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悪の秘密結社乗っ取りマニュアル22

五人もいれば、どうしても一人二人は影が薄くなる











さて、現在乗っ取りをたくらんでいるダンディでエレガントでエロスな悪役こと俺様リキュールだが、前回ライダーの入手に失敗してしまった以上、何処かでその損を取り返さなければならない。
確実だと思われた手札がほんの僅かな狂いで全部パーになっちまった。ま、よくあることだとはいえちょっとばかし痛手だったことは否定できない。
時間も資金も結構無駄にした以上、ここは大穴狙いの一点賭けをするよりも堅実な安牌で手堅く取り返すのが正しい人生って言う名のギャンブルの張り方だ。

とはいえ、そこで一念発起して会社のサラリーマンに就職してコツコツ働き、一年ぐらいの必死の時間の切り売りの結果としてのボーナスを手に再び勝負を賭ける、なんてダセェことするぐらいだったら、こんな因果な商売には手を染めちゃいねえ。
ギャンブルで負けた分は、ギャンブルで取り返すからこその悪の秘密結社だ。

負けたらおじゃん、今までコツコツ稼いできた手札も全部取られて破産への一直線ってことがわかってはいても、成功以外の道筋を描くのは禁止だ。むしろ、失敗抱えての賭け事こそが面白い、っていえなきゃ偽もんだろう?
世界征服なんていう博打極まりない事掲げてる以上はよ。


誰だったっけな、「博打ってのは、外れたときに痛い目見るから面白い」って言った奴は。
今の俺のやさぐれロンリー気分はその言葉に全面的に賛成だ。
痛い目見るかも知れねえスリルは改造人間であり脳改造まで受けている為に情欲も感傷も無くなってる俺に、今まで以上に『人』として生きている実感をくれる。


ってなわけで、ここらで一発大博打。
地味にコツコツは一旦置いといて、失敗する確率が高く、しかしリターンが大きい目への一点張り。
桃香をつかっての派手に楽しいプリズムレンジャーの友釣りといこうじゃないか!






虹色戦隊プリズムレンジャーは、当然ながらその名称通り、虹の色をテーマとして抱いている。
光に満ちた、数ある戦隊の中でも極めて見栄えのするテーマだ。
昆虫戦隊やらプランクトン戦隊等の実際の戦闘能力はさておき名前だけでもわかる色物も含んだ、ありとあらゆる正義の味方がしのぎを削っている今の世の中においてそんな綺麗なテーマを選んだ事に、誰が作ったのかは知らないがこの力の大本となったプリズム粒子とやらを発見した古代人はわかっているといわざるを得ない、という評価は保安局のお偉いさんの中でも不動のものである。


ただ、赤に青、緑まではよかったのだが、どうやらこの超科学の力を与えた謎の人物は、日本人ではなかったらしい。
日本式虹の七色の数え方である赤、橙、黄、緑、青、藍、紫という方式をとらずにメンバーのカラーを決めていったらしい。
そのため、現在のメンバーといえば、プリズムレッドにブルー、パープル、オレンジあたりはさておきピンクなんてのがいるばかりか、何とブラックまで入っている。


確かに光を分解して七色とて意義付けたのはイギリス人のニュートンであり、それ以前には文化圏によって五色ととったり六色と診たりと様々ではあった。
例えばかつての日本では、虹は五色であったといわれる。

そのため、別に七色でないことは古代文明を元にすると思われるプリズムレンジャーの製造者と現代の文化圏が食い違っていることを思えば別におかしくはない。
「虹の色に黒が入っている」という摩訶不思議なそのあたりの点を人類文化史あたりの観点から分類をすれば、ひょっとするとその力を与えた超存在の解明に一歩近づくかもしれない。
だから、虹の色の中に黒を見たとしても、それはその人との文化圏が異なるだけで、決してそれが間違っている、などといえるものではない。



だが、それは同時に七色の文化圏の人間がこの力を使うとき、ふと思ってしまうことも無理がないことということを示すものではなかろうか?
すなわち、「黒はないだろ、黒は」と。




「やっぱり、正規じゃない黒だのピンクだのといったのは、信用ならないわ!」


この悪の秘密結社や怪人が跳梁跋扈している現状においては、どんなものから与えられた力なのか、ということを考えるよりも、それが現場においてきちんと運用が出来るのか、ということが重視される。
だから、表立ってプリズムブラックやプリズムピンクの存在を非難する声は一切聞こえないし、初期のメンバーであるプリズムレッドやブルーもそんな仲間を貶めるようなこと、思ったことすらないだろう。


ただ、それでもじかにブラックやピンクの人柄に触れた訳ではない者の中には、無言のうちに今まで培ってきた慣習というものは立ちふさがる。
それゆえに明らかに虹としての色に入っていないプリズムブラックは他のレンジャーに比べて劣っているのではないか、あるいは何か特殊な能力を持っているのではないか、という目でみる保安局一般職員は少なくないし、『正規の』プリズムレンジャー最後の二枠プリズムイエローとプリズムインディゴの座を狙う候補生の鎬の削りあいは凄まじいものがある。


「たかだか一悪の組織相手に、不甲斐ないこと……烈先輩や蓮先輩の苦労が偲ばれるわ。やっぱり、私が出なきゃ駄目みたいね」


だからこそ、彼女―――プリズムオレンジ、横井茜の当初の増長も、ある程度は無理がないものであった。

なにせ、『正規』メンバーであったグリーンの突然の脱落に慌てるかのように、『正規』では全くありえないブラックが加入。だが、それだけでは突然こちらの裏をかき始めた秘密結社キラーアースの猛攻性を支えるには足りなかったのか、やはり支えきる事は出来ず、あわてて正規のメンバーの募集が始まる。
それは、いかにも追加で入れられたブラックが頼りないような印象を、元々かの色が入る事を好んでいなかった連中には強烈に印象付けた。

その中の一人である茜にとっても、当然それは同じ。
オレンジや紫を追加しないで、黒を増やすだけで対応しようとした事、すなわちブラックなんてメンバーを加入させた事自体が間違いであったのだ、という事を即座に脳裏に描いた。


それは、彼女が厳しい競争を勝ち抜いて今回求められた立った二人の人員追加の狭い枠の中に、選ばれたことで一層強固となった。
それも、司令官としての適正ゆえに当初より選考されていたプリズムパープル、紫藤伶のような特殊ケースではなく、間違いなく実力でメンバーに―――それもオレンジという七色の中の一色を預けられて! ―――選ばれたのだから、それもひとしお。
志半ばであっさりとやられたようなグリーンとは格が違うということを知らしめてやらねば、と強く思っており、それを周囲にも語りまではしないまでも無言で主張するぐらいはしているほどに、当初の彼女は桃香らを侮っていた。


『正規でない色は能力が劣るものが纏うものである。だからこそ、能力の高い自分は正規の色であるオレンジに選ばれた』

それは決して、過剰な自信とばかりは言い切れない。
桃からのように一般人からのスカウトではなく、正義の味方の候補生として日々精進を行っていた彼女の能力値は確かにそれに値するだけ高かったからだ。
己の実力を自負するには十分な経歴を持っており、そしてその結果として自身が選ばれた色に入れたと思っていただけに、彼女もまたジンクスを信ずる十分な素養があった。

だからこその、彼女よりも先にプリズムレンジャーに着任していた四人を前にしての彼女の第一声は、こういったものだった。


「本日より着任いたします、プリズムオレンジ、横井茜です。よろしくお願いしますね、烈先輩、蓮先輩!」


その場にいた残りの二人に対する呼称を意図的に省いたその自己紹介は、彼女のその意識を端的に表していた。
そしてそれに対して目を丸くする初期メンバー三人と、苦笑して軽く自分に対する侮辱を受け流したプリズムブラックは、まさに信念に燃える正義の味方と、それに入ってきたばっかりの鼻っ柱の強い新人、というものであった。

ちなみにその場にいた最後の一人にして新たに入ったプリズムレンジャーの仲間、以前より全体の方針決定及び後方指揮を取っており今回プリズムパープルという役目も受けた紫藤伶は、それを見てため息一つ吐いただけで顔色一つ変えずにフォローに回ったことは彼女の名誉の為に記しておかねばなるまい。






ただ、誤解して欲しくないのは、横井茜は決して視野の狭い俗物ではない。
主席で候補生学校を卒業したにふさわしいだけの見識と能力、そして正義としての心を持っていた。

だから、彼女が第一話に置いて秘密結社の怪人キラクロウと相打ちになったグリーンをその結果ゆえに軽蔑しており、桃香らを軽く見ていたのは決して長い期間ではないのだ。
新入りヒーローとして敵を侮る等のありていな失敗をしてしまい、そして仲間に助けられるというこれまたありがちな一通りのイベントをこなした結果として、彼女はきっちりと自分の未熟さを自覚するとともに他のメンバーのことを認めており、今まで僅かな人数でこの平和を維持していた彼らのことを尊敬するようになるのはほんのすぐ後のことだった。



だからこそ、もはや正規のメンバーではないという勝手な思い込みにより桃香を軽く見る事などなく、リキュールの魔の手に落ちた仲間を放っておくことなどできるはずもなかった。











「最近、桃香先輩の様子がおかしい気がする……」


保安局の一部にある、プリズムレンジャー専用の基地の廊下を歩きながら、茜はそう呟いた。
手には書類、低いヒールに薄い化粧と外見だけならば義務教育卒業後即座に働きに出た勤労OLにしか見せないその姿は、しかしその身を包む銀の隊員服によって裏切られる。
長く伸ばして両側で結んだ長い髪を揺らしながらも実働部隊にしか着る事を許されない制服で進むその凛とした姿は、彼女がプリズムレンジャーを後方で支援するスタッフではなく、悪の組織と最前線で戦う正義のヒーローである証明していた。

そして彼女が通るスペースも基本的に実働部隊であるプリズムレンジャーら六人のみが使用する通路であった為に、すれ違うものもおらずその呟きは宙に消える。
だがしかし、その自分の声が空気に混じって消えるころには、茜はその自分が発した言葉の確かさにある程度の確信を抱いていた。


別に茜はプリズムピンクである桃香とそれほど長い付き合いではない。
何と言っても始めて会ったのですら数ヶ月前、まだ一年も経っていないほど最近であるし、彼女らは特殊公務員ゆえに下っ端公務員のように寮などに住まうこともなく、それなりの高給を貰ってそれぞれの生活を営んでいるが故に生活を共にしているともいいがたい。

精々ここ本部において待機中にたまに会話を交わしたり、あるいは訓練や実践で一緒になるぐらいではあるが、24時間中警戒していなければならないという組織の性質上、シフトがあわないことも数多くあった。
それゆえ、二人の間に流れる共通した期間などはごくごく僅かなものでしかないのは確かな事実である。

だが、その茜の中で鳴り響く警笛は決して曖昧なものではない。
命を賭け、互いに極限まで力を振り絞り、正義の為に戦ってきた短いながらも濃密な血と汗に塗れた訓練と戦場での時間が育んでくれた、信ずるに足る確かな違和感であった。


「うん、やっぱり、おかしいと思う……どこが、ってわけじゃないけどなんか違うわ!」


最初は独り言であったのに、いきなりテンション上がって叫びだすあたり、彼女の性格が現れていた。
誰もとおらぬことが半ばわかりきっているとはいえ、公共の場において疑惑を大声で叫んでしまう大雑把さも。


とはいえ、短絡的に「何かありました?」と聞かない程度の常識は持ち合わせていた茜は、とりあえず桃香の周囲を今後注意して、しばらく見てみよう、と思い今日も仕事に出ることにした。
決心が付いたあたりでちょうど目的地にたどり着いたのだ。

プシュー、という空気の抜ける独特の音とともに扉が開いたその先にまず目立つのは、大きな円卓とそれに備え付けられた七つの座席。
部屋の壁と同じく僅かばかりのクリーム色がかかった白いそれらは、彼らプリズムレンジャーの結束を示すかのように互いに向き合うように、しかし360度の円卓を七座席で割るという状態ゆえにぴったりと正反対にならないような配置となっている。


「おはようございます、桃香さん、蓮さん!」
「ああ、おはよう、茜」
「おはよう、茜ちゃん」


有事の際の事前ミーティングなどが行われる際にはその座席のほとんどが埋まる円卓だが、現在には茜が言ったようにプリズムピンクの桃香とプリズムブルーの蓮しかいない。


基本的に悪の組織の活動は日中が多いとはいえ、夜討ち朝駆けとても珍しいものではない。
だからこそ、ここにいけば誰かは必ずいるが、逆に言えば全員そろっている時間帯というのも余り見かけない。
基地備え付けの端末で何か調べ物をしている桃香はさておき、シフト上ちょうど休みのときに怪人との戦闘による出撃があってそのまま徹夜することとなった蓮は机に半ば突っ伏したような体勢で憔悴が見て取れ、大分と辛そうだった。


(もっとも、蓮先輩のあれは恋煩いの方かもね、ふふ)


ただ、同じシフトであるはずの桃香がぴんぴんしている以上、仮眠も取れないほど激務であったはずはないし、そもそも蓮がこういった状態になっているのはここ最近ではそれほど珍しいことではない。
勤務に支障が出ないようにはしているので誰も文句は言わないし、正直微妙な状況なので誰も口に出してそれを彼に突っ込むことができないが。

蓮がルンという人物に恋をしているらしきことは、しばらく生活をともにしていればすぐにわかった。
余りそのことで周囲を嗅ぎ回るのは失礼に思えてさして興味を持っていないふりをしていたが、そこで終われるほど十五歳の少女の好奇心は薄くない。
もっとも、何故かこの話題になると他のメンバーは苦笑いして言葉を濁してしまうのでさして情報は集まっていないが、それでもその尊敬する先輩の片思いはそれなりにアカネの琴線に触れていた。

さて、どうやって相手に不快感を与えず、しかし自分の知的好奇心を満たすよう聞き出してやろうかと内心舌なめずりをしていると、ふいに調べ物をしていたらしき桃香から、疑問の声が飛んだ。


「私はもう上がるけど今日は茜ちゃん一人なの? ……って、茜ちゃん? シフト表見ると今日あなたお休みなんだけど」
「え?」


基本的に彼女とシフト表が同じなのはプリズムブラックである黒田凱。
初めは見下していた相手を進んでパートナーとして選び、交流を深めようとするところはいかにもプライドの高く、自身の間違いをも正さずにはいられない彼女と、そんなはねっ帰りの彼女をおおらかに纏める凱は確かにいいパートナーだったが、今日は何故かその姿が見えない。
六人いる人数の都合上、大概二人ずつここに詰めて待機する形式を取っているプリズムレンジャーにとって、出勤時の時間帯は大概重なるはずであったが、先にもあったように廊下には彼女一人しか気配はなく、未だに彼が到着する様子も無い。

確かにいつもはほぼ同時に到着する彼がいないことに茜は不信感を持っていたので、桃香が差し出したモニターを覗き込むと、瞬時にその疑問が氷解する。


「あれ? こんな予定入ってましたっけ」
「あら、伝わってなかったのかしらね」


パートナーである凱に、専用車の調整があるということで今回のシフトはレッドとパープルペアになっているシフト表を見て凱がいない現状には納得するものの、自身が自室を経つ間際に見た電子予定表ではそうなっていなかった気がしたゆえの新たな疑問は、しかし桃香に軽く流された。
自分のところに予定が届いていない、ということは今まで完璧なサポートで自分たちが戦いだけに集中できるようにしてくれていた事務組の優秀さから考えれば不自然にも思ったが、結局そんな些細な違和感はすぐに消え去った。


まあ、正義の味方としての毎日を過ごしていれば、たまにはこういったこともある。
後ろで自分をサポートしてくれている人々とて、正義の為に戦っているとはいえ人間だ。疲れていればミスもするし、気が緩んでいればうっかりも増える。
自身も正義の味方としてとんでもない間違い―――仲間を信じないなどと、正義としては余りに大きなミスだ―――を行い、そしてそれを周りの者のサポートで何とかフォローしてもらった身としても、茜はそんなことで日ごろの感謝を忘れて攻め立てることなど、考えもしなかった。


そう……味方であるはずの桃香の裏切りなぞ、その時は想像さえ出来なかったのだ。


次の話へ

Comment

二連荘で失敗して窮地に陥るか?
それとも強気小娘ゲットか?
成功ならいっそのこと戦隊丸々のっとっちまえww
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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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