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ドラゴンに首ったけ40

その40








しばらくぶりの元の巣への訪問。
リュミスに居場所がばれ、ユメがいない今となってはこちらに来る必要性など皆無に等しいのだが、まあルクルやマイトに会ったり、竜が健在である、ということのアピールのために飛び回ったり、ライトナ王国やハッサン王国の砦を壊して回ったり、といったことのために今でもブラッドとクーはこっちに来ていたのだが……しばらく来なかった間で、こっちの竜の巣はえらいことになっていた。


「……地味にものすごく貯まってないか?」
「……ですね。まさか『金』の連中がこんなに持っているとは。ちょっと甘く見てましたね」


宝物庫にあふれんばかりに財宝が積み重なっている。というか、置ききれないのか低レベルの魔法具など廊下に転がっていたりもしている。
留守の間に『金』と呼ばれる冒険者グループの襲撃を何度も受けたらしいのだが、彼らからの戦利品がこの宝の山である。

人間は母体数がアホほどいるので、その中からの逸脱者、ときおり種族固有の身体能力からくる戦闘能力から飛びぬけた連中の数も異常に多い。種族全体の平均値でいえば獣人や森の住人のほうがはるかに優れているのだが、ごくごく一部のものの戦闘能力が彼ら他種族と違って人間は突出しすぎている。
中でも『金』や『銀』などと呼ばれる連中は、竜の僕をもってしても容易に殺せない化け物ぞろいである。
たとえば、『銀』に所属していた金目のジャックと呼ばれる男は、本当か嘘かはさておきたった一人で竜を殺したといわれているほどだ。戦闘能力と社会的地位がイコールで結ばれるわけではないが、まあ普通に考えて竜を殺せるような冒険者が仕事や金に困るはずが無い。

まさに脅威であるが、同時にこういった高レベルの冒険者は竜にとっていいカモだ。
彼らの装備品は超一流の魔法製品で揃えられているため、退治すればかなりの大金が手に入る……まあ、オスとはいえ竜を殺せるような連中相手に巣を守る竜の僕たちがかなうはずもないため、基本的に普通の巣なら彼らに目を付けられた竜の巣は壊滅するか夜逃げするかの選択肢しかないはずなのだが。


ブラッドが放っておいていた間に巣にいた15匹の精鋭モンスターたちは、なんと「金」や「銀」の連中すら退治できるほどに経験を積んでいた。一人一人がガンジェットやフェイと同等以上なのである。彼らが部下を引き連れ、連携して、巣の防御施設を駆使して当たれば少数精鋭を体現したかのような一流冒険者パーティの人数で支えきれるはずも無いだろう。
所詮、最終的に戦果を決めるのは数×質なのだから。

結果として、ブラッドの巣は今未曾有の好景気に沸いていた。
その状況を半ば呆然と見るブラッドとクー。
無論、二人とも書類でそれなりにこの現状を知っていたのであるが、現実にこうまで財宝を積み上げられるとちょっとほうけてしまう。
が、クーは意識を取り戻すと、プルプルと頭を軽く振って、とりあえず思考をクリアにする。

この目の前にある財宝があれば………
直接的に目の前にゴールをたたきつけられたことで、クーの覚悟は決まった。


「とりあえず、宝物庫の拡張工事をするとして……どうします?」
「どうするとは?」


この関係を終わらせよう。
どっちつかずで宙ぶらりんな主と自分の関係を終わらせ、未来へと歩いていこう、と。
そのため、恐れながら、絶望と希望を抱えながら、クーはそのための一言を発し始めた。


「何か高価なものと換金してしまえばとりあえず今の現状は解決しますが、もっと抜本的に解決する方法があります」
「何? そんなものあるか?」
「………これだけの財宝があればリュミス様とて不満に思われることも無いでしょう」
「!!」


そう、竜が巣作りを行うのは究極的には結婚後にのんべんだらりと永遠の蜜月を続けられるだけの財宝を集めることが目的である。
それさえ達成できたなら、もはや巣作りなんてする必要など無い。もうひとつの巣を苦労して運営するぐらいならばいっそ巣を閉じてしまうのも手である。

後は、ブラッドの覚悟ひとつなのだ。


(結婚されてしまいますか? ユメ様たちの思いを捨てて……私の気持ちを置いて)


ブラッドに気付かれないよう必死でポーカーフェイスを続けながら、クーは祈るような気持ちでブラッドの言葉を待ち続けた。
これは一か八かの賭けだ。
ここでブラッドの心が今の巣作りの楽しさよりもリュミスのほうへと少しでも傾いていれば、そこで二人の関係は終わる。この柔らかな月日だったブラッドとの関係も終わってしまう。

ああ、やっぱりこの巣作りが「終わった後」の本社勤務の話を受けよう。
ブラッドが自分以外の誰かとともに歩いている未来において、平気な顔してただのご主人様と執事の顔を続けることなんてきっと自分に出来ない。
その相手がリュミスベルンでなかったとしても、きっと自分は耐えられない。

たとえ一時的には出来たとしても、いずれは暴発してしまうだろう。リュミスベルンには効かなくても、竜族の中でも弱いブラッドと魔族の自分に効く毒も自分なら調達できてしまうのだから。

だが、もしも、もしもブラッドがこの問いにNOと答えたならばその時は……





そこまでクーが考えてしまってようやく、ブラッドの返答が帰ってくる……その半ばに自分たちの近くに駆け寄ってきた部下の悲鳴が重なった。


「そうだな……よし、決め「ご主人様、連隊長、大変です! あっちの巣が」……は?」
「一体何が!」
「侵入者が、迎撃部隊が!」


ブラッドが答えを言い切る前に混乱しきったメイドが到達したのは、はたして誰にとっての幸運だったのだろうか。






夜の帳が人々の視界に幕を引き、月光だけがそのカーテンをあまねく照らし出す光で引き裂いている、そんな時間の竜の巣入り口。

日中は人であふれているであろうそこも、流石にこの時間では静かなものだった。
ワルドを切り捨て、レコン・キスタを撃退した後休憩をとったらこんな時間になってしまった、というのはルイズやマリコルヌにとっては紛れも無い事実であろうが、サイトにとってはこの時間、というのはもうひとつの意味が重なる。

なんといっても、竜を退治するのは他でもない、「ルイズの使い魔」で無ければならないのだ。他のものに横取りされるようでは駄目であり、ルイズの力を衆目に晒せばまたワルドのようなものが出てきかねない現状では、たとえ多少魔物の暴威が強くなったとしても、だからこそ人目につかないこの時間帯は好都合なものだった。

疲労は完全に回復した。
ワルド相手に傷ひとつ負うこともなかったことはかつて黒焦げにされかけたことを思うと己のレベルアップをいやがおうに意識させる。人一人切れば一年の修行にも匹敵する、というがまさにそれを痛感して言いようもない不快感を覚えたりもしたが、それはもはや悩むことではない、と一時的に棚上げする。

大丈夫、今から倒すのは、殺すのは「人」じゃなくて「竜」や「魔物」なのだ、と必死で自己暗示をかける。それに、自分は万が一のための保険なのだから……そのときが来たら、迷ってはいけない。
目線を、隣で佇む桃色がかった金髪の少女のところに移す。
彼の愛しい恋人兼主人だ。

ワルドとの戦いでも、ルイズは精神力を温存するように言っていたので今まで虚無魔法を一発も放っていない。せいぜい失敗魔法を数発だ。

対照的に彼女をサポートしていたマリコルヌはぼろぼろになっていたが、今は逆にそれが都合がいい。以前からの段取り通りにするように、と彼に目配せをやって頷きを受けた後、サイトはルイズに声をかけた。


「準備はいいか、ルイズ?」
「ちょ、ちょっと待って……(すーはーすーはー)よ、よし、いいわよ」


初めて魔法をまともに使う、ということでよっぽど緊張しているのか、あれほど自信を持つように言ったにもかかわらず半ば震えているかのごとき様子になっている彼女に愛しさを感じながら、サイトは二人の未来のために紅蓮の魔法を望んだ。


「じゃあ、はじめてくれ……大丈夫、俺がついてるぜ。『全力』でやってやれ」
「え、ええ。それじゃあ、行くわよ……エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド・ベオーズス・ユル……」


洞窟前に朗々としたルイズの詠唱が響き渡る。
マリコルヌすらはじめて聞くその詠唱が、どのような事態を引き起こすのかを正確に知っているのはこの世界ではサイト一人だ。当然、探知機でルイズたちの様子を窺っているメイドたちにもその声は聞こえていても、それが何を意味しているかなどわかるはずも無い。
結果として、その詠唱は誰にも邪魔されること無く淡々と紡がれる。

歌うように、踊るように朗々と唱えられる呪文は、夜のしじまを淡々と裂いていく。
もはや、鳥の羽音や虫の鳴き声すらすることなく、無音の闇の中、ルイズの呪文だけがあたりに響き渡る。


「スヴュエル・カノ・オシェラ ジェラ・イサ・ウンジュー……」


サイトもそのルイズの声を黙って聞き入る。その聞き覚えのある呪文と、脳裏に響くモノとまったく一致する声音に心の一部が悲鳴を上げる。
同じ色の髪をした、『見捨てた』少女の泣き声が、強く強く何度も鼓膜の奥で乱反射する。

だが、それすらもサイトは押し殺した。
自分の主は、今の主はこのルイズだ。
竜を殺すまでは、故郷への旅愁も、かつて愛し、今でもやはりどこか愛している今目の前にいる主人と同じで、だけども違う彼女のことは脳裏から忘れろと必死で言い聞かせる。
ここのルイズと平和な日々をすごすのか、七万の兵に襲われているであろうルイズを助けに行くのか、それともやはりどちらの少女も裏切って日本に帰るのか。

それを決めるのは………ルイズの危機を救ってからだ!


「ハガル・ベオークン・イル!!!」



ルイズは己の衝動に準じ、宙の一点めがけて、杖を振り下ろした。

サイトの決心が終わるまで待ち構えていたかのようなタイミングで詠唱が終わり……それと同時に入り口まで響き渡る巨大な轟音と小型の太陽を思わせる光の乱舞が、洞窟の中を乱反射して響き渡ってきた。
それを受けてペタン、と地面に座り込んでいたルイズが、ようやく自分のやったことに気付い手声を上げたのとマリコルヌが呆然と呟いたのはほとんど同時だった。


「やった! 成功したわ!!」
「こんな魔法があるなんて……」


誰に言われるでもなく、最高の手ごたえを感じたのか、喜色満面にサイトのほうに振り向くルイズ。マリコルヌが驚きの声を上げるのも無理は無い。


彼女が唱えたのは原初の虚無魔法、エクスプロージョンだ。
彼女はそれを完璧に制御して「竜の巣そのもの」に叩き込んだ。
対象は魔物とエルフと竜。人間以外のすべての生き物だ。


無論、普段であればこんなことなど出来はしまい。エクスプロージョンは、系統魔法により防ぐことを禁ずるその威力は確かに強力ではあるが、所詮虚無の中では初歩の魔法だ。
こんな大規模に、それこそ山ひとつにも及ぶ竜の巣全体にかけるなんてことは、到底不可能なはずだった。
にもかかわらず、ルイズはごくごく当たり前のような確信を持って、それを行った。

彼女の従者は知っていたのだ。
確かにそれは通常なら不可能だ。
だが、今は、今だけは違う。
十数年間「ゼロ」と呼ばれてさげすまれ続けてきたルイズが溜めに溜め込んできた精神力を使って、無理やり呪文の威力を押し上げることだけが、それを可能とする。


戦艦の本体にはほとんど影響を与えずエンジンだけ破壊できるように、その暴力的な爆発を中でとらわれているであろう人質には一切危害を与えず、ただ目標だけを爆発させる呪文を完全にルイズは使いこなしていた。


あの爆音がその証明、おそらく竜とてアレを食らえばかなりのダメージを受けているはずだ。
戦艦をも落としたルイズの初発のエクスプロージョンの威力を肉眼で知っているサイトは確信する。


「……やったな、ルイズ」
「ええ……ご、ごめんなさい、こんなところで止まっているわけには行かないわね。あの竜を倒したか確認しなきゃいけないんだから」


精神力を使い果たし、ふらふらになっているだろうにもかかわらず、そういって座り込んでいた地面から立ち上がろうとするルイズを、サイトは笑って押しとどめる。


「いいから休んでろって、これからは俺の仕事だ」
「……サイト?」
「言ってなかったけど、エクスプロージョンってのはかなりの精神力を消費するんだ。一日や二日では回復しないぐらいにな」


サイトの言葉の意味がルイズにはわからなかった。
何を言っているのだろう、ここをマリコルヌに任せて余計な邪魔が入らないよう人払いをしながら、サイトと二人で竜を倒せたか確認に行くのではなかったのか?
急がなければひょっとして止めを刺しきれなかった敵がいた場合回復されてしまうではないか。


と、そこで不意にサイトの顔を見つめる。
そこに浮かんでいる色は、まるであの夜、彼が一人で震えていたときと同じようで。
孤独と恐怖の浮かんだ表情が、嫌がおうに彼が語ったこの世界に来た理由を思い出させる。


「まさか……ダメ! 行かないで、サイト!」


ルイズはようやく悟った。
彼は、独りで行くつもりだ。
はじめから、そのつもりだったのだ。


「サイト……本当にいいのか」
「いいわけないでしょ! どうして立てないのよ!」


気遣わしげにサイトに尋ねるマリコルヌの問いが自分に向けられたものではないことを理解しながらも一喝して、ルイズは必死でサイトに追いすがろうとするが、生まれて始めてまともに魔法を使った疲れで、ひざが笑っていて立ち上がれない。
先ほどの一撃に全身全霊をかけたばっかりに、わずかばかりの精神力も残っていないからだ。


「待って! あなた一人なんて無茶よ!!」
「そんな様子でどうするってんだよ。待ってろって、すぐにあの竜の首を取って帰ってくるから」
「お願い、サイトを止めて! マリコルヌ」
「またな……」
「やめて、私を一人にしないで……見捨てないで、サイト!」


必死の嘆願にもかかわらず、短刀を握ったサイトの拳が、ルイズの首筋をやさしく打つ。
マリコルヌにはそれほど速い動作にも見えなかったにもかかわらず、たったそれだけの動作で今まで必死にサイトに叛意を叫んでいたルイズはくてっとその場に崩れ落ちた。
そのルイズをサイトはやさしく寝かせなおす。
その様子を見て、マリコルヌは先の戦いであの風メイジに付けられた傷がいえていないにもかかわらず、杖を強く握りしめた。

彼の仕事は、この勇敢な使い魔に変わって眠れる少女を守ることなのだから


「頼むぞ、マリコルヌ」
「……わかってる。グランドプレ家の名にかけて、何があってもルイズは守って見せるし、そっちにいかせやしない……君も生きて帰れよ、サイト」
「死なねえよ、帰ってきてルイズにご褒美のキスしてもらうんだからな」
「…くそ、うらやましくなんて無いぞ……だけど、ルイズに胸は無いけどいいのかい?」
「このくらいも悪くないな、って最近思い始めた」
「そうか」


お互い軽口をたたいてそれっきり。別れの言葉も口にしないでサイトは二人に背を向けた。
デルフを背負い、以前学園を出る前にルイズに縫ってもらった袋をひとつ引っさげて、サイトは竜の巣へと入っていった。


なぜか彼にはわかったのだ。

アレを食らえば、どんな生物だって重傷を負うことは避けられない。ルイズが殺意を持って放ったエクスプロージョンは、文字通り万物を下す必殺の一撃だ、ということを彼は確信していたにもかかわらず、彼は知識ではなく感覚で知っていた。
あの竜はまだ死んでいない、と。
この巣は役目を終わらせれていない、と。


そのため彼は、誰よりも大切な宝物をこの場に残して、一人竜の巣へと止めを刺すために潜っていった。



結局サイトはルイズの気持ちをわかっていなかった。
かつての「ルイズ」も、今の「ルイズ」もサイトの命と引き換えに自らの望みをかなえることなど望んでいなかった。自分の命はさておき、あくまでも使い魔であるサイトの命をチップに七万の兵の進軍を止める、竜を倒す、なんて想像もしていなかったに違いない。
にもかかわらず、彼女らの従者は、どちらの場合も彼女の想像を遥かに超える規模で裏切った。
どちらの「ルイズ」の傍にいても、たった一人で戦うを事を選んでしまった。

やはりサイトはサイトだったのだ。
成長していなければならない、かつての世界での致命的な間違いを再び繰り返す、愚かで優しい少年だった。




こうしてサイトは、結果的にはもう一度「ルイズ」を見捨てて戦地に向かった。
それが何よりもルイズのためになると信じて疑わずに。


彼は最後までルイズの気持ちを理解していない、『空気の読めない馬鹿』だった。




ピキーン
ブラッド のステータスが更新されました。

竜の巣 に配置していた 第三ベト隊 第五ベト隊 第六ベト隊 第八ベト隊 第九ベト隊 第四デーモンスピア隊 第一モエルモン隊 第五ダークマン隊 第八ダークマン隊 第六ベビードラ隊 第一シザービートル隊 第一ヘビサンマン隊 第二ヘビサンマン隊 第一ヘビサンウーマン隊 ブルボン隊 第一ハンマースイング隊 第二ハンマースイング隊 第一キャラ隊 初音隊 第一白ヘビ様隊 が壊滅しました。

第七ベト隊 第三ナメッド隊 第二ファットデビル隊 モリナガ隊 第一ネト隊 第一ホーンちゃん隊 が行動不能になりました。


その41へ

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プロフィール

基森

Author:基森
蚕鳴や円禍と名乗ってたこともあります。

主に小説・ssなどを置いているブログです。

自前の本棚を持つのは初めてなので手探りでやっている程度のものですが、わずかばかりの暇つぶしにでもなれば幸いです。


メールは「kulukku106☆yahoo.co.jp」まで、☆を@に変えた上でお願いいたします。

そろそろ、非営利にならトップへのリンクフリーとか言ってみたり。

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