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鬼畜ま!13

十三話











「がはははは、しかし、少々遅いがうしがいらん分この自動車とか言うものもなかなか便利だな。マリアが見たら欲しがるかも知れん。帰るときには一つ持っていくか、シィル」
「そうですね、ランス様。あ、でも、こんな大きなものを持って帰れるんでしょうか」
『おいランス、こんなもん持って帰っても置く場所無いじゃろ。そもそもダンジョンの中ではこんなでかいもん使えんし』
「む………そのくらい、何とかなる」
「少なくともアイスのおうちには置けないと思いますが……後、餌とかいるんじゃないでしょうか」
「びゅ~んびゅ~ん、車は遅いぞ~硬いぞ~邪魔するな~」


 ここは大きめのリムジンの中。
 最高級の内装を施してある学園の公用車にのって、いつものランスパーティは京都に向かっていた。近右衛門から依頼を受けて、修学旅行生たちの護衛を請け負ったランスだったが、本人としてはほとんど物見遊山のつもりだった。

 近右衛門としても何か大事に至らない限りはランスを投入するつもりは無かったため、何人かの西洋魔術師で無い戦闘力を持つ者を案内役兼監視につけて、基本的には放って置くつもりだった。とにかく、何かあったときにすぐにこの鬼札を使えるようにしたいだけで、別にたいしたことがなければ頼るつもりはなかったからだ。
そのため、線路を使用する生徒達とは異なり、ランスたちは道路によって京都に向かわせられていた。






 その監視に着いた魔法教師達を前の座席に押しやってこの車を運転させておいて、ランスたちはゆっくりとこの世界の町並みというものを眺めていた。

 まず、第一印象はごちゃごちゃした世界、と言う言葉が二人と一体と一本の頭の中に浮かんできた。

 ランス達にとって町とは城塞に囲まれた一つの独立した機関であり、その町と町をつなぐのは荒れ果てた荒野の中にうっすらと見て取れる獣道やうし車の轍、せいぜい良くて石畳かレンガ敷きだった。
 カスタムの街やレッドの町など、一部地域ではこのように舗装された道路はあることは有るが、それとて町全てを覆うほどではなく、ごく一部だけだった。
 この世界のように、基本的に巨大な町同士が隙間無く繋がって国を作っており、その途中をここまで高度に舗装されたまっすぐな道でつないでいる、などという事は想像すら出来なかったものだ。三大国家の首都ですら、ここまで桁違いの繁栄は見せていない。

 そして、町を歩くものはほとんど防御力を持たない多種多様で風変わりな服をまとっているだけであり、ダガーのような僅かな武器すら携帯している様子も無い。
その横には、車というらしい鋼鉄で出来た固まりがモンスターに匹敵する速度の集団で走り回り、継ぎ目すら無い石で作られたハイパービルのような建物が無数に乱立している。
にもかかわらず、そこから出てくるのは人間のみで魔人は愚か、モンスターすら存在する気配は無い。

 自警団のような連中はいることはいるが、ランスたちの目からすればそれらの戦闘能力すら、一般人とさして変わるものではない。
道の脇で売っている食べ物から、さまざまな施設の形までかつての世界とはまったく違う事に、あてなのみならずランスやシィル、カオスまで面白がっていた。
 

 もっとも、ランスが面白がっていたのは最初だけで、それら全てがつくづく平和というものを体現している様に見え、自分にとって血湧き肉踊るような事はなさそうだ、という事で飽きっぽいためすぐに興味を失って、昨晩のハッスルの事もあってそのまま眠っていた。
うし車に比べてずいぶんゆれないこの車というものは、昨晩遅かったランスにとっては眠りを誘うものだった。ちなみに、うしと呼ばれるムシが引くうし車――ランスたちの世界での一般的な車の最高時速は百キロぐらいなので、速度自体はランスにとっては驚くほどのものではなかった。


 数時間ほど眠ったであろうか、それでもまだまだ時間がかかるという事を車内にあった魔法電話(ランスはいまだにこの世界の電化製品が全て魔池で動いていると思っている)で前の席でこの車というものを動かしている御者の男に聞いたランスは、退屈を紛らわせるためにいつも通りあてなに暇つぶしをするよう命じた。


「あてな、しゃぶれ」
「! はいれす」
「ラ、ランス様。前の席には人だっていらっしゃるんですからこんなところでは……」
『わしも混ぜては……』


 あてなはあっさりと快諾したが、そのことにベクトルに違いがあるものの不服がある二人がランスに対してそれぞれ対極の意見を発したが、ランスはそれを視線で黙らせる。


「黙れ、シィル、カオス。俺様はやりたいときにやりたいことをやるのだ。やれ、あてな」
「は~い、ちょっと待っててね~」


 返事をしたかと思うとランスの股間に向けて愛しそうに声を掛けながら、あてなはゆっくりとランスの席の前に跪き、ズボンをずらしていった。一応運転席とゆったりと広いスペースの後部座席はスモークガラスで区切られているとはいえ、恥らう様子すらなく嬉しそうに脱がしていく。

 やがてランスの一物が姿を現してくると、あてなはランスの肉棒に手を添え、まだやわらかいその先端にそっと口付けをする。かるく甘い快感が襲ったのかランスの背筋が僅かに震えるのを感じながら、あてなはその後何度もキスを繰り返す。

 人工生命体として、思考はしても心は無いように作られたにもかかわらず、シィルからみても愛情を感じられるしぐさで、あてなはゆっくりと肉棒の各所にキスを落とす。
その棒の上から下まで満遍なく口付けを落とし、やがては下の袋の方までその柔らかい唇で刺激していく。見た目は幼いにもかかわらず、その行為には年季が感じられた。


「んっ、うんっ…………ちゅぱ…ぺちゃ」


 やがて、その行為にも飽きたのか、あてなは口付けをやめゆっくりとランスの肉棒に舌を這わせた。口の動きは緩慢だったがそれでもランスの男根は、あてなの唾液で隙間なく濡らされていく。
 ぺちゃぺちゃと、淫靡な音が股間から聞こえてくる。むず痒いような、もどかしいような快感が断続的にせり上がっているのか、肉棒はじょじょにその硬さを増していった。

 竿の部分をひとしきり舐めたかと思えば、今度は先端の方へと登ってきて、ちゅっ…とわざと音を立てて吸い付き、すでにわき出てきていた透明な液を啜ったまま糸を引いて唇を離す。
そのままカリ首のあたりを舌先でこそげとるように引っ掻きながら、ふたたび啄むようなキスに移ったかと思えば、再び裏筋をなぞり上げる。
 横に捧げ持ってその中ごろを軽く歯で甘咬みしたかとおもえば、その場所を舌の中腹でなぞるようにねっとりと舐めあげ、それが終わればすぐさまランスの先端だけすばやく舌の往復で動かす事に移る。


「んはっ…んふっ…んっ、んんっ、ちゅッ!…ふぅ…はぷっ…んんっふ!」


 あてなが口を動かすたびに、熱い吐息が剛直の先端に近づき、離れる。今まで幾度と無くランスに快感を与えてきた口戯は、ランスが快楽を覚えるところを的確に丁寧をなぞっていく。
肉棒に刻まれた皺の一本一本を辿るように、あてなの小さな舌が這い、浮き出た血管まで吸い上げるように薄い唇が吸い付いてきた。


「んっ……れろっ…れろっ」


まるで好物を口にするように、張り詰めた亀頭の先端をなめ回すあてな。その刺激にランスのモノはビクビクと反応し、亀頭ははちきれんばかりに怒張していく。あてなはその様子を片目で注視して密かにランスの反応を伺っているようだ。
やがて、ランスの反応に気を良くしたのか、あてなは亀頭を溶かさんばかりに濃厚に舌先をからめ始めた。


「んっ…ぷちゅぅ……」


と思う間もなくあてなは可愛らしい唇を使って先端だけを僅かにつつみこむ。


「んん~っ♪ んっ…んっ……」


そして、まるで飴をしゃぶるように丹念に唇を吸い付かせていく。

 全体が唾液に包まれた事を確認すると、あてなは一度顔を放してにこにこと笑い、今度は口を大きく開き、ランスのものの先端を受け入れた。
常人外れたサイズのランスのモノは全てを飲み込むことを許さないが、それでも一生懸命口の中に収めようとするあてな。
口いっぱいに亀頭部を頬張り、舌先でその形をなぞるようにして張り出した部分を嘗め回す。

 跪き、一度吐き出して細い指先で愛しそうに愛撫をしながら小さな舌で丁寧に舐め、再び飲み込んでいく。
わざと閉じた唇を肉棒の圧力で押し開き、飲み込んでいくその感触は狭い膣胴を無理矢理広げながら挿入する感覚に酷似していて、ランスを楽しませていた。

 褒美のようにランスがあてなの柔らかな髪越しに頭を一度なでると、いっそう愛撫に力が入る。
 頬を擦り付け、ふたたび軽く甘咬みを、今度はカリ首に行って刺激して、鈴口に舌を突き立ててほんの少し奥まで潜り込ませたかと思うと、再び亀頭をゆっくりと口で包み込む。
実際にはランスのが大きすぎるため無理だが、付け根に唇が届くような勢いでグッと口腔内部に納め、喉奥を使ってまでランスのものを刺激しようとする。
銜えたまま、いままで記憶していたランスの感じる場所を舌先で緩やかに撫でる。そしてそのままランスの両腿を掴んで往復を開始する。


「ちゅ……じゅば……ちゅぷ…ぺちゃ」
「いいぞ、もっとそこを嘗めろ」


 あてなは定期的にその動きを中断・時折チラリと表情を伺ってみる。あてなの方を見ていたランスと目が合う。ソコであてなは改めてランスの表情を読み取り、そして動きを再開する。
人ではないからこそ、求められているということを貪欲に感じてより相手に与えられるように努力を続けていく。あてな2号という人工生命体として生を受けた性(さが)だった。
 それによってランスは確実に高まっていた。我慢する必要も感じていなかったランスは、そのままあっさりと出そうとする。


「いくぞ、あてな」
「んぐっ…ぷぷぷっ…コクッ……コクン」
 
びくんっ、びくんっ、びくんっ


 そのまま、ランスはこれまた常人離れした量の精液を出す。
なれない女であれば勢いに押されて思わず放してしまっても仕方が無いほどの放出量だったが、あてなはそのまま飲み込んでぎゅとランスの腰を抱いたまま離さない。
 口の中で肉棒が震えるのを感じながら、あてなは精液を余すことなく飲み干していく。こく、こく、とあてなの細い喉が動き、3-Aの生徒達とさして変わらない見かけの少女の体内に、ランスの精液が全て飲み込まれていった。

 そして、やがて肉棒の震えが収まっても、あてなはそのまま奥に残っていたものを絞りきるまで唇を離すことは無かった。


「よし、気分が乗ってきた。第二回戦いく(ぷるるるるるるるるる)……チッ、シィル取れ」


 そのままあてなに命じて二回戦目に突入しようとしていたランスだが、車内にあった内線の音に動きを止め、目元を赤くしながらランスとあてなの行為を見つめていたシィルに受話器を取るように命じる。


「は、はい、わかりました。ありがとうございます……ランス様、もうすぐ到着するそうです」
「くそぅ、気のきかんやつらめ。俺様がもう一回やるといったら着くのを遅らせるぐらいせんか」


 受話器を受け取ったシィルから、目的地にもうすぐ着くという事を聞かされて、不機嫌そうにまた無茶を言うランスだったが、もはや街が見えるぐらいの位置まで来ているのに到着時間を変えることは出来ない。
仕方なくあてなに後始末をさせる。
全体的に舌でぬぐわせて、その後にぬらしたタオルで全体的に拭いて猛りもある程度収まったハイパー兵器をズボンの中に納めて、ランス一行は生徒たちに先駆けて京都の地に到着した。








「はあ、はあ、はあ、はあ……………!? もう追いついてきよったんか!」


 大きめの木の幹に身体を預けて荒い息を吐いている、狼や狐の変化である狗族と人間のハーフである犬上小太郎は、今まさに追い詰められていた。

 事の発端は数週間前、小太郎が今まで所属していた組織を抜けたことによる。

 数年前幼い頃から隠れ住んでいた廃工場が取り壊しになり、身を寄せる当ても無かった小太郎はついこの間までとある組織に所属していた。
 もともとは地上げやショバ代、みかじめ料の取り立て、組織内でのお尋ね者を上位組織に引き渡す際の下働きなどによって細々と生き残っていた小さな組だったのだが、どの社会においても「合いの子」と忌み嫌われる人間と人外との混血児を積極的に雇用することでそれなりの武力を持ちのし上がってきたという、結構小太郎の生い立ちとかかわりの深い組織だった。

 回される仕事を必死にやることで何とか食いつないできた小太郎だったが、ついにそんな生活に耐えられなくなってきたのだ。
 誰かにとっては大切な人を傷つけて他人の物を力づく、または本人も危険に気付かないよう思考を誘導して奪う。その対価として、小太郎は人間らしい暖かい物を食べて、寒さに震えることもないきちんと縫製された服を着ていた。
冬の寒い夜に薄い毛布一枚で震えることも、一食を求めて人に必死で物を乞うともなく、この仕事をこなしている限りは生活に不自由はなく、貯金の方も少しずつためていた物がかなりの積み重ねになるほどに。


これでいいのか、という疑問が胸をよぎったのだ。
誇り高き狗族の祖を持つ自分が、弱きを助け強きをくじく先祖を持った自分が、もはや墓前に参れぬほどの罪を重ねていく事に。

 今までも生きるためにゴミ漁りや空き缶拾いなど、さまざまな惨めな事をやってきた小太郎だったが、そんな誰かを傷つける事で利益を得る組織のやり方が嫌になってきた。
にもかかわらず、組織のほうは本格的に小太郎を身内と認めたのか麻薬や人身売買といった弱者である女子供まで食い物にするような仕事をよりいっそう回してきたのだ。

 もうこれ以上ここにはいられない。自分はこんなことをする人間ではない。
この数年で鍛えた自分ほどの腕があれば、何とか一人でも生きていけると確信して、小次郎は組抜けを考えたのだが………


 所詮自分は下っ端であり、組抜けを申し出ても指の一本ぐらいで許されるだろうと軽く考えていた小太郎だったがなぜか組織は小太郎の脱退を許さず、最初は穏やかに待遇改善やおだてを、最後には恫喝で持って小太郎を留めようとした。

 しかし、基本的に戦いは男の仕事であり、女子供を守るべきだと年少ながら義侠心に満ちた性格の小太郎は、男を説得するのに脅迫をもってなそうとするその行動にますます嫌気がさしたため、少々強引にでも逃げるために抜ける間近に麻薬取引の情報を警察にリークしてその混乱に乗じて足抜けしようと考え、実行に移した。
 その目論見は見事に成功して、警察の突入と同時にその身体能力を生かして一気に外に飛び出した小太郎は、何とか一時は組織の追跡から逃げ切ることができた。




 だが、捨て子だったため幼少時から後ろ暗い仕事についていたとはいえ、やはり子供特有の甘さからか少々認識が甘く、こういった組織がいかに面子を大切にするかをずっと見てきていながら小太郎は完全には理解していなかった。

 数億単位の利益を生む取引を台無しにされたことに加え、組織の後ろ暗い所業を多少なりとも知っている上に戦いという面ではすでに十分すぎる才能を持つ小太郎を野放しにしておけば、さらに成長したとき大きな障害になると判断した組織は、小太郎が予想していたものよりはるかに大規模な追っ手を放っていた。
 素早い動きの肉弾戦を得意とし、自分の影から複数の狗神を出して操ったり、忍術を使ったりなど、小太郎の戦闘能力は組織の中でも上位に位置していたのだが、相手は決して一対一の態勢には持っていかなかった。
小太郎の体力を削ることを目的として遠距離からの銀の弾丸やホローポイント弾のような貫通力よりも衝撃を重視した弾丸による狙撃をしたり、近づくことすら出来ないように弾幕を張ったりと、組織力を生かして日夜夜討ち朝駆けと小太郎に休む暇を与えなかった。皮肉にも小太郎の行った仕事が育てた組織の力が、今度は小太郎自身を狙う事となったのだ。

 そんな状態では、当初考えていたどこかガテン系のバイトや傭兵まがいの仕事をする事によって食いつなぐ事も出来ずに、ついには資金も尽きて食う事にも困る始末だった。
 ハーフということで、本来狗族がもっている桁外れのスタミナも持っておらず、頭に付いた大きな耳や効きすぎる鼻を持つがゆえにメイクなどを使った変装技術などで人間社会に溶け込むことも利用できなかった小太郎は、今までの生活上社会にまぎれる一般常識から縁遠かったこともあって圧倒的な人海戦術の前についに追い詰められていた。
今まで生きてきたヤクザの世界は決して一般社会ではないということだ。


 どうにか山の中を分け入るように進んでいくが、純粋な狗族には劣るものの、人間に比べてはるかに発達した聴覚等がこの山全体を追っ手が囲っていることを知らせる。
 そのときになってようやく、相手が自分をここに追い込むためにわざと逃げやすい方向を限定して空けていたことに気付いた。

 つまり、自分は嵌められ、わざわざ檻の中に追い込まれたのだ。

 しかし、もはや逃げ切れる道も無理やり力で包囲を食い破る気力もなく、時を追うごとに頂上の方へと追い詰められている。
 そして、少々開けた山頂に追い詰められた小太郎だったが、現状でも体力気力ともに尽きかけ、地理ももはや知らない場所に追い込まれたと言う十分悪い状態だったのが、より事態を悪くすることがそこでは待ち受けていた。


 その場には修学旅行での自由行動で来たのだろうか、高校生ぐらいの少女二人が地面にビニールシートを引いてお茶会のようなことをしていたのだ。

 片一方は古風な黒い生地に白いラインが入ったセーラー服に、腰まである見事な黒髪の大人っぽい少女であり、もう片方はブレザーの制服を来たふわっとした髪質のくすんだ銀髪の少女。
 共通点は垂れ目がちなところぐらいしかないもののどちらも美人と美少女といってよい組み合わせであり、普通の男であれば目じりを下げるような光景だったが、現状では何の救いにもならない。小太郎を追っている連中は目撃者が女子供だったからといって躊躇するような甘い組織ではないのだ。
 慌ててこの場から離れるように忠告するものの、帰ってきた返答はのんきな物だった。


「ねーちゃんら、ここはこのあとヤバイことになる!! 急いで山下りて逃げえ!」
「? ぼうや、私達はここでお茶の途中なのだけれども」
「そんなことをいっとる場合ちゃうねん、頼むからこっから……!! もうきよったんか!」


 その言葉どおり、完全に小太郎を追い詰めたと思ってか、回りを完全に包囲するかのように40人ほどの男達が小太郎の目のつくようにこの開けた場所に現れた。
 見た目からしてヤクザとチンピラようなものしかいない混成部隊の中に、一人だけびしっと白のスーツを着込んで指揮を取っている男がひときわ目立ってニヤニヤと小太郎に嘲笑を送っている。

 自分が属していた組織に所属する組で若頭と呼ばれている男だ。
 自分ほどではないがそれなりの戦闘能力を持ち、何よりチンピラと呼ばれる人種の扱いがずば抜けて上手い。今の状態では一番会いたくなかった相手だ。
 完全に体力が回復しており、誰も足手まといがいない状態であればどうにか包囲網をかき回して逃げることができる可能性もゼロではなかったのだが、体力はぎりぎり、二人も背後でかばっている状態ではどう考えても「逃走を成功させる」という意味での勝ち目もなかった。


「へ、やっと追い詰めたぜ、小太郎……って、ずいぶんとまあ、別嬪さんを連れてるじゃねえか」
「このねーちゃんらは俺とは関係ねえ!! 指一本でも触れたら殺す!」


 男の声を聞いて反射的に反論する小太郎。
 だが、小太郎の殺気の篭ったその言葉を聴いても回りの男達は不気味に笑うだけで怯える様子はなかった。普段であればその戦闘能力もあってそこまで馬鹿にされることはない小太郎の気迫も、今の段階では負け犬の遠吠えに他ならない。


「そうしてぇのは山々だが、俺らの親父も今回の取引をぶち壊されてずいぶんトサカに来てたからなあ、ここでてめえをぶっ殺した後、土産の一つでも持っていかねえと俺らの身が危なくて仕方ねえ」
「ふざけんな!!」
「おお、怖え、怖え。でもよう、小太郎……………てめえ、そんな状態で女二人守れんのかよおぉ!!」


 今までしゃべっていた組織の若頭が一瞬で獣化する。それも耳だけが出るといったちゃちな獣化ではなく、二足歩行用に進化した巨大な狼といっていいその姿はまさにライカンスロープかワーウルフと呼ぶにふさわしい。
人と比べてその圧倒的な身体能力を生かして一瞬で間合いを詰め、じりじりと少女二人から離れた場所に戦場を移動しようとしていた小太郎をその二人の座っていた場所に蹴り戻す。
 鍛え上げている小太郎にとって、普段であれば大の大人が放った一撃でもそれほどダメージを受けるわけでは無かったが、今回に限って言えば今までの疲労も積み重なって一撃で体が急激に休息を求めだし、ほとんど動けなる。


 この蹴りを放った男も小太郎と同様狗族とのハーフであるのだが、小太郎とは異なり、裏社会というものにまったく忌諱感を持っていない。
 そもそも奴は組織の下っ端のチンピラと古風なしきたりに嫌気がして場末の飲み屋にはべっていた狗族のホステスがくっ付いて、へまをして消される前に産んだ子という、親の代から筋金入りの裏商売の住人だった。
 こういった汚れ仕事を忌避するどころか、逆に狗族とのハーフということを最大限に生かしてさまざまな悪事にその身体能力を遺憾なく発揮し、ついに外様の身でありながらいずれは組を一つ任せられるとの評価を得るまでになっていた。

 ハーフでありながら狗族と人の文化的な面を司る血が強いのかモラルや義侠心が強い小太郎とはまったく正反対の、強者が弱者を踏みにじり、強いオスが多くのメスを力で従える、そういった弱肉強食の世界に生きる狗族の男の獣性が色濃く出ており、似たような境遇でありながらお互いに心底嫌いあっていた男だった。
 もっとも、戦いの才能といった面ではこの男は小太郎に遠く及ばず、忍術はおろか狗神すらろくに使いこなせず単なる身体能力のみの戦闘能力しか持たないが、小太郎の体力はつきかけており、相手は単なる人間と自分よりはるかに半端な半妖のチンピラたちとはいえ、数十人従えているという事実はそんな戦闘能力の差なぞ容易に埋めてしまうほど十分脅威だった。


 絶体絶命と断言できる状態に、思わず後ろの少女二人を振り返った小太郎だったが、ブレザーの少女は心配そうにしていたものの、セーラー服の少女のほうはヤクザ数十人に囲まれた状態でも怯える様子もなく、男の獣化にすら驚いた様子は無い。
 よほど肝が据わっているのかいまやつまらなそうにすら見える仕草でカップを傾けていた。
 その、落ち着いていた少女の方が座ったまま男に声をかけた。


「そこの人。私達をどうなさるおつもり?」
「おお、ちょいと幼ねえが、よく見りゃこりゃ一級品の美人じゃねーか。そうだなぁ、へっ、嬢ちゃんらは俺らの親父への土産になってもらう。まあ、もっともその前にこの場でどっちかはちょいと味見させてもらうがなあ」
「………ねーちゃんら、俺が道を開くから、何とか逃げえ」
「おうおう、小太郎、勇ましいねえ。そんななりで一丁前のナイトの積もりか? 安心しな、そこの嬢ちゃんらには乱暴なんかしねえ、ちょっと俺らと気持ちよくなってもらうだけだぜ」


 ヤクザたちは大しておかしくも無い下品な冗談を飛ばして大声で笑った。
 その言葉を理解しているのかいないのか、その少女は小首を傾げて再び声を発した。


「つまり、私達と契りを交わしたいと」
「契り? まあ、そうといやぁそうだな。しっかし、また喋りからしてえらいお嬢様じゃねえか。悦びな、二人とも一晩中楽しませてやるぜ」


 その言葉を聴いていまだ地面に倒れこんだままながら、何とかこの二人のためにも活路を開かねばならないと思っている小太郎を、不意にブレザーの少女が包み込むように胸にかき抱く。
 その体が少々震えていて、それでも自分を守ろうとする意思を持つ腕に抱かれていることを感じて、小太郎は何とかこの二人だけは逃がさなければ、とは思うものの一旦休息状態に入った身体は容易には小太郎の指令に従おうとしない。
だが、意思と根性さえあれば体の状態なぞカバーできると信じている小太郎は無理に身体を動かそうとする。

 そんな小太郎の事情を知ってか知らずか、小太郎を抱いたまま少女は黒セーラーの少女に訴えかけるかのように声をかけた。


「……その…姉様。あの……この子の前では……」
「……かなこ。お前の主は誰?」
「……………………すみません」


 しかし、そんな少女の訴えは、絶対的な立場の違いによって一刀両断に断られたように見えた。
 そんな不思議なやり取りの後、姉様と呼ばれていたセーラー服の少女の方が立ち上がった。それと同時に、胸元に小太郎を抱きしめていた少女の方が、そっと小太郎の目を塞ぐ。

 まるで、これから始まる陵辱劇を幼い少年には見せないでおこうというように。
 一瞬振りほどこうとした小太郎だったが、少女の手すら振り解けないほど疲れており、今まさにあの男に害されようとする少女がいることがわかっていても何も出来ない自分の無力に対して喉の奥でうなるように声を響かせる。

 が、その瞬間、立っていた少女の気配が一気に変わった。






「おうおう、積極的だねえ、その嬢ちゃんとレズなのか? この娘の変わりに私をって? がはははは、笑わせるねぇ」


 口元は上品に歪められているものの、さっきまで放っていた世間知らずのお嬢様が現状を理解できずに戸惑いながらマイペースを保っていると言った気配とは異なり、それなりに戦闘をこなしてきた小太郎すらも感知したことが無い禍々しい気配に。

 そのことにも気付かず、さらにあざけりの声を上げる男。
 しかし、その男よりも小さい頃からの修練の日々により気配に敏感な小太郎の全身を妖気が縛る。
 視覚が封じられていても瞬間的に悟る……アレは、アレは断じて無力な少女なぞではない。
 ただ魑魅魍魎から進化した種族である狗族の血が混じっているだけの自分とは異なり、正真正銘神代の時から生きながらえてきた文字通り妖魔の王の一族だ。
 少女の身を案じてあわてて叫ぼうとしていた舌の根が、その対象であった少女が放つ妖気とでもいうべきものによって喉の奥の方で縮こまる。

 自分を胸に掻き抱いている少女が危惧していたことも、男達がこのセーラー服の少女に危害を加えることではない。
 そんなことそもそもありえない。
 蜘蛛が網にかかった獲物の蝶風情に敗れるようなことなぞ、起こりえるはずも無い。

 背筋に冷気がびんびんと忍び寄り、いきなり氷柱を背中に突っ込まれた感覚を味わう小太郎。ゆっくりと振り上げたであろう腕は、見掛けの細さとは裏腹に奇妙な魔力のような物で満たされているのが目を開けなくても感知できる。
 いや、おそらく小太郎にも感知できるようにわざと力の残滓を漏らしているのだろう。
 ただ、そのほうが面白いといった理由だけで。

 それを感じ取った小太郎は、自分が守らなければならないと思っていた少女から発せられた強大な鬼気を受けて自らと少女の圧倒的な力の差と血の気配を感じて、相手と敵対していたことも忘れて男達に向けて思わず叫んでしまった。


「あかん!! お前らはよ逃げぇ!!!」


 しかし、その警告は功を成す事はなく……………










「身の程を知るのね、豚」



 殺戮は一瞬で終わった。

Comment

いつも楽しく読ませていただいてます。
まさかここで初音姉様が登場するとは……予想外でした。
ランス達とはままにょにょ世界の縁もありそうですし、これからの展開が楽しみです。

はじめまして、koujiと申します。
いつも、楽しんで呼んでおります。
初音姉さまが出るとは予想外、ままにょにょつながりでランスとも知り合いっぽいですが……
ランスと初音姉さまが出会う時が楽しみです。
これからも楽しみにしております。

初音姉様が登場!!
それだけで、感無量です。

本編と絡ませるのは難しいかと思いますが、出番期待してます。
これからも頑張ってください。更新を楽しみにしています。
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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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