙撃を得意とする龍宮真名の二人がネギ自身が従者の契約を申し込む最有力候補だと思っている。

 が、最有力候補ということは逆に言ってしまえばこの二人はカモがたいした工作をしなくてもネギが自分で契約を申し込むことがありえる。


(今後の人生のためにもやっぱアニキも自分で口説くことも必要でしょうさ)


 そう思って内心げへげへと厭らしく笑ったカモは、とにかくこの二人には自分はあたりをつけるだけにしようと思って朝倉の騒ぎから少し離れた位置にいた楓にまずはこっそりと近づいた。


「忍者の姉さん。ちょいとお話が」
「む? カモ殿か。どうしたでござるか」
「実はこれこれこういうわけで……」


 近づいてくる気配に気付いて警戒心の塊のようになっていた楓に対して、今まで何度かこっそりと話していたカモが警戒心を解いてくれるように頼む。
その後で、ネギの京都における現状と、昨日の騒ぎのことを告げ、もしネギの手に終えないような事態になったとき、出来れば助けてくれないかと頼む。
彼女は魔法関係者では無いが、今までのネギの活動によってうすうす魔法使いの存在というものを感じ取っていたようでそれほど手間をかけずに説明をすることができた。
カモが今まで何度か会話を試みていたという事もプラスに働いたようだ。

 仮契約云々の話はまだしない。
それはネギが自分で言うべきであろうと思うため、置いておいて渡りだけをつけてネギが頼みやすいようすることこそがサポート役である自分の仕事と思っているカモは、うまいこと頼み込むことに成功した。


「………昨日の騒ぎではそのようなことが。あい分かった、ネギ坊主にはいつでも頼ってくるよう言うでござるよ、ニンニン」
「恩に着るっす」
 

 楓の協力を取り付けたネギは、楓同様真名にも協力を頼み込んでいった。
一応元プロということで報酬を要求されたが、修学旅行中は学園長に、それ以上であれば出世払いということで何とかお願いすると、笑って快諾してくれた。
もともと本気でぼったくるつもりはなかったということだろう。
こちらはほとんど初対面といっていい間柄だが楓と違い魔法関係者であるためそれなりに現状に通じていた事も幸いした。

もっとも、真名は以前誰かの魔法使いの従者であったという情報もカモは得ている。ネギが頼んでもかつての相棒を忘れて早々に従者になってくれるとも思えないが、とにかく今の任務はもしネギが申し込んだときに成功確率を少しでも上げることだ。
そういった意味では成功したといっていいだろうと思い、カモは一仕事やり終えた達成感で出てもいない額の汗をぬぐって笑った。





 さて、このあとどうしようか、と考えるカモ。

 片っ端から魔法の事をばらして声をかけるというのも一つの手であるとは思う。ネギは一般人である生徒を巻き込みたくないようだったが、カモからしてみれば生徒達はただの他人である。
 尊敬する兄貴と、世間的に見れば確かにまだ幼いとはいえネギより年長の他人。
 だったら、ネギの安全のために自分が泥を被っても片っ端から巻き込んだほうが最終的にはアニキのためになるのではないかと思う。


 だが、この方法はかなりリスクが高い。

 魔法のことをカモが生徒全員にばらしたとすれば、もしうっかりと口を滑らせて生徒の一人が世界に魔法のことを知らしめるようなことをしてしまうと、カモだけならばさておきネギまで監督不行き届きということで処罰を受けてしまう。
 全ての生徒を監視する事ができない以上、何の保険もなく情報を与える事は危険すぎる。

 どちらかというと、首までどっぷりつかりこませてから口止めするほうがリスクが少ない。まずは仮契約をさせておいて後戻りできないようにした方がいいかと思う。
 自分の身の安全が架かっているとなればそう容易く情報を漏らすようなことはしないだろう。

 世の中、奇麗事だけでは回っていかない。
英雄を汚さないため、身を持ってこの世の泥からネギを守ることこそが自らの仕事だと、カモは内心で小さくつぶやいた。


 とりあえずは、ネギの異常な身体能力に誰か疑問を持たないかと、他のクラスにまで先ほどの活躍を広めに行く朝倉を監視しながら生徒の品定めをすべきかとカモはこっそり朝倉をつけていった。



 他のクラスでも同様に黄色い声を上げさせていた朝倉だったが、みんなそれほどネギに対して不信感を持っていないようなので安心していたカモだったが、その表情がある人物に向かって朝倉が近づこうとしていた瞬間に凍りついた。

 その人物とはシィル=プライン教育実習生だ。


 いや、近づく事はまだいい。
問題なのは、近づいてきるときに偶然カモが耳にした朝倉の言葉だ。


「お! そういえば、シィル先生にあの男の人のことを聞かなくちゃ」


 それは死亡フラグだ。
 良く事情をわかっていないカモだったが、そう直感して一瞬ムンクのもっとも有名な絵画のような表情を見せる。

 十中八九あの男の人とはランスのことである。シィル=プラインに聞くだけならばまだいいが、それで下手にランスのところまでたどり着いて変な事を言ってしまえば、即座に死亡する。
 あの男は、普通の人間じゃ無い。気分を害したという理由で人を殺してもおかしくないのだ。

 実際には将来有望と見ている朝倉がランスに殺される事は無いと思われるが、男が下手に検索すれば文字通り一刀両断されるであろうし、それによって消える命の事なぞランスは気にも留めまい。
カモの推測は女好きということを除いて大体あっていたため、その危惧は正当な物だろう。まさか、ランスが基本的にシルバレル級の不細工でなければ少女は将来を買って自分の邪魔をしない限りにおいて一応殺さないようにしているという事をカモが知っているはずもなかったゆえの思考の到達点である。


 即座にカモの脳裏に最悪の未来が駆け巡る。


『謎の少女シィルに話しかけ、その結果としてランスという真実までたどり着いてしまう凄腕報道官朝倉!
 しかし、運命はそれを許さず、いつもの調子でランスに話しかけ機嫌を損ねたランスによって朝倉は儚く十四の命を散らしてしまう!!
 それを知って怒りを覚えた勇敢なる少年、ネギが悪の化身ランスの元に殴りこむ!!
 立て、マジックティーチャーネギ! 巨悪を打ち砕くのだ!
……………
至高の剣と魔術の合戦が今始まってしまった!
 とどろく轟音! 迸る魔力! 切り裂く剣風!
 基礎値の違いはいかんともしがたく、徐々に追い込まれていくネギ!
 だが、一瞬の隙を狙って仕掛けるネギと、それに気付いて必死で向かってくる相手に剣を送るランス!
 逆光のシルエットで一旦終わった次の週には…………ランスに無残にも切り殺されたネギの姿が扉絵で!
 魔法先生ネギま! 未完!』


 そんな嫌過ぎる未来が一瞬でカモには想像できた。


(やべえ、このままじゃアニキが!)



 瞬時に対応策を幾通りも考える。

 ネギの兄貴を呼びに行く…………不可 
この距離では今からネギを探して呼んできても間に合わない
 
シィルに話しかけて誤魔化してもらう…………不可
一旦は誤魔化せても興味を抱いている以上再び場を、時を変えて追求してくる事は目に見えている。

 後でネギに記憶消去の魔法を掛けてもらう…………保留
 いつごろからランスの気配に感づいたのか分からないが、ネギの技量ではそれほど過去のことまで長期に忘れさせる事はできなかったはずだ。無理するとパーになる。まあ、それでもいいといえばいいような気もするが。

 調査の妨害を行う…………保留
 朝倉が飽きるまでランスの存在をカモたちだけで隠しとおせるか? ……無理だ。下手に手を出せば余計に根性を燃え上がらしそうだ。やっぱり不可

 ランスの機嫌をカモが取りながら姿を隠させ、朝倉はほって置いて調査を続けさせる…………不可
 無理。最低でもカモの正体はばれ、尚且つカモが身代わりに殺される

 ランスサイドではなく、朝倉を口止めする…………保留
 結果として、魔法界の事がばれてしまう。しかも、よりによって大スクープを狙うジャーナリストに。
へたすれば、まさに魔法界より抹消される大事態に成りかねないが、ランスサイドに干渉できない以上、朝倉をどうにかするしかない。最悪、最初はしゃべっても後でパーにする覚悟を決め記憶を奪えば…………採用。


 結論 訳を話して朝倉のほうをこっちサイドにの方が他の手段よかいくらかマシ。


 思い立ったらすぐ行動。
 カモのモットーの一つだ。それにしたがって、迷いを振り払うかのように気合を入れて、しかしあたりには聞こえないように用心してカモは朝倉に声をかけた。


「ブンヤの姐さん。ブンヤの姐さ~ん!!」
「? どこから声が?」
「こっち、こっちですよ朝倉の姐さん」
「私のこと! いったいどこから………って、喋るフェレット! ひょっとして、特ダネ!!」
「まあまあ、とにかくこっちに来て話を聞いてくれっす」



 今にもシィルに話しかけそうだった朝倉は、その言葉に引かれてカモのいる林の中に入っていった。
 シィルが、その一人と一匹には気付かず、誰かの呼び声によってどこかに行ったことで、とりあえず何とかはなったが………この後が大変だ、とカモはため息を吐いた
 ま、ビデオカメラの類は持っていないようだから、万が一交渉が決裂しても何とか誤魔化しようはあるだろうと自分を慰めながら、カモは朝倉を説得にかかった。






「へ~ねえねえ、そういえばネギ君ってやっぱ強いの?」
「いや~見習いん中じゃあ強え方だとは思うけど……やっぱあいつらは別格らしいっす」
「へ? シィル先生までそんなに強いの」
「………直接見たわけじゃねえっすけど、あのランスとかいう男は学園最強クラスのタカミチすらすら半殺しっつうか九分殺しにされたって聞くし、シィル=プラインの方だって普通の魔法教師じゃとてもとても」
「へ~高畑先生強いのに負けたんだ?」
「ああ、あん人は魔法界ですら最強ランクなのによ。くれっぐれもあの男関連にだけは近づかない事と、アニキのことは内緒にしてくれっすよ。オレっちも一回殺されかけやしたし」
「オッケーオッケー、こんな面白いことなら協力しちゃうよ」


世界的スクープを自分の名で報道してやろうと知的好奇心に燃える朝倉を留める事には結構手間取ったものの、最終的には適当に出せる範囲の情報だけを伝えるということでカモは朝倉の全面的な協力を取り付け、ランスたちに近づかない事と魔法界の秘密を守る事を誓約させた。

朝倉は偉大なジャーナリストになりたいと思っていたとしても決して話の通じない相手ではなく、好奇心が強いだけなので誠意を持って話し合えばたとえ大スクープであっても見逃してくれると踏んだカモの狙いが当たったのだ。
どこまでも普通の人間並みの感性しか持たぬ朝倉は、その知的好奇心を満たすためにある程度こっち再度の情報を流しておけば、決して管理できない狂人ではない。
魔法関係にも興味津々だしうまく事を運べば仮契約において大分楽になるとカモは思った。今までカモサイズでは人間に対して事を運ぶのはきつかったが、それも緩和されよう。

 直接朝倉に仮契約してもらってもいいかとも思う。
一人でも仮契約してしまえばいかにネギであっても一人でも二人でも一緒か、と心のどこかで感じてしまうであろう事に変わりは無いだろう。
朝倉自身には戦闘力はあまりないだろうが、下手な鉄砲も数撃ちゃあたる。ある程度、情報漏れを防げる人数であればたとえ戦闘力が無い者であってもきっと役に立つし、そのうちネギの目的に合ったアーティファクトも出てくるだろう。
最初はどうなる事かと思ったが、結構いい拾い物だったとカモはほくそえんだ。

 ある意味、この時点においてネギではなくカモが強力なパートナーを手に入れたことは、今後のネギが動く中でも非常に大きな意味を持っていた。


 とりあえず、ターゲットはネギ好きランキング上位ののどか、あやか、まき絵、このか、アスナ、夕映、鳴滝姉妹だ、とカモは朝倉の肩に乗って朝倉参入という要素を加えて今後の計画を練り直して笑った。


Comment

今回は繋ぎなのかランス達がでなくて寂しいですね。
朝倉はてっきりランスフラグを踏み抜いてくれると信じていたのに、エロオコジョに邪魔をされるとは!!
こっれでランスに手込めにされる最初がだれかわからなくなりましたね。
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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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