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鬼畜ま!11

十一話













「とにかく、自分がどのようなスタイルの魔法使いになりたいかという方針を立てることがまずは肝心だ。考えておけ」



 取引の翌日、早速ネギの血を吸ったエヴァは様々な基礎中の基礎の知識をある程度ネギに伝えた後、そういって今日の講義、実践に必要な知識の授業を締めくくった。

 ネギは、今回エヴァに教えられた、魔法使いのタイプについての講義を思い返し、なるほどと思い自分ひとり机上で学ぶことと比べて、歴戦の魔法使いの実践向けの講義という物は確実に自分のレベルアップの糧となると改めて感じていた。


 もっとも、初回ということもあって今回の講義はさほど高度なことをやっていたわけではなく、自分が前衛と後衛のどちらを選択して戦っていくのか、といった普通の魔法使いであれば知っていて当然のごくごく一般的なことであったが、今だ10歳という若造もいいところのネギにとって見れば、こういった常識とも思えることすら他の魔法使いに遅れをとっているのだ。
 魔法学校においては魔法の構成の仕方や、威力の向上に必要な精霊達に対する語り掛け方などは教わっていたが、こういった実戦を眼前にすえての授業はなかった。
 もっとも、実戦形式の授業があったとすれば、いかに天才と呼ばれるネギであっても体格面で劣る以上は飛び級の上に主席で卒業する事なぞできなかったであろうが。

 とにかく今回の講義の内容、自分のタイプ選択というものもじっくりと考えてみれば、当たり前のことであり何らかの意図があってどちらもこなせるオールラウンダーを目指すのでも無い限りは、より重点を置いて鍛える方を絞った方がより戦闘をするための技術の上達は早くなるはずである。
 そしてそのことは、今だ遠くのように感じていた、自分が魔法使いという職業についていく上で生涯のパートナーを見つけなければならないといった自覚にまで繋がっていっていた。








 しかし、この件で言えば実質ネギに選択権は無いようなものだ。

 師となったエヴァは後衛の魔法使いタイプであるため、教わるのであればそっちの方が良いはずだということは十分解っているが、今のところネギの仮想敵はランスである。
 自分のパートナーはセオリー通り普通に女性がいいと思っているネギにとって、エヴァと同じタイプを目指すのであれば、自分が呪文を詠唱している間に、ランスの前に立ちふさがって時間を稼ぐ女性を探すということになる。
 しかし、あのランスの前に立って自分の詠唱の時間を稼ぐとなると、絶対にそのパートナーは無事ではすまないと思い込んでしまうほど、タカミチとランスの戦いはネギに恐怖を植えつけていた。
 まあ、実際にも一定以上ある程度以下の年齢で容姿の優れた女性であれば怪我をするかはともかく無事ではすまないだろうが。

 確かに現状においては未熟者のネギよりも強い女性はごろごろといるかもしれないが、英国紳士を目指し、フェミニストのネギにとって自分だけ安全なところにいるというものは、どうもシィルをこき使っているランスをイメージさせて印象が良くない。


 やはり、魔法剣士型を目指すしか無いだろう。


 そして、自分の父であるサウザンドマスターも魔法剣士であったというし、自らも遅延魔法などの研究もこちらに来てからも細々とではあるが進めている以上、魔法剣士タイプであっても十分大成できる可能性はあるため、こちらでも極めれば十分マギステル・マギになれるはずだとネギは思った。

 しかし、そうなってくると問題なのが従者のことだ。
 魔法使い型であれば直接戦闘能力が高い、より時間を稼ぐことが出来るような前衛向きの、例えば自分のクラスに所属する古菲のような優れた戦士を選ぶべきであろうが、魔法剣士型であれば後衛でこちらをサポートできるような能力・アーティファクトが良いと今回の講義では習った。
 しかし、アーティファクトは契約するまでどのような能力を持った物が出てくるかわからないため、一度しかない本契約で望むとおりの後衛向きのサポートが出来るようなアーティファクトが出るかどうかはかなりの賭けであり、そのような能力を発現させそうな人間をどうやって選ぶのかについての経験が、ネギにはまったくなかった。

 そもそも、一体どういった能力が魔法剣士型と相性がいいのかすらよくわからないというのが現状だが、エヴァに師事することができたということでこれもいずれ教えてくれるだろうと思い、自らの目標のために立派な師匠ができたということで今日のところは習った範囲をしっかりと頭で纏め上げてから質問する事にしようと前向きに考えるネギだった。


「師匠、今日はありがとうございました」
「ふん、お前が契約に違反しない限りは、いちいち頭なんぞ下げんでも最低限の知識は叩き込んでやる」
「それでも、ありがとうございます」


口ではそういってはいても、契約に基づくものであっても師に対して礼を失わないネギの行為は、決してエヴァンジェリンに不快を与えるものではなかった。
そのため、エヴァは悪の魔法使いとしてはどうかと思いながらも、ネギを気遣う言葉も同時に投げかけた。


「………明日からは座学だけではなく実際の魔法戦闘のやり方も実技と平行して教えていく。今日はしっかり眠って英気を養っておくんだな」
「はい! それでは、失礼します。茶々丸さんも、さようなら」
「はい、お疲れ様でした、ネギ先生」


 ランスという、身近な目標が存在することで今まであいまいというか、迷走を続けていたネギのマギステル・マギへの道が、とりあえずエヴァという巨大なロードローラのおかげで多少の方向性が見えてきた。
 こうして、どうなることかと思われた対エヴァ戦の一日が一応終了しかけ、ネギは新たな一歩を踏み出したのであるが………………







 ほぼ同時期に、本来の歴史であればネギの上達計画第二歩目にとって、キーパーソンと言うべき存在の小さな命の火が、今まさに消え去ろうとしていた。








「ん……? お前、どっかで見たような」
(へ?)


 オコジョ妖精であるアルベール・カモミール(通称カモ)は戸惑っていた。
 カモは下着2000枚を盗んだ罪で服役していたが、脱獄してかつてより兄貴と慕うネギがこちらに来ていると風の噂で聞きつけ、かくまってもらうため日本に逃げて来たのだが、この学園に入るために森を突っ切っていると、一応まわりに注意を払って進んでいたにもかかわらずいきなり男に発見されたのだ。

 そもそも、おこじょ妖精である自分は見た目はほとんど普通のイタチやフェレットと変わらない。
 であれば、見つけたことは偶然としても自分に向かって話しかけるような人間は、魔法関係者か、いきなり動物に向かって話しかける電波ちゃんということになる。
 魔法関係者であれば、ひょっとすると自分の罪状と脱獄に関する通達のことを知っている可能性が無いとは言えないし、そもそも見ず知らずのおこじょ妖精を見て、なぜここにいるのかと不審に思ってまほネットに書き込まないとも限らない。

 魔法関係者で無ければなおさらお近づきにはなりたく無い。
 電波系でも可愛い女の子ならまだごく僅かにではあるが救いがあるものの、こんなむさくるしい男に捕らえられて喜ぶ趣味はカモには無かった。



 やばい、と思って逃げ出そうと大きく付近の木々に向かって跳躍したのだが………どれほど異常なまでの反射神経を持っているのかあっさり男に尻尾をつかまれて、宙吊りにされてしまう。

 一方、野生(?)の獣をあっさり素手で捕まえるという凄まじい反射神経を披露して、カモを反射的につかんだ男であるランスは、カモを見てなんだか見覚えのあるような、ないような魚の骨がのどに詰まったときのような不快感を受けていた。


「うーむ、どこかで見たような、ぜんぜん知らないような。でも、何かこの雰囲気というか、気配みたいなのは微妙にムカつくから知ってるような気がするのだが」
(助けてアニキーーー!!)


 尻尾を思いっきりつかまれて空中で手足をじたばたさせていたカモは、思わずネギに向かって心の中で助けを叫んでいた。
 無論、相手がただの変な人間であり、魔法関係者では無い可能性を考えると煙幕魔法や閃光攻撃を使って逃げることは愚か、声に出して助けを呼ぶことすら出来ないのだが。

 まあ、相手がどちらであっても、とにかくここは無邪気な動物を装って、隙を突いて逃げればいい、カモがそう思い立ってようやくじたばた暴れるのをやめる頃には、ランスはその気配の元を思い出していた。


「そうか、あの下着フェチの変態ねずみになんとなく雰囲気が似ているのか」
「!………きゅきゅきゅーきゅ」


 そういって、ランスはリーザスで一旦は目撃したにもかかわらず、いつのまにやら侵入・脱出共に不可であるはずの空中都市イラーピュにまで潜り込んでいた、かつての自分の所持金全部と引き換えに盗撮写真を売りつけてきた変なねずみのことを思い出していた。

 ちなみに、取引は二回あったものの、一回目はほとんどの所持金を消耗品の買いだめにより使用したあとに20ゴールドぐらいを財布に入れて取引に望み、二回目は金を渡すように見せかけた上でいきなり殺害しているという、ランスのほうが詐欺+強盗殺人といっても過言ではない悪質極まりないような取引をしている。
さすがは鬼畜戦士である。


 そして、確かに女性用下着の収集という変態といわれて無理も無い趣味思考を持っているカモの方はというと、いきなり正体が看破されたかと思ってあわてて雰囲気を取り繕ってランスに向かって媚びた動作を表す。
 が、それがランスには自分の言葉を理解していながら馬鹿にしているように感じられて、なおさらあの不快な思い出の変態ねずみを思い出す。


「まったく、リーザス城といい、イラーピュといい、この世界といいこの手の類はどこにでも出やがるな」


 下着ではなくその中身に興味が集中しているランスにしてみればいわば菓子の中身よりも包装紙の方を喜ぶような受け入れがたい趣味であるため、まだ変態ねずみと確定したわけでも無いのにあまりの不快感に無意識にカモに向かって殺気を飛ばす。
 ランスにしてみれば思わず洩れてしまった程度の殺気だったが、ランスみたいな万単位で生き物を殺している人間が放ったその物騒な目線は、心臓の弱い老人など指一本触れずに殺害できるほどの密度を持っていた。

 そして、そのランスの剣呑な気配は、結構な修羅場をくぐってきているとはいえ、その体格からはなから戦闘行為に加わることは無く、もっぱらサポート役となっていたカモにとっては、洒落にならないほどの命の危険を感じさせることとなった。
 心なしか尻尾をつかむ手も徐々に力が強くなっているような気がする。

 そのため、なりふりかまわずにもはや普通の動物の擬態すら捨て、この男に命乞いをした。


「ま、まってくれっす、旦那」
「ふん、やっぱりあの変態ねずみの同類か」


 なぜかエセ商売人っぽいというか、下っ端っぽい口調だったことでランスは自分の推測が正しかったと勝手に確信する。
 別に、元の世界にいた変態ねずみがそういう口調だったからといって、全ての下着趣味の持ち主がそういった口調であるはずも無く、ましてやここは異世界なのだからなおさらありえないのだが、もとより不審を抱いていたランスにとっては状況証拠が増えた以上の意味を持たなかった。

 ちなみに、しゃべったことについては別になんら不思議を感じていない。
 この世界の魔物とは異なり、ランスの世界のモンスターはよほど知能が低級では無い限り、ある程度の言語は操れるのが普通であるからである。



 しかし、そんなことなど知らないカモは、自分が人語をしゃべったことについて相手がまったく動揺を感じていないことから、おそらく魔法関係者であろうと推測を立て、一般人相手に話すという最悪の事態は免れたと一息ついた。

 が、その直後によくよく考えるといまだ尋常で無い殺気の持ち主に尻尾を捕まれて宙釣りになっているという命の危険を感じられる現状にはまったく変化が無いことに気付き、ランスの言ったことを否定するより自分の用件を手っ取り早く伝えたほうが得策だとあわてて次の言葉を紡いだ。


「だ、旦那はネギ=スプリングフィールドという少年のことをご存知ですか? 俺っちはカモって言いまして、そ、そのネギの兄貴に会うようにイギリスから来たんでさあ………」


 とりあえず、再び牢獄に戻る羽目になったとしても、この場でこの男に殺されるよりはましだとして自分の身元を確実に保証してくれるあの人の良い少年の関係者だということにする。
 その言葉に、ランスは放っていた殺気をひとまず抑えて心当たりのありそうなネギという名前を思い返す。


「ネギ……ネギ……ネギか……ああ、俺様にいきなり喧嘩を売ってきたあのネギネギポーンの材料みたいな名前のガキか」
(兄貴―、何やってるんすか、こんないかにもやばそうな相手に!!)


 先ほどの桁違いの殺気を浴びたこともあって、明らかにコイツはやばいと認識しているカモにとって、ランスとネギの関係が良好で無いのはかなりの痛手だ。
思わずかの有名な絵画のようになってしまうカモだが、それでも彼はそこそこ世慣れしている。
 それゆえ、何とか自分が生き残れそうなように、ネギの居場所を教えてくれるように平身低頭で拝むようにランスに頼む。

 そのあまりの腰の低さは、最初の考えでは即座に殺すかと思っていたランスに学園長と結んだ契約内容を思い出させ、まあ、とりあえずは殺さなくても良いか、と思わせることに成功した。


「(うーん、まあいいか、爺との契約の中にも関係者だったら危害を加えるな、といわれているしな。こいつなんぞはたいした経験値にもならんだろう)よし、わかった、俺様が連れて行ってやる」
「いえ、そんな、旦那にわざわざお手数をおかけしなくても、場所さえ教えてもらえれば一人で(ぎろり)……よろしくお願いしやす」


 それを聞いてカモにしては不幸なことに、当初不快感があったものの直接危害を加えられたわけでもないとして、一応契約の遵守のためカモを直接ネギのところに連れて行こうとランスは思った。
 もし、連れて行った先でネギの関係者では無いと解れば自分を謀ったとして問答無用で殺害するつもりではあるが、今のところは引いておく。

 傭兵ともいえるランスにとってそれなりに契約は大事であり(まあ、女性がらみで都合が悪くなれば約束は破るためにあると公言して省みないが)、意外に思うかもしれないが、ランスは近右衛門のことが嫌いではない。


 ああいった、それなりにこちらに礼を尽くしている老人に対しては、軽口を叩く事はあっても、自分と利害が衝突しない限りは好きにさせるというのがランスのスタンスだからだ。
 バレスやガンジー、キース、3Gに対しても、言動ではそうとは思えなかったかもしれないが、それなりに認めていたのと同様に、近右衛門という人物はこの世界で生きていく上ではそれなりのウエイトを占めていると十分理解していた。彼にとって男は不要だが、仕方なく使ってやる場合であれば、使えない爺よりも使える爺の方が少しでも好ましい。





 ちなみにランスにとって、現時点でのネギという人間の評価は、心底どうでも良い、というものである。

 自分に喧嘩を売ってきたときには少々ムカついたが、そのいらいらはタカミチ戦で十分晴らしたし、相手がこちらを避けているのかその後はほとんど会話をすることも無い。
 シィルからは同じクラスを受け持つことになったとは聞いているが、別に興味があるわけでもなく、自分の行動をことさら邪魔するわけでも無いネギの存在は、ランスにとって見ればどこまでも「その他大勢」の域を出る物ではなかった。
 面立ちは整っているようではあるが、今だガキである為「俺様の女」にちょっかいを出すこともあるまいと、カモに言われて思い出すことすら一作業がいるような、その程度の存在だった。

 そのため、ランスはカモの尻尾を握ったまま特に感慨をえることも無く、単なる作業として森を抜けてネギを探しに行った。


 こうして、ランスにとっては、暫定変態ねずみ、そしてネギ成長第二のキーパーソンことアルベール=カモミールの命の灯火は、何とかぎりぎり吹き消されないですんだ。
 あくまで、この場では、だが。





「ネギの兄貴――!!」
「! カモ君、どうして日本に?」
「ネギの兄貴のマギステル・マギになりたいって言う夢をサポートするためにわざわざウェールズから海を越え山を越え、森を越……まあ、とにかく遠路はるばるやってきたんでさあ」
「それは大変だったんだね、わざわざ僕のためにありがとう………でも、どうしてランスさんと一緒に?」
「う、そ、それは……」


 今でもランスのことは多少怖いネギではあるが、このまま延々とおびえ続けているようでは戦うどころの話ではないため、カモの前ということもあって可能な限り震えを押し隠しながら強がって普段通りにしようと勤めている。
 基本的に礼儀正しく真面目なネギであるが、年齢相応の負けず嫌いで意地っ張りな子供な面もきちんと持ち合わせている。
 そして何より、ひょっとして何か深い訳があってあのような態度をとっているかもしれないならば、自分が対話を拒む事によってランスという人間に対する誤解をそのままにする事になるかもしれないと思ったからだ。

 そして、ランスは美女以外の他人のことを気にしたりはしないし、カモにしたところで自分の脱獄がひょっとしてばれているんじゃないかとドキドキだったので、今のところネギの演技には気付かず、うまくいっていた。
 その演技を続けたまま、なぜランスと行動を共にしているのかの疑問を口に出すネギに対して、残念ながらネギと変態ねずみが本当に知り合いだったために殺すことが出来ず、もう帰るか、などと考えているランスが言い辛そうにしているカモに先駆けて答えた。


「変態ねずみと同じ気配だったからな。捕らえてすぐ殺そうかと思ったが、本当に知り合いだったとは(チッ)もう良い、俺様は帰るぞ」


 そういい捨てて一方的に帰っていったランスの背にお礼の言葉をかけながら、何とか気取られずに澄んだと胸をなでおろすネギと、ランスの言葉を何とか誤魔化そうとするカモ。


「あ、カモ君を連れてきてくれてありがとうございましたー…………行っちゃったかな?」
「……行ったみたいっすね。それにしてもネギの兄貴、あいつは一体なんなんっすか? 危うく殺されるところだったんすけど」


 殺されるところだったと聞いて、改めてランスという人間は危険人物なんだと感じるネギ。やはり分かり合うことは不可能かもしれないと考えてはいけないとは思っても、そう感じてしまう。
 近右衛門とは異なり、人生経験の圧倒的に足りないネギにとって見れば異世界から来たことで常識、というものが完全にずれてしまうという事があるとは実感としてうけていないため、先ほどの分かり合おうとする努力とは裏腹にさらにランスの印象は悪化し、目標が高くなったことでよりいっそう打倒ランスというネギのやる気は引き出された。
 というか、まあ、普通の人な対応と判断である。


「ランスさんっていって、異世界から来たって言うすごく強い戦士の人だよ。一度だけ戦っているのを見たけど僕よりずっと………あれ? それより変態ねずみって何のことだろう」


 そんなやる気が上がったネギだが、ランスの最後の言葉が良くわからず頭をひねるが、そのことについて詳しく追求される前にカモがあわてて話題を変える。
 せっかく遠路はるばるやってきたというのにまたイギリスに強制送還されてはたまらない。


「あわわわわ、そ、それより、兄貴。ここには兄貴の父親が封じ込めた闇の福音がいるって話じゃないっすか。今の兄貴じゃ勝てっこありません。だが、このアルベール=カモミールが来たからには、安心してくだせい。こんなこともあろうかと道中パートナーによさそうな「あはは、エヴァンジェリンさんなら師匠になってもらったから、心配しなくても大丈夫だよ、カモ君」……何ぃ!!」


 ここで仮契約を成立させる陣を描けるという特殊技能を使って自分の存在感を示して、ネギの使い魔として脱走のことをあいまいにしようとしていたカモにとって、ネギがエヴァと戦闘になりそうも無いということは予想外の展開だった。
 このままでは万が一自分が脱走してきたということを知られた場合、ネギすらかばってくれずに強制送還されてしまう可能性すらありえる。

 やむを得ず、カモはネギに向かって自分は冤罪をかけられて投獄され、暫くは我慢していたが妹とネギのために脱獄してきたということを嘘八百で誤魔化して伝えた。
 勿論その後明日菜の部屋に届いていたエアメールであっさりとばれ、明日菜の逆鱗に触れ怒鳴られたが、心優しいネギのおかげで何とか強制送還だけは免れて、ネギの使い魔としてここに居座ることに成功した。



「それで兄貴、とりあえずあんなランスとかいう危ないやつが学園内でうろついているんでしたら仮契約だけでもしちまいませんか?」
「仮契約?」
「なんなのよ、それ。説明しなさいよ、エロオコジョ」


 明日菜にこってり絞られた後、ネギの現状を聞いたカモは、本当にネギのことを心配してか、それともいいところを見せようとしてか、仮契約のことについて持ち出してきた。

 しかし、現時点では特異な体質を持っているだけでまったく魔法のことを知らない明日菜(カモとネギだけではまた何かトラブルを起こすだろうとこの場にいた)はさておき、イマイチ知識の偏っているネギも仮契約ということをよく知らなかった。

 ここが自分の売り込み時、とばかりにカモは張り切って、まだ子供であるネギは他人と魔力を共有して主従関係を本格的に結ぶ本契約を結ぶことができないということ、そのためお試し期間としてこういったすぐ取り消し可能でお手軽なシステムを利用すべきであること、そして、自分こそはこの仮契約を行うために必要な魔法陣を描くことが出来ることなどをネギと明日菜に語り始めた。
 ネギは、仮契約は活動時間等に著しい制限がつくが、何人とでも契約が可能であり、対象の潜在力を一部ではあるが引き出す効果を持つと聞いて、なるほど、こうやって自らのタイプにあったパートナーを探すんだな、と感心して聞いていた。
 一方の明日菜も、当初こそランス? 誰それ? という感じではあったがだんだん話しの内容を聞いていくうちにこのカモミールというオコジョもただのド変態というわけではないのだと感心していった。

 しかし、二人の視線に感心の色が混じってきているのを感じて調子に乗ってきたカモが、思わず仮契約を完全なものにするには、マウストゥマウスのキスをしなければならない、とか、同じクラスの本屋ちゃんこと宮崎のどかを自分の能力で調べるとネギに好意を持っていそうな上に、どう考えても前衛向きのアーティファクトが出そうに無いからパートナーとしていいのではないかなどについて話を飛ばしていくにつれて、顔を真っ赤にして思わず張り飛ばした。


「やっぱりただのエロオコジョじゃない! 何よ、キ、キスしなければならないってエロい設定勝手に作って出鱈目いってんじゃ無いわよ!!」
「い、いや、姐さん。これは由緒正しい契約方法で、そもそも結婚式とかも一種の契約なんすから契約成立の証としてちゅーしても別におかしいわけでは……ほ、ほら、どっかの世界ではいきなり召喚してわけも分からんうちに合意と見做してちゅーして無理やり使い魔にするって話もあるんですし」
「そんなん知らないわよ!」


 思わぬ明日菜の剣幕にたじたじになりながらも、ネギに強くなってもらいたいという思いと仮契約を成立させたときにオコジョ協会から出る仲介料5万オコジョ$を目当てに何とか言葉をつむぐカモ。
 そんなカモの思惑など完全に無視して、明日菜はいっそうカモを糾弾する。


「だいたい、本当にあんたが人の好意を推し量れたとしても、それって本屋ちゃんが可哀相じゃない。あんな争いが嫌いな子をネギのことが……その…す…好きだとあんたが勝手に感じたからって他の人間と戦わせるつもりなの?」


 その言葉に思わずカモは言葉に詰まり、ネギも同意する。
 この空気ではさすがに図太いカモも「他人なんてどーでもいいじゃん」とは言いにくかった。


「そうだね、今はまず僕が強くなる方が先だよ、カモ君。今の僕じゃ到底ランスさんと戦えないし、のどかさんにパートナーをお願いするにしてももっと僕が強くなってからじゃないと」
「アニキ………」


 どこまでいっても正しい言葉にさすがのカモも自分のイメージしているネギの兄貴との差異に二の句が告げられず、しかし、ネギに対して一つの選択肢をはっきりと示したまま、このカモが学園に来たということによる一連の騒動はひとまず終了した。

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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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