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ドラゴンに首ったけ41

その41









神経を張り詰め、前にした両手をしっかりと構える。
ドアの隙間から見える魔物は一体。
牛頭の化け物だけだ。

先に倒してきた赤いスライムみたいな魔物と同様に、仲間が突如現れた爆発によって倒れたことに半ばパニックを起こしているのか、こちらにまったく注意を払っていないことを確認したサイトは、一気に仕掛けることにした。

左手のルーンが鈍く光る。


「……っ!」
ひゅっ!!
『…………!!』


小さな風切り音だけを残して飛んでいった矢が、ハラミボディの目に刺さる。声にならない悲鳴が部屋一面に響く。
だが、それを確認する前にサイトの指は背にしょった矢筒から取り出した第二第三の矢を放っていた。三、四、五、六……弓術の達人だけが持つ速射能力をもって、まるでマシンガンのごとき速度でサイトは矢を放ち続ける。そこには確かな熟練が見て取れた。

道中倒れていたリトルハットというモンスターから奪った矢がすべて尽きるまで打ちつくしたころには、目を押さえて苦痛の叫び声をあげていたハラミボディの全身にはハリネズミのように矢が刺さりつくしていた。
それも、鋼のごとき剛毛や強靭な筋肉の隙間を縫うかのごとく、ハラミボディの弱いところだけを狙い撃ちにしたかのごとき精密さで。

それでも人と比べてあまりに強大な生命力を持つハラミボディは動いている……まだ死んでいない。貫かれた片目をその太い腕で覆いながら、しゃにむに暴れまわっている。怒りに満ちた目で矢が飛んできた方向であるこちらをにらみつけている。
それを確認したサイトは……頭部より流れ出た血が垂れてきたことで、ハラミボディの残った一個の瞳がほんの刹那の間曇った瞬間に飛び出し、デルフを振るった。
踏み出しとともにサイトの体が加速に乗り、その勢いを利用して高速で振られたデルフがブラッドを守る従者に襲い掛かる。

狙うは、首筋。
急所狙いの一撃必殺だ。

が、その魔剣がハラミボディの頚椎を断ち切る直前に、サイトは嫌な感じを覚えてその場から飛びずさって剣を振るう。
金属質な音を立てて、デルフに当たった物体が地面に落ちる。それにちらりと目をやるサイト。日本人であるサイトには棒手裏剣のように見える金属性の飛び道具がそこには落ちていた。表面がぬらぬらと液体で濡れているかのように見える。毒か……呪いか。

それが飛んできた先には……まるでプレデターの体にグレイの頭部をつけた上で、全身を金色に塗ったようなモンスターが幽鬼のごとくたたずんでいた。
サイトは知らないが、忍・ザ・ゴールドという名のモンスターである。まったく忍んでいないド派手な外見とは裏腹に、ほとんど気配を感じ取れない。視覚では確実にそこにいる、とわかるにもかかわらず、目線を一瞬でも外すと本当にそこにいるのか、と疑いたくなるほどの気配遮断能力を持つそのモンスターの背後には、ほとんどそいつと同じ姿かたちで色だけが異なる魔物が影のごとく三体控えていた。

と、そちらに視線を移した瞬間、サイトの真横を暴風が吹き荒れる。
ハラミボディの豪腕だ。

彼らも気付いたのだ。
仲間たちを襲ったこの惨状は目の前のこのいきなり襲ってきた小僧の仕業である、と。
仲間を殺された恨みすべてをその腕に乗せてサイトにたたきつけるハラミボディに追従して、忍・ザ・ゴールドと忍・ザ・ブラックの部隊がその怨念を武器に乗せ、サイトめがけて打ちはなった。

しかしサイトには当たらない。
飛んでくる投剣を弾き、巨斧を回避し、必殺の一撃をぶち当てていくサイトは、自らの幸運に感謝していた。最初に彼らが出てこなくてよかった、と。


サイトが竜の巣に入って一番最初に出てきたモンスターは突然変異ベトとベトの混成部隊。彼らを見たとき、サイトは和製RPGに出てくる代表的な雑魚であるいわゆるスライムを連想した。無論、あのような涙的形をしているわけではなく半ば不定形の彼らを見たときは正直嫌悪感を感じたが、脳裏に少女の姿を思い描いた瞬間にそんなものは消えた。

人ではない、勇者に経験値を与えるだけの雑魚を「殺す」ことは、相手の強さ的なものをおいておけば心理的には簡単なものだった。
ゲル状のボディを貫き、震える内部の核にデルフを突きたてるとベトたちは動かなくなった。もともと生き物というよりも寒天が動いているような印象を持っていたサイトは、一番最初に核を貫いたベトが動かなくなったことで、ようやくそいつを倒したのだ、と理解した。

正直言って、ベトたちを「殺した」にもかかわらず、サイトはそれほど罪悪感を感じなかった。
サイトが知る由も無いが、ベトはさておき、少なくとも突然変異ベトは確かな知性を持っている。人と同等とまでは言わないまでも、通常の使い魔程度の知能があるはずのその生き物を確かに「殺した」にもかかわらず、あの戦場で人を殺した記憶がフラッシュバックすることも無く、それどころか動物を殺した、という意識もあまり無かった。

現代日本から来たサイトにとって、どれほど目の前で動いていてもベトは生き物に分類されにくかった。
そのため、動きが止まってはじめて、「ああ、倒したのか」とおもい、そこでようやく殺した実感がわいたが、それとてルイズの姿を脳裏に描けばすぐに消える程度のものだった。
一瞥をくれただけで、サイトはその場を立ち去った。

それが、暴力と虐殺の始まりだった。



偶然か、運命か、サイトの前には図ったかのようにある順番で魔物たちが現れた。

まず第一弾がまさにスライム、という形をしたベト、ゴーレムにしか見えないダークマン。人どころか生き物と見るのも違和感がある魔物たちだ。サイトはほとんどそれが命を狩る行為だと意識せずに彼らと戦った。
その次に現れたのがまるで何処か未開の部族の盾のような異形の顔だけが浮いている魔物フェイス、人形をしたベトであるネト、松明のような体で出来ている頭部に火を宿すモエルモン、そして名前どおり芋虫に手足がついたような魔法無効化能力を持つ魔物のイモモだった。いかにもファンタジーという格好をした彼らも、ルイズのためと思えば特に現実感も感じず半ばゲーム感覚で戦えた。
そして、最後に出てきたのが、ハラミボディや忍・ザ・ゴールドのような二足歩行する異形とはいえどこか生き物じみた魔物たちだった。

はじめにハラミボディやリトルハットといった生物を思わせる魔物とあたってしまえば、ひょっとするとサイトは戦えなかったかもしれない。
ルイズのためにこの手を汚す、と誓いを立ててはいても、今まで日本で過ごしてきた十何年間という年月は軽いものではない。
己の手で生き物を殺すことなく食料が手に入るほど、どこまでも平和な日本人としての生活がサイトの根底をなしている以上、殴り合いの喧嘩すらすることがほとんど無くなっていたサイトが他者を傷つける、というそのタブーを乗り越えるのは容易ではないからだ。


だから、はじめに出てきたのがベトたちでよかった。
明らかに人にあらざる生き物から、徐々に人らしくなってくる生き物を傷つけることにだんだん慣れていっていたのだから。




その帰結が示すように、サイトはほとんど無傷でハラミボディたちを倒し終わった。
デルフとの連携による知覚範囲の拡大や、最初の不意打ちによるダメージはそれだけのアドバンテージをサイトに与えていた。殺す覚悟とルイズへの想いは、サイトにそれだけの力を与えていた。

流石にこのレベルまで行くと無傷で簡単に殺せる、というわけではなく殺せたのは忍・ザ・ブラック一体とハラミボディだけで、そのほかの魔物はあそこまで痛めつけておきながら逃がしてしまったが、あそこまで傷つけてあればもはやすぐには戦闘に復帰できまい、とサイトは確信していた。とりあえず、現時点ではそれで十分だった。
彼らは竜を倒した後にゆっくりと掃討すればいいのだ、と。



やがて息を整えたサイトは、倒れたハラミボディに近づき、デルフの先っぽで瞳の部分をつついてみる。一度、倒したと思った瞬間は以後から襲われた覚えがあったから、相手の市を確認するまで安心できない、ということは学んでいたからだ。
ひとつだけ潰れずに残っていたブルーグレイの瞳は、剣先が触れたとしてもまぶたを閉じることは無かった。忍・ザ・ブラックのほうは頭部と体が完全に分離してしまっているため、確認するまでも無い。
それを受けて、サイトはようやくデルフを鞘に、剣気を己のうちに収めた。

ふう、と一息ため息を漏らしたサイトであったが、すぐにそんなことをしている場合ではないと再び気を取り直す。だが、戦いはまだまだ前座なのだ。気は進まないものの、次の戦いのためにハラミボディの体に突き刺さっている矢を引き抜いていく。持ってきた矢の数はそうないのだ。
強靭な筋肉の中でも弱いところを狙って放ってあったとはいえ、すべてを引き抜くのは無理で、放った矢のうち三分の一ぐらいしか抜くことが出来なかった。

その矢に、サイトは一本一本触れていく。
矢という道具は基本的に使い捨ての武器だ。当然一度放って、肉を裂き、骨を砕いたりすれば作ったときよりも武器として劣化する。例えば、鏃が大きく欠けただけで空気抵抗によって直進しなくなったりするし、ひびでも入っていれば撃ったとたんにぽっきり行くこともある。いくらガンダールヴの力である程度の補正は出来るとはいえ、それにも限度があった。
触れて確認することでガンダールヴの能力を使って、芯にゆがみや亀裂が入ったものを除いていけば、結局もう一度使えそうな矢は十本前後しか残らなかった。
その数の少なさに思わず顔をしかめるが、もともと洞窟の中に落ちていたものを奪ったものだ。無くても仕方が無い、とサイトは自分で自分を慰める。

この部屋に突入する前に入り口に放り出してきた弓も拾い上げて、異常が無いことを確認して、再びそれを矢筒に引っ掛けるように背負いなおす。それらが終わってようやくサイトは自分の細かい傷の治療を開始した。
いつ襲われるかわからない以上、自らの能力を発動させる武器の確保を治療より優先していた。

もともとそれほど深手は負っていなかったため、事前に購入していた水魔法が使えなくても発動する秘薬をいくつか使えば止血は出来た。まあ、メイジではないサイトでは秘薬を使っても血止め程度しか出来ないのだが。

改めて、一番最初にギーシュに喧嘩を売ってぼこぼこにされたとき、ルイズが使ってくれた秘薬の効果と価格を思い知る。こちらの歴史では今使った秘薬を含むいくつもの装備が買えるほど高価な秘薬を、自業自得でボッコボコにされた使い魔風情に使ってくれた、「あちら」のルイズのことを思うと今も胸が痛むが、その痛みを無視してサイトは先に進むことにした。
その背と両手にルイズがデルフの代わりと買ってくれたさまざまな武器や、倒した相手から奪った武器を大量に持って。
武器によって強くなるガンダールヴのサイトのために、ルイズは多種多様な武器をあらかじめ持たせておいてくれていたのだ。


エクスプロージョンによって迎撃部隊の数が激減している中、それらすべてを蹴散らして、サイトは一歩一歩確実にブラッドに迫っていた。

徐々に覚悟を試されていくことで、段々と生き物を殺す感覚に慣れていったサイト。
その正面に、竜の巣においてただ一人の、主を守る人間が現れたのは、当然の帰結だったのかもしれない。




竜を守る戦士の一人、フェイ=ルランジェル=ヘルトンはゆっくりと開いていく扉の先に、少年の姿の「魔物」を見た。
その魔物は、背に山ほど仲間たちから奪ったであろう武器を背負い、赤に青、緑といったさまざまな色の血で全身を染めていた。

見ただけでわかる。
あまたの迎撃部隊をすべて撃退してここまで入り込んだ、侵入者だ。


「止まれ!」
「………!」


こちらに向かって胡乱下に向けられていた視線が、声を出したとたんに見開かれるのを見ても、フェイは微塵たりとも油断しなかった。

現在、巣の防衛部隊が謎の爆発によって激減していること、そしてそれに乗じて入ってきた一体の侵入者が仲間のことごとくを惨殺していることは、この竜の間正面の部屋を守る彼女の耳にも当然入っている。
どう見てもこいつがその侵入者だろう。
人と魔物という違いはあるとはいえ、同じ釜の飯を食い、同じ場所で修練を競い合った仲間たちをこんな子供に殺されたことに、フェイは確かな怒りを感じていた。彼女は、そういった人間だった。

が、それを押し殺して問いかけを投げる。
戦士に年齢など関係ないことなど、誰よりも己が知っている。


「ここを竜の巣と知っての狼藉かっ! これ以上進むというのであれば、このフェイ=ルランジェル=ヘルトンが相手だ」
「っ!! 人間……なのか?」


ようやく投げかけた質問というか、脅しに言葉が返ってきたが、その内容に内心フェイは頭をかしげた。己が人間以外の何に見えるというのだろうか。

確かに彼女の仲間である魔物たちの中には、「メイドさん」や「レイリン」といった、人にも似た姿を持つ魔物はいることはいる。
だが、彼女達はそれでも魔物だ。一目見れば、どことははっきりとはいえないが、それでも明らかに魔物であるという違和感がはっきりと感じられる。気配というか、顔つきというか、骨格からなる歩き方によるものというか……日本人が中国人とモンゴル人の違いをなんとなくだがわかるように。
ここまで来るような実力者なら、その程度のことなど部屋を入る前に気配でわかっているはずであろう。

にもかかわらずわざわざこちらに人間であるか、と確認する侵入者にどうもおかしい、とフェイは思ったが、すぐにそんな考えを捨て去る。ブラッド様のために、ここを守護するのが自分の役目だ。
それ以外のことに神経を使うべきではない。
だから、まさかあの竜に人間が協力しているなんて予想だにしていなかった相手の少年に必死の形相での嘆願も、一言の下に切り捨てた


「やめろっ! 何で人間が竜の味方なんかしてんだよっ!」
「ブラッド様への侮辱は許さん」
「っ!!」


そういって右手に持つ剣と左を守る大楯を構えて見せる。
騎士としての叙勲は受けていないフェイだが、その精神は常に騎士たらんとしている。戦いの場で語るような口は持っていない。
その冷たい拒絶を受けて、人間同士ならば会話で何とかなる、と思っていたサイトの顔が愕然としたものに変わる。

手に持つ武器は、彼女の家に先祖代々伝わり、一度敗北とともに地にまみれたものの、再びブラッドから授けられた魔法剣。
この世界に存在しない魔法技術を使って作られたその武器の能力は、剣戟の強化と切れ味の上昇。デルフのような超一級品と比べれば流石に劣るが、それでも家宝にするのにふさわしい能力を持っている。

フェイの腕を持ってすれば鎧ごと人体を叩き切るその魔剣の鈍く反射する輝きが、凄みとともに触れるまでも無くその脅威をサイトに伝えた。
その凶悪さに思わずひるむサイトだったが、とにかく自分と大して年齢の変わらぬような女性を一気に叩き切るわけにもいかず、一度跳ね除けられたからとあきらめずに説得の言葉を重ねるが、当然ながらそんな言葉にフェイが耳を貸すはずも無い。


「やめろ! 人間同士で争いたくなんて無いんだっ!」
「私の仲間を殺しておきながら、いまさら何を言う。戦いたくないというのならばとっとと立ち去れ!」
「それは出来ねえ! 俺は竜にしか用は無いんだ、通してくれたら何もしないって」
「……ならば構えろ。丸腰のものを切る趣味は無い」


そもそも、フェイには今一この少年の言っている言葉がよくわからなかった。
人間同士で争いたくない? 
何を言っている。今までさんざん仲間を殺してきたことは、その浴びるように受けた仲間の血が証明している。それが相手が人間になったからといって戦えぬなど……戦士としての心構えがなっていない。

そういった考えが、フェイにとっての普通だ。
最初のうちは弱い魔物を殺して経験を積み、あるいは戦争に従軍して手柄を上げ、だんだんと力を付けていってその武を示し、やがては何処かの大公にでも抱えられて、その恩義に報いるため忠誠の刃を敵対する人間に向け、主をありとあらゆることから守る。
それこそが、フェイの幼きころより思い描いていた夢であり、今叶えようとしていた夢である騎士という職業である。主が竜になってしまったのは、竜討伐によって立身栄達を願っていた身としてはなんか微妙にずれているし、叙勲、という形で騎士になることはもはや一生無いであろうが、ある意味実力で自分を下したブラッドは尊敬できる主人であるし、今の境遇にさして不満は無い。

そのためフェイは、敵国の兵士を殺すのと同様の感覚で、忠誠を誓った主であるブラッドのために侵入者を傷つけ、殺すことにさしたる疑問を抱いていなかった。


それこそが、まさに剣と魔法の世界の騎士と、平和な日本人との常識の違いだった。
彼女にとって、戦えぬ一般人を虐殺する、民間人を見捨てる、などといったことは確かに許せぬことであるが、同時に自らに刃を向けてくる敵対者を倒し、殺すことなどには何のためらいも無い。
彼女が生きてきたのは、殺されねば、敵を殺して自国を守られなければ、主を、友を、子供を、家族を奪われる、戦国時代なのだから。

そして、フェイの生まれ故郷とは違うものの、このハルケギニア世界も確かに剣と魔法による戦乱の世界である。
そうである以上、ここでは、この竜の巣の中ではサイトの方が「間違って」いる。

ルイズを守るためであれば、何だってやってやると誓い、今までさんざん魔物とはいえ生物の命を奪ってきた以上、彼にとっての正解はもはや、「誰も殺さない」という尊くも愚かな不殺の誓いではなく、ためらわずに己の敵を殺せる鋼の心なのだ。
少なくとも、そう覚悟したはずだ。

そういうことを思い出したサイトは、何とか言葉で解決したいという気持ちを必死で押さえつけた。議論する時間などない、そもそも話し合いを拒絶している相手を説得できるほど話術には自信がない。

人と人が争うなんて間違っている。ましてや、あんな人々を虐殺するような竜に協力するなんて、サイトの常識からすれば考えられないことだ。
しかし、その思いが通じない。
かつての世界での戦いの場で、ワルドや軍と戦った経験から、こういった場合にはもはやそれで解決できない、と思えるほどサイトはこのハルケギニア世界、人と人がごくごく当たり前に争いあう世界に毒されていた。

だから、もはや術を失ったサイトは、内心の動揺を押し殺しながらも構えるしかなかった。


「くそっ……」
「………」


そんなサイトの戸惑いなどわかるはずも無いフェイだったが、サイトが構えた剣を見て目を見張り、警戒を新たにする。
なにやら魔物は殺せても人間は殺せない、などというようなニュアンスのわけのわからぬことをいっている輩だから、新兵か? などと軽く思っていたのだが、構えを見てその僅かばかりの侮りを消し去る。
そうせざるを得なかった。

少年の姿をした敵対者は、ただ単に基本に忠実な、正中線を守るように両手で剣を保持している。
何の変哲も無い、剣を習いたての少年すら行う構えであるが……その構えから伝わってくる凄みが、剣気がその相手を軽く見ようとするフェイに都合のいい妄想とは違うと警告する。
どう見てもアレは、達人の構えだ。

構えに微塵の隙すら見受けられないことで、この少年の顔をした侵入者が己以上の剣の使い手である、ということが、自身も相当剣を使うフェイには一目でわかった。
自分の剣の師の一人であるユメ=サイオンとは、人間と獣人という種族ゆえの違いのためにずいぶん違うが、それでも彼女に勝るとも劣らぬ使い手だ、ということを、最近魔法使いやならず者ばかり相手にしていたために剣士を見ることが少なかった中でも一番の使い手であるという事実を、正確にフェイは理解した。

じわりじわりと、背筋を凍るような悪寒が、殺気を微塵も見せない相手から放たれてくる。
今も相手は葛藤しているような表情をしているものの、その技はおそらくフェイが油断を見せた瞬間に放たれるだろう、ということをその構えは雄弁に語っていた。


なるほど、先ほどの態度は、人殺しを嫌う言葉は偽装か、とフェイは勘違いし、納得する。
これだけの修練は決して丸木を、巻き藁を切り続けるだけでは身につかない。
生きた動くものを切り、人間の急所を知り、肉の感触を愛剣に味あわせなければ、決して到達できない高みだ、ということを知っていたがゆえに、フェイにとっては日本から来たガンダールヴの言葉はこの瞬間に完全に聞き入れられることはなくなった。


目の前の少年は、間違いなく己の敵だ、とフェイはその戦いにまみれた人生ゆえに確信する。
そして、その技のひとつが己を弱弱しく見せて油断を誘うことなのだろう。


だが、その手には乗るまい、とフェイは胸に抱いた主人のぬくもりを思い出す。

己は騎士ではない。
我が家はその位さえ剥奪されている。
ただの、竜に屈し、勝手に彼に見当違いの忠誠を抱いている戦士に過ぎない。

だが、それでも……フェイには騎士たらんとする己の誇りをも捨てる気などさらさら無い。
ブラッドに対する絶対の忠誠は、ともすれば妄信ともいえるものだったが、それでもフェイは己の常識に従って、主の敵対者に向かって剣を向けた。

主が間違っていようと、フェイには関係ない。
ただの剣、ただの道具として、命じられた仕事を果たすことが、フェイに出来るブラッドに対する愛を証明することなのだから。
奇しくもそれは、ルイズのためにすべてを捨てたサイトの姿と、何処か似ていた。


ピキーン

ルイズ パーティ に 所属する サイト の ステータス が 公開されました。

サイト HP35 攻撃37 防御8
所持スキル ガンダールヴ 熟練者 策士 (鬼の気迫)

スキル説明
ガンダールヴ:武器の持ち替えにより、(魔眼の矢)(疾風迅雷)(銀の武器)(魔法武器)(悪魔武器)(伝説武器)(弓矢)(二回攻撃)(奇襲心得)(強打)(デルフリンガー)の内のいくつかの効力を得る。
デルフリンガー:(伝説武器)+(魔法障壁)の効果を持つ。喋る。


ブラッド のステータスが更新されました。

第十八ベト隊 第二モエルモン隊 第三ハラミボディ隊 が 壊滅 しました。

第五ダークマン隊 第一忍・ザ・ゴールド隊 第二イモモ隊が 行動不能になりました。



その42へ

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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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