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鬼畜ま!6

六話











 伊勢魔道士連盟に所属する剣士である森里沙弓は、今、二人の仲間を引き連れて麻帆良学園に侵入していた。

 あせらず、ゆっくりと、しかし急いで三人は森を進んでいく。

 学園都市というだけあって学内に電車まで走っている麻帆良学園だが、そういった一般人にまぎれて侵入できるような箇所には、この学園が擁するとされている「四捨五入すると天才」の魔法教授、センヴェイ・ノ・リーマキ(代表作:無能怪力人型ロボット・おかきちゃん)たちによって可能な限りの防犯対策が施されていると聞いている。

 それはたとえば、駅の自動改札機にひそかに仕掛けられている軍等の特殊施設で設置されている物に匹敵する精度をもったX線による透視装置(透けて見え~るくん4号)や、プラットホームの各所に仕込んであるこの学園独自で開発した魔道波動干渉装置(撮影禁止!くん)や対魔道具用自壊精霊(はだける魔道具α)などだ。

 それらの対策が施されているという情報を事前に収集できていた沙弓たちは、まっとうに侵入するルートでは監視装置によって進入がばれるかもしれないし、魔法を主にする後ろの二人はともかく、沙弓は大刀を持ち込むことが出来ないということを理解していた。
 そして、後ろの二人とて補助具がなければ魔法の威力は当然落ちるし、何より前衛がなければ戦えない以上、沙弓は抜けられない。

 無論、沙弓は徒手空拳でもある程度は戦えるが、噂に聞く高畑・T・タカミチではあるまいし武器や魔法を持った魔法教師相手に素手でかなうはずもない。


  そのため、森を突っ切ることを進入ルートに選び、仕掛けられた様々な落とし穴、ロープに網といった一般的なブービートラップを潜り抜けて進む三人だが、それ以上に厄介なトラップもこの森には数多く仕込まれている。

 例えば、森に植えつけられている木々は一見雑然と意味なく生えているように見えるが、人間工学によって視覚的に混乱しやすいよう計算されつくしており、魔法防衛としては植え込まれた木々を文字代わりに巧妙に魔法陣を描くことによって、知識が無いものが踏み入った場合にはその方向感覚や三半規管を微妙に狂わすようになっているのが沙弓には解った。
 かといって太陽や遠くに見える山々、夕方でもうっすらと見えているであろう恒星などの位置から大雑把にでも方角を探ろうにも、真夏に比べてほとんどの葉が落ちた今の時期でさえ鬱蒼と生い茂る枝ぶりはそれすらも困難にさせるように人工的に、しかし自然に見えるように定期的に幻覚魔法なども使ってまで整えられているということが理解できる森の中で、自身の方向感覚を信頼できるほど沙弓は自分に絶対の自信を持ってはいなかった。
 なんと言ってもここでは、所々に触れるだけで異臭を放つ特殊な茸が生えているかと思えば、自然界に存在する物の数倍の毒性を持つであろう漆が非常に嫌な間隔で植えられていたりもするのだ。
 たまに空が覗けるように枝の一部が開いていることもあるが、太陽が仮にそこから見えたとしてもやはり方向を誤解して、見当違いの方向に行くよう計算された枝振りになっていたり、あからさまに引っかかってこいとばかしに監視機器が設置されていたりしている。

 さきほど方位磁針を取り出してみたが、針はぐるぐる回るだけだった。どうやら方位磁針も効かないように森全体にも磁場が張られているとみた。
 まっすぐ進んでいるはずだと信じて進んでいけば、ところどころ迂回せざるをえないように樹木が密集していたり、人間心理からして進みにくい方向には決まって巨大な岩石が鎮座していたりといった始末だ。
 さらに調査によればこの学園の敷地全体に非常識なことを非常識と認識しにくくなる認識阻害の結界が張られており、魔法という行為を隠蔽できるようになっているとのことだ。
 そして、これはこの森の中のみに限った物であろうが、一般の通信施設等を妨害するようジャマーまで配置されているようだ。この森の中ではおそらく学園側がジャマーにあわせて開発した特定周波の通信装置以外は完全に使用不可能となっているのだろう。


 それでもここ麻帆良の森は、沙弓のような不法侵入者にとって見れば唯一と言ってもいいような非正規進入路といってもよかったが、同時に獲物を罠に誘い込む誘蛾灯と言ってもどこからも文句は出ない場所であった。
何せ、好奇心の強い中高生の生徒であろうと細心の注意を払って近づけさせないようにしているほどなのだから。まさに、沙弓のような侵入者を呼び寄せるためのものだったが、そのことに沙弓たちは気付けなかった。


 そんな変質的とも言えるような防衛設備をかいくぐり、どうにか入手したあいまいな地図や魔法、気の力を使って正しいであろう道を沙弓たちは進んでいくが、正直このような森を作り、維持・管理している関東魔法協会は怪しげなところも多い伊勢魔道士連盟の長老達以上に変人達の集まりだと思う。
 同時にこんなところにまで金を掛けられるほどの金銭を関東魔法協会が独占しているから、自分達にはろくな予算も回ってこないのだと苦々しく思うが、この任務さえ終わればこの立場が逆転するかと思うとこれらのトラップも苦にならない。



 今回の任務は、最近、連盟の諜報員が麻帆良学園に関するある重要な情報を入手してきたことから始まった。
 内容はというと、「麻帆良学園に通学している関東魔法協会の長の近衛近右衛門の孫が、いまだ魔法の心得がないにもかかわらず異常なまでの魔力を保有している」というものだ。

 常に正確な情報を持ち帰るべき諜報員が「異常なほど」というあいまいな形容詞を使ったことに違和感を覚え、上層部は確認を取ろうとしたがその諜報員はその報告を持って帰ってきた事を最後にいつの間にか連盟から姿を消したらしい。
 伊勢魔道士連盟に全国に影響をおよぼせるほどの力がいまだ無い以上、他の魔法協会の領域に立ち入ってまでその諜報員がどこへいってどうなったのかについての追跡調査を行えなかったため、沙弓もその事実がどういった意味を持つかは未だ理解していないが、一体何があったのだろうかと興味は持っている。

 とにかく、嘘をつくような者ではなかったと判断されたため、確認の者が送られたところ、その者は「魔力総量は日本、いや世界屈指である可能性が高い。これ以上の調査は現時点での装備では不可能と思われるため一旦帰還する」との報告の通信が入ったことを最後に今度は帰ってすら来なかった。これは明らかに異常な事態である、それほどまでに近右衛門の孫は隠さなければならない存在なのかと、連盟の上層部が思っても無理はないほどに。
 そのため、沙弓と他二人がこの麻帆良学園に進入することとなったのだ。



 与えられた任務は「近衛木乃香の誘拐、不可能であれば調査員の状態変化の理由、麻帆良学園の警備網等の情報を探る」といったものだ。近衛木乃香さえ確保できれば、なんとでもなるという大雑把極まりない計画だった。
 正直、3人では荷が重いとは思うが何度も進入に失敗した結果として、ここ麻帆良学園では今回発見された警戒網の穴以外には蜘蛛の巣のようにこれら以上の探知装置および監視体制が張り巡らされているということもようやく掴めたため、あまり大人数で進入するわけには行かなかったのだ。

 だが、自分は以前に神鳴流を抜けたとはいえ、当時から腕は落ちていない自負があるし、二人の魔法使いもそれぞれ幾種にも及ぶ攻撃魔法と補助魔法を習得しているエキスパートだ。
 少なくとも諜報員の未帰還の原因だけでも探り出して見せようと思う。

 それに、もし近衛木乃香の拉致に成功すれば、彼女を「生きた魔力電池」として、その圧倒的な魔力量で今まで下流に立たされていた伊勢魔道士連盟が関東魔法協会や関西呪術協会といった日本にいくつもある有力な魔法使いの組合を押しのけ、トップに立てるかもしれない。
 そして、自分もこの功績によって、若くして日本を支配する事になる組織の幹部の仲間入りができるかも……それを思うと胸が高鳴り、任務にも力が入る沙弓だった。




 もう少しで森を抜ける、というところで少し開けた小さな広場のような場所が目に付き、そこに佇む一組の人影が目に入った。

 一人は緑のズボンに黒のシャツ……いや、違う。
 その上に鎧と剣を身に着けた、時代遅れの中世の傭兵のような格好をしている。
 初見では解りにくかったが、弱い認識阻害と透明化の魔法が鎧と剣にかかっているのだ。
 おそらく、この学園内の一般学生や教師に武装を隠すための工夫だろう。


 もう一人は見た目ただの少女でほとんど強そうな気配を感じないが、こんなところに妙な格好をした男と一緒にいる以上、学園側が雇った警備員の一人と生徒だろうと思われる。
 おそらく少女の方が魔法使い、剣士が従者でこの学園を守っている者と思われる。

 チッと舌打ちをするが、沙弓たちには今回、この他の侵入ルートは確保できなかったためここを突っ切るしか他は無い。

 応援を呼ぶ前に殺す。

 片手を上げて後ろの二人を制すると、一人がこちらの目配せに従って、ここら一体に消音の魔法などによる複合結界をあの二人に感知できないように慎重に張る。
 これによってこの場で何があっても学園側に探知されることは無いし、応援が駆けつけるという可能性もかなり低くなった。

 結界の発動が終わった瞬間、沙弓は刀を抜いて飛び掛った。男の方を不意打ちで無力化するための得意の抜刀術からの居合い。
 かなりの速度が乗った太刀は、一直線に相手の鎧に覆われていない首筋へと進んでいく。
 こちらの動きを学園側に出来る限り察知させないよう、わざと後ろの二人の魔法は放つよう言わないが、そんなことをするまでも無く、相手はこちらの動きにまったく反応出来ていないように見えた。


 そしてそう判断したという事実は、所詮彼女らが二流の魔法使いと剣士だったということの証明だった。


 とった、と思った瞬間、完全に反応出来ていないと思えた男の表情がこちらを向いて急に変わり、相手のにやりとした口元が目に飛び込んできたと同時に刀がはじかれた。
 そんな馬鹿な、と思うがどうやら相手は自分が刀を振り下ろした後に超高速で剣を抜き、自分の刀を弾いたらしい。
 痺れて思わず刀を取り落としてしまった腕のしびれがそれを証明している。

 あの大剣がそういったオートで相手の攻撃を感知、防御する性質を持ったアーティファクトなのかもしれないが、それにしても尋常では無い能力だ、よほど契約者の魔法使いは優秀なのだろう。腕の痺れがその思いを一層強くする。

 高畑=T=タカミチや桜咲刹那のように、伊勢魔道士連盟が調べた学園の魔法教師や魔法生徒についてのファイルの中の写真には見あたらなかったが、従者にこれほどの能力を与えるとはあの少女はよほどの魔法使いのようだ。
 高畑=T=タカミチに当たるよりかはましとはいえ、どうやら我々では荷が重かったようだと一瞬感じるが、ここまで来て引くわけにも行かない。

 背後の仲間と目配せによって一瞬で自分の判断を伝え、痺れが取れぬ右手ではなく自由が利く左手で腰に刺してあった脇差を逆手で抜き放ち、魔法詠唱を行っていた背後の魔法使いが炎属性の魔法の射手を打ちはなったと同時に相手の懐に飛び込んだ。

 人数差を生かし、少女の方を魔法の射手で牽制する一方で、自分にはもう一人の魔法使いの補助魔法を掛けておき、男のほうを二人掛りで仕留める。差し違え目的で自分が突っ込んで力量差を埋め、防御と回復に回れる魔法使いの人数の差で押しつぶす。この少人数での戦闘において、二対三という数の違いは絶対だと思ったからだ。
 そして、男を倒し終わった時点で三人で少女の方にも速攻をかけるつもりだった。
 即興でそういったチームワークを組める時点で、確かに沙弓たちはそれなりに精鋭といってよかっただろう。


  だが……………


「がはははは、またまた獲物が女とはぐっとだ。くらえ、手加減攻撃っ!」
「しねっ! ギガロケットボウれす」


 という馬鹿笑いとおきらくな声が聞こえたと思った瞬間、同時に放ったはずの魔法は少女が高速で撃ち放ったたった一発の属性不明の魔法の射手の前に砕け散った。
 そして、おそらく相手の魔法の射手が直撃したであろう背後の魔法使いの絶叫が聞こえると同時に、なぜか後ろから背中に掛けて逆袈裟に衝撃を受けて沙弓は気を失った。

 薄れていく意識の中で、腹部に大穴を開けてすでに生気を失いモノと化していた一人の脇で、矢に貫かれずにすんだ仲間の魔法使いがいつの間にか自分の後ろに回りこんでいた剣士によっていともたやすく切り捨てられていくのが見えた気がした。

 ちょっと優れている、ぐらいの実力では、獲物となることを回避することも出来ないほどの実力の差がそこにはあった。




 そして沙弓は、この後それまでに侵入した諜報員達の一部の者が、どのような道をたどったのかをその身を持って体験することとなる。







 薄暗い森の中で妙な音と、男女の声がする。
 男は小柄な女の両腕を右手一本で完全に押さえ込み、体全体で組み敷いている。
 男の方は動きを阻害する鎧とズボンを辺りに脱ぎ散らかしており、その隙間から尋常では無いサイズの男いわく「ハイパー兵器」がのぞいており、ほとんど服としての機能を果たさなくなった女の着衣の残骸を押しのけて、女自身に突き立っていた。

 改めて説明するまでも無いが、ランスと侵入者であった沙弓だ。

 後ろの二人をあっさり排除したランスは、それが当然とでも言わんばかりに沙弓をくどき、それを沙弓が受け入れないと知るや否やその場で組み敷いてコトに及んでいた。


「あ、あ、あ、あ、ああ」
「がはははは」


 最初の濡れていないための苦痛の段階を通り過ぎてしまえば、ずっとランスのただでさえ激しい腰使いに完全に翻弄されていた沙弓は、その頂点に近づいてきていたいまやほとんど失神せんばかりに腰を痙攣させていた。


「ふんっ! ………ふー」
「ああっ!」


 沙弓の中に押し入ったランスはいったん動きを止め、沙弓に対して声をかける。


「なかなかグットだぞ、沙弓ちゃん」
「も、もう、許して」


 最初はランスを精一杯拒絶し抵抗を見せていた沙弓だったが、ランスによって荒々しく扱われ、どんな抵抗も力でねじ伏せられ続けるうちに、その心は次第に折れていき今では力いっぱいの抵抗ではなくランスにこれで終わりにするように哀願へと移っていった。

 普通の人間であればさすがに自分に罪悪感を覚え、最低でも彼女を解放するであろう。



 しかし、ランスは違う。
 彼の生まれ育った世界は、力が全てだった。
 沙弓もアンダーグラウンドで生きる者だけあって、そういった面も持ち合わせているが、それはあくまで一面だ。
 望むのであれば、他の職に就くことによって、この力が全てという価値観が無い世界で生きることも出来る。
 たとえどんな辛い労働条件の職場であっても、職業選択の自由が表向きだけであっても保障されているこの国でこのような仕事をしなければ飢えて死ぬなどということはまず無いのだから。

 それに対してランスが生まれ、育った世界では力が無いものは生き残ることすら出来ない。今の地球上のどこよりも原始的なルールがそこにはあった。
 一片のパンのために親兄弟が奪い合いを演じ、一枚の金貨のために農民は貴族に殺され、一時の退屈しのぎのために人間の命は魔人の遊具となる。
 そんな世界で常に強者として君臨し続けてきたランスは、たとえ小さくなって脅えることしか出来なくなった女を見ても、血が巡っている事の最中でとまることは無い。
 そもそもランスの価値観からすれば、自分の命を奪おうとした者はたとえどんな扱いをされてもおかしくないのであり、優しく抱いてやろうといっているにもかかわらず拒んだ女には俺様のよさを身体に叩き込んで感謝させねばならないからだ。さすがは本気で自分に抱かれることが世界すべての女性に対する幸福であると思っているだけはある。


 もっとも、ある意味伝説の鬼畜王「カカロ」ほど完全な鬼畜になりきれないランス君ではある。彼の一面は良い意味で子供であり、悪い意味で大人である。
 目に涙を浮かべながら「身体は自由にすればいい。その代わり、心までは渡さない」などくさい台詞を言って間接的に非難して、わざと抵抗しなければなんとなくばつが悪くなってそのうち開放する可能性も無きにしも非ずだが。
 とにかく無駄な抵抗や哀願をしてもそれはランスにとって同情すべき行動ではなく、むしろ彼の行動をヒートアップさせるスパイスとなるだけだった。


「どうした、もうダウンか! だが、俺様はまだ満足しとらんぞ」


 だからこそ、もう性も根も尽き果てた沙弓に続きを要求した。
 彼女にとってより不幸なことに、この場にはその彼を止める唯一の者はおらず、逆にランスとよく似た価値観のものしかいなかった。


『わしは? わしの番はまだか? 』
「あ、6目虫? ………違ったれす。ぽい」
「お前なんぞに抱かせてやるのはもったいない。もっと行くぞ」
『そんな、ずるいぞ、ランス。自分ひとりだけおいしい目に』
「むむむ、ありんこの巣を発見れす。熱湯を流し込むれす」
「がはははは、自分で女を口説くことも出来ない剣はそこで指を咥えて見ているがいい」


 もともと人類を守るために剣となったカオスは、力なきものが虐げられること、例えば非戦闘員が魔人によって殺されるなどであれば、ランスに対して小さいながらも文句を言ったであろう。
 しかし、元盗賊の彼にとって、今現在ランスがとっている行動は経験値を集めるためのオマケという観点から見れば、さして咎めるべきものではないため、無駄だとは知りながらも自分の参加すら要求した。
これはカオスがランスと同じぐらい悪人であるという意味ではない。彼らのもともとの価値観が地球上のこの世界とは根本的に異なるという事だ。いかにこの世界にとって外道鬼畜と呼ばれる思考回路を持つ彼らであろうと、元の世界に戻ればまさに英雄という世界の壁がそびえ立っているのだ。

 では、この場において一応唯一の女性であるはずのあてな2号はというと、彼女にとってみれば沙弓のやっている行為は自分に代わって欲しいくらいであり、そもそも倫理観等を持つ人間ではなく、主人の意に沿う「完璧な人形」を目指して作られた人工生命体の彼女にとって、主の行動を否定することなどありえない。
 である以上、自分の参加が拒まれている現在、沙弓の悲鳴は大して興味を引く対象ではなかった。


「もう、嫌ぁぁぁ~~」


 そのため、たとえ精一杯の拒絶の声を上げながらも、沙弓の請願が聞き遂げられることは無かった。




 学園長によってここの警備を任されたランスは、最初のうちはぶつぶつ言いながらこの森の警護をしていたが、やがてこの国の剣士は女が多いことに気がつき、さらにここにいれば自分から獲物が飛び込んでくることに気づいてからは大満足であった。
 無論、いつものようにしばらくすれば飽きてくるのであろうが、今のところは侵入者は、男であればその場で切り捨てられ、女であれば沙弓のようにすることによってそれなりに、世間一般の法的基準はさておき、学園長基準ではおとなしくしていた。

 結果、わざと監視網に開けてある穴から学園内に侵入しようとした輩は、すべてランスの餌食となっていた。

 ちなみに包囲網の穴がこの森のほぼ真ん中を通るように指示したのは近右衛門である。
 いざとなればこの森ごとランスに向かってマイクロミサイルとナパーム弾、燃料気化爆弾等の麻帆良大学工学部、科学部が魔法技術によって改良した自衛隊など現代科学に感知されない程度の近代兵器、それにありったけの魔法攻撃を打ち込むつもりでここに配置したのだ。
 いかに人外じみた能力を持つランスであろうと、筋細胞を構成するたんぱく質の耐熱限界を突破した熱量と、酸素を吸うことによって呼吸しているのであればそれを大量の一酸化炭素で阻害することにより、この森と引き換えに倒すことが出来るかもしれないと学園上層部が考えたからだ。

 それが実際、本当に役に立つかどうかはさておき、完全にはランスを信用し切れていない近右衛門のかけた保険の一つである。実際、この地において魔法という力を除いて全てを統括する物理という万物の法則が、ランスたちにどれほどまで効力を及ぼすのか、近右衛門たちは完全に把握する事は出来ていなかった。
 とにかくこうして、ランスに対する警戒とともにこちらの方面の進入経路を一本に限定することで他の魔法教師にかかる負担を大幅に減少させることが出来たのだ。


 そんな近右衛門の考えは露知らず、ランスは沙弓の両足首の辺りをつかみ、高く掲げながら開いて、その侵入者である沙弓の身体を味わっていた。


「嫌あ、もうやめてぇ」
「そりゃ!」
「あっ……あああっ………!」


 ランスはこれまでの行為によってしっかりと開いていた沙弓にいったん抜いて勢いをつけたハイパー兵器をおもいっきりぶち込んだ。そこには容赦の欠片もなかった。ランスにとって見れば自分に抱かれることこそが絶対なる幸福であると思っているのだから、それも当然の行為だった。


「よっ……はっ……こらっ」


 そして、ゆっくりと動く。鋭く、乱暴に、しかしゆっくりと、可能な限り快感を与えるようにと。


「うぅ……あ……あっいっ」


 沙弓の複雑な感情を含めた悲鳴になんら考慮することなくランスは自分勝手に動き、その勝手な動きによって沙弓はさらに様々な部分を擦られることとなる。


「ふう、そろそろ本気で行くか」
「ひっ」


 今までの行為でランスの本気とはいかなるものかということを感じ取っていた沙弓はいったんはおさまっていた行為の再開の予告にさらに悲鳴を上げるが、それを完全に無視して沙弓の両足を小脇に抱えて本格的に腰を動かし始めた。もはや、抵抗すら思いつけないほどの体力の差がそこにはあった。


「がはははははは、いい感じだぞ」
「くっ……ふっ……くふっ………んんっ!」


 ランスに身体を揺さぶるだけ揺さぶられ、もはや悲鳴すら消え肉体反射的なあえぎ声以外の声が出なくなった沙弓に、ランスがからかいの声をかける。


「さっきから乳首が硬くなっているのがしっかりと見えるぞ」


 そういって、硬く尖り隆起している乳首を胸全体を揉む傍ら人差し指と中指の間で強く挟む。腰の動きと連動して、


「………!!」


 それによって声も出なくなった沙弓の腰がびくりと跳ねる。だが、かろうじて残っていた抵抗の意思をかき集め、両腕でランスの身体を引き離そうと突っ張る。


「まだ抵抗するか!」


 そう一声上げるとランスは沙弓の下肢を持ち上げ、自分の腿のあたりがその下にもぐりこむような体勢に持ち込んだ。
 結果、沙弓の手はランスの行動の妨害に完全に届かなくなり、調子に乗ったランスは腰をうねらせ、威勢良く腰をぶつける。


「あっ……あっ……ああ」


 抵抗しようにも、自らの手の届かないところでランスは蠢いており、自らの指先は虚しく空を切る。
 まゆみは諦めたかのようにランスに揺さぶられるがままとなった。
 そのとたん、沙弓の花弁から今まで以上にとろとろと蜜がほとばしり始めた。

 いくら拒んでいても沙弓も女性だ。
 もはや完全に自分の手ではどうにもならないとして諦めが心に宿り、肉体に対する支配を拒んだため、命を残そうとする生存本能と常識外れのサイズのランスの物、そして数に裏打ちされたランスのそれなりのテクニックに身体から屈服してきたのだろう。そして、諦めてしまえばもはや心の内など身体には関係がなかった。


「がはははは、ようやく楽しんでくれる気になったか、ならサービスしてやるぞ」


 ランスもそれを感じたのか、そういって上機嫌でもはや哀願すら行わなくなった沙弓の身体に没頭していった。



      ………………



「がはははは、とお~」
「ああっ!!」


 ついに、沙弓がランスの行為に耐え切られなくなり、完全に意識を手放したのと同時にランスが何回目かに果て、この陵辱は終わった。


「なんだ、また気絶したのか…………まあ、それなりに楽しんだし、この辺にしとくか」
「あ、終わったれすか、ならおかたづけするれす」


 そういってランスはようやく沙弓の体から離れて、一物をあてなに咥えさせながら持たせていた布を水筒の水(先ほどのあてなの蟻の巣熱湯攻めによってぬるいお湯と化している)で湿らせて軽く体を拭いた後、服と鎧を装備していく。どこまでいっても、あてなはランスの道具でしかなかった。そして、あてな自身もそれを望んでいた。
 それが終わった後に、ようやくランスは侵入者が見つかったらすぐに点けるように言われている通信機の電源を入れ、死体や倒れている沙弓の後始末などをさせるため、警備員の詰め所に連絡を入れる。

 こうして今日も一ラウンド終えたランスは、警備員が来るまでふと、麻帆良学園のあるであろう方向へと視線をやり、シィルと行った朝の会話を思い出す。


「そういやシィルがなんか言っていたな。なんだっけ?」








 朝の6時。ランス達用に用意された宿舎の一室では、シィルがランスを起こそうと四苦八苦していた。


「ランス様、おきてください。ランス様ぁ」
「むにゃむにゃ、うるさい。俺様はまだ眠いのだ、俺様が起きたいと思ったときに絶妙にいい感じで起こしに来い」
「今日から私は学校の方に行かなければいけないので、そういう訳には行かないのですよ~」


 ランスは体が資本の剣士である。
 また、趣味思考や生活様式がお子様思考(一部除く)なので基本的には夜10時には寝て、朝6時までには起きている。

 だが、昨日は(昨日も?)シィルとあてなとベッドの上で一戦やらかしていたため、夜が遅くなり、現在に至るまで眠りこけていた。


「ランス様~」
「あーもう解った、解った………………勝手に行って来い。俺様は俺様が起きたくなったときに起きるのだ」
「は、はい! 朝食の方はへんでろぱを作ろうと思って材料を探したのですが、こかとりすみたいなお肉は見つかりましたけど、うは~んなどが見つからなかったので、この世界の『みねすとろーね』というものにしてみました。パンは焼いておきましたし、サラダも魔冷庫に入っています。鍋をコンロの上においておきましたので、よかったら温めて食べてくださいね」
「ぐーぐーぐー」
「……では、いってきますね」

 
 そういってシィルは再び寝入ったランスを起こさないように静かに布団を掛けなおして、静かに扉を閉めて出て行った。

 ちなみにあてなはなぜかベッドの下にもぐりこんで眠っている。
 本人いわく「ひんやりしていて気持ちいいれす」だそうだ……まだ夜は肌寒い季節なのに。

 
 2時間後、冷えたミネストローネをぶつぶついいながら食べているランスと、シィルが焼いておいたパンをちまりとかじりながら何も入っていない電子レンジのターンテーブルを興味深く見守るあてなの姿があった。





 そこまで回想してようやく思い出したのか、ランスがぽんと手を打つ。


「あー、そうだ、そうだ。そういえば、今日がシィルの初仕事だったな」
「むむむ、シィルちゃんだけずるいれす。あてなたちも遊ぶれす」
『なんじゃ、寂しくなったのか、ランス』
「ふん、そんなわけあるか。あいつはどじだからな……面倒なことになって無いかと思っただけだ」
『そうじゃのう。シィルちゃんはいまいち詰めが甘いからのう』
「ぶ~ん、ぶ~ん」







 ところ変わって、入学式場。
 新任教師の紹介というところで、3-A の担任となるネギの紹介が終わった。


「というわけで、スプリングフィールド先生は今年度から正式に3-Aの担任教師として赴任していただきます」


ぱち…ぱちぱち……ばちばちばちばち!


 昨今の教育現場を象徴するようなやる気のない全体的にまばらな、しかし一箇所だけでは異様に気合の入った拍手の後、ネギが舞台の上でお辞儀をして元の席に戻る。
 その後、一旦は拍手とともに静かになった体育館だが次に行われたアナウンスにより再びざわめきが戻る。


「ですが、スプリングフィールド先生は若年であるため、今年度から一年間の間、特別に教育実習という形でシィル=プライン先生を3-Aの担任の補佐とします。では、プライン先生、挨拶を」
「はいっ」


 シィルが教壇のほうへと進む。ちなみに今日の格好はいつもの下着のような姿ではなく、淡い桃色のスーツ姿だった。
 ただし、ランスの趣味によってかなりスカートの丈は短いが。

 思わぬ発表にざわめく生徒達を表面上は完全に無視して、シィルが壇上に立って自己紹介を始めた。



「えっと、始めまして、皆さん。先ほどご紹介に預かりましたシィル=プラインです。
 ネギ先生が授業を行う際のサポートとして皆さんと、楽しくやって行きたいと思います。それでは、一年間という短い期間ですが、よろしくお願いします」


 そういって短い挨拶をした後に頭を下げ、自分の席へと戻るシィル。



         ざわざわざわ

 今度は拍手はない。誰もがこの唐突な発表に驚いていた。


「朝倉さん、知ってた? 」
「いんにゃ。私にキャッチできてないこんなビッグニュースがあったとは。不覚」
「どんな人だろ」
「きれいな人だね」
(おいおいおい、おかしいだろ。普通教育実習生ってのには経験豊かな先生がついていろいろ教えたりするはずだろうが。何で小学校通ってるようなガキにさらにお荷物が付くんだよ。また変人か? マジありえねえ。私の普通の学園生活を返せ~)
「あ、あの人は保健室にいた………」
「シィルさん、ここで教育実習する人やったんか」



 こうして3-Aの生徒達にさまざまな印象をあたえながらも、無事始業式は終わった。








「「「「「3年! A組! ネギ先生ーっ」」」」」


 新学期が始まり、クラスが解散にならなかった喜びと、春休みに散々遊んだにもかかわらず、まだ足りないと言わんばかりに元気の有り余った3-Aの面々が正式な先生になったネギの名を呼ぶ。そう、そこは日常の王国、ランスの属する血で血を洗う、殺戮の王国とはかけ離れた世界がそこにはあった。


「えと……改めまして、今年一年正式に3年A組の担任になりましたネギ・スプリングフィールドです。これから来年の3月までの一年間、よろしくお願いします」
「「「「「はーい!よろしくー!」」」」」


 そして、一通りの挨拶のあと、始業式につきものの連絡事項を書いたプリントの配布もそこそこに、待ちきれないかのようにクラスでも有数のお調子者である椎名桜子がネギに対して質問をする。そこには、一瞬で自覚もなく人を殺せる魔法による殺戮光線も、一撃で死を呼ぶ破壊の一撃もなかった。


「ねーねー、ネギ先生―。さっき始業式で言ってたシィル先生って人は?」
「ああ、そうですね。先ほど学園長先生からお話があるということで少し呼ばれていたので、そろそろいらっしゃるかと思うんですが……」


その声が終わらないうちに、「失礼します」という鈴がなるような声の後にネギの左手の扉が開き、一人の女性が入ってきた。


 歳は、十代半ばを少しすぎた頃から二十代に入ったかな、というぐらい。
 鮮やかなターコイズ・ブルーをしたやや下がり気味の瞳。通った鼻筋、抜けるように白い肌。きっちりと梳かれた桃色の髪。

 目鼻立ちの整ったかなり美しい顔立ちをしていながら、美人にありがちな、見る者を遠ざけるような冷たさがない。
 あるのは陽だまりのような暖かな印象であり、誰もが彼女のそばでは安らげるような成熟した女性の優美さと同時に童女のような可憐さを持っていた。
 そんな少女というか美女というか、妙齢の女性が教室に入ってきた。


 無論、3-Aの面々も、若干幼いものの世間一般の平均から見ると十分な美少女であり、特殊な趣味を持ったものにすれば「だが、それがいい」と即答するような逸材ばかりだが、14歳という年齢からか、その美しさにはどこか未だ目標が見つからない芸術家が作った作品のように、未完成の美しさに留まっている。
 彼女には、そういったものが無く、すでにきっちりとした方向性が定まった美しさ、というものが内面から滲み出ているように感じられた。
 そういった、先ほどの壇下からでは感じ取れなかったそれらの雰囲気を感じて、しばし3―Aの生徒から感嘆の声が上がる。 

 シィルが教壇の横に立つと、ネギが紹介を始めた。たとえ生徒達の戸惑いの視線を十二分に感じていたとしても、彼は職務に反する行動を取れるほど不真面目ではなかった。そのため、場の雰囲気に関係なくごくごく普通に新任教師であるシィル=プラインの自己紹介が始まった。


「えっと、先ほど始業式でも説明がありましたが、これからしばらくの間僕の補佐をしていただくこととなる、シィル=プラインさんです。みなさん、仲良くしてくださいね」
「シィル=プラインです。若輩者ですが、どうかみなさんこれから一年よろしくお願いしますね」
「「「「「よろしくおねがいしま~す」」」」」


 半ば反射的に声をそろえて挨拶をする生徒達。この唐突な美女の登場にまだ頭が働いていないようだった。


「今日は始業式のためにこの時間はホームルームになりますが、配布したプリント以外に身体測定の順番が回ってくるまで特に連絡事項も無いので、この時間はシィルさんへの自己紹介と質問会にしたいと思いますが何かありますか? 」


 そういって、壇上をシィルに譲るネギの言葉にようやく我に返ったのか、生徒達は競うように手を上げていった。このあたりの話せる教師ぶりもネギがノリの軽い3-Aで人気のある理由の一つであろう。
 そして手を上げたものを壇上を譲ったネギより手渡された出席簿と見比べながら、順番はシィルの気の向くままの指名による、一風変わった自己紹介劇が始まった。


「はい、では………明石裕奈さん?」
「はい、始めまして、シィル先生。出席番号2番の明石裕奈です。えっと、シィル先生はお名前からすると日本の方では無いですよね?」
「あ、はい。両親ともにイタリア人です。生まれてからずっと世界各地を転々としていたりもしていたのであまりあちらのことはあまりよく解りませんが」
「え、イタリアからの留学生とかじゃ無いんですか。じゃあ、どこの学校の出身ですか?」
「えっと、この麻帆良大学の教育学部生です。三回生なのですが、単位の履修がすでにすべて終わっているため、特別にゼミの教授からネギ先生のお手伝いをしてみないか、というお話が来まして、こちらの学級に教育実習生という形で今年一年お邪魔することになりました」


 名簿で生徒の名前を確認しながら、先日、学園長と辻褄合わせのために作った嘘の履歴をよどみなく言うシィル。
 その様子を見ていて、いざとなれば自分がフォローを入れなければならないと気負っていたネギは、ほっと肩の力を抜いたところで質問権は次の人に移った。最も、いざというときに経験不足もはなはだしいネギがシィルのフォローにまわれるかという問題はあったが。

 その後もいくつか当たり障りの無い質問がなされ、大分クラスの雰囲気が見知らぬ大人と対面するという緊張から和らいできたところで、質問権がある少女に移った。これが今後のクラスの質問の雰囲気を変えるとは露知らずに。


「は~い」
「えっと、あ、鳴滝……風香さん? ですか」


 当たったのは、いつも騒がしい双子の片割れだった。一瞬どちらか迷ったものの、姉のほうの名前を呼ぶシィル。


「あったり~22番、鳴滝風香だよ~。で、質問は、先生の身長と体重、そしてスリーサイズはいくつ?」
「え、え、え、え?」
「にしし、さーさー、正直に!」


 正直初対面で聞く質問では無いし、風香とてこのうぶそうな新任教育実習生がどのように戸惑うのか反応が見たかっただけであってまさか答えるとは思ってはいなかったが、未だこちらの世界の常識になじんでいないシィルは出来る限り答えることが、周りに不審を感じさせないことだと思い結構あっさり答えた。
 まあ、ある意味女子校らしい質問ではあるが。

 そして、それに対してシィルがあっさり答えたということは同時に、シィルも生徒もネギを男性と思ってすらいないということでもあった。


「えっと、身長は156 ㎝、体重は……ちょっと恥ずかしいけど46 ㎏です。スリーサイズはこのスーツの採寸のときに計ったときは、83/58/85でした」


………思わず教室の各所から驚嘆の声が聞こえるほど圧倒的な戦力差だった。このクラスはある意味日本の規格外であるため、中3にして胸囲が80後半にも及ぶものもいるが、身長比、スリーサイズの黄金比からすればそれらに負けない大人の女性といっていいシィルの数字は、予想はしていたものの風香に自爆によるかなりのダメージを与えた。
 周りからも驚嘆の声が漏れる。

 ついでに、この学園に来てから自分でも大分耐性がついたと思っていたネギも、いきなりそんな話になって一瞬で石化する。そろそろ早めの思春期、無邪気に聞くには大人すぎ、受け流すには子供すぎるネギだった。



「すごい……」
「……お姉ちゃんの胸なんか足元にも及ばないね」
「にゃにおう! 胸が足元に届いたりなんかしたら、それはタレているということじゃないか、不気味な! だいたい史伽も僕と同じくらいじゃないか」
「う………それはそうだけど」


 その数字に対する対抗心からか、普段は仲のいい双子の間に小さな諍いが起きる。
 姉妹の間に流れる気まずい雰囲気を感じ取ったのか、シィルがあわてて他の人に話を振る。彼女はランスと違って人の間に建つことに長けているからだ。


「え、え~と、そちらに座ってらっしゃる方。先ほど手を上げてらしたですよね。えっと、出席番号3番の朝倉和美さん?」


 が、その人選が悪かった。シィルが選んだのは、「麻帆良パパラッチ」の異名を持つ、3-Aの人間データベースだった。
 今まで運悪く当たらなかった和美はチャンスとばかりに身を乗り出し、勢い込んで質問を始めた。


「はい、朝倉和美です。いくつか質問があるんですが、まずは先生、どこに住んでいらっしゃるんですか?」
「えっと、今は学園内の宿舎に住んでいます」


 まずは当たり障りの無い質問によって、シィルを油断させていく和美。
 これぞ、相手の答えやすい質問を矢継ぎ早にぶつけ、その中に核心となる質問を入れて言い辛いことを導く朝倉得意の連続話術の序章である!!
 ………別に大した術ではない。


「休日等はどのように……つまり、ご趣味は何ですか?」
「趣味というほどのものでもありませんが、料理や編み物は好きです」


 その後もいくつか普通の質問を続けてゆき、そろそろ頃合か、と思った和美は本命の質問を繰り出した。


「では、シィル先生。先生はすごい美人ですけど、お付き合いされている彼氏はいますか?」
「えっと、それは………え? え、え、え、え、え、え、え~~~!」


 朝倉の話術からは途中で正気に帰ったものの、それはシィルにとって予想以上の質問だった。



 今までの流れから油断しきっていたシィルの脳裏に思わず浮かんだのは、当然鎧を身にまとった茶髪の戦士だった。
 無論彼とシィルは恋人関係ではない。ランス自身が公言しているように、ご主人様と奴隷であり、今まで決してそれ以上であるといってもらった覚えも無い。

 それにランスは意地っ張りだから、仮にシィルのことが好きだったとしても、決して自分から好きだといってくれることは無いだろう。
 それでも、シィルの好きな男性といえばランスであり、それ以外の男性、たとえばバード=リスフーイなどに結婚を申し込まれたとしても、今のシィルは決してうなずかないだろうと確信しているほどの絆が二人にはあった。
それこそ、人工生命体であり、本来であればそのような感情とは無縁であるはずのあてな2号が『嫉妬』を感じるほどに。





 シィルは、ゼスの高名な魔法使いの孫娘として生を受けた。
 当時から、魔力の有無、魔法の使用の可否による差別政策を敷いていたゼスに於いて、強力な魔法使いを輩出した家はそれ以前の身分にかかわらず貴族待遇を受けていた。
 そのため、シィルもいわゆる良家の子女であったといえよう。

 幼い頃より魔法使いとしての高い能力を有していたシィルは、その魔力を伸ばすべく、偉大な魔法使いである祖父から大切に育てられていた。
 そして、「ゼスにおいて、魔法使いは魔法を使えるだけのきゃんきゃんとかわらない」と密かに揶揄されるような環境で育ったにも関わらず、シィルは自己の向上のため修行の旅に出た。
 その途中に盗賊によって捕まり、絶対服従の魔法をかけた奴隷として売り出された。
 結果、今のようにランスと出会い行動を共にするようになる。


 あのままゼスの両親の元で過ごしていれば、おそらくランスとは一生出会わなかっただろう。そうなれば、きっとゼスもランスの影響による既存の制度の改革に面しなかったはずである。
 その結果として、おそらく何一つ不自由の無い貴族の子女として、多くの者に傅かれて育ち、やがては同じような身分の男と、平和で幸せな結婚をしたんだろうな、と一人ベッドでランスを待つ夜などにごくまれに思うこともある。
 そうやって育った自分であれば、今奴隷としてランスに扱われる生活は確かに幸せなものではないだろう。


 しかし、自分はもうランスに従う義務は無いにもかかわらず、何年もランスと共にいる。
 当時駆け出しの冒険者であったランスが、15000ゴールドという軽く豪勢な一軒家を買えるくらいの大金を支払って、シィルを奴隷市場から連れ出したときから、シィルは常にランスを見てきた。


 ヒカリ誘拐事件。四魔女によるカスタム沈没事件。リーザス開放戦。イラーピュ墜落事件。こっそりついていったハピネス製薬襲撃事件。玄武城脱出。ゼス崩壊。第四次Japan戦乱など数々の大事件から小さな事件までシィルはランスとともに駆け抜けた。
 そして、その事件の中において、ランスが自分とどのように過ごしたのかも鮮明に覚えている。


 カスタムにおいてラギシスに止めを刺されそうになった自分を必死にかばってくれたランス。
 闘神都市イラーピュで自分が死んだと思って涙を流してくれたランス。
 Japanの玄武城を抜けて、見習い巫女コパンドンに誰か一人を選べといわれたときにほとんど迷いもなく自分を選んでくれたランス。
 そして、ゼスの王という座を蹴ってまで冒険の道を選び、自分も伴ってくれたランス。



 数々の冒険でランスの不器用な本質というものに触れた今のシィルにとっては、ゼスで平凡で幸せな結婚を送るよりも、ランスと共に生き、ランスと共に死ぬことの方が幸せだと、自信を持っていえる。

 そう、たとえ絶対服従の魔法が解けていたとしても、シィルの心はとっくに彼に囚われていたのだ。


 だから、落ち着いて考えれば、和美の質問の答えなどとっくの昔に出ている。



 いつからそれが『恋』という物に変わったのか?

 わからない。

 強く抱きしめられた時か?
 決して甘くは無い口付けを交わした時か?
 乱暴さの中にどこか優しさも感じ取った肌を合わせた時なのか?

 わからない。

 いつから、満足そうな顔をして隣で眠るあの人の顔を見るのが嬉しくなってしまったのか。


 この気持ちは一方通行で、いつまでも相思相愛とは呼べない感情かもしれないけど……


 ……ただ一つ、確実で絶対な事がある。
 シィル=プラインは、ランスを愛している。
 あの一寸先の未来も見えない檻の中から救い出された時から、今まで。
 そしておそらく、これから先も死ぬまでずっと。

 その事実だけで、彼女は十分満たされていた。


 だから、シィルは様々な感情が混じった不恰好なものながらも恋愛経験の薄い生徒たちを引き付けるような微笑みをうかべて質問に答えることが出来た。



「いいえ、残念ながらいません。振り向いて欲しい方はいるんですけどね」


Comment

シィルの独白部分がいいですね~
ランスはどこに行ってもランス過ぎるのでたまらないですね!
でもアスナとかエヴァとかとの相性が悪そうですが。
続きが楽しみです!

この二つの作品のクロスでここまで面白いものができるとは、
と読んでいてとても感心させられました。
これからランス達がネギまの世界でどんな活躍を見せてくれるのか楽しみです。

シィルの内面描写に感動

シィルの内面描写に感動しました!! Gfessです。
そしてランスの独壇場場面、この場面もなんともランスらしくて気に入っています。
続きが楽しみです、執筆活動かんばってください。
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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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